お稲荷さんの愛称で親しまれている“稲荷神社”は全国各地にあり、私たちにとっても大変身近なお参りスポットです。

今回ご紹介する京都の『伏見稲荷大社』は、その総本宮というだけあって、1300年以上の歴史を持つ見どころ満載の神社です!

この記事では、有名な千本鳥居から観光客があまり訪れない穴場まで、長い歴史に触れながら伏見稲荷大社の魅力を存分にお伝えします。

伏見稲荷大社とは

伏見稲荷大社は京都市伏見区にある神社で、全国に約30,000社ある稲荷神社の総本宮です。

主に、商売繁盛や五穀豊穣のご利益があるとされ、創建からこれまで長年にわたり、全国各地から広く信仰を集めてきました。

約400mにもわたり連なっている千本鳥居は最大の見どころで、観光雑誌やテレビでもたびたび紹介されるほど有名です。

現在は毎年お正月の三が日だけで250万人以上の参拝者が訪れる、国内のみならず、海外の観光客からも人気が高いお参りスポットとなっています。

伏見稲荷大社の歴史

平成23年(2011年)に鎮座から1300年の歴史を迎えた伏見稲荷大社。

創建から今日に至るまで、どのような歴史を刻んできたのか、簡単にご紹介します。

ご鎮座と創建は奈良時代頃?

伏見稲荷大社の創建については諸説ありますが、山城国風土記やましろのくにふどきという地誌の「伊奈利社条いなりしゃじょう」に記されている話が最も有名です。

当時、稲作で裕福な生活をしていた秦伊呂具はたのいろぐが、餅を的にして弓矢を射ったところ、餅が白鳥に化けて飛び去り、舞い降りた山の峰に稲が生ったことから、その場所にお社を建てて伊奈利(=稲生)と名付けたのがはじまりとされています。

これがいつ起こったことなのかは記されていませんが、「稲荷社神主家大西(秦)氏系図」には和銅4年(711年)の2月初午の日に秦伊呂具が神職の禰宜ねぎとなったことが記されています。

伊呂巨いろこ伊侶具いろぐとも呼ばれる

稲荷信仰が広まった平安時代

平安時代になると、伊奈利社は現在のように「稲荷」と呼ばれるようになりました。

そんな折、天長4年(827年)、当時皇位についていた淳和天皇じゅんなてんのうが病に倒れます。

理由を占ったところ、真言宗の寺院である東寺とうじに五重塔を建てるため、稲荷山の神木を切ったことで祟られたとでました。

そこで、朝廷は稲荷山の神への謝罪として、稲荷大神に「従五位じゅごい」の神階を授けます。

以後、伏見稲荷大社は東南の福神として京都の人々から広く信仰を集めるようになり、天慶5年(942年)には神階の最高位である「正一位しょういちい」に達しました。

焼失からの再興を果たした室町時代

平安時代に隆盛を極めた伏見稲荷大社でしたが、応仁元年(1467年)から約11年間にわたって続いた応仁の乱により、伏見稲荷大社の建造物はほとんどが焼き尽くされてしまいます。

その後、稲荷勧進僧いなりかんじんそうによる布教活動などのおかげもあり、明応元年(1492年)からご本殿の修復が始まります。

そして焼失から約30年が経った明応8年(1499年)、ついにご本殿を含む社殿が再興されました。

※稲荷勧進僧:人々に稲荷信仰を進めたり、建物の修復・再建に必要な寄付金を集めたりする僧侶のこと

千本鳥居の奉納が盛んに行われた江戸時代

江戸時代には朝廷の信仰が飛躍的に高まっただけではなく、幕府の間でも稲荷信仰が発展していきました。

その背景には、江戸幕府老中・田沼意次たぬまおきつぐによる稲荷信仰が大きく関係しています。

意次がお屋敷に稲荷神を祀ったことで出世していったという話が広まると、他の武士たちもそれにならって自分の屋敷に稲荷神を祀るようになり、さらにはそんな武士たちを見た庶民の間でも稲荷信仰が急速に発展していきました。

江戸時代末期になると、願いを“通す”(もしくは願いが“通った”)という意味を込めて千本鳥居の奉納がはじまります。

そして明治時代にもなると、鳥居の奉納はより盛んになっていきました。

現在も鳥居の奉納は大変人気があり、劣化などの理由で空きが出ると、予約をした人から順番に鳥居を建てることができます。

稲荷大神様と神使のきつね

伏見稲荷大社といえば、境内にたくさんのきつね像が祀られていることでも有名ですよね。

そのためか、稲荷大神様がきつねの神様だと思っている方も大勢いらっしゃいますが、実はこれは間違いなのです!

伏見稲荷大社の神様とご利益

伏見稲荷大社のご本殿には、きつねの神様ではなく、5柱の神様が祀られています。


田中大神たなかのおおかみ
佐田彦大神さたひこのおおかみ
宇迦之御魂大神うかのみたまのおおかみ
大宮能売大神おおみやのめのおおかみ
四大神しのおおかみ


伏見稲荷大社の稲荷大神様とは、この5柱の神様を総称した呼び名です。

五穀豊穣や商売繁盛の神様として信仰されていますが、そのほか交通安全・学業成就・安産などにもご利益があるとされています。

なお、主祭神は宇迦之御魂大神です。

※柱:神様を数える際の単位。

伏見稲荷大社ときつねの関係

伏見稲荷大社にきつね像が祀られているのは、きつねが「稲荷大神様のお使い」であるためです。

ただし、きつねといっても、私たちがイメージするようなきつねではありません。

伏見稲荷大社に祀られているきつねは“白狐びゃっこ”といって、神様と同じように私たちの目には見えない存在です。

そのため、伏見稲荷大社で取り扱うきつねのお守りやグッズも、白い色(透明を表現)をしています。

伏見稲荷大社の見どころ

これまでの内容をご覧になり、伏見稲荷大社に行ったらまずは千本鳥居やきつね像を見てみようと考えている方も多いのではないでしょうか?

