本州の最西端に位置し、瀬戸内海と日本海に囲まれ、さまざまな美しい海の表情を楽しむことができる山口県。
災害も比較的少なく、温暖な気候に恵まれた住みやすい県として知られています。
また、吉田松陰や高杉晋作、伊藤博文など、幕末・明治維新の時代に活躍した偉人を多く輩出している県でもあります。
そんな山口県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、7品目以上の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって山口県の「伝統的工芸品」として指定されている、赤間硯、大内塗、萩焼をご紹介します。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和3年(2021年)12月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
赤間硯
「赤間硯」は、かつて赤間関といわれていた山口県下関市や、宇部市で作られている硯です。
赤間硯の歴史は古く、鎌倉時代に源頼朝が神奈川県鎌倉市にある鶴岡八幡宮に赤間硯を奉納したといわれています。
赤間硯の原料となるのは、塩基性の凝灰岩や火山岩が変質した輝緑凝灰岩に属する赤間石です。
酸化鉄を含んでいるため赤みを帯びた色で、まれに緑色の層が入っていることもあります。
この赤みがかった色が、赤間硯の特徴の一つです。
赤間石は墨を磨るのに適した均一の細かい粒子があるため、発色や伸びの良い墨汁を作ることができ、かたく粘り気の強い、細工がしやすい性質から硯として優れているといえます。
自然のままの形を生かしたものから細かい彫刻を施したものまで、いろいろなデザインがあります。
高い芸術性や硯としての実用的な機能を兼ね備えた逸品です。
大内塗
「大内塗」は、山口県山口市周辺で作られている漆器です。
室町時代にこの地域で活躍していた大内氏が、朝鮮や中国などへの輸出品として生産させたのがはじまりだといわれています。
大内塗の特徴は、“大内朱”といわれる渋みのある朱色の漆を重ねた上に黄緑の漆で秋の草花を手書きし、大内氏の家紋である“大内菱”を金箔で貼った独特の模様です。
この技術を使った「大内人形」は、大内塗の代表的な作品です。
丸顔に切れ長の目、おちょぼ口が特徴の夫婦一対の人形で、夫婦円満の象徴ともいわれています。
大内氏が都を恋しがる妻のために、屋敷中に人形を飾らせて喜ばせたという話から、大内人形が作られました。
萩焼
「萩焼」は、萩市で江戸時代初期から焼かれている陶器です。
文禄元年(1592年)の朝鮮出兵の際に朝鮮半島から招かれた陶工が、毛利輝元の命令により、御用窯※を開いたことがはじまりといわれています。
萩焼は県内の良質な土を使って成形し、装飾をほとんどせずに低温で長時間焼いて作られるため、素材の風合いが引き立ちます。
※御用窯:江戸時代に献上品などを作らせるため、日本各地の藩が開いた藩窯のこと。
また、湯呑や茶碗の底にある支えの台である“高台”に切込みが入っているのも特徴です。
使っている土が荒いため吸水性が高く、年月とともに表面の色が変化していく現象が“萩の七化け”と呼ばれ、萩焼の醍醐味の一つになっています。
萩焼の特徴や種類、作り方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください♪
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世界中に存在しています。
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