着物を着こなすコツとは

よく時代は繰り返される…。

といいますが、最近多くの人達があらためて着物の素晴らしさを呼びかけています。

ただ、着物を着てみたいという人はたくさんいるにもかかわらず、それがなかなか実現していないのが現状ではないでしょうか。

その理由に、脱ぎ着が簡単な洋服と比べると、選び方や着方が難しい和服はハードルが高いと感じてしまう人が多いようです。

着物を自分らしく着たい、購入したいということであれば、奥深さのある「和服」と「洋服」の価値観を比べないことです。

着物は全く洋服とは違うファッションと考えると、お洒落の幅も広がってきます。

着物の着方は、身近に着物通の方がいれば着付けを教えてもらうのもいいでしょうし、ネットでも着付けを分かりやすく解説しているサイトが多数あります。

1回では無理でも回を重ねれば必ず着付けのコツが分ってきますので、ぜひ試して欲しいです。

女性の着物姿は本当に美しく、街中で和服姿を見かけると誰もが美しさに目を奪われて、つい振り返ってしまうなど日本の和服には不思議な魅力があります。

今回は着物の着こなしのコツを中心に、着物と帯の組み合わせ方や楽しみ方について紹介していきます。

物の着こなしで大切なのは着物選び?帯選び?

着物選びは、柄行きばかりでなくその人の肌の色や目鼻立ちによっても、お顔映りが変わってきます。

着物を選ぶ際にはお顔の近くまで持っていき、お顔映りの良い色を選びましょう。

次に帯選びですが、着物の着こなしで特に大切といわれるのが、着物と帯のバランスです。

たとえば、色使いが明るめの大柄な着物であれば、シンプルな濃いめの帯を合わせると全体が引締まって見え、着物の柄も生きてきます。

また反対に、シンプルで暗色系の細かな模様の着物なら、アイボリー系の明るめのポイント柄や市松模様いちまつもようなどの帯を合わせると、全体が華やかになり若々しい着こなしになります。

着こなしで大切なのは、着物と帯がお互いに反発することなく、しっくり合う組み合わせで、一緒に着付けることで美しさに相乗効果が生まれるものを選ぶことです。

着物に似合う日本髪と新日本髪についてまとめているので、詳細を知りたい方は下記の記事へどうぞ。

段着の着物は帯の合わせ方を知ると着こなしが簡単!

プライベートな遊び着や普段着は、洗えるカジュアルな着物やレトロな染の小紋や紬の着物がいいですね。

伝統的な小紋は、種類も多く江戸小紋や加賀小紋、藍染、紅型びんがた、絞り染め、ろうけつ染めなどさまざまな染模様があります。

江戸小紋の模様だけでも3千種類以上あるといわれ、江戸小紋は総称して東京染小紋と呼ばれ、国から伝統的工芸品として指定されています。

江戸小紋は普段着としても着られますが、小紋の中でも格が高いほうの着物になります。

背に一つ紋を付け、柄行きにより袋帯や織りの伝統文様の名古屋帯を合わせれば、色無地の代用としても着用できます。

また、若々しい飛び柄の小紋や可愛らしいワンピース柄のような加賀小紋などは、染名古屋帯や織の名古屋帯を締めれば、クラス会、クリスマスパーティーなどにも着用していただけます。

上の画像は浴衣に白の半幅帯を使用しています。

上品なカジュアルの小紋着物で、パーティーやお正月に出かけてみてはいかがですか。

可愛い浴衣や着物姿で参加すれば、注目の的間違いなしです!

紬はとっても高価?本当にカジュアルな着物なの?

紬は、

結城紬ゆうきつむぎ
大島紬おおしまつむぎ
十日町紬とうかまちつむぎ
塩沢紬しおざわつむぎ

など、いわゆる先染めの着物で、まゆから紡いだ絹糸を先にいろいろな色に染めて、手織りで柄を織り出した絹織物の着物のことです。

以前は普段着として着用されていましたが、現在では手織りの職人が高齢化してしまい、ほとんど織られていません。

織り手がいなくなった今では、本物の手織の紬は、希少価値が高く、入手困難な高級着物となっていますが、本場の手織りにこだわりがなければ、手頃な価格で購入することができます。

ただ、織の全ての着物に言えることですが、どんなに高級な着物であっても、趣味の着物やお洒落な社交着として用いられ、マナーとして礼装用に着ることはありません。

紬の単衣の着物(色が出ていませんが辛子色の紬です)

