和紙の種類とその魅力

和紙は材料の選定、準備、そして工程に至るまで、一つひとつに職人の技術が込められています。

手間ひまかけて作られる和紙は、701年に発令された大宝律令にも記載がみられる1300年もの長い歴史を誇る日本の伝統技術です。

長い歴史を誇るゆえに、和紙には多彩で豊富な種類が存在します。和紙の原料となるこうぞから作られる楮紙こうぞしであったり、人形制作で作られる友禅紙ゆうぜんしであったり、和紙の原料や用途別でさまざまな種類があります。

また、和紙は今では全国の各地域で生産されており、場所それぞれの原料や水質の違いにより多種多様な和紙が存在します。

このように、和紙はその産地によっても多彩な種類があります。

ここからは、「原料と用途」、そして「産地」、の2つの観点から、和紙の奥深い魅力を紹介していきましょう。

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和紙の原料や、用途別の種類紹介

和紙の原料には上述の楮のほか、三椏みつまた雁皮がんぴなどがあります。

和紙のなかでも、障子紙や版画用紙など広く生活の中で用いられ、他の原料と比べて大量に生産が行われているのが「楮紙」です。

楮紙の特長は、繊維が強靭で粗目の楮を使用しているのでねばりが強く、耐久性があることです。

加工にも強いといった特徴があります。

揉紙もみがみ」は、和紙を揉んで柔らかな布地のような触感をつけた和紙です。

インテリアに使われるような質感を重んじる場面で使われます。

中でも、江戸時代から受け継がれている「江戸しぼり」は、楮紙に下地を塗り、乾燥させた後に職人によって揉み上げることで、和紙がまるで布織物のような風合いを見せてくれます。


禅紙

また、主に人形制作で使われている「友禅紙」は、着物の友禅染のような鮮やかな文様を持つ装飾紙です。

「友禅紙」は明治期に江戸で販売されていた千代紙の銘柄のひとつとも言われ、繊細さと艶やかさを併せ持つ模様は、和紙の「美」を表現しています。

締紙

人形制作用の和紙として、他に和紙を折りたたんでから板で挟んで染め上げる「板締紙いたじめし」があります。

和紙の折りたたみ方、挟む板の形で染め上げられた文様はいろどりあふれ、独特の美しさを醸し出します。

書紙

和紙はこのように「工芸品」としての一面もありますが、文書として使われる「実用品」としての側面もあります。

そのひとつが「奉書紙ほうしょし」です。

「奉書紙」は、江戸時代には公文書の紙として使用されていました。

普通の和紙と比べると厚手で白いのが特徴です。

特に江戸時代から越前国で生産され、上質な和紙として知られる「越前奉書えちぜんほうしょ」は、最高級のものは浮世絵や日本画にも使われています。

り紙

和紙は高級品だけではありません。

楮の屑を原料としている低級品も、「ちり紙」として昔から使用されてきました。

「ちり紙」は柔らかくて単価も安かったため、鼻をかむための紙として重宝されたのです。

和紙の産地別の種類紹介

和紙は、前述の原料や用途による種類と並び、産地別にも多様性を持ち、さまざまな種類が存在します。

現在でも全国各地で作られており、各産地で原料や水質、製造方法にそれぞれの特長があることから、産地ごとの呼び名があります。

特に、2014年にユネスコの無形文化遺産に登録された岐阜県の「本美濃紙」、島根県の「石州半紙」、埼玉県の「細川紙」は、原料である楮を国産の物のみとし、良質な水源を持ち、世代間で伝統技術が受け継がれていることが高く評価されています。

美濃紙

岐阜県の「本美濃紙」は日本三大和紙にも数えられる「美濃和紙」の中でも、上質な和紙のことです。

「美濃和紙」の歴史は古く、正倉院に現存する日本で最古の和紙もこの紙です。

非常に薄く、光を通すと美しい輝きを放つ和紙となっています。


州和紙

島根県の西部や石見地方で作られる、流し漉きの光沢のある綺麗な和紙が「石州和紙」です。

こちらは飛鳥時代の歌人、柿本人麻呂が石見の民に紙漉きを教えたことにルーツを持つ、古い歴史があります。

紙質が滑らかで非常に柔軟なため、書道用紙として好んで用いられています。


川紙

「細川紙」は埼玉県の小川町と東秩父村で作られており、江戸に近いという立地を生かして繁栄してきました。

保存性、耐久性に優れていて、紙質は毛羽立ちが少なくとても滑らかで使い勝手がよく、江戸の幕府、庶民の生活を支えていました。

明治時代に入っても、丈夫で保存性に優れる利点から、公用の土地台帳や記録用紙として用いられています。

ユネスコに認定された上記の和紙のほか、代表的な和紙と言えば、日本三大和紙に数えられる和紙でしょう。

以下の項目で、前述した「美濃和紙」のほかの「越前和紙」と「土佐和紙」についてご紹介します。

前和紙

「越前和紙」とは、福井県越前市で生産されており、多彩な製品を誇る高品質な和紙です。

江戸時代には日本随一の和紙として「御上天下一」と評された越前和紙は、現在でもその高品質が注目されていて、横山大観をはじめ多くの日本画家にも愛用されています。


佐和紙

高知県で主に生産される「土佐和紙」は、薄さと強さを特徴としています。

高級書道用紙として知られる「清帳紙せいちょうし」もまた「土佐和紙」で、白くふっくらとしている紙質で愛されています。

上記のような和紙の他にも、和紙は現在でも全国の各地で生産されています。その中で、「内山紙うちやまがみ」と「因州和紙いんしゅうわし」についてご紹介します。

山紙

長野県の奥信濃で作られている「内山紙」は、豪雪地帯特有の「雪さらし」という自然な方法で漂白されるために日焼けをしにくく丈夫で、戸籍台帳の紙として用いられています。

通気性や通光性、保湿性にすぐれていて、雪さらし漂白によるしなやかな白さが印象的な和紙です。


州和紙

鳥取県東部で作られる「因州和紙」は、因幡の清流に育まれた柔らかく滑らかな質感が特徴で、書道や書画の画仙用紙として有名です。

筆を走らせても滑らかすぎて筆が早くすすみ、墨が減らない様子から、「因州筆きれず」と
の異名をもつほどの品質を誇っています。

おわりに

和紙は1,000年もの時間の流れの中で、多様な使われ方をされるようになりました。

原料や用途によっても異なりますし、一つひとつが手作業で仕上げれらていることから、産
地の土地柄、水質によって多様な性質をもっています。

ユネスコにも認められた和紙は、世界にも誇れる日本の伝統文化なのです。

この日本が誇る伝統文化を、しっかりと後世へと伝えていきたいものです。