四季のある日本の夏は、湿度が高く過ごしにくい季節です。
近年は温暖化で平均気温が上がってきて、ますます夏が辛くなってきていますよね…。
この記事では、そんな日本の夏の暑さを少しでも紛らわすことができる、涼を感じる和菓子や夏の風物詩を模した和菓子をご紹介します!
わらび餅
ぷるぷるとした食感とほどよい甘さで、若い世代からお年寄りまでに人気の「わらび餅」。
蕨といえば春先の山菜でもあり、蕨粉の製造時期から「わらび餅」を春にしか売らないお店もありますが、その食感から夏場のものとして取り上げられることが増えています。
名前に蕨とついているので「蕨粉」を使ったお菓子と思われがちですが、蕨粉は大変希少なため、実際は蕨粉を使っていないものが多いのが現状です。
蕨粉は蕨の根から取り出した澱粉を乾燥させて作りますが、非常に手間がかかるため、生産量が少なくとても高価。
古くから蕨粉を使ったわらび餅は高貴の人々しか口にできず、庶民は葛粉などを混ぜて作っていたようです。
蕨粉を使ったわらび餅は弾力がありながら滑らかで柔らかく、上品な風味が口の中に広がります。
現代は蕨粉を使わずに、主に甘藷澱粉を使用しています。
甘藷澱粉だけで作られたものは単調な味ではありますが、食感を楽しめるものとなっています。
こだわりの和菓子店では、蕨粉だけを使用して餡と合わせたり蕨粉に少量別のものを混ぜたりして、高価にならずに蕨粉の特徴を活かすように工夫されています。
【 菓匠 雅庵】のわらび餅(東京)
雅庵のわらび餅は、丹念に練り上げることで究極の柔らかさを実現しています。
食べやすい一口サイズで、口の中でとろけるようです。
餡や蜜は使用せず、餅の甘さときな粉の風味のみのシンプルなタイプです。
国産の高級きな粉がたっぷりとかかっていて、風味豊かな味わいとなっています♡
住所:〒153-0043
東京都目黒区東山 1-13-4
アクセス: 東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」から徒歩10分
営業時間:10:00~18:00(日曜~17:00)
定休日:無休
【 月乃舎】のわらび餅(三重県)
月乃舎のわらび餅は、本蕨粉を使用して練った餅でこし餡を包み、きな粉をまぶした丸形のタイプで、3つの素材のバランスで美味しさを引き出しています。
素材にこだわる店主が手間をかけて作るわらび餅が、全国のファンを引き付けています。
毎月のように全国の百貨店で実演販売をしているので、できたてをいただけるのも魅力です♪
住所:〒511-0232
三重県員弁郡東員町笹尾東3-2-3
アクセス:JR・近鉄「桑名駅」から三重交通バス「笹尾東三丁目南」下車
営業時間:8:30~19:00
定休日:月曜日(祝日は営業)
若鮎
鮎は日本書紀にその名が見られるほど、古くから日本人に馴染んできました。
1年で一生を終え、その期間に川と海を行き来する両側回遊魚で、そのため鮎釣りができる時期は決められています。
だいたい初夏から秋までで、6月初旬に解禁となります。
「香魚」の別名があるほど香りが良く、毎年多くの人が鮎を食べられる時期を心待ちにしています。
特に7月頃の「若鮎」が美味とされています。
古くから日本人を魅了してきた鮎を型取った和菓子が「若鮎」であり、薄く焼いた柔らかい小麦粉生地で求肥を包んで、焼印で目や鰭をつけたものです。
岐阜の長良川、京都の鴨川など、各地で地元を流れる川の鮎をイメージして作られています。
【 六本木・麻布 青野総本舗】の若鮎 鮎焼き(東京)
青野総本舗の鮎焼きは、毎年初夏の鮎漁の解禁に合わせて販売され、その時期を楽しみに待ち構えているファンが買い求めています。
東京では多摩川上流の鮎が有名ですが、そちらをイメージして作られているのでしょうか。
国内産小麦粉と岩手産の卵を使って薄めに焼いたしっとりとした生地で、羽二重粉を使用した柔らかい求肥を挟んでいます。