島紬

大島紬は、着ていて歩く時のシュッ!シュッ!と絹鳴りの音がたまらなく爽快で、癖になる心地よさがあります。

現在は泥染めの「泥大島」、藍染の「泥藍大島」植物で染めた糸で織る「草木染め大島」、化学染料を用いた「色大島」が出回っています。

単衣ものとして「白大島」などが有名です。

また、絣織かすりおりの大島紬は男性のアンサンブル着物として、お正月に着られることが多い着物でもあります。

木染の紬

草木染くさきぞめの着物はとても爽やかな色合いで、若い人から中高年の方まで、幅広い年齢層に人気の紬です。

草や木の根、樹皮、花などから煮出して作った液を用いた染色方法でしたが、化学染料が輸入されてからは色の幅も増し、より多くの草木染のおりものが開発されました。

産地は山形の紅花紬や茜、紫根、などで糸を染めた、草木染の米沢紬が有名です。

帯の種類と、組み合わせ方

ここからは、一番多く使用される袋帯、名古屋帯、半幅帯について解説していきます。

現代の一般的な袋帯は、背中に付けるお太鼓の部分だけを、二重にかさねて袋状にして締めます。一般的な長さは約4m20㎝、幅は約31㎝になります。

袋帯は全体に模様が織られた全通柄や、帯の長さに対し6割程の柄が織られている6通柄があります。

振袖や黒留袖、色留袖、訪問着などの礼装用の着物に使用し、錦織にしきおり唐織からおり綴れ織りつづれおりなどの金糸銀糸、はくなどを用いた正統派の品格のある袋帯を結びましょう。

礼装用の黒留袖や色留袖に、上は格のある錦織の袋帯、下は綴れ織りの袋帯を合わせてみました。

いずれも品格共に相性が良い帯です。

百花文様の訪問着に同じ百花文様の袋帯を合わせました。

訪問着の着こなし方は、全体の色を統一すると、上品な着こなし方ができます。

古屋帯

名古屋帯は仕立てる前の反物の幅が9寸だったことから「九寸名古屋帯きゅうすんなごやおび」とも呼ばれています。

一般的な長さは、3m60㎝前後です。

他にも、名古屋帯には袋帯を短くしたような形の「開き名古屋帯」や、手先の部分だけが縫い閉じてある「松葉仕立て名古屋帯」という種類もあります。

色無地の着物なら格の高いつづれ織りの名古屋帯を結びます。

以前、着付けの学校では「染の小紋には織の帯、織の紬の着物には染め帯」と教わりましたが、最近は、余りこだわらないのが一般的なようです。

季節の小動物や花が織られている帯は、その季節に合わせて着こなしましょう。

幅帯

帯の幅が15~17㎝と袋帯の約半分に近い細い帯で、長さ3m22cmほどあります。

一般的には細帯または半幅帯と呼ばれ、その多くは博多帯で、浴衣から小紋、紬、はかま下帯したおびとしても使われます。

また、最近は長尺(4m前後)のお洒落な錦織や唐織などの豪華な半幅帯も出回っていて、紬から小紋、色無地まで合わせて結ぶことができます。

小紋の着物に可愛いく結び、お正月の挨拶回りやパーティーなどにもオススメです。

浴衣用の半幅帯で、右は博多帯になります。

着物の選び方・楽しみ方!まずは自分が美しいと思える着物を選ぶ

日常生活でほとんど着ることがない着物は、ハードルが高いと感じるのは当然かもしれません。

礼装用の和服に関しては、現在でも品格を重んじて着ることには変わりありませんが、遊び着や普段着に限っては、自分が美しいと思える着物を選び、組み合わせも自由に着こなすのが一般的になりつつあります。

また、着物はハードルが高いと感じるようでしたら、着物を着る事よりもまず先に、着物のファッション雑誌などで目を慣らすことから始めるのも一つの方法です。

手の出しやすい簡単な浴衣や、家で洗濯ができるポリエステル製の着物などから始めると、新しい自分が発見でき、すんなり馴染めるかと思います。


着物の小物選びの楽しみ方

着物の小物選びほど楽しいものはありません。

帯締めや帯揚げ、帯留め、髪飾り、長襦袢の掛け襟、伊達衿だてえりなど、素材もいろいろあり、自分だけの自作ものも簡単に手作りできます。

江戸小紋や絞り染めなどの着物の切れ端があれば、長襦袢の掛け衿にしたり、無地の着物の端切れがあれば、伊達衿や中心を繋いで帯揚げを作って見たり、工夫次第で色々に楽しめます。

また、着物だけでなく、着物の奥からちらりと見える長襦袢の地色を、赤や抹茶色にしたり、冬なら長襦袢の代わりに可愛い柄のポリエステルの着物を、襟を掛けずにそのまま重ねて着たり、アイディア次第で自分らしい和服の着こなしが無限に広がります。

大島紬などの下に着ると可愛い長襦袢。

訪問着や振袖用の伊達衿。

右は縮緬地の端切れを伊達衿に作り変えたものです。

染小紋の着物は、帯や小物などいろいろコーディネートが楽しめて、1枚あると重宝します。

おわりに

最近信号待ちの街中で、ちょっと短めにおはしょりを効かせた着物姿に、洋装のコートや帽子、ブーツを合わせ、さっそうと歩く若い女性を見かけました。

最初はタイトスカートかと思いましたが、衿元を見て着物だと分かりました。

ゆったりと着た着物の襟元には、色紙風の奇抜なスカーフをのぞかせ、思わず、「カッコイイ!」とこっそり拍手を送りました。

着物は、あんなにも個性的でスマートな着こなし方ができるのだと、逆に感心させられました。

これから、お正月や遊び着、普段着に、またお子様の成長に合わせ、七五三や入学式、卒業式、成人式と、ぜひ和服を活用していただきたいです。