四季折々の要素が盛り込まれた美しい形と繊細な色合い、上品な味わいで人気の京都の和菓子。

長いこと都であったという歴史と立地などの条件が、京都の菓子文化を発展させてきました。

奈良時代に遣唐使により唐菓子(穀類や豆類などに甘みを加えてこね、油で揚げたり焼いたりしたもの)が伝わり、菓子は神社仏閣の供物や平安時代の貴族の宴に欠かせないものとなり、宮中と深い係りを持ちました。

また、日本に茶が伝えられて茶の湯が確立されると、多く家元が京都を本拠地としたため、茶道によって菓子に一層の磨きがかけられました。

京の菓子職人たちは、優美な意匠を考案し美しい名前をつけるなどの創意工夫を重ね、良質の水と近江や丹波などからの原材料にも支えられ、京都は和菓子を代表する地域となっていきました。

そんな京都には、たくさんの和菓子店がありますが、その中から古い歴史を持つお店の一部をご紹介します。

一和(一文字屋和輔) いちわ

長保2年(1000年)創業。

今宮神社門前茶店で、竹串に刺した細い餅を炭火で炙って白味噌のたれをかけた「あぶり餅」の店。

994年一条天皇の時代に、厄除けために神前に供えたのが初めと言われています。

現在も、先祖代々受け継がれてきた素朴な味を守っています。

京都市北区紫野今宮町69 075-492-6852

鍵善良房(かぎぜんよしふさ)

享保年間(1716~1736)創業。

縄手通に構えていた店は、四条通りの拡張にあわせて明治時代に現在のところに移転しました。

花街に店を構えていたことから、祇園のお茶屋や料亭、南座などに、豪華な行器(出前用の容器)に入れて菓子を届けていたとされます。

創業当時から作られている落雁(らくがん)「菊寿糖」や青竹に入った水羊羹のほか、昭和初期に作られ戦後に店内でも食べられるようになった「くずきり」が有名です。

京都市東山区祇園町北側264 075-561-1818

柏屋光貞(かしわやみつさだ)

文化3年(1806年)に疫病が流行った際に、山伏として修行していた4代目利兵衛が夢で役行者から受けたお告げ通りに菓子を作り、祇園祭に供えたのが「行者餅」の始まりと言われています。

以後年に1回、祇園祭の宵山(よいやま 7月16日)にのみ販売されています。

2月の節分の日にも、聖護院ゆかりの厄除けのお菓子「法螺貝餅(ほらがいもち)」が限定販売されます。

由緒のあるお菓子や四季の生菓子などを作り続ける一方、「おおきに」などの新作も提供しています。

京都市東山区安井毘沙門町33−2 075-561-2263

かま八老舗 かまはちろうほ

文化3年(1806年)創業。

茶釜の販売をしていたところから分家して和菓子店となり、現在でも「西陣のどらやきやさん」と親しまれています。

生姜を練りこんだ二つ折りの生地に粒あんをはさんだどら焼き「月心」や、茶釜をかたどった「茶釜最中」が看板商品です。

黒豆が練りこまれたカステラも人気の品です。

京都市上京区五辻通浄福寺西入一色町12 075-441-1061

亀屋伊織(かめやいおり)

天明8年(1788年)に発生した大火事で焼失して詳細は不明ですが、創業約400年と言われる京都を代表する老舗です。

徳川3代将軍家光公に菓子を献上した際に、「伊織」という名を賜ったとされています。

木型に材料を押し込んで作る「押し物」、豆粉と砂糖を練った「洲浜」、砂糖蜜を煮詰めた「有平糖」など、干菓子だけを作り続けています。

すべて「薄茶(うすちゃ)」に合うよう味が調整されたもので、現在は通常営業はせずに予約制となっています。

京都市中京区二条通新町東入ル 075-231-6473

亀屋良永(かめやよしなが)

天保3年(1832年)創業。

本能寺の門前に大文字屋庄三郎として創業し、1860年に亀屋に改称しました。

第二次世界大戦時の強制疎開により現在の寺町御池に移り、「御池さん」と呼ばれ親しまれています。

代表銘菓の「御池煎餅」は、米粉と使った軽い食感の煎餅で、明治時代から作られていたものに改良を加え、香ばしくてくちどけの良い逸品です。

京都市中京区寺町通大池下ル本能寺前町504  075-231-7850

川端道喜(かわばたどうき)

文亀3年(1503年)創業。

京都鳥羽の武士・渡辺進が餅屋を開業、1572年に現屋号になりました。

戦国時代に朝廷が財産難になった時に塩あんの餅を毎朝天皇に献上し、「お朝物」と呼ばれるようになり、明治天皇が東京に移られるまで続いたと言われています。

宮中御用達だった頃から作っていた粽(ちまき)を代々作りつづけ、「御粽司(おんちまきし )」を名乗っています。

粽は当時奈良から宮中に献上されていた吉野葛を使って考案され、現在は『水仙粽』と『羊羹粽』の2種類があります。

京都府京都市左京区下鴨南野々神町2-12 075-781-8117

笹屋伊織(ささやいおり)

