岩手県の伝統的工芸品である南部鉄器なんぶてっきは、主に「盛岡もりおか市」と「奥州おうしゅう水沢みずさわ」で作られています。

最近ではモダンなデザインも増え、海外でも人気となっている南部鉄器について、その魅力や正しい使い方、老舗の工房をご紹介します。

南部鉄器とは?

南部鉄器なんぶてっきとは、旧南部藩の城下町だった盛岡市で生産された鋳造の鉄器のことを指します。

現在は、南部鉄器というと盛岡市と奥州市水沢が主な産地とされますが、盛岡南部鉄器と水沢南部鉄器にはそれぞれ歴史があるのです。

盛岡の南部鉄器の歴史

南部鉄器の「南部」というのは、盛岡藩主・南部氏に由来しています。

南部氏はもともと、現在の山梨県にあたる甲斐かい国南部郷を所領していましたが、文治5年(1189年)の奥州合戦の功績で、現在の岩手県にあたる陸奥国北部を与えられました。

南部鉄器の前進となる盛岡の鋳物は、慶長年間(1596年~1615年)の盛岡城築城の頃には存在していたとされています。

その後、有坂氏、鈴木氏、藤田氏、小泉氏の4氏が南部藩の鋳物作りを担っていたことが、南部鉄器の礎に繋がります。

寛永10年(1633年)頃、現在の福岡県にあたる福岡藩藩主と対立し流罪となった栗山利章くりやまとしあきら(栗山大膳だいぜん)と、現在の長崎県にあたる府中藩の規伯玄方きはくげんぼう(方長老)が盛岡藩預かりとなりました。

手厚い待遇を受けていた2人は盛岡藩の文化振興が発展に寄与しましたが、とりわけ当時の盛岡藩主・南部重直しげなおが茶道への理解が深かったため、茶道で用いる湯釜を作る鋳物師が求められました。

そこで南部氏が、京都より小泉仁左衛門こいずみにざえもんという釜師を呼び寄せて作らせた茶の湯釜が南部鉄瓶のはじまりといわれています。

小泉仁左衛門の働きによって盛岡藩では茶道が発展し、上質な湯釜は贈り物としても使われ、全国的に人気となります。

水沢の南部鉄器の歴史

水沢の南部鉄器はもともと伊達仙台藩で興った鉄鋳物のため、盛岡の南部鉄器と区別するために「水沢鋳物みずさわいもの」と呼ぶことがあります。

水沢鋳物のはじまりは平安時代にまで遡ります。

後三年ごさんねんの役に勝利した藤原清衡きよひらが、戦後経営として鍋や釜などの生活用品を作らせたことからはじまります。

その後、生活用品だけでなく寺社や仏閣の一部の部品も作るようになり、戦国時代には大砲の弾や武器も製造するようになっていくのです。

※後三年の役:東北地方を舞台とした戦い。

南部鉄器の特徴と魅力とは?

南部鉄器というと「重くて使いにくそう」というイメージがあるかもしれませんが、実はたくさんの魅力が詰まった伝統的工芸品なのです。

南部鉄器は「おしゃれなデザイン」が魅力!

最近では和モダンなデザインの商品も多く作られている南部鉄器。

ころんとしたフォルムが可愛い急須や、デザイン性の高いスタイリッシュな鉄瓶など、さまざまな商品が開発されており、海外からも「Nambu Ironware」と呼ばれて人気となっています。

南部鉄器は「長く使える」のが特徴!

南部鉄器の特徴の一つは「長く使えること」です。

職人の技術が詰め込まれた手作りの鉄器はとても丈夫で、「正しく手入れをすれば孫の代まで使える」といわれているほどです。

南部鉄器には、正しい手入れをして長く大切に使いたいと思わせる魅力があります。

南部鉄器は「健康に良い」!?

南部鉄器は女性を中心に人気となっていますが、その理由は「鉄分が補給できるから」なのです。

南部鉄器を使うことで鉄分が溶出し補えるため、特に鉄分が不足しがちな女性にとっては手軽に鉄分を補う方法となっています。

さらに、南部鉄器から溶出するのは“二価鉄にかてつ”という体に吸収されやすい鉄分のため、健康に良いという面でも魅力があります。

南部鉄器を使うメリット

これまで南部鉄器の魅力をご紹介しましたが、ここでは料理器具として南部鉄器を使うメリットをご紹介していきます。

これから購入する方は、ぜひ参考にしてみてください♪

メリット①南部鉄器は冷めにくく、温度にムラができにくい

南部鉄器はアルミ鍋に比べて1.5倍も熱が長持ちします。

また、熱伝導率が良いため加熱から沸騰までが早いだけでなく、保温性にも優れているので温度にムラができにくいのがメリットです。

熱が長持ちするため、南部鉄器内に食材を入れても温度が下がりにくく、料理が美味しくなる効果もあります。

メリット②南部鉄器を使うと、味がまろやかになる

南部鉄器は厚みがあり保温性に優れているため、汁物などの料理をじっくり温める効果があります。

南部鉄器を使ってじっくり温めることによって味がまろやかになるのですが、それには次のような理由があります。

1)カルキ(塩素)が除去できる!
南部鉄器でお湯を沸かすと、カルキ臭や塩素臭が取り除けるため、お湯の味がまろやかになります。

2)南部鉄器にミネラルが付着することで軟水化!
南部鉄器は使い続けることで、内側に赤い斑点が現れ、その後に白い「湯あか」の膜ができます。

この湯あか、汚れではなく、実は水中のミネラル成分なのです。

南部鉄器でお湯を沸かすと、ミネラルが南部鉄器の内部に付着し軟水化させ、お湯をまろやかに、美味しくしてくれるんですよ♪

このように南部鉄器は、料理をしている間に美味しさを増してくれる道具なのです!

