やちむんとは、沖縄の伝統工芸品で、沖縄らしい模様が描かれたずっしりとした重厚感のある焼き物です。
近年では沖縄県内に留まらず、県外にもやちむんファンが増えており、やちむんが出品される陶器市には多くの方がやちむんを求めて足を運ぶ人気ぶりです。
そんな大人気のやちむんですが、具体的にはどのような焼き物なのでしょうか?
歴史や魅力、種類などを知り、更なるやちむんの魅力に迫っていきましょう!
やちむんとは?
沖縄の言葉で
やち=焼、むん=物
つまり「やちむん=焼き物」を意味し、沖縄で作られる焼き物が広く「やちむん」と呼ばれるのです。
なんだか可愛らしい響きの言葉ですよね!
やちむんはぽってりとした厚みがあり、やや重さのある器で、大皿にドンっと盛り付けるチャンプルーなどの沖縄料理によく似合います♪
やちむんに施されている模様は力強く大胆で、沖縄をイメージさせるものが多く、それでいてどこか優しい色使いが特徴です。
窯元が集う沖縄中部の読谷村や、直売所・共同売店が軒を連ねる那覇市壺屋のやちむん通りなどで販売しています。
沖縄の家庭で日常的に使われているのはもちろんのこと、沖縄そばやチャンプルーを扱う沖縄料理のお店でも頻繁にやちむんを目にします。
また、お土産としても選ばれることが多いので、現在は県外でもやちむんの認知度が広がってきています。
沖縄各地で開催される陶器市では、数多くのやちむんが出品されるため、きっとあなた好みの作家さんや作品に出会うことができますよ♪
やちむんの歴史
やちむんの歴史は長く、その起源は沖縄が琉球王国と呼ばれていた頃にまで遡ります。
江戸時代初頭の慶長14年(1609年)、琉球王国は薩摩藩の支配下に置かれていました。
その後、元和2年(1616年)に薩摩から招いた朝鮮人陶工「一六・一官・三官」の3人により、琉球の人々は湧田窯(現在の那覇市泉崎)にて朝鮮式技法の指導を受け、作陶をはじめます。
その時の製法は無釉・低温焼成の「荒焼」で、沖縄で本格的な陶器の生産が始まったのはこの頃だと言われています。
さらに天和2年(1682年)、琉球王朝の尚貞王が製陶産業の復興のため県内各地に分散していた湧田・宝口・知花の3つの窯場を統合し、那覇市の壺屋という場所に集めました。
これが、やちむんの基礎となる「壺屋焼」の始まりとなります。
当時は荒焼が主流で、壺や甕をコンテナ代わりに使い、泡盛を入れて海外へ輸出したり海産物を入れて輸入したりしていました。
その後しばらくして、壺屋焼(やちむん)は皿や器などの家庭用品として発展していったといわれています。
明治時代に入り琉球王国が沖縄県になると、県外から安くて丈夫な磁器製品が入ってくるようになり、その影響でやちむんは衰退していきます。
しかし、大正15年(1926年)頃から起こった「民藝運動※」によって日用工芸品としての美が認められたやちむんは、全国各地に広まっていきました。
その後、第二次世界大戦後の昭和47年(1972年)、周辺地域の都市化が進む中、登り窯から出る煙が問題視され始めます。
これにより、昔ながらの製法にこだわる陶芸家たちは、公害対策のために沖縄県中部の読谷村へ移って行きました。
それが今の「やちむんの里」という名窯場で、現在は沢山のやちむんファンが足を運ぶ観光名所となっています。
こうして、やちむんは衰退の危機や公害問題を乗り越え発展してきました。
現在、那覇市壺屋・読谷村を中心に県内各地で作陶され、沖縄県内外問わず多くの人に愛され続けているのです。
※民藝運動:大正15年(1926年)に柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司らによって提唱された、名もなき職人が作るありふれた日用品こそ美しいという発見から生まれた「用の美」を見出し活用する生活文化運動。
やちむんの種類と形
