「天下の台所」として古くから商業の栄える大阪は、全国有数の観光大県です。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや通天閣といった観光名所に加え、難波宮なにわのみやや大阪城など歴史的建造物や文化が多く残っています。

また意外なことに、淀川や大和川などの河川や大阪湾、山々に囲まれており、自然も豊富な県なんですよ。

そんな大阪府では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている8品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)2月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

大阪欄間

大阪府大阪市周辺で作られる「大阪欄間おおさからんま」。

“欄間”とは、天井と鴨居の間に設けられる開口部分に取り付けられる彫刻板のことで、かつての日本家屋ではよく使われていました。

江戸時代中期以降に豪華な欄間が商家の成功を導くと言われるようになったこと、材料となる木材に困らないことから、商いの街・大阪で欄間作りが発展していきました。


鴨居:障子や襖を取り付けるために付けられる木の上枠のこと。

大坂欄間はスギやキリ、ヒノキなどの木材を加工して、透彫すかしぼり欄間や彫刻欄間といったさまざまな技巧を凝らして作られます。

そのため、複雑なデザインのものは、完成までに半年から1年もの時間がかかります。

材料としてスギを利用する場合には、屋久島の標高500m以上の高地に自生する“屋久杉”を使用するのだとか。

品名大阪欄間
よみおおさからんま
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日昭和50年(1975 年)9月4日


大阪唐木指物

大阪唐木指物おおさかからきさしもの」は、大阪府の複数の市を主な生産地とする木工品です。

“唐木”とは、東南アジアを主産地とする紫檀したん黒壇こくたん花梨かりんなどの熱帯の木を総称して指す言葉で、奈良時代に唐(現在の中国)から持ち込まれたものです。

『唐から持ち込まれた木』ということで、“唐木”の名が付いたといわれています。

大阪唐木指物は、釘やネジを1本も使わずに木材にホゾ加工を施し、組み立てられます。

重厚さと落ち着いた雰囲気が特徴で、まるで鏡のように艶があります。

これは“摺り拭き漆仕上げ”という、天然の生漆きうるしを摺り込んで拭き取る作業を繰り返す技法によって誕生する艶なのです。

飾棚かざりだなや茶棚、座敷机、花台といった机類が、大阪唐木指物の代表的な製品です。

品名大阪唐木指物
よみおおさかからきさしもの
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日昭和52年(1977 年)10月14日


堺打刃物

堺打刃物さかいうちはもの」は、大阪府堺市周辺で作られている、包丁やハサミなどの刃物類です。

堺市周辺の鍛冶技術は古くから発達しており、その技術は平安時代には既に高度なものでした。

その後、江戸時代にポルトガルからタバコが伝来し、その葉を刻むタバコ包丁の生産が盛んになったことから、堺打刃物の評判が全国に広まりました。

鍛冶職人と研ぎ職人の分業制によって作られる堺打刃物は、抜群の切れ味を誇ります。

特に、主力製品である料理包丁は、食材の繊維や断面を崩さずにスパッと切れることから、細胞膜を壊すことなく、食材の風味や食感を保つことができるといわれています。

堺打刃物の包丁は、現在も多くの料理人が愛用しています。

品名堺打刃物
よみさかいうちはもの
工芸品の分類金工品
指定年月日昭和57年(1982 年)3月5日


大阪仏壇

大阪仏壇おおさかぶつだん」は、飛鳥時代に誕生したとされる仏壇で、大阪府大阪市や堺市、八尾市、岸和田市などで作られ続けています。

聖徳太子が推古天皇元年(593年)に四天王寺してんのうじを建立した際、百済くだら(当時の朝鮮半島の一国)から招致した技術者を大阪に住まわせたことから、仏壇・仏具の産地として大阪が栄えるようになったとされています。

