江戸落語と並ぶ上方落語の発祥の地である大阪。

桂文枝や桂ざこば、笑福亭鶴瓶などタレントや俳優としても活躍する落語家がいる一方で、東京に比べて大阪は寄席で落語を味わうという機会が少ないという現状があります。

今回は、落語初心者の方でも気軽に楽しめる小さな寄席から、行列ができるほどの定席寄席まで、とにかく笑えて賑やかな上方落語を聞ける場所をご紹介します。

上方落語とは

大阪は上方落語の本場です。上方落語のルーツは、大阪の初代・米沢彦八や京都の初代・露の五郎兵衛が、道端で噺を披露して銭を稼いでいた「辻咄つじばなし」や「軽口かるくち」と呼ばれる大道芸にあるとされています。

江戸落語との違いは、近畿地方の方言である上方言葉を用いること、道行く人の注目を集めるためにハメモノ(三味線、太鼓などの楽器演奏)を鳴らしたり、見台(演者の前に置く小さな机)を叩いたりする舞台演出などが特徴です。

現在の上方落語を代表する落語家には、六代目・桂文枝や二代目・桂ざこば、初代・笑福亭鶴瓶などがいます。


大阪で落語を聞ける場所

大阪で落語を聞ける場所はどんな会場か、どんな落語家が公演しているか、詳しく解説します。

満天神繁昌亭

東京には新宿末廣亭しんじゅくすえひろていをはじめとして4つの落語定席がありますが、現在の大阪で唯一の落語定席が天満天神繁昌亭です。

2003年に上方落語協会会長に就任した桂三枝(当時)を中心に、天神橋筋商店街で落語会を行える定席を新設する計画が持ち上がり、3年後の2006年に晴れてオープンとなりました。

繁昌亭の番組は朝席・昼席・夜席で構成され、ベテランから若手までの上方の落語を楽しむことができます。公演のメインである昼席は前売2,500円、当日3,000円で販売され、それ以外の番組は日替わり料金です。

入場料一般 2,500円/3,000円
65歳以上 2,500円
身障者 2,000円
高校生・大学生 2,000円
小・中学生 1,500円
アクセス〒530-0041
大阪市北区天神橋2-1-34
TEL:06-6352-4874
地下鉄谷町線・堺筋線「南森町駅」4‑B出口から徒歩3分

楽亭

桂ざこば、桂南光かつらなんこうなど桂米朝一門かつらべいちょういちもんの落語家が所属する米朝事務所の公演が見られる寄席です。

地下鉄御堂筋線・堺筋線「動物園前」駅すぐの好アクセスで、近くには観光地としても有名な新世界本通商店街があります。

「繁昌亭」のように大きくはありませんが、こぢんまりとしていて落語家の息遣いまで伝わってくるような会場です。アットホームな雰囲気で落語を楽しむことができます。

入場料(当日券)昼席 2,500円
公演によって異なる
アクセス〒557-0001
大阪府大阪市西成区山王1-17-6
TEL:06-6365-8281
地下鉄御堂筋線・堺筋線「動物園前」駅徒歩1分

べのハルカス・近鉄アート館

あべのハルカス近鉄本店内にある小劇場で、落語のほか古典芸能、演劇や音楽のコンサートなども鑑賞することができます。

月に2回ほど「喜楽に落語」という生のお囃子の入った本格的な寄席が開催されています。

出演は若手落語家が中心で、1時間三席1,000円で気軽に落語を楽しむことができます。

入場料1,000円
アクセス〒545-8545
大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
あべのハルカス近鉄本店ウイング館8階
TEL:06-6622-8802
近鉄「大阪阿部野橋」駅、JR・大阪メトロ「天王寺」駅下車すぐ

のおやど

JR「鶴橋」駅からほど近い、アットホームな雰囲気の寄席です。

桂米朝一門をはじめ、林家・笑福亭・桂文枝一門・桂春団治一門かつらはるだんじいちもんの落語が多数出演しています。

入場料2,000円
アクセス〒543-0024
大阪市天王寺区舟橋町19-19
TEL:06-6764-7372
JR「鶴橋」中央改札から徒歩2分

大阪にはなぜ60年以上も落語の定席がなかったのか?

2006年に繁昌亭がオープンするまでの実に60年、大阪には落語専門の定席がありませんでした。

大阪の落語定席は戦争でほとんどが消失、戦後の復興においても再建されることがなかったのです。

第二次世界大戦の終わりから昭和30年代にかけて、2代目・桂春團治はるだんじらが新興の演芸場を拠点に落語の復興に努めますが、名人らの相次ぐ他界により「上方落語は滅亡した」と言われるほどの窮地に陥ります。

それでも多くの落語家の努力により、上方落語は復興するに至りますが、上方の落語家は吉本興業や松竹芸能と言った芸能事務所とのつながりが強かったために、落語定席を新設するにも折り合いがつかない状況が続きました。

また、戦後大阪の寄席は漫才との混合演芸場であったため、落語定席とは言い難く、昭和40年からはラジオやテレビが寄席に代わる舞台であったことも、なかなか落語定席が新設されなかった要因のひとつと考えられます。

戦後から60年を経て、2003年に上方落語協会の会長に就任した桂三枝(6代目・桂文枝)を中心に天神橋筋商店街の一角に天満天神繁昌亭が建設され、ようやく大阪に落語定席が誕生したのです。

阪の落語家の所属団体とは

上方落語界には唯一の落語家の協会として「上方落語協会」が存在していますが、大阪には長らく落語定席がなかったこともあり、協会よりも所属プロダクションの影響力が強いことが特徴的です。

現在の上方落語は、桂文枝などが所属する吉本興業、笑福亭鶴瓶などが所属する松竹芸能、さらに桂米朝一門が所属する米朝事務所が上方落語の三大勢力となっています。

おわりに

落語がテーマのドラマや映画がヒットしたことで、2000年代に入って落語ブームが再燃しつつあります。

上方落語は大阪言葉や京言葉で演じられ、江戸落語では使用されないハメモノの演出つきでとても賑やかです。

このように江戸落語とはまた違った趣き、楽しみ方があるので、ぜひ大阪での観光やお買い物のついでに、寄席で本場の上方落語を聞いてみてくださいね。

東京で落語を聞ける場所をまとめているので、参考になさってください。