茶道を始めようと思ったときにまず気になるのが、どのような道具を用意すれば良いかということではないでしょうか。

茶道の道具には、教室でのお稽古のために欠かせない道具もあれば、家でも茶道を楽しむために持っていると便利な道具もあります。

そこで今回は、茶道初心者の方がお稽古のために用意するべき道具、家で楽しむために用意したい道具を紹介します。

【お稽古編】茶道初心者に絶対必要な5つの道具

帛紗ふくさは、お点前をするときに道具を拭き清めるための絹の布です。

茶道の先生が着物姿の帯のところに、三角形に畳んだ赤や朱色の布地を下げているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

帛紗は一辺が約30㎝のほぼ正方形で、三方に縫い目があり、残る一方は輪になっています。

さまざまな色や柄のものがあり、普段のお稽古では好みのものを使って良いとされる先生が多いようです。

気になる方は、流派によって正式な色が異なりますので、ご自身の流派で正式とされる色のものを選ぶと安心ですよ。

帛紗・古帛紗

出帛紗だしぶくさ古帛紗こぶくさは、亭主側の立場でも、客の立場でも使うことのある茶道具です。

亭主側がお客様にお茶を出すときに茶碗の下に敷いたり、お客様が貴重な道具を拝見するときに道具の下に敷いたりします。

帛紗が、無地や小さい柄などのシンプルなデザインが多いのに対して、出帛紗や古帛紗は全体に柄が入っているものがほとんどです。

表千家と武者小路千家では出帛紗を、裏千家では古帛紗を使います。

懐紙かいしは、お茶会の中でお菓子を乗せたり、汚れた指先を拭ったりするために使う和紙です。

格が高いとされるのは上質な無地の懐紙ですが、他にも美しい柄が印刷されていたり、凹凸の加工がなされていたりする懐紙や、季節の柄などが透かしで描かれたものなど、数多くの懐紙が流通しています。

懐紙は他の道具と異なり、使うとなくなる消耗品ですので、いろいろなデザインを楽しみやすいでしょう。

どの程度の遊び心を出して良いか心配であれば、場を選ばず使える控えめな印象の懐紙がオススメです。

困ったら地は白、絵柄は小ぶりで優しい色使いのものを選んでみましょう。

子切

菓子切かしきりは、主菓子をいただくときに使う道具です。

出されたお菓子は、その名の通りこの菓子切を使って切り分けた後、口に運びます。

菓子切の材質はさまざまで、上等なものでは象牙の菓子切もありますが、まずはステンレス製のもので充分です。

むしろ、初心者が普段のお稽古で象牙の菓子切を使うことには、違和感を持つ方が多いのではないでしょうか。

また、持ち運びの際には菓子切入れにしまいましょう。

※主菓子:茶道において濃茶をいただく際に味が際立つように提供されるお菓子のこと

茶道で使う扇子は、一般的な扇子に比べるとかなり小ぶりです。

扇子は挨拶をするときや床の間を拝見するときに、閉じた状態で自分の前に置きます。

相手と自分の間に扇子を置くことには結界を作るという意味があり、相手への敬意を表します。

扇子の骨と呼ばれる部分には、白竹はくち煤竹すすだけ、塗りなどがあり、どの素材を正式とするかは流派により異なります。

初心者の方が最初に選ぶ場合は、骨に蒔絵などがない、シンプルなものを選ぶのが良いでしょう。

また、茶道の扇子には素敵な絵柄のものが多くあるので、選ぶのが楽しくなりますが、実は開く機会はさほどありません。

扇子と言えば涼をとるものというイメージがあるかもしれませんが、茶道では暑くてもこの茶道用の扇子を使って扇ぐということは決してしないのです。

例えば扇子を開く機会としては、師匠にお月謝をお渡しするときなどに開いた扇子の上に金封を乗せることがあります。

茶道初心者がお稽古で触れる道具たち

 茶碗 

茶道において、お茶を点てたり練ったり、いただいたりする時に、なくてはならないものが茶碗です。

茶道の茶碗は、陶磁器やガラス製のもの、季節をあらわす柄が描かれたものなど、見ていて飽きないものばかり。

千利休が愛した楽茶碗(楽焼の茶碗)のように侘びた風情のあるものや土の味わいを生かした素朴なもの、華やかな絵付けがされたものなど、茶碗によって雰囲気も全く異なります。

