姫島盆踊りとは

姫島盆踊りとは、大分県国東半島くにさきはんとうと山口県の間に浮かぶ姫島で見ることができる一風変わった「仮想盆踊り」です。

姫島は6つの地区※1に分かれており、その地区ごとに踊る演目が異なるという特徴を持ちます。

また、それぞれの踊りの組が、各地区に設置された「坪」と呼ばれる盆踊り会場を次々順番に回ってきて、そこで自分の地区の演目を披露するというめずらしい盆踊りです。

※1:姫島の区分けは1区・・・西浦、2区・・・北浦、3区・・・南浦、4区・・・松原、5区・・・大海、6区・・・金・稲積のようになっており、金と稲積という地区はひとつの地区で数えられています。

姫島盆踊りの種類、衣装

姫島盆踊りの構成は太鼓打ち・一番音頭・二番音頭(内側の踊り手)、そして外側の踊り手からなります。

やぐらの上にいる太鼓打ちは、盆踊り中ずっと太鼓を鳴らし続けなければならないため、男性3人ぐらいが順番に交代で演奏します。

太鼓打ちのそばには、一番音頭または音頭出しと呼ばれる盆踊りの歌い出しを歌う人がいます。

一番音頭もずっと歌い続けなければならないため、各数名ずつ交代で歌います。

その一番音頭に続いて歌うのが二番音頭です。

姫島盆踊りは、やぐらを中心に踊り手が二重の輪をつくります。

その内側の踊り手たちは仮装せず、普段着や浴衣など、普通の姿で踊る地元の人たちで、二番音頭も務めます。

外側の踊り手たちは衣装の浴衣や化粧など施し、仮装して「アヤ踊り」「キツネ踊り」などを踊ります。

まずは姫島盆踊りに長く伝わる伝統の演目をご紹介します。

ヤ踊り

アヤ踊りは男女1組になって踊ります。

男性は豆絞りの手拭いで頬被りをし、サラシを腹に巻いて半股引はんだこを履きます。

両手には短く切った竹を持って鳴らし、女性の踊り手の周りを飛び跳ねるように移動しながら力強く踊ります。

女性は青色の浴衣に金と赤の帯を締め、編み笠姿で踊ります。男性とは対照的に優雅で落ち着いた踊りですが、曲のテンポが速いため、次々と入れ替わる手足は見ていて気持ちの良い踊りになります。

竹の音が響くアヤ踊りは、軽やかなテンポで小気味良い見応えのある演目です。

ツネ踊り

ポスターやパンフレットに載っていることから、今では姫島盆踊りのイメージを代表する演目となっています。

キツネ踊りというように、その姿はキツネに仮装したものになります。

白粉おしろいを塗って真っ白になった顔の上から赤いひげや模様を描き、豆絞りの手ぬぐいの頬被りをし、赤と黄色の華やかな傘をもって踊ります。

踊り方も、キツネのように丸めた両手を顔の近くに上げて、首をかしげるように踊る可愛らしい踊りです。

今では子供たちの演目ですが、昔は青年の踊りだったといいます。

太鼓踊り

銭太鼓ぜにだいこ踊りは男女が順番に並んで踊ります。

男性は豆絞りの手ぬぐいで頬被りをし、腹にサラシを巻いて半股引はんだこを履きます。

両手には銭太鼓というタンバリンのような太鼓を大きく振り鳴らし、足や手を組み替えながら踊ります。

この銭太鼓の裏側には十字にした針金に一文銭を何枚か通しており、銭太鼓を振ることで音を鳴らす楽器になります。

一方女性は、涼しげな浴衣を金色の帯で締め、編み笠姿で踊ります。

腰を低く下げて踊る男性と違い、背筋を伸ばして腕を大きく振り上げて踊ります。

丸太夫踊り

猿丸太夫さるまるだゆうは主に女性が踊る西浦地区の演目です。

稲積いなづみ地区の人が中国地方で習って持ち帰ってきた、明治のはじめに稲積地区に来た中津の漁師が教えた、などの由来があります。

それを稲積から西浦に嫁いだ人が踊り伝えたといわれているようです。

衣装は藍色の浴衣に赤色の帯を締めた上品なもので、編み笠を被って踊ります。

手を使ったしなやかで優雅な女性らしい踊りです。

手を合わせる振りはお盆に帰ってきた先祖へ拝む意味もあると考えられています。

の他の踊り

以上、姫島盆踊りの伝統の演目を紹介してきました。

一方、この姫島盆踊りにはその年にしか踊らない演目、たとえばその年の大河の仮装をして踊るものがあります。

さらに、歌舞伎をもとにした「三番叟さんばんそう」「曽我物語」という演目や、子どもがお坊さんの仮装をした「小坊主踊り」や、若者がアニメキャラクターなどの仮装をして踊る「松原Q」などの笑いを誘う演目もあります。

姫島盆踊りを見たくなったら

姫島盆踊りは8月14日から16日の3日間おこなわれ、中でも14日・15日はとくに賑わいを見せます。

この2日間に限り、見学客のためにフェリーの夜間臨時便も運航しているので最後の演目まで見ることができます。

大分県国東市国見町の伊美港からフェリーに乗って約20分で到着します。

なお、乗船人数が限られているため、14・15日の夜は何回かに分けて渡航します。

行きに乗った便の時間帯により帰りの便の時間が決まるので、開始時間より余裕を持って到着しておくのをオススメします。

期間中は車での乗船はできませんが、レンタサイクルや2人乗りレンタカーを借りることができるので、観光しながら盆踊り開始時間を待つことができます。

(※伊美港に駐車する場合、日帰り500円の駐車料金がかかります)

姫島港横の広場がメイン会場となるので、夕方5時頃から場所取りを始めると一番近くで踊りを見ることができます。

メイン会場だけでもじゅうぶん楽しむことができますが、別の地区の坪に足を運んでみると、そこではメイン会場では味わえない地元ならではの空気感を味わうことができます。

おわりに

伝統を大切にしながら、時代に合わせて進化しつづける姫島盆踊りはいかがでしたでしょうか。

仮装しておこなう盆踊りというと最近できたもののような気がしますが、実はその歴史は古く、歌川広重の団扇絵「古代踊尽し 盆のおどり」にも、桶をかぶったりスイカを頭につけたりと仮装して踊る人々が描かれています。

今も昔も人々にとって盆踊りとは、不思議で楽しく非日常を与えてくれるお祭りなのでしょう。

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