大坂仏壇は、宗派ごとに飾り金具を変えて製作することや、金箔や彩色による絢爛豪華な佇まいが特徴です。

大坂仏壇には、“高蒔絵”という、蒔絵を高く盛り上げる技法があります。

高蒔絵を施すことで、金具による木地の損傷を防ぐだけでなく、立体的でより豪華な作品に仕上げることができます。

品名大阪仏壇
よみおおさかぶつだん
工芸品の分類仏壇・仏具
指定年月日昭和57年(1982 年)11月1日


大阪浪華錫器

大阪浪華錫器おおさかなにわすずき」は、大阪府大阪市周辺で作られるすず製品です。

すずとは金属の一種で、熱伝導率が高く耐久性が優れているなどの特徴から、主に酒器や花器などに利用されます。

錫器は今から約1300年前に遣隋使よって日本に伝わったとされており、その当時は宮中での器や神仏具しんぶつぐとして、貴族の間で使用されていました。

大阪に錫器の産地が形成されたのは江戸時代中期で、心斎橋・天神橋・天王寺など流通の良い地域を中心に生産されるようになりました。

大阪浪華錫器の特徴は、職人の手で加工されることから生み出される一つひとつの絶妙な違いと、品質の高さです。

最近では、タンブラーやワインカップ、文房具など日常生活で使用できる作品が多く作られているのだとか。

また錫にはイオン効果があり、入れたお酒の雑味を抜き、滑らかな口当たりになるとも言われています。

品名大阪浪華錫器
よみおおさかなにわすずき
工芸品の分類金工品
指定年月日昭和58年(1983年)4月27日


大阪浪華錫器についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください♪

大阪泉州桐簞笥

大阪泉州桐簞笥おおさかせんしゅうきりたんす」は、大阪府南西部の泉州せんしゅう地域(岸和田市や堺市など)で作られる伝統的な箪笥です。

材料となるきりは防湿性や耐火性が高く、箪笥作りに適した木材として知られています。

特に、大阪泉州桐簞笥に使用される桐材は良質で分厚く、造りや仕上げが丁寧であることから、桐箪笥の最高峰といわれています。

大阪が桐箪笥の産地として確立したのは、江戸時代後期のこと。

流通の拠点として豊かな町であったことから、物を多く持つ人が増え、収納するための箪笥の需要が高まったのです。

当時の商業都市としての発展ぶりがよくわかりますね。

「100年経っても使える」という頑丈さで、人々から重宝されています。

品名大阪泉州桐簞笥
よみおおさかせんしゅうきりたんす
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日平成元年(1989年)4月11日


大阪金剛簾

大阪金剛簾おおさかこんごうすだれ」は、大阪府富田林市とんだばやしし河内長野市かわちながのし、大阪市などで生産される竹製の簾です。

近畿地方で最も高い金剛山などで採れる、良質な竹を用いた簾作りが江戸時代に始まり、産地が形成されていきました。

天然の竹の素材が活きた優雅な風情がある大阪金剛簾は、主に室内の仕切りや日よけとして使われます。

室内に入る光や風の量を調節することができるという使い勝手の良さが、大阪金剛簾の魅力の一つです。

近年では、竹以外の木を使用したり、たためるような設計にしたものなど、現代の生活様式や価値観に合わせたインテリア性の高い新製品の開発も行われています。

品名大阪金剛簾
よみおおさかこんごうすだれ
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日平成8年(1996年)4月8日


浪華本染め

浪華本染なにわほんぞめ」とは大阪府柏原市や堺市で作られる染色品で、明治時代に大阪で開発された染色技法を用いて作られます。

浪華本染めの染色技法は、一般的に“注染ちゅうせん”と呼ばれ、布地を表と裏の両面から染め、糸の芯まで色を入れることで生まれる、独特の風合いが魅力です。

また、浪華本染めでは、 “和晒わざらし”という技法により4日間かけて専用の窯で炊いて漂白した、やわらかい手触りと通気性の良い生地を使用します。

江戸時代から大阪で作られていた手拭いや、浪華本染めが全国に広まるきっかけとなった浴衣をはじめとして、現在では日傘や扇子、マスクなどの日用品も作られています。

品名浪華本染め
よみなにわほんぞめ
工芸品の分類染色品
指定年月日令和元年(2019年)11月20日