男性の着物姿は、街中ではほとんど見かけなくなって久しい世の中ですが、現在でも茶道や華道、落語や歌舞伎などの分野で活躍している人達が粋に着物を着こなしている姿はとても凛々しく素敵ですよね。

そのような方々を見かけると自分も着てみたい!と思う方も多いのではないでしょうか?

ただ、今まで着物を着る機会がそれほどなかった方は、和服の種類の見分け方はもちろん、何を着ればいいのかわからない方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は男性がどのような場合にどのような着物を着ればいいかをを着物の格ごとにご紹介いたします!

男性の着物の種類って?

男性の和服は大別いたしますと、

1. 礼装用の着物
2. お出かけ着
3. 普段着(浴衣も含む)

の3つに分かれます。

装用の着物:羽織袴を着用!

まず礼装用の和服では、女性用の黒留袖の着物と同じように品格を重んじて、五つ紋が付いた下図のような羽織袴はおりはかまがあります。

また、男性の和服の中で1番に品格が高い第一礼装としては、最高級の「羽二重はぶたえ」を使用した後染めの黒の生地に、背に1つ紋、両袖の後ろ側に二つ紋、両胸に二つ紋の全五つの家紋が付いた 羽織袴はおりはかまを着用します。

白の長襦袢を着た上に、五つの家紋を染め抜いた長着を身に付け、さらにその上から縦縞に織られた仙台平せんだいひらという生地で作られた袴を穿き、最後に羽織を羽織ればフォーマルな服装の完成です。

ちなみに羽二重はぶたえの生地とは、りをかけない生糸をたての糸、よこ糸に、平織りした、上品な光沢のあるあとりの絹織物のことを指します。

第一礼装である黒の紋付き袴は、一般的に結婚式を執り行う側の新郎やその父親が着用します。

また、袴の縦縞の模様は年齢が若いほど幅が広くなります。

袴の生地である「仙台平」とは、江戸時代から明治時代にかけて、宮城県仙台市で盛んに織られていた張りのある最高級の絹織物で、希少価値が高く重要無形文化財に指定されています。

そのため、現在は同じような縦縞の絹織物やポリエステルで作られた袴が多く流通しています。

こちらの五つ紋付の羽織袴は、結婚式に新郎や新郎の父親が着用する、正式な第一礼装用の羽織袴になります。

お友達の結婚式などに招待され正装で出席する場合は、黒の紋付袴ではなく、色紋付きの長着と羽織に袴を着用するのが一般的です。

また、紋付き袴は、日本の男性が20歳の成人式のお祝いに着る衣装としても知られ、最近は色紋付きの羽織に模様が入ったものなど、紋付き袴にもいろいろな種類があります。

出かけ着:アンサンブルや羽織がオススメ!

お出かけ用の着物は、しなやかな風合いの大島紬や、無地に近い縮緬、シャリ感のあるお召しなど、洋服でいうところのスーツ姿と同じ、アンサンブルの着物を1着持っていると、着回しもでき重宝します。

男性の礼装といえば、略式の場でも袴を付けるのが一般的ですが、仲間同士のカジュアルなパーティーの披露宴なら、袴は着けずにアンサンブルの着物に白足袋をはき、草履をはいて出かければ、とても素敵な着こなしになります。

また、アンサンブルでなくても羽織が1枚あると、着物に帯を結んだ着流しスタイルに、色柄の違う羽織を着れば、お洒落度もアップしてお出かけ着やお洒落着として着用できます。

出かける時は、羽織を着ると品格が上がり、どんな人もシャキッと背筋が伸びて、他の人が見てもきりっとしていてとても素敵な着物姿になります。

手軽にできるお洒落は、お顔に近く目立つ位置にある、長襦袢の掛け衿の色ですね。

ほんの少ししか見えない掛け衿ですが、色を変えるだけでぱっと印象が変わります。

そういう意味では、帯も目立つ地にありますので、夏なら着崩きくずれの少ない単衣の博多帯、冬には織の柄物や色物の帯がお洒落でオススメです。

同じ着物でも、お出かけ着やお洒落着の着物はどちらかといえば、コーディネイトも自分のセンスで、自由に着物を楽しむことができます。

さわやかな季節には単衣の着物や真夏の浴衣ゆかたに、兵児帯 へこおびをくるりと巻いて結びます。

冬は長襦袢 ながじゅばんを下に着て、袷の着物を着用し兵児帯や角帯 (かくおび)を結びます。

また、お出かけやちょっとしたご挨拶でしたら、細かな模様の縮緬ちりめんの小紋や、シワになりにくい、「大島紬」などの着物に羽織を着用します。

羽織は、洋服で言うところのジャケットの様なものですが、長着と同色でなくても大丈夫です。

お出かけ着には足袋をはき草履ぞおりをはくのが一般的です。

角帯

角帯は男性だけが使用する帯で、浴衣や着物に幅広く締めていただけます。

材質はいろいろありますが、絹の角帯は着崩れが起こりにくいので1つあれば重宝するでしょう。

段着:着流しスタイルがおしゃれ!

