
岐阜県の東濃地方(多治見市・土岐市・瑞浪市)周辺で制作されている美濃焼は、全国の陶磁器シェアの6割を占めています。
今回はそんな焼き物で有名な美濃焼の有名窯元さん・陶芸作家さんから人間国宝の方々をご紹介することで、より美濃焼を深掘りしていきたいと思います。
美濃焼で有名な窯元を紹介
美濃では窯元のことを窯焼きと言っているそうです。
まずは、陶器作りに日々励まれている窯元さんたちをご紹介いたします。
深山 miyama
シンプルでかつ使いやすく、高品質の製品を作り続けている美濃焼を代表する窯元さんです。
これまでグッドデザイン賞を5度も受賞されており、多彩な商品ラインナップを見ても深山ブランドの仕事に対する真摯な姿勢を感じることができます。
中でも2004年にグッドデザイン賞を取られた、小皿と箸置きが一体になった器の「miyama Isola」は色々なシーンで活躍を期待できそうな器です。
壽泉窯(じゅぜんがま)
結晶釉と呼ばれる釉薬を使って花びらや幾何学的な模様が印象的な窯元さんです。
長年、装飾的結晶釉は困難とされてきたそうです。
雰囲気としては天目などに見られる模様に似ています。
2014年にはトヨタのプレミアムブランドであるレクサスが厳選したレクサスプレミアムコレクションにも選ばれています。
カネコ小兵製陶所
企業理念は普段着の生活文化の創造と謳われています通り、商品はガラスのような透明感と漆器のような深みを持ち合わせた「ギヤマン陶」を代表に、素地の風合いを生かした温もりを感じる「リンカ」など、日常生活を豊かにしてくれそうな器を作られている窯元さんです。
小田陶器
岐阜県の瑞浪市で100年にもわたって白磁を作り続けている窯元さんです。
お皿、お鉢、丼・碗物、カップ・湯のみ、ポット・土瓶、ランプシェード、醤油差しなどの小物、その他雑貨類と、幅広く美しい白磁の製品が揃っています。
漆喰を盛り上げて作るナマコ壁の製法を器に落としおんだ「meji」シリーズは見た目にも楽しい豆皿シリーズです。
カネ定製陶
丼といえばこちらの窯元さんです。
国内陶磁器生産の6割を占める美濃焼ですが、その中でも丼生産で有名な駄知町のメーカーさんです。
和風の染付文様の丼や、かきこみ丼、京丼、元禄丼と名前も形も様々に展開されており、丼に対するこだわりがにじみ出ています。
これだけ多種多様にあれば、きっと自分好みの丼に出会えるのではと期待してしまいますね。
秀峰窯(しゅうほうがま)
土岐市にある窯元さんです。
器作りに対する情熱や、器の通じて製作者側とのコミュニケーションを期待できるような作品作りをされていらっしゃいます。
特に「織部」の焼き物が印象的で、織部ファンの方を始め、本格的な美濃焼をお好みになる方にオススメの窯元さんです。
不動窯(ふどうがま)
こちらも土岐市の窯元さんです。
織部を始め、黒織部・粉引・黄瀬戸などの伝統に学びながらも、現代生活の中に馴染むようなモダンな器作りを掲げていらっしゃいます。
美濃焼き6種に見られるような伝統の味わいを普段生活の中でも楽しむことができそうです。
知山窯(ちざんかま)
一つひとつ手作りで作られる朱赤絵の器、中でもご飯鍋注目です。
また「CHIZAN BLUE」のシリーズは鮮やかなトルコ青のグラデーションが広がり、中でも音符や、鍵盤といった音楽に関するモチーフの商品が印象的です。
ウィルセラム
「幸せを追求し、幸せを招く」をコンセプトに、工学博士によって開発された、手入れのいらない土鍋だそうです。
土鍋といっても材質はセラミックなので石鍋ですが、土鍋よりも軽量で、保温が期待でき、遠赤外線も出るという多機能ぶりです。
こちらは窯元さんでない上、数年前に製造も中止されているようです。
現在販売されているものの、在庫が無くなり次第ということなので、ご興味がある方は是非検索してみてください。
美濃焼で有名な作家さんたちを紹介