享保元年(1716年)創業。

御所から「伊織」という名を授かり、「笹屋伊織」という屋号になりました。

店は弘法大使の寺として信仰された東寺の北に位置し、弘法大使の月命日の前後3日間(20・21・22日)だけ販売される「どら焼き」が有名です。

帯状に焼いた生地で棒状のあんを巻いた円柱状もので、とても手間がかかるため限定販売となっています。

京都市下京区七条通大宮西入花畑町86  075-371-3333

塩芳軒(しおよしけん)

明治15年(1882年)創業。

林浄因命(りんじょういんのみこと)の流れをくむ『塩路軒』から初代・高家由次郎氏が別家して創業しました。

林浄因とは元の僧侶で南北朝時代に中国から渡来し、日本で初めて饅頭を作ったと言われている人物です。

明治29年に西陣に移転し、現在の店舗は大正3年に立て替えられたものです。

豊臣秀吉が築城した邸宅である聚楽第(じゅらくだい)の名を冠した「聚楽饅頭」が銘菓となっています。

このほか、季節の上生菓子や干菓子も扱っています。

京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180 075-441-0803

京御菓子司 するがや祇園下里

文政元年(1818)創業。

総本家駿河屋からのれん分けし、初代下里治助が祇園で開業して以来、本家から伝えられた練り羊羹と当店考案の飴菓子「豆平糖(まめへいとう)」を昔ながらの製法で作り続けています。

ベッコウ色の飴の中に丹波産の大豆が入った豆平糖は、香ばしい味わいで人気の逸品です。

京都市東山区新地末吉町80 075-561-1960

俵屋吉富(たわらやよしとみ)

宝暦5年(1755年)創業。

代表銘菓「雲龍」は、狩野洞春の筆による雲龍図に魅せられた七代目留次郎が創りあげた逸品です。

本店のほか、茶菓子に特化してカフェを併設した小川町店や、京菓子資料館「龍宝館」を併設する烏丸店もあります。

資料館は、京菓子や日本の菓子文化の資料や小道具、古文書、容器など様々な品が展示されていて、無料で見学することができます。

1階には茶室も備えているので、気軽に茶と菓子も楽しめます。

京都市上京区室町通上立売上ル 075-432-2211

長久堂(ちょうきゅうどう)

天保2年(1831)創業。

当初は新屋長兵衛という屋号で、明治22年に「長久堂」に改名し、四条河原町でのれんを守っています。

月夜の中で聞いた砧(きぬた:洗った布を柔らかくしたりするために叩く道具)の音に感動して菓子にしたという「砧」が代表銘菓で、羊羹を求肥で巻いた円柱状の菓子です。

季節の上生菓子などの伝統的なもののほか、新作菓子の開発にも取り組んでいます。

寒天を糖で包んだ干菓子「琥珀」も定番商品の一つで、色とりどりの華やかなモチーフが登場し、見た目にも楽しめる菓子です。

京都市北区上賀茂畔勝町97-3 075-712-4405

長五郎餅本舗(ちょうごろうもちほんぽ)

天正年間(1573~92)創業。

天正15年豊臣秀吉が北野大茶会を催し、北野天満宮境内で饅頭を売っていた河内屋長五郎が、茶菓子として羽二重餅(餅粉を蒸して砂糖や水飴を加えて練り上げた白くてなめらかな餅菓子)であんを包んだ「あん入り餅」を献上しました。

これが秀吉公の目にとまり「長五郎餅」と命名されたと言われています。

以来400年もの間、変わらぬ風味を伝え続けています。

毎月25日の「天神さん」の縁日には、北野天満宮境内の茶店でも味わうことができます。

京都市上京区一条通七本松西入ル 075-461-1074

本家玉壽軒(ほんけたまじゅけん)

慶応元年(1865年)創業。

井筒屋嘉兵衛という屋号で西陣織屋を営みながら、菓子を商い始めたのが始まりとされます。

明治に屋号を玉壽軒と改め、菓子づくり専業となりました。

代表銘菓は、紫野大徳寺の地名を取って名付けられた「紫野」で、大徳寺門前の一久がつくる大徳寺納豆を、和三盆の落雁(らくがん)の衣で包んだものです。

京都市上京区 今出川通大宮東入元伊佐町262 075-414-0319

水田玉雲堂(みずたぎょくうんどう)

文明9年(1477年)創業。

貞観五年(863年)、疫病が流行した際に当時の天皇が御霊会を行い、疫病よけとして「唐板煎餅」が神前に供えられたのが、当店の銘菓「唐板」の始まりとされています。

応仁の乱で中断後、上御霊神社の境内で茶店を始め、厄病よけの煎餅として世に知られるようになしました。

文明9年に今の場所に移り、以来その味を守り続け、茶道の三千家はじめ多くの茶人や地元の方々に親しまれています。

京都市上京区上御霊前通烏丸東入上御霊前町394 075-441-2605

おわりに

昔から同じ材料を使い、職人さんたちが守り伝えてきた製法で、手間暇をかけて作られる和菓子には、様々な物語が込められています。

京都に行く際には、ぜひ訪れてみたい魅力的なお店ばかりです。