欄間らんまとは、和室の障子やふすまなどをすえつけるために、上にわたしてある横木の部分である、天井の鴨居かもいとの開口部にはめこまれた建具のことです。

主に季節の風を運び、光を通すために設けられました。

格子や透かし彫りの板などが用いられることが多く、その美しい装いは和風建築の真骨頂ともいえます。

今回は、欄間が紡いできた歴史と伝統をご紹介します。

欄間とその意味、歴史

歴史をさかのぼること約1000年前、平安時代にはすでにその元型が見られました。

例えば1053年に創建された平等院鳳凰堂には、欄間のもととなる型が採用されていました。

そのときはまだ、光を取り入れるための格子で、形はシンプルなものでした。

平安時代も中~後期になると、菱形に木を組みつけた菱欄間も登場します。

平安期の仏堂、仏殿の建築に用いられた欄間は、その後さかんになった神社建築にも取り入れられていきます。

桃山、江戸時代になる頃には、立体的かつ彩色された欄間も。

さらに欄間は貴族の住宅にも使われるようになり、和風建築には欠かせない存在感を示すようになっていきました。

江戸時代には、一般の住宅建築にも広まっていきます。

住宅様式が洋風に変化をとげた現在、欄間を用いる住宅は減ってきています。

しかし、伝統工芸品としての評価は高く、井波いなみ彫刻(欄間、富山県)、大阪欄間(大阪府)は1975年に通商産業大臣(当時)から伝統的工芸品の指定を受けています。

リノベーションなど、古き良きものを愛する若い世代から、欄間の趣深いデザインが「和モダン」と評されるようになりました。

改めて欄間の魅力を再評価する流れとなっています。

欄間の種類

欄間にはさまざまな種類がありますが、取り付ける場所によって呼び名が異なります。

和室と和室の境目に設けられ、換気を目的にしたものは間越まごし欄間と呼ばれています。

そして部屋と外、縁側との間にあり採光を目的としたものは明かり欄間です。

掛け軸や美術品をかざる床の間の横にすえつける欄間もあります。

これは床の間の横、外との境目に設置され、書院欄間と名づけられています。


欄間の種類

取り付け場所

目的や特徴

  間越欄間
  

  和室と和室の境目
  

  換気、鑑賞
  

  明かり欄間
  

  部屋と外、縁側との間
  

  採光、換気、鑑賞
  

  書院欄間
  

  床の間の横、外との境目
  

  採光、換気、鑑賞
  


さらに形や模様、配置面や色などによっても多種多様に分類されています。

欄間の種類をデザインの視点から分類したものにはどんなものがあるのでしょうか。

刻欄間

一般的によく知られている欄間が、この「彫刻欄間」だといえるでしょう。

木に細かな技巧がほどこされ、花や鳥、風景などが立体的に浮かび出てきそうです。

その見事な造詣には、思わず目を見張ってしまいます。

絵柄には日本の伝統的な縁起物、松竹梅や松、鶴さらに富士山や日本三景などが多く用いられてきました。

欄間に用いる板は、一般的には15m程度の厚みです。

欄間の板2枚の続き柄でワンセットとなっています。

板が厚ければ厚いほど、表裏の両面から細かく技巧をこらすことができるのです。

より立体的な表現ができるため、板が厚いものほど価値があり、高級な欄間だと評価されるゆえんです。

透かし彫り欄間

杉や桐など薄いタイプの木(一般的には12mほど)をさまざまな形や図柄を透かし彫りした欄間です。

「切り抜き欄間」ともいいます。

絵柄を書いた部分をくりぬく手法を使っています。

彫刻欄間と比べると素朴な印象を持ちますが、主張しないところが魅力でもあります。

和の特徴である「調和」に通じる欄間だといえますね。

欄間

あまり聞きなれない筬というのは、機織りの道具のことだそう。

おさの形状は、竹などをくしのようにかけた縦の桟のようなもので、これに似ているために筬欄間の名がつきました。

筬欄間は、細い縦格子や縦格子に2~3本を組み込んだ仕様になっています。

組子細工や縦の目が細かい千本格子模様などの凝ったつくりもあり、書院欄間として使われることが多いです。

欄間に用いられる組子欄間

組子は、釘や金具を用いることなく、木にみぞをつけたり、角度を変えることによって木を組んでいく繊細な技巧です。

組み方次第で、さまざまな組子のデザインが可能です。

このような組子技術が用いられている欄間を「組子欄間」といいます。

繊細な桟が幾重にも重なる組子欄間には、日本の職人の技が息づいています。

子組子

木を縦や横に、規則的に区切ったり、仕切って組んだものを「格子組子」と言います。

代表的なものには、「千本格子」や「ます格子」があります。


  格子組子の種類
  

  主な特徴
  

  千本格子
  

  マス目に魔除けと子孫繁栄の意味合いを持つとされる。数が多いことは縁起がいいことであり、細かい千本のマス目が好まれる傾向がある
  

  枡格子
  

  細かいマス目が特徴的。目隠しの役目を果たしつつ、適度に光や風を通すことが可能
  


組子  

菱型をメインに組子がほどこしてある文様です。

菱型を三つ重ねた三重菱さんじゅうひしがよく知られています。


  菱組子の種類
  

  主な特徴
  

  三重菱
  

  水生植物の菱の実が菱型をしていることから、菱は繁殖力が強いこともあり、生命力や繁栄のシンボルとして重用されてきた。そのため、菱が三つ重なる三重菱も、縁起のいい組子文様だと伝えられる
  

  井筒割菱(いづつわりびし)
  

  生活に必要な井戸は生活に欠かせない大切なものとして大事にされてきた。その井戸の上にある木製の囲みを井筒を菱型に組んだ文様
  


子欄間

欄間に障子が貼られ、換気や通風、また寒い季節には防寒の役目を果たすのが障子欄間。

ふすまのような仕様になっているものもあります。

シンプルなデザインがほとんどですが、かすみ障子など凝ったデザインもあります。

ちなみに霞障子とは、組子の横桟を互い違いにずらして組んで、霞のたなびくさまを表した障子欄間のことです。

組子欄間

竹の素材を生かし、欄間のデザインに取り入れたのが竹組子欄間です。

竹そのものの節が味わいとなり、素朴な和の雰囲気が漂います。

抜き欄間

壁そのもののくり抜き、欄間に左官仕上さかんしあげを施した欄間のこと。

左官仕上げとは、職人さんがコテを用いて仕上げを施す塗り壁のことです。

壁土やモルタルなどの塗り壁材料を使用して仕上げます。

欄間に用いるとまるで窓のようになります。

そのくりぬいた窓のような部分に組子を用いることで、自由度の高いオリジナルな欄間を作ることが可能です。

おわりに

和の座敷において、目に留まることの少ない天井の鴨居のあたり。

そこには和のインテリアに調和しながらも、繊細かつ風格のある欄間が存在しています。

採光や通風といった実用的な面においてはもちろん、縁起物を用いた装飾品として、日本人の暮らしに寄り添ってきました。

繊細なものから豪華絢爛なものまで、その表現や技法は多岐にわたる欄間。

その魅力を再確認してみるのもいいのではないでしょうか。