男性の着物の着こなしには、女性にはない男性だけの着流きながしというスタイルがあります。

着流しスタイルとは、羽織やはかまを付けずに、長着の上に帯を結んだだけのカジュアルなスタイルのことをいいます。

着流しスタイルは、チョット出かけたい時に最適で寒い時期ならマフラーを巻いたり、帽子をかぶったり、比較的自分の個性を前面に出したカジュアルな着こなしができます。

素材も余りこだわらずに、紬やウール、木綿、家で洗える着物までさまざまあり、帯も兵児帯ならくるりと巻いて結ぶだけなので簡単に着られます。

お友達同士のカジュアルな集まりやパーティーなら、角帯を締めた着流しの上に、羽織を着て出かけることができます。

着物の美しい着こなし方をまとめているので、参考になさってください。

男性と女性の着物の違いとは?

性の着物は染より織りの着物が多い!

着物の生地は、白い生地を織ってから染める「後染あとぞめの着物」と糸を染めてから織る「先染さきぞめの着物」の2つの種類に分かれます。

紬の着物は、その昔は仕事着にしていた時代もあり、品格は染の着物の方が高く、礼装用の着物には男女ともに羽二重の後染めの生地が使用されます。

男性の着物でも最近は、お洒落着やお出かけ着などは、お召しや染の小紋着物もありますが、織りの着物が殆どで、大島紬や結城紬、塩沢紬、草木染などが代表的な紬です。

紬の着物は、親から子の代まで着られる、丈夫で長持ちすることで知られています。

これは、大げさでもなんでもなく、 保存が良く着丈が合えば30年や40年経っても、そのままで着ていただけます。

たとえ、着物にシミなどがあったとしても、洗い張り後、縫製という工程を踏むことで、また新品と同じように着ていただける素晴らしいものなのです。

お召しとは、お召縮緬めしちりめんのことをいい、産地によっても多少異なりますが、経糸・緯糸ともに先染めの本絹糸に糊をつけて完全に乾く前に、強い撚りをかけ、織り上げた後に仕上げ作業を行う先練り、先染めの反物です。

糸に撚りをかけて織られていますので、繊維の密度が高く張りがあり、丈夫で暖かな絹織物で、着物や長コート羽織などに最適です。

物・男物とでは着物の仕立て方が違う

着物の構造に関しても、女性用の着物には脇が大きくあいた袖のたもとがあるのに対し、男性の着物は、袂の脇部分が身頃に縫い付けたような形になっています。

昔の時代劇に良くある、賄賂わいろのことを「袖の下」などと表現していたように、袖の下が筒のようになっていて物を入れても落ちにくくなっています。

女性用着物の袂の部分は大きくあいています。

男性用着物の袖下は、部分は袋のように全て縫ってあります。

また男性の着物には、女性の着物のように、着物の丈を長めに作り、背丈に合わせて帯の下に折り込む「おはしょり」や、うなじを見せる「襟抜えりぬき」が殆どありません。

着丈は最初からその人の身長に合わせ着物を仕立てます。

もし、手持ちの着物が譲り受けたもので着丈が長すぎる場合は、自分の着丈に合わせ余分な部分をつまみ、ウェストよりちょっと下の腰のあたりに合わせ、ぐるりと1周縫っておきます。

この時の注意点は、つまんで縫った部分が、帯を締めたときに隠れる位置になるように縫います。

男性でも気軽に行ける着付け体験レッスンがオススメ!

男性の着付け教室は、女性の着付け教室に比べると圧倒的に少ないですが、以前よりは男性の着付け教室も増えてきています。

着付け師を目指し、本格的に習いたいという人もいるようですが、初心者向けコースとして、120分コースや90分コースが用意されています。

レッスンでは、着物を持参するところもあれば、着付け教室で着物を貸してくれる所、着物を持っていない人は着物一式を購入してからレッスンを受けるところなどさまざまです。

着物は持っている、あるいは、着物を買うつもりでいるという人は、自分のスタイルに合った教室を選ぶといいですね。

着物の着付けは、ネットなどでも詳しく説明しているところもありますが、予備知識が全くない状態で見てもさっぱりわからないという人がほとんどではないでしょうか。

個人差はありますが、レッスンを受け知識を得てから、家に帰り、忘れないうちに何回か練習をすれば、十分に着物が着られるようになりますのでオススメです。

着付け養成の名門学院

など、自分で着物が着られるようになりたいという人向けのコースを、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

おわりに

男性の着物を紹介してきましたがいかがでしたか。

女性に比べ、男性の着物は比較的簡単に着付けることができますので、男性こそ着物の着用がオススメです。

痩せている人は、補正のためにお腹にタオルを入れたりすることもあり、体型を気にすることなく、着物はむしろ割腹の良い人に、良く似合う構造になっています。

長着に羽織姿の男性は、女性から見ても男前で凛々しく、見慣れている洋服よりも格好よくとても素敵です。

まだ、着物を着たことがないという方はこれを機会に、着物を着てみてはいかがでしょうか。

着物の世界を知った次は、刀の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。