住所:〒106-0032
東京都港区六本木3-15-21
アクセス: 都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木駅」から徒歩5分
営業時間:9:30~19:00(土曜・祝日~18:00)
定休日:日曜・元旦
【 御菓子司 玉井屋本舗】の若鮎 登り鮎(岐阜)
玉井屋本舗の若鮎は、明治時代に初代店主が近くの長良川の鮎の姿を模して「登り鮎」を考案したとされ、和菓子・若鮎の発祥の店といわれています。
上品な甘さのカステラ生地で弾力のある求肥を包んだ、姿の美しい鮎菓子です。
岐阜県では、若鮎をはじめとした「鮎を模した菓子」がたくさん揃っています。
住所:〒500-8009
岐阜県岐阜市湊町42
アクセス: 名鉄新岐阜駅・JR岐阜駅より車で15分
岐阜バス「長良橋バス停」より徒歩1分
営業時間:8:00~20:00
定休日:水曜日
水まんじゅう
葛粉を使用した「水まんじゅう」は、岐阜県大垣市が発祥といわれています。
大垣市は良質な地下水が豊富で“水の都”と呼ばれ、その名水を生かして明治時代に誕生したのが水まんじゅうだそうです。
葛粉を使った葛饅頭と似ていますが、大垣のものは蕨粉も混ぜていて、葛饅頭より柔らかい仕上がりになっています。
餡と生地を容器にいれて冷やすのが大垣流で、その他の地域では餡を生地で包むスタイルが多いようです。
中の餡は、こし餡や抹茶餡、梅餡など、バリエーションも豊かです。
最近では、生地にコーヒーやチーズを使用したものなども登場しています♪
ひんやりプルプルとした口当たりと、ツルっとした喉ごしで、見た目も涼やかな水まんじゅうは、夏の和菓子として人気が上がってきています。
【 神楽坂 五十鈴】の水まんじゅう(東京)
神楽坂五十鈴の水まんじゅうは、葛をじっくりと煉りあげることで柔らかさの中にもほどよいコシをもたせ、つるんとした絶妙な喉ごしに仕上げています。
中の餡は上品な甘さのオーソドックスな“こし餡”と人気の“種入り紅梅”があり、甘酸っぱい梅味は夏にぴったりです。
容器に入った水まんじゅうが笹の葉に包まれ、お持たせにもオススメの逸品です。
住所:〒162-0825
東京都新宿区神楽坂5-34
アクセス:都営大江戸線「牛込神楽坂駅」より徒歩2分
東西線「神楽坂駅」より徒歩4分
JR「飯田橋駅」から徒歩7分
営業時間:9:00~19:30
定休日:日曜・祝日
【 金蝶園総本家】の水まんじゅう(岐阜)
金蝶園総本家の水まんじゅうは、餡と生地をお猪口に入れて冷水で冷やす水槽が店先に置かれ、暑い夏に涼を添えています。
そよそよと揺れる水の中で、お猪口の中では透明な生地に色とりどりの餡が透けて、見ているだけでも涼やかになります。
季節のフルーツの餡入りや、水まんじゅうをアレンジしたメニューも揃っていますよ。
住所:〒503-0901
岐阜県大垣市高屋町1-17
アクセス:JR・養老鉄道「大垣駅」より徒歩9分
営業時間:9:00~19:00
定休日:無休
【 京都 東山茶寮】の水まんじゅう(京都市)
東山茶寮は、和菓子と洋菓子の素材を組み合わせた洋風和菓子を提供しているお店で、2種類の「水まんじゅう」を販売しています。
宇治の老舗・堀井七茗園の高級抹茶をたっぷり使った抹茶餡は、ほどよい甘みにほろ苦さが漂う渋い味わいです。
香ばしい国産大豆のきな粉を白あんに練りこんだきな粉餡は、まろやかな味わいです。
どちらにも生クリームが使われていて、和洋折衷の味が楽しめますよ♡
住所:〒605-0846
京都府京都市東山区五条橋東4-448
アクセス: 京阪本線「清水五条駅」より 徒歩約7分
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜日
かき氷
ここ数年のかき氷ブームで、以前はなかった味付けやトッピングがたくさん登場しています。
氷そのものにこだわってわざわざ取り寄せるお店や、氷の削り方にこだわるお店もあります。
