瀬戸内海に浮かぶ厳島神社は、ユネスコ世界文化遺産にも登録されている、平安時代の息吹を感じることができる美しい神社です。

厳島は「安芸の宮島」という名でも呼ばれ、その美しさは日本三景の一つにも数えられるほど。

この記事では、そんな厳島神社の歴史や魅力、祀られている神様、また周辺の観光スポットについてご紹介します♪

厳島神社とは?


厳島神社は誰もが名前を聞いたことのある有名な神社ですが、いったいどのような神社なのでしょうか。

まずは、基本情報をおさらいしておきましょう。

の上に建つ神社

厳島神社は、広島県廿日市市はつかいちしにある海の上に建つ神社で、全国に500社ほどある厳島神社の総本山になります。

厳島神社の海に浮かぶ廻廊の床板は、少しだけ隙間がある造りになっており、海水の圧力を和らげる工夫が施されています。

また、床の支柱は部品の交換ができるようになっていて、壊れた場合にも修理しやすい造りになっています。

さまざまな工夫を凝らし、自然と調和した美しい社殿を作りあげたいにしえの日本人の知恵には、敬意を払わずにはいられませんね。

また、厳島神社が建つ厳島(通称「宮島」)は、宮城県の松島や京都府の天橋立と共に、日本三景の一つとして数えられている、日本を代表する景勝地です。

宝・重要文化財の宝庫

厳島神社の魅力は、その歴史の深さと美しさだけではありません。

日本の誇る、貴重な国宝や重要文化財がたくさんあることも、特筆すべきポイントといえるでしょう。

不明門や拝殿、幣殿を含む本社本殿と本社祓殿、摂社である客神社本殿と祓殿に加え、東廻廊と西廻廊の合計6棟が国宝に指定されています。

また、摂社である大元神社本殿と大国神社本殿、天神社本殿をはじめ、末社の荒胡子神社本殿と豊国神社本殿、その他にも能舞台や宝蔵、五重塔や大鳥居など、合計11棟と3基もの重要文化財が目白押しです。

さながら厳島神社全体が、日本の歴史と文化を伝える博物館の様な存在といえるのかもしれませんね。

界遺産にも認定

厳島神社は、平成8年(1996年)にユネスコ世界文化遺産に登録されています。

日本全国で世界文化遺産に登録されている遺跡や建造物は、奈良の法隆寺や兵庫の姫路城などをはじめ、20にも満たない希少な存在です。

そのため、厳島神社は日本にとってはもちろん、世界にとっても貴重な人類の財産といえるでしょう。

られている神様

厳島神社に祀られている神様は、市杵島姫命いちきしまひめのみこと田心姫命たごりひめのみこと湍津姫命たぎつひめのみこと宗像三女神むなかたさんじょしんと呼ばれる三姉妹の神様です。

三女神はとても美しく、なかでも市杵島姫命の美しさは目を見張るほどで、芸能にも秀でていたといわれています。

三女神は海の神、交通の神として敬われているほか、弁財天と同一視されることもある市杵島姫命は、財運の神としても慕われています。

そのため宗像三女神を御祭神とする厳島神社のご利益は、水難除けや交通安全、金運財運のアップ、芸術技能の向上や学業向上、勝負運のアップなど、多岐にわたっています。

厳島神社の歴史

古来、多くの人々から親しまれてきた、厳島神社の成り立ちを紐解いていきましょう。

古元年(593年)に建立

厳島神社の歴史は、飛鳥時代の初頭にまで遡ります。

奥深い山と原始林に覆われた宮島は、霊気が宿る地といわれ、太古から自然崇拝の対象となっていました。

そのような土地に、安芸の国の豪族だった佐伯鞍職さえきくらもとによって、推古元年(593年)に厳島神社は建立されました。

言い伝えによると、佐伯鞍職の元に神の遣いの神鴉ごからすが現れ、神様が厳島に住みたいとおっしゃられたことから、佐伯鞍職は朝廷の許しを得て、厳島神社を建立したとされています。