メリット③南部鉄器にはIH調理器対応のものがある

南部鉄器は純鉄性のためガスコンロの他、IH調理器でも使うことができます。

商品によっては対応していないものもあるので、南部鉄器を購入する際に確認してみてください。

メリット③南部鉄器は焦げ付きにくい

南部鉄器は砂型と呼ばれる砂で固めた型を使って作られるのですが、その時、南部鉄器の表面に砂による細かな凹凸ができます。

この凹凸があることによって、調理の際に南部鉄器に油が染み込んでいき、具材が焦げ付くのを防いでくれます。

南部鉄器の正しい使い方

南部鉄器を長く使っていくためには、正しい使い方を知る必要があります。

使いはじめの処理や、使った後のお手入れについてまとめてみました。

南部鉄器の使い始め

焼き物用・煮物用鍋の処理
南部鉄器本体をお湯でしっかり洗い、空焚きをして水分を飛ばします。
その後、内側に油をひいて野菜クズなどを炒め、全体的に油をなじませます。

揚げ物用鍋の処理
お湯で洗った後、空焚きをして水分をしっかり飛ばしてから使います。

湯沸かし鍋の処理
南部鉄器全体を軽く水で洗い流した後、8分目まで水を入れて中火で15分ほど沸騰させます。
鉄成分が出て水が濁りますが、何度か水を換えて繰り返すと濁らなくなります。
水が濁らなくなったら使いはじめましょう。

南部鉄器を使った後の手入れ

南部鉄器本体をお湯ですすぎ、たわしで軽くこすります。

この時、馴染んだ油まで全て落ちてしまわないよう、洗剤を使わないのがポイントです。

焦げ付きがひどい場合は、お湯に15分ほどつけておくと取れやすくなります。

洗い終わったら、空焚きで水分をしっかり蒸発させてからしまうようにしましょう。

南部鉄器の値段はいくら?

南部鉄器は価格帯が広く、手軽に使えるものから本格的に使えるものまでさまざまです。

ここでは、南部鉄器を三つの価格帯に分けてご紹介します。

①1万円までの南部鉄器 手軽・手はじめに使ってみたい人

一般的な鍋などに比べると、南部鉄器は高い値段で販売されています。

「手軽なものからはじめたい」という方には、1万円以下で購入できる急須やフライパンがオススメです。

特に急須はカラフルなものが作られており、見た目の可愛さから海外からも人気となっています。

インテリアにも合わせて楽しみたい方にオススメです。

②1万円~2万円の南部鉄器 少しこだわってみたい人

「南部鉄器の良さを味わいたい」、「少しこだわってみたい」という方は1〜2万円の価格帯で商品を選んでみましょう。

1万円以下だと小物が中心になりますが、1万円以上の商品となると大きめのごはん鍋や、ふる里鍋が中心となってきます。

リーズナブルに南部鉄器の良さを知るには、この価格帯がオススメです!

③2万円以上の南部鉄器 本格的に使っていきたい人

「しっかりと手入れをして何年も使っていきたい」という方には、2万円以上の商品がオススメです。

2万円以上の予算であれば、本格的な南部鉄瓶やご飯鍋を購入することができます。

手入れをきちんとすれば何年も使うことができるので「一つは良いものを持ちたい」という方だけではなく、贈り物にもぴったりですよ♪

南部鉄器の老舗は二つ!

南部鉄器は盛岡と水沢で作られていますが、その中でも老舗の工房が「岩鋳いわちゅう」と「及源おいげん」です。

このニつの工房について、特徴をまとめてみました。

伝統と革新の【岩鋳 IWACHU】

明治35年(1902年)の創業から南部鉄器を製造してきた「岩鋳いわちゅう」は、これまでの伝統を守りながら、今の時代に合わせた商品づくりを行っています。

技術を変えながら新しいデザインを作り出し、日本だけではなく海外でも愛される南部鉄器へと進化を遂げています。

デザインを愉しむ【及源 OIGEN】

嘉永5年(1852年)創業の「及源おいげん」では、高い技術と豊富な経験を駆使し、南部鉄器の製造を続けてきました。

特にその仕上げの完成度の高さは海外でも認められ、ニューヨーク近代美術館のカタログに掲載されています。

厳しいチェックを受けた「及源」のキッチンウェアは、長く使うことができる確かな一品です。

おわりに

今回は南部鉄器の特徴や使い方、歴史についてご紹介しました。

南部鉄器というと黒い鉄瓶のイメージがありますが、最近ではカラフルな急須やモダンなフォルムの鍋など、デザイン性の高い商品がたくさん作られています。

海外でも人気となっている南部鉄器の魅力を、今一度見直してみてはいかがでしょうか?