やちむんの種類は、大きく2つに分けられます。
また、形も人々の暮らしに合わせて変化し続け、さまざまな用途に合わせた形が生まれてきました。
では、具体的にどのような種類や形があるのか見ていきましょう。
や ちむんは大きく分けて2種類
荒焼(アラヤチ)
先ほど、【やちむんの歴史】でも触れた「荒焼」は、沖縄では南蛮焼とも呼ばれ、釉薬をかけずに1,120度前後で焼き上げられます。
装飾は少なく、釉薬をかけずに素焼きしているので土の風合いが活きており、素朴な味わいがあります。
主に、保存用の大きな壺や水甕などが作られています。
上焼(ジョーヤチ)
「上焼」は、釉薬をかけて1,200度以上で焼き上げます。
シンプルな荒焼とは違い、絵付けなどの装飾が施された作品が多く、主に食器や花瓶などの日用雑器が作られています。
現代のやちむんの多くは、この上焼の技法が用いられています。
や ちむんの形
やちむんはさまざまな形が作られていますが、中でも伝統ある代表的な形をいくつかご紹介します。
カラカラ
鹿児島や沖縄地方でみられる伝統の酒器である「カラカラ」。
沖縄の方言では「貸せ=カラ」の意味で、あるお酒好きのお坊さんが丸餅からヒントを得て作った絶対に倒れない徳利が評判になり、人々の間で「貸せ貸せ=カラカラ」と呼ばれるようになったという説があります。
また、中に陶玉が入っていて、空っぽの状態で容器を振るとカラカラと音が鳴ることからこの名が付けられたとも言われているそうです。
ぽってりとした安定感のある丸い形に突き出た注ぎ口が、カラカラの特徴。
おちょことセットで販売されていることが多く、思わずセットで購入したくなってしまいますよ♪
チューカー
もとは泡盛用の土瓶を「チューカー」と呼んでいましたが、現代では急須としてお茶用に使用するのが主流となっています。
チューカーの持ち手はしなやかな竹であることが多く、優しい印象を与えます。
同じような形で「按瓶」という、チューカーよりもサイズが大きく、持ち手が本体と同じ陶器でできているやちむんもあります。
嘉瓶(ゆしびん)
ひょうたんのような縦長の形の酒器を「嘉瓶」といいます。
かつて、祝いの席などのめでたい場で酒を入れるのに使用されてきました。
泡盛を詰めて相手に贈り、祝いが終われば持ち主に返されたと言われています。
抱瓶(だちびん)
「抱瓶」は三日月型の酒器で、紐を通し腰にぶら下げて持ち歩く、いわゆる携帯用の酒瓶です。
持ち主の腰にぴったり沿うように片側がえぐられたような独特な形がユニーク!
お酒を持ち歩くという発想も、なんだか昔の沖縄らしくて大らかさを感じますね♪
厨子甕(ずしがめ)
遺骨を納めるための容器である「厨子甕」。
かつて、沖縄では“洗骨”という儀式が行われていました。
遺体を墓の中や洞窟に数年ほど安置し、その後骨を洗い厨子甕に入れ、墓の中に入れて供養していたそうです。
昭和45年(1970年)頃には洗骨の風習はなくなりましたが、現代でも祖先の骨を納めるために厨子甕が使われています。
やちむんを代表する「壺屋焼」とは?
沖縄各地で作られているやちむんですが、中でも最もポピュラーで沖縄を代表するのが【やちむんの歴史】でも触れた「壺屋焼」と呼ばれるやちむんです。
那覇市にある壺屋という地域で主に生産されていることから、その名が付きました。
壺屋焼は、琉球王国が東南アジア諸国との交易を通し技術を吸収してきたことから、多種多様な技法と沖縄で採れる土(赤土や白土)、そして伝統的な釉薬で作られているのが特徴です。
現在も壺屋では多くの窯元が活躍しており、日用品の器から家の守り神・シーサーまで、さまざまな壺屋焼が作られています。
数々の工房やギャラリーを歩きながら見て回ることができる“壺屋やちむん通り”は、県外の方にも人気の観光スポットとなっています♪
やちむん作りを体験しよう!