佐伯鞍職が初代神主となった後も厳島神社の神主は代々佐伯家が務め、藤原家が務めていた時代もあるものの、現在は佐伯氏が引き継いでいます。

家繁栄の証

厳島神社と平家の歴史は、切っても切れないものがあります。

平安時代の久安2年(1146年)、平清盛は安芸の守に任命され、瀬戸内海での貿易利権を手にし莫大な利益を得ました。

当時、平清盛は夢の中で、「厳島神社を大切にすれば、更なる出世を極めるだろう」と告げられたといわれています。

そのためもあってか、厳島神社への信仰を強くしていきました。

そして、保元元年(1156年)の保元の乱や、平治元年の平治の乱(1159年)を経て、ますます平家の勢力を拡大し、仁安2年(1167年)に平清盛は武士としてはじめて、朝廷の最高職である太政大臣の地位に着きました。

仁安3年(1168年)には平清盛によって、当時の貴族の邸宅の様式だった寝殿造りの社殿が厳島神社に造営されました。

さらに建物だけではなく、舞楽の文化も大阪四天王寺から移設しています。

つまり、現在の厳島神社は平清盛の時代に最高潮に達した、平家繁栄の証なのです。

また、平清盛の地位が上がるにつれ、平家だけではなく多くの皇族や貴族が厳島神社へと参詣へ訪れました。

ネスコ世界文化遺産に登録

平成8年(1996年)12月、厳島神社はユネスコ世界文化遺産に登録されました。

宮島の原始林に覆われた弥山を背景とした、海に浮かぶ寝殿造りの社殿そのものや、社殿を含む景観の美しさが評価され、世界文化遺産として登録に至ったのです。

また、日本独自の宗教である神道の施設として、日本の文化と歴史を辿ることができる存在であることも、世界文化遺産として相応しいとされています。

厳島にまつわる伝説や逸話

1 200年続く霊火堂の「消えずの火」

厳島神社の背景にそびえる霊山・弥山みせんには、消えずの火の伝説をもつ霊火堂れいかどうがあります。

霊火堂は真言宗の開祖で、後に弘法大使の名を朝廷から授けられた空海が、唐から帰国したばかりの大同元年(806年)に修業を行った場所です。

空海が護摩火を焚いて修業をした際の火が、未だに消えずに燃え続けているのです。

この火は「消えずの火」として守り続けられており、広島平和記念公園の平和の灯や、八幡製鉄所の溶鉱炉の種火にもなっています。

霊火堂の中には囲炉裏があり、1200年間燃え続けている「消えずの火」があります。

囲炉裏には大きな鉄製の大茶釜がかかっていて、消えずの火で沸かした茶釜の湯をいただくことができます。

この茶釜の湯には万病に対する効能や、幸福を招くご利益があるとされているので、霊火堂を訪れた際には、ぜひいただきたいものですね。

また、消えずの火には、もうひとつロマンティックなご利益があるともいわれています。

それは消えずの火が、消えることのない情熱を表すということ。

そのため、霊火堂には縁結びのご利益があるとも言われ、現在では恋人達の聖地として人気スポットとなっています♪

満岩(かんまんいわ)

弥山展望台の近くにある、不思議な巨岩・干満岩かんまんいわ

標高500mという高所にあるのですが、岩の側面にある小さな穴から塩水が湧き出てくるのです。

しかも塩水の湧き出るタイミングは潮の干満と連動していて、満潮時にあふれ出てきて、干潮時には乾いています。

なぜこのような高所にありながら塩水が出てくるのか、潮の満ち引きとの関係がどうなっているのか、科学的には解明されていません。

古くから自然崇拝の対象となっていた、厳島ならではのミステリーですね!

厳島神社の見どころ

寝殿造りの美しい社殿をはじめとして、厳島神社は島全体がパワースポットであり、観光地でもあります。

訪れたら必ず見ておきたい、厳島の見どころをご紹介しましょう♪

にそびえ立つ「大鳥居」

厳島神社を象徴する海中にそびえ立つ大鳥居は、境内の200m沖合にあります。

高さは約16m、重さは60tもある巨大な建造物で、見る者の心を奪うこと間違いなし!

現在の大鳥居は明治8年(1875年)に造られたもので、平清盛が建立した時から数えて8代目にあたります。

満潮の時には船で近くまで見に行けますし、干潮時には歩いて行くことも可能です♪

厳島神社のシンボル大鳥居を、ぜひ近くでご覧になってみてください!

