こんにちは!
ワゴコロ編集部の生田目です!
ワゴコロ編集部が伝統工芸体験を紹介していくワゴコロ体験レポート。
今回は、“江戸指物の箸作り体験”
台東区蔵前にある「茂上工芸」さんに行って来ました。

蔵前駅から徒歩5分程、春日通りを一本入ってすぐのところにあります。

木の看板は味があっていいですね♪
店内に入った瞬間、木のいい香りがします!

そもそも、指物って?
日本伝統の木工和家具のことで指物という名称は、
「木の板を鉄の釘を使わずに指し合わせるから」という理由や、
「物差しを駆使して精巧に組み合わせていくから」
という由来からつけられたとも言われています。

指物とは、釘を使わずにホゾや継ぎ手で木材を組み、且つ外側に組み手を見せない細工を施した木工品をいいます。指物と言うよりは和箪笥、和家具と言った方が、想像しやすいかもしれません。
指物と言われる由縁(ゆえん)は、物差しを多用し、木を組んで制作することから来ています。

薄い板を組み合わせた造りは華奢に見えますが、隠れた 部分に「ほぞ」と呼ばれる凹凸を作って精巧に組み合わせているので、実は非常に丈夫です。

元々、鏡台やたんす、行灯(あんどん)、ちゃぶ台など、畳の上で使う家具として作られていました。
しかし、時代の変化と共に畳からフローリング仕様の家屋が増え、現在では家具だけでなく、指物の木工加工技術を応用した小物なども作られています。

小物入れや爪楊枝入れ、スプーン、コースター、ワインスタンドなどのキッチングッズなども作っています!

こちらは木のペンダントです。
左にかかっている先端の丸い穴が空いているものはメガネかけになっています!
これなら、「メガネがない〜」って探さなくてよくなりそうですね♪

写真立てや木のブローチなどの小物も、木目の温かみがあって素敵ですね!

今回教えてくださる伝統工芸士の江戸指物職人、茂上さんです!
とても温かい雰囲気の方で、丁寧に教えてくださいました。

体験を行うのは2階の工房です。
材料となるたくさんの木材。

壁一面にノコギリやカンナなど工具がたっくさんあります!

色んな形をしたものがありますが、実はこれ、全部カンナ!

中にはこんなに小さなものも!赤ちゃんカンナですね(笑)
カンナだけで100種類以上持っていて、それらを場面ごとに使い分けるのだそうです。
まさに匠の技ですね!
それでは、体験スタート!

こちらの細い角ばった木材を加工してお箸を作っていきます。

体験では、「楓の木」で作っていきます。
まずは、カンナで木の角を削ります。
四角形を八角形にするように全体を削っていきます。

見本で茂上さんのスムーズなカンナさばきを見せてもらい、いざ実践!
カンナを角にピッタリと当ててすっ…と抜く。
力を入れすぎると削れすぎてしまうので、邪念を払い、すっ…!
口で説明するとなかなか簡単そうなのですが、実際カンナをかけるのなんてほぼ初めて。

だったので微調整がなかなか難しかったです!
ぴーっと細い木屑が出てくるとちょっと感動!
子供の頃、大工さんに憧れる時期ってありませんでしたか?
そんなことを思い出しました♪

削り過ぎたり、若干いびつになったりしても、最終的に茂上さんが調整してくれるので安心してできました!

右が茂上さんの木屑で、左が私の木屑。
茂上さんの木屑は細くてずっと同じ幅!
私のは…バラバラでした(笑)

下から3分の1のところに印をつけて、先端が丸く、印が全部なくなるようにカンナでさらに削っていきます。

上の部分も八角形を十六角形の丸に近い形になるように角を狙って取っていきます。
最終調整をしてくれている茂上さん。
指物作りも微調整の繰り返し。
マニュアルなどにできないため、一人前の職人さんになるには10年程掛かるそうです。

カンナで繰り返し削るとこのように!
先端が細くなってお箸っぽくなってきましたね♪

次は、ヤスリがけ。
目の粗さが違う2種類のヤスリをかけます。
まずは箸を回しながらヤスリをかけ、全体をなめらかに。

先は尖らせるようにします。
持ち手の上の部分はドームのように、ふっくらと丸くなるようにヤスリをかけます。
細かい目のヤスリでも同じことを繰り返すと、すべすべになりました!
触っていて気持ちいい〜!

最後に植物性のオイルをまんべんなく塗り込みます。
オイルが乾燥するまで半日〜1日置くといいそうです♪

完成〜!!
木の感触がとても気持ち良く、温もりがあります。

右が削る前。左が完成品。
カンナで削り、ヤスリがけをしてオイルを塗るというシンプルな作業ですが、
初心者だと力の加減が難しく、職人さんのすごさがはっきり分かる体験になりました。
My箸でご飯を食べるのが楽しみです♪
洗って水が貯まると黒くなってしまうので、洗ったら横にして置いておくといいと教えてもらいました。
黒くなってしまったら、ヤスリをかけてオリーブオイルを塗ればまた使えるそうです。
今の時代は何でも簡単に変えますが、修理して長く大切に使っていきたいですね。
茂上工芸さんで作られている指物も、100年使っていけるそうです。
現在、職人さんが減り絶滅危惧種になりつつある指物職人。
生活様式の変化によって、畳の上で使う和家具の需要は減ってしまっていますが、
「新しい感覚で昔からの技術を使いながら後世に継ないでいきたい」と語る茂上さん。

こちらは製作途中の引き出し箱。
全て手作業で、作るのに1ヶ月程掛かるそうです。
体験をしてみると、改めて品質の良さや、職人さんのすごさを感じることができました。
今回作ったお箸でご飯を食べていると、茂上さんの手の温かみや、伝統工芸品の尊さを感じます。
でも、こうした伝統工芸があることを知らない方、結構多いのではないでしょうか?
生活様式の変化で年々減少傾向にある伝統工芸ですが、
まずは存在を知ることが文化を継ないでいくことの第一歩!
これからも、ひとつでも多くの伝統文化に触れてみなさんに魅力を発信していきます!
そして、多くの方に興味を持っていただき、体験に足を運んでくれる方がいたら嬉しいなと改めて思った今回の体験でした!
江戸指物体験がしたくなったら
体験は5名様からお申し込みが可能です。
江戸指物 茂上工芸
東京都台東区蔵前4-37-10
Tel:03-3851-6540
体験のご予約は、お電話で確認してください。
体験料: 2000円 + 消費税

日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。

伝統工芸士とは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事する技術者かつ高度な技術・技法を保持する職人のことであり、国家資格です。この記事では、なるにはどうしたらよいのか、伝統的工芸品の種類や伝統工芸士の資格・認定について、女性工芸士の活躍のほか、もっと伝統的工芸品に触れるために活用したい施設などをご紹介します。