初心者の方がまず一つ用意するのであれば、楽茶碗は避けると良いでしょう。

楽茶碗は主に濃茶で使われますが、茶道で最初に習うのは薄茶のお点前だからです。

それ以外であれば、自分が気に入ったものを選んでください。

茶碗を実際に手にとって選べる場合は、ぜひ持った感触もよく味わって選んでみてください。

 盆 

盆は常に使う道具ではありませんが、中には盆を使ったお点前もあるため、茶道を続けていればどこかのタイミングで必ず触れる道具です。

盆を使ったお点前にも色々ありますが、簡略されたお点前もあるため、初心者のお稽古で取り入れる先生も多いようです。

盆の上でお点前をするためスペースを取らないことから、家でお稽古をする際やおもてなしをする際に一つあると便利です。

乗せたい道具が乗りきる大きさの盆を選びましょう。

 棗 

薄茶器や薄器と呼ばれる薄茶用の抹茶を入れる道具のことを、見た目が植物のナツメの実に似ていることから、茶道では「なつめ」と呼んでいます。

この棗には大きさが大・中・小とありますが、扱いやすい中棗と呼ばれるサイズのものがよく使われています。

これにもさまざまなデザインのものがありますが、まずは真塗と呼ばれる黒漆一色のものか、漆の上に華やかすぎない蒔絵がほどこされたものがオススメです。

シンプルなデザインの棗であれば、他の道具との取り合わせも選ばないため長く使うことができるでしょう。

 茶杓 

茶杓ちゃしゃくは茶器の中から抹茶をすくうときに使う、匙のような道具です。

象牙や竹、木といった素材で作られていますが、中でも竹で作られた茶杓は節の有無と位置で格の高さが決まります。

初心者の方は、まずは普通のお点前で使うための、真ん中あたりに節のある中節という竹の茶杓を選びましょう。

お稽古用のお手頃なものは、どれもほとんど同じように作られ均一ですが、お茶会や美術館などで見る茶杓は一つひとつの表情が豊かなため、見比べてみると、より茶道の面白みが感じられるのではないでしょうか。

 茶筅 

茶筅ちゃせんは、薄茶を点てたり濃茶を練ったりするときに使う竹でできた道具です。

竹の種類、穂の数、大きさが物によって異なり、特に竹の種類については、どの素材を基本とするかが流派によって異なります。

茶筅は消耗していくものではありますが、手入れ次第では長く使うことができるので、可能な限り丁寧に扱いましょう。

使った後はすぐに綺麗にゆすぎ、できれば茶筅立てや茶筅直しなどと呼ばれる道具にはめて乾燥させると良いでしょう。

 茶巾 

茶巾ちゃきんとは、お点前の中で、茶碗を清めるために使う麻の布です。

飾りもなく、客が拝見するものでもないため道具の中でも目立たない存在ではありますが、茶巾には茶道の心がよく表れた逸話があります。

ある茶人が、千利休に金一両を送り、何でも良いから茶道具を買ってほしいと頼んだところ、千利休はその一両全てを使って沢山の晒しの白布を買い、茶人に送りました。

茶人が驚きながら、添えられていた手紙を読むと、「佗び茶には清潔な茶巾があれば充分である」と書かれていたという話です。

和敬清寂わけいせいじゃくの清の精神は、真っ白な茶巾によく表れるもの。

一見地味な茶巾ですが、常に清潔に保つようにしましょう。

※和敬清寂:主人と賓客が互いに心を和らげ、謹み敬い、茶室におかれた品々や茶会の雰囲気を清浄にするという、茶道の心得を表した語。

 建水 

お点前中に湯や水をこぼす(捨てる)器のことを建水といいます。

素材は陶器や磁器といった焼き物から、曲物などの木、唐銅からかねなどの金属など、その形にもそれぞれ個性があります。

あくまで水を捨てる道具のため、お客様にあえて見せるようなことはしませんが、それだけに遊びが許されやすい道具です。

建水として作られたものではなくても、ちょうど良い大きさと形の器を建水として使うことも多く見られます。

【お家編】茶道初心者は”初心者セット”の道具を購入すると簡単♪

茶道を習い始めたら、家でもお点前の練習をしたり、家族やお客様、ときには自分におもてなしをしたくなるもの。

そんなときは、茶道の初心者セットで道具を揃えるのがオススメです。

初心者セットは道具同士の取り合わせや、大きさのバランス、デザインの相性を考えて組まれているため、何を揃えれば良いか悩むことなく自宅で簡単に茶道を始めることができます。

しい雰囲気で、おうち時間にぴったりの茶道の道具セット

小さめサイズで場所を取らないため、気軽に一服したい方にオススメのセットです♪

選べる茶碗と棗はどれも柔らかい色合いなので、ほっこりリラックスしながらお茶を楽しむことが出来るはず!

碗と棗は組み合わせ自由!季節感と茶道らしさが感じられる茶道の道具セット

こちらは、茶碗6種類・棗3種類からお好きな柄を選ぶことができるので、自分だけの茶道具セットが組めるのが魅力。

茶碗の柄には、梅や桜など季節に関わるものが多いので、季節に合わせて選ぶのも良いですね。

濃焼の抹茶椀と建水が入った、充実の茶道の道具セット

建水や盆も入っているこの茶道具セットは、届いたらすぐにでもおもてなしができてしまうところが嬉しいですね。

美濃焼の茶碗と建水は統一感があるので、何を買ったらいいかわからない…と迷っている方には特にオススメです!

おわりに

茶道を続けていくと、お稽古やお茶会で多くの道具たちに出会うこととなります。

先生や亭主が用意する道具は、その日その時の季節や趣向を考えて選ばれたものです。

そんな道具から招待してくれた方々の感性をくみ取ることができれば、お茶会をより楽しめるようになるはず。

気に入った道具で稽古に励み、美味しい一服を差し上げるための技を上達させながら、道具を知り、感じる心を養うことで、茶道の感性を育んでいきたいものです。