に浮かぶ「水上神殿」

平清盛が建造した、海に浮かぶ魅力的な寝殿です。

中央に本社本殿と拝殿、祓殿があり、東には天神社や大国神社、西側には客神社が配置されています。

厳島には神が住むと考えられていたため、陸地に神殿を構えるのは畏れ多く、遠慮したのだといわれています。

想的な朱の「廻廊」

海上に突き出た高舞台や平舞台などのある御本社を中心として、東岸の客神社と西岸にある大国社や能舞台を繋いでいる渡り廊下です。

幅は4mほどあり、長さは東西を合わせると260m近くもあります。

廻廊を歩くと朱に染まった柱越しに水面が美しく見え、まるで歴史絵巻の中に入り込んだような幻想的な空間を楽しむことができます。

本三舞台の一つ、国宝「高舞台」

御本社の祓殿前の海上に突き出た部分にある、平舞台から一段高く造られた舞台で、国宝に指定されています。

美しい朱塗りの欄がめぐらされた舞台上では、神様に捧げる舞楽が行われます。

厳島神社の高舞台は、大阪府の住吉大社と四天王寺の石舞台と共に、日本三舞台の一つに数えられています。

要文化財「能舞台」

西廻廊の先端にある、日本で唯一海の上にある能の舞台で、国の重要文化財に指定されています。

江戸時代初期の慶長10年(1605年)、広島藩藩主・福島正則ふくしままさのりによって建立され、その後延宝8年(1680年)に浅野綱長あさのつなながによって改修されています。

平成3年(1991年)に台風で倒壊しましたが、平成6年(1994年)には無事に復元されました。

島神社の「御朱印」

近年、御朱印巡りが人気になっていますが、厳島神社でも拝殿前の授与所にて、御朱印をいただくことができます。

御朱印の種類は1種類のみで、初穂料は300円。

厳島神社オリジナルの御朱印帳も用意されていて、季節ごとにデザインが変わり、いずれも1,000円で購入可能です。

また、厳島神社は「平家物語めぐり」の神社の一つでもあるので、専用の御朱印証を出せば、平家物語専用の御朱印をいただけますよ♪

「平家物語めぐり」とは、平家物語ゆかりの6つの寺社をめぐって、歴史の足跡を辿るイベントです。

6つの各寺社でオリジナルの御朱印をいただけるようになっており、厳島神社は4番目の寺社にあたります。

同じく宮島にある大聖院が5番目の寺社にあたるので、合わせてお参りするといいでしょう。

御朱印は旅の記念になるものですが、レジャー用のスタンプではなく参拝の証としていただくものです。

くれぐれも参拝した後に、マナーを守っていただくようにしましょう!

初穂料等は変更となる場合がございます。
詳細は、公式サイトをご確認ください。

島神社の年中行事

舞楽

舞楽とは、インドで発祥した世界最古の音楽芸術とも呼ばれる舞のことです。

インドから中国経由で日本に伝わったものを左舞、朝鮮半島を経由してきたものを右舞といいますが、厳島神社では左舞も右舞も見ることができます。

1月、4月、5月、7月、10月、12月に上演されます。

百手祭

厳島神社の摂社であり、国の重要文化財でもある大元神社で開催されるお祭りで、毎年1月20日に行われます。

鬼という字に似せた的に、神官が弓を射って的に当てる行事です。

鬼を射ることで、人の心に潜む邪悪な念を祓い、争いごとを水に流す、という意味があります。

管絃祭

旧暦6月17日に船上で行われる祭礼で、大坂の天神祭・島根のホーラエンヤと共に、日本三大船神事の一つに数えられます。

厳島神社での管絃祭りは平清盛がはじめたとされており、もとは貴族の遊びであった川や池の上での管絃の演奏を、厳島神社の神様に捧げます。

旧暦に行われるため毎年開催日が異なるので、事前に開催日をチェックしておきましょう!

玉取祭

管絃祭の2週間後に行われる、大きなくすのきでできた宝珠と呼ばれる玉を、男たちが奪い合うお祭りです。

宝珠は願いを叶えるご利益があると言われていて、注進所まで宝珠を持ち込んだ勝者には、将来の幸運が約束されると言われています。

大鳥居近くの海中で、逞しい男たちの雄姿を楽しめますよ♪

鎮火祭

毎年大晦日に行われるお祭りです。

厳島神社で清められた聖なる火を、大小合わせて1,000にものぼる松明に灯し、御笠浜を練り歩きながら、新年の無事を祈ります。

神の島ならではの、伝統の火祭りです。

厳島神社周辺観光スポット

厳島神社の魅力は、神社だけではありません。

周辺にある、オススメの観光スポットもチェックしておきましょう!