沖縄県内には沢山のやちむん工房や販売店があり、中には購入だけではなくやちむん作りの体験ができるお店も!
ここでは、オススメのやちむん体験スポットをご紹介していきます♪
※体験後、やちむんが焼き上がり、お手元に届くまでに1~2ヶ月ほど時間がかかります。
壺 屋焼やちむん道場 育陶園
那覇市の壺屋やちむん通りにある育陶園では、壺屋焼を楽しみながら学んで欲しいというコンセプトで「壺屋焼やちむん道場」を開いています。
観光ついでに気軽に楽しめるシーサー作りから、本格的な職人弟子入り体験までたくさんのコースが用意されています♪
※体験内容や金額は変更となる場合がございます。
事前に公式HPや店舗へご連絡の上、ご確認をお願いいたします。
壺 屋焼窯元 陶眞窯
壺屋焼の伝統を守りながら作陶を続けている、読谷村の「壺屋焼窯元 陶眞窯」。
陶眞窯では陶芸体験ができる他、陶眞窯に併設されている「やちむん&カフェ群青」では、やちむんの作品展示及びお食事ができますよ♪
※体験内容や金額は変更となる場合がございます。
事前に公式HPや店舗へご連絡の上、ご確認をお願いいたします。
焼 物工房おなが家
令和元年(2019年)創業の「焼物工房おなが家」は、ご夫婦で営むカップ専門店です。
独特な雰囲気の絵付けがおしゃれで可愛い、ちょっと珍しいデザインのやちむんに出会うことができますよ♪
長く使って頂くため、体験では成形後の工程を丁寧に代行してくれるのでとても安心です♡
※体験内容や金額は変更となる場合がございます。
事前に公式HPや店舗へご連絡の上、ご確認をお願いいたします。
おわりに
やちむんは、古くから今日に至るまで人々に愛され続けてきました。
伝統的な技法を守りながらも生活に馴染むよう進化していき、今では沖縄だけでなく全国各地に広がりつつあります。
力強さの中にも優しさが感じられるやちむんだからこそ、多くの人を魅了しファンが増え続けているんですね!
これからもやちむんの伝統を大切にし、生活に根付いた工芸品を守っていきたいですね♪
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沖縄の青い海、そして色とりどりの花を思わせるカラフルな「琉球ガラス」。
琉球ガラスは沖縄の「チャンプルー文化」から生まれたことをご存知でしょうか。
沖縄の人々に加え、南蛮渡来のビードロ技術を持つ長崎の職人、大阪の商人、アメリカ文化がチャンプルー(混ざり合い)してできた伝統工芸品なのです。
琉球ガラスの歴史は、第二次世界大戦後、在留米軍によって持ち込まれたコーラやジュースの廃瓶を原料として、ガラス製品を作ったことから始まりました。
厚みや気泡のある独特な風合いで、温かみのあるデザインが人気となり、平成10(1998)年には沖縄県の伝統工芸品に指定されています。
首里織とは、琉球王国の城下町として栄えた首里の地で織り継がれてきた織物の総称です。
紋から絣まで、さまざまな織があることも首里織の特徴の一つで、その制作方法もさまざまです。
王家や貴族などの装いや、位の高い人の官位としても用いられ、当時は首里の人にしか作ることが許されていない格調高い織物でした。
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皆さんは、「琉球漆器」という沖縄の伝統工芸品をご存知ですか?
琉球漆器とは古くから沖縄に伝わる漆器で、多種多様な加飾技法が特徴です。
その芸術性の高さから、結婚祝いや生年祝いなどの贈答品として人気がありますが、実は日常生活で使いたくなる品々が豊富にあるんですよ!
南国である沖縄独特の模様と、多種多様な技法で作られる美しい琉球漆器。
琉球漆器は、昭和49年(1974年)には沖縄県指定の伝統工芸品に、昭和61年(1986年)には経済産業大臣指定の伝統的工芸品として認められました。
今回は、琉球漆器の歴史とその制作工程について紐解いていこうと思います。
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