黒岩卓実(くろいわたくみ)
有田の柿右衛門や古伊万里でも有名な錦絵を赤で描く赤絵を得意とされる作家さんで、日匠大賞を3度・中日大賞受賞をされており、後述する作家さんも師事されていたりと、美濃焼のビッグネームといっても過言はないでしょう。
作品は花器などの大物からパスタ皿やティーカップなどの洋食器、小鉢や盛り皿、大皿などの和風のものまで多岐にわたり、やはり目を引くその赤に魅かれてしまったファンも少なくないのではないでしょうか。
ただ、残念ながら現在は作陶を休止されているようです。
和田一人(わだひとり)ー芳洲窯
多彩な色絵陶器が楽しい美濃焼の作家さんです。
七福神の描かれた一服碗は彩り豊かで、伸びやかなタッチで描かれた豪華な色絵汲出は華やかで見応えがあります。
芳洲窯という記載も見つかりましたが、ホームページなどは見つけられませんでした。
中垣連次(なかがきれんじ)ー秀峰窯
先述の秀峰窯の作家さんです。
伝統を重んじつつも現代社会の生活に沿った作品作りをされていて、特に織部の器が素敵です。
加藤芳平(かとうよしへい)-松泉窯
美濃焼伝統工芸士に認定されている方で、釘彫りによって描かれたモチーフは赤、緑、青と温かみのある色彩でぼかすように彩色されていて非常に魅力的です。
中尾彰秀(ながおあきひで)
黒と緑が織りなす黒織部の作品を作られており、微妙に歪まして作られているところに、手作りの温かみや、織部の伝統と趣を感じさせます。
伊藤豊(いとうゆたか)
美濃焼の若手作家さんです。
個性的な堀模様と土の温もりを感じるような優しい色合いが印象的です。
平野日奈子(ひらのひなこ)
美濃焼の若手作家さんです。
食器や器だけに限らずピアスなどのアクセサリーや、果物台、陶製の鏡なども作られているようで、粉引きの作品が印象的です。
小沢基晴(おざわもとはる)
個展を開催すれば入場制限がかかるというほど大人気の作家さんです。
とくに錆びた感じが本物の銅かと見間違えるほどのブロンズしのぎシリーズや、ターコイズブルーがどこかミステリアスな翡翠釉のシリーズが印象的です。
美濃焼の人間国宝の方を紹介

荒川豊蔵(あらかわとよぞう)
志野に陶芸の原点を求め、晩年には荒川志野と呼ばれる独自の境地を確立した美濃焼の陶芸家です。
重要無形文化財(志野)と重要無形文化財(瀬戸黒)の保持者である他、可児市の大萱に桃山時代の古窯跡を発見し、その後志野、黄瀬戸、瀬戸黒といった桃山古陶の再現につとめられました。
加藤土師萌(かとうはじめ)
東京藝術大学陶芸科の初代教授であり重要無形文化財(色絵磁器)の保持者です。
門下には東北地方で最も優れた陶芸家と言われたりんご釉の開発などで知られている鳴海要さんがいらっしゃいます。
塚本快示(つかもとかいじ)
江戸時代から続く美濃焼の窯元快山窯の11代目。鋼や竹の串で彫るように描かれた片切り模様は他の追随を許さない細かさで、本場中国の陶磁界でも高い評価を得ているそうです。
重要無形文化財(白磁)、重要無形文化財(青白磁)両分野で初の保持者で1977年には紫綬褒章を受章されています。
加藤卓男(かとうたくお)
美濃焼の名窯元の幸兵衛窯の5代目加藤幸兵衛の息子であり、お子さんは7代目加藤幸兵衛というご出身。
戦時中の徴兵や白血病との闘病生活などを経てフィンランドや、イランを陶器研究に巡られました。
重要無形文化財(三彩)の保持者であり、昭和63年には紫綬褒章も受章されています。
鈴木藏(すずきおさむ)
日本で生まれた独自の創作である志野に情熱を注ぎ続けた作陶家さんです。
国指定の志野の重要無形文化財認定保持者である他に、陶磁器界の名だたる賞を受賞され、平成7年には紫綬褒章も受章されていらっしゃいます。
代表作品の志埜茶盌・志埜花器は鳥肌必須の絶品です。
加藤孝造(かとうこうぞう)
美濃古陶の瀬戸黒を始め織部・志野・黄瀬戸といった桃山時代に栄華を極めた美濃桃山陶を現代に引き継ぐ重要無形文化財保持者(瀬戸黒)です。
平成19年には紺綬褒章も受賞されています。
代表作品は瀬戸黒茶盌。また社団法人美濃陶芸協会の会長も歴任されており、後進の育成にも力を注がれていました。
おわりに

以上美濃焼の窯元さんから、作家さん、人間国宝の方々をご紹介させていただきました。
執筆後の感想といたしましては、企業や窯元を中心に時代や生活とともに変化し製造されている美濃焼から、桃山古陶を代表に綿々と受け継がれてきている伝統の美濃焼まで多種多様に展開され、生き続けている美濃焼を感じていただけましたでしょうか?
この記事を美濃焼との出会いのきっかけに活かしていただけていると幸いです。