島水族館「みやじマリン」

厳島神社の出口から西へ向かって歩いて5分ほどの、海沿いにある水族館です。

瀬戸内海の魚を中心に、350種類以上の海の生き物を展示しています。

宮島といえば牡蠣の生産地として有名ですが、みやじマリンでは牡蠣専用の水槽があり、いかだから吊り下げられた水中の牡蠣の様子を見ることができます。

その他にも、まるで空中を泳いでいるかのように見えるペンギンプールや、瀬戸内海に生息している鯨の一種で希少生物としても知られるスナメリなど、愛嬌たっぷりの生き物たちが待っていますよ♪

厳島神社の参拝がてらに立ち寄って、動物たちの姿に癒されてはいかかですか?

営業時間や休館日等の詳細は、公式サイトをご確認ください。

国神社

豊国ほうこく(とよくに)神社は、厳島神社昇殿入口の向いの丘を登ったところにある、厳島神社を見下ろすことができる神社です。

畳857枚分の広さであることから「千畳閣」と呼ばれる、巨大な経堂があることで知られています。

豊臣秀吉の命によって造られたものですが、完成する前に秀吉が亡くなってしまったため、未完のままとなっています。

板の間の経堂の中はガランとしていて、壁がありません。

そのため、風通しと眺望が非常に良いのが特徴で、季節ごとの宮島の景色を堪能できる、国の重要文化財の一つです。

受付時間やアクセス等の詳細は、公式サイトをご確認ください。

島表参道商店街

フェリーの着く宮島桟橋から南へ向かって歩いて5分ほど、厳島神社の石鳥居までの約350mに渡って続く、開閉式の屋根が付いている商店街です。

宮島名産の焼き牡蠣や穴子、もみじ饅頭などの広島グルメを堪能できるスポットで、杓文字しゃもじや宮島彫りなどの工芸品も販売しています。

宮島観光の記念にそぞろ歩きして、美味しいものをたくさんいただきましょう!

厳島神社へのアクセス・拝観について

厳島神社は瀬戸内海に浮かぶ島にありますが、どのようにして行けばいいのでしょうか?

アクセス方法と拝観料などについて紹介します。

J R・広島電鉄「宮島口駅」からフェリーへ

宮島へ渡るには、まずJR・広島電鉄の「宮島口駅」へ行き、フェリーに乗る必要があります。

JR西日本宮島フェリーと宮島松大汽船の2種類のフェリーが出ており、いずれも料金は180円で、所要時間も10分ほどと同じくらいです。

大鳥居のそばを通るルートを望むならJR西日本宮島がオススメですし、宮島でロープウェイに乗るのなら宮島大汽船がオススメです。

JR「広島駅」→JR「宮島口駅」→(フェリー)→宮島
広島電鉄市内各停留所→広島電鉄「宮島口駅」→(フェリー)→宮島

広島電鉄の場合、広島駅からだと約70分と時間はかかりますが、広島市街をゆっくりと行くので、観光気分を味わえる点が魅力ですね。

観時間

厳島神社の拝観は、一年中毎日可能です。

元日0:00~18:30
1月2日・3日6:30~18:30
1月4日~2月末日6:30~17:30
3月1日~10月14日6:30~18:00
10月15日~11月30日6:30~17:30
12月1日~12月31日6:30~17:00


満潮干潮の時間は、毎日12時間から13時間ごとで、概ね1日2回あります。

毎日少しずつずれていくので、事前に確認しておきましょう。

なお宝物殿の拝観時間は、年中いつでも8:00~17:00、千畳敷は8:30~16:30となっています。

観料

厳島神社の拝観料は昇殿初穂料と呼ばれていて、参拝する施設によって料金が異なります。

神社宝物館神社・宝物館共通
大人300円300円500円
高校生200円200円300円
小中学生100円100円150円


また千畳閣への初穂料は、大人100円、小中学生50円となっています。

参拝時間や料金は変更となる場合がございます。
詳細は、公式サイトをご確認ください。

おわりに

瀬戸内海に浮かぶ厳島神社は、厳かで霊的な存在であると同時に、風光明媚ふうこうめいびな場所です。

自然と一体となった神殿や大鳥居が、一年を通じてさまざまな表情を見せてくれますよ。

機会があったらぜひ、厳島神社へ参拝に行ってみてください。

千年以上の時を超えて、今もなお人々を魅了するパワーに、圧倒されること間違いなしです!