ここ数年は、台湾から来たマンゴーかき氷が行列となり、国内からは天然氷を使ったお店が話題となりましたね。
山のように盛られた氷やカラフルなトッピングなど、見た目のインパクトがあり「映える」こともブームの一因といえるでしょう。
ベースとなるのは無味の氷ですので、工夫次第でさまざまなバリエーションを作れるため、各店がアイディアを盛り込んだかき氷を提供して楽しませてくれています。
そんな中、和菓子屋さんで提供される昔ながらのかき氷にも、根強い人気があります。
昔ながらのかき氷といえば、一番シンプルな砂糖水をかけた氷スイ、イチゴシロップをかけた氷イチゴ、茹であずきを入れた氷あずきなどです。
【 梅むら】のかき氷 氷豆かん(浅草)
梅むらは、寒天に豆を入れて蜜をかけて食べる“豆かん”発祥のお店です。
北海道産の赤えんどう豆がたっぷり使われています♪
「氷豆かん」は豆かんの上に削った無味の氷をのせたもので、豆かんと氷をなじませていくと何ともいえない優しい味わいになります。
住所:〒111-0032
東京都台東区浅草3-22-12
アクセス:東武線・つくばエクスプレス「浅草駅」から徒歩8分
営業時間:12:30~19:00(ラストオーダーは18:30)
定休日:日曜
【 天野屋】のかき氷 氷甘酒(神田)
天野屋は神田明神の参道入口にある老舗の甘酒店で、創業当時から地下6mにある土室で作られる米麹を使用しています。
その米麹から作られた甘酒と糖蜜をかけたのが「氷甘酒」です。
江戸時代には夏バテ防止に飲まれていたという甘酒は、かき氷にはぴったりの素材ともいえますね。
この他にも、昔ながらのかき氷メニューが揃っていますよ。
住所:〒101-0021
東京都千代田区神田2-18-15
アクセス:JR中央線「御茶ノ水駅」・東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」より徒歩5分
営業時間: 10:00~18:00(祝日~17:00)
定休日:日曜(12月2週目~3月末は営業)夏季休暇
【 御菓子司 春日庵】のかき氷(奈良市)
春日庵は銘菓さつま焼で有名な和菓子店で、2階がお座敷の茶房になっています。
かき氷のメニューで一番人気は「黒蜜きな粉わらび餅」。
コクのある黒蜜とたっぷりかかった香ばしいきな粉、添えられた餡と氷と合わせていくうちに、氷で冷えたわらび餅が登場して喜びもひとしおです。
氷を神様として祀る神社があり、近年「かき氷の聖地」といわれている奈良で、氷が貴重品だった時代に思いをはせながらいただくのもオススメです♪
住所:〒630-8333
奈良県奈良市中新屋町29
アクセス:近鉄「奈良駅」から徒歩25分
営業時間:9:00~18:00
定休日:不定休
おわりに
単に冷たいだけではなく、見た目にも涼しさを感じられる夏の和菓子は、暑さをやわらげてくれます。
また、若鮎のように、毎年この時期にしか味わえないという待ち焦がれる気持ちを表現した菓子というのも、和菓子ならではのことです。
この時期にしか味わえない夏の涼菓をぜひお試しください。
和菓子には、お饅頭、お団子、羊羹、上生菓子など、たくさんの種類があります。和菓子は、材料や製法、水分量によって分類されます。今回は、「生菓子・半生菓子」と「干菓子」の種類に分け、和菓子の名前をその由来や特徴などを交えてご紹介します。
和菓子の魅力は、何といっても“四季を楽しめる”こと。そして、季節の中で皆が心待ちにするのは、やっぱり「春」ではないでしょうか?寒い冬が終わって暖かさが増していくとき、人々の心もワクワクしていきます。そんな春の訪れを、形や色や素材で表現した春の和菓子をご紹介します♡
実りの季節、秋。和菓子の素材となる小豆、栗、芋なども、秋が収穫期です。そのため、秋の和菓子には栗や芋を使ったものがたくさんあります。今回は、そんな秋の和菓子をご紹介します。