しかし、伏見稲荷大社はまだまだ他にも見どころがたくさん!

参拝をより楽しくする見どころをまとめましたので、ぜひ足を運ばれる前に目を通してみてくださいね♪

楼門

伏見稲荷大社の入り口となる楼門は、天下統一で有名な戦国武将・豊臣秀吉が寄進したものです。

『母である大政所の病気を治してくれたら、お礼に1万石を神仏に寄付する』といった命乞いの願文を伏見稲荷大社に送り、見事願いが成就したことから、天正17年(1589年)に造営されました。

昭和48年(1973年)に大規模な解体修理が行われ、現在は神社の楼門としては最大級の大きさ(幅約10m、高さ約15m)を誇っています。

ご本殿

明治42年(1909年)に国の重要文化財に指定されたご本殿は、前述でご紹介した5柱の神々を祀っている場所です。

建物は安土桃山時代の歴史を感じさせる豪華な装飾が施されており、ぜひ注目してご覧いただきたいポイントです!

白狐(きつね像)

前述でもお伝えした通り、伏見稲荷大社の境内にはさまざまな場所に「白狐さん」と呼ばれるきつね像が祀られています。

きつね像はそれぞれ表情や恰好が異なり、とてもバリエーション豊か。

また、中には稲穂・鍵・玉・巻物をくわえているきつね像も見られますので、境内を回る際はぜひ白狐さんもチェックしてみてくださいね!

千本鳥居

伏見稲荷大社最大の見どころとして有名な千本鳥居は、ご本殿から奥社奉拝所に向かう道中にあります。

千本鳥居の朱塗りは「稲荷塗り」と呼ばれ、稲荷大神様の御霊みたまの働きを表しています。

文字通り1000本の鳥居が並んでいると思う方も大勢いらっしゃいますが、実際にある鳥居の本数は800本前後です。

『数えきれないぐらいいっぱいある』という意味から、千本鳥居と呼ばれています。

ちなみに稲荷信仰をしている方々が奉納した小さな鳥居なども合わせると、伏見稲荷大社の鳥居は1万本ほどあります。

奥社奉拝所

ご本殿から千本鳥居を抜けて東へ進むと見えてくる奥社おくしゃ奉拝所は、稲荷山を遥拝する場所で、「奥の院」とも呼ばれています。

こちらにはきつねの顔の形をした絵馬が並んでおり、参拝者がそれぞれ描いたきつねのイラストが楽しめます。

また奥社奉拝所には限定のご朱印とお守りもあるので、集めている方はぜひ奥社奉拝所の授与所も訪れてみてくださいね。

おもかる石

奥社奉拝所を訪れたらぜひ試してほしいのが、「おもかる石」と呼ばれる占い石です。

こちらは願い事が成就するかどうかを占う石で、石を持ち上げた際に感じた重さが想像より軽ければ願い事が叶い、重ければ願いが叶うのが難しいとするものです。

根上がりの松

奥社奉拝所を少し進んだ先には、“根上がりの松”や“膝松さん”と呼ばれるが根っこが地面から持ち上がっている松の木があります。

「値上がりの待つ」の語呂合わせから、証券会社や株に関わる人がよくお参りに訪れます。

また、根上がりの松にはもう1つ言い伝えがあり、松を撫でた手で身体の痛むところを撫でると痛みが治まるとされています。

稲荷山

観光客の大半は奥社参拝所までしか訪れませんが、せっかく伏見稲荷大社に来たのなら、ぜひ“お山巡り”に挑戦してみてはいかがでしょう?

稲荷山の麓にあるご本殿から山頂の一ノ峰までには、これまで大勢の人々が奉納した、たくさんのお塚や鳥居、神様がご鎮座していたとされる「神蹟しんせき」などが見られます。

それらを巡拝しながら稲荷山を1周することを“お山巡り”といいます。

道中にある摂社やお塚は五穀豊穣・商売繁盛以外のご利益もあるので、パワーチャージしたい方にはぜひオススメです!

ただ、稲荷山は急な坂道や足元が悪いところもあるので、お山巡りをする際は歩きやすい恰好をしたほうがいいかもしれません。

加えて、お山巡りは往復で約4km、お参りの時間も含めると2~3時間かかるので、参拝時間が限定されている方は注意しましょう!

伏見稲荷大社の拝観時間・拝観料・アクセスについて

拝観時間・拝観料

拝観時間
伏見稲荷大社は24時間、いつでも参拝が可能です。

しかし、ご祈祷や神楽の取り扱い時間、授与所の開閉時間は決まっているので、お参り以外の予定がある方は各時間をしっかり確認しておくことが必要です。

【ご祈祷・神楽の取り扱い時間】
 8:30~16:30
【授与所の開閉時間】 
 平日 8:30~16:30 / 土日祝日 8:00~16:30

なお、現在は新型コロナウイルスの影響により開閉時間が変更になっている場合もあります。

参拝へ訪れる際は公式サイトで時間の確認をしておくことをオススメします。


拝観料
伏見稲荷大社は出入り自由のため、拝観料は無料です。

ただし、ご祈祷や鳥居の奉納をする際は初穂料がかかります。

初穂料はご祈祷をする際の供え物や奉納する鳥居の大きさ、奉納場所などで異なります。

伏見稲荷大社までのアクセス

住所
〒612-0882
京都市伏見区深草薮之内町68番地

電話番号
075-641-7331

交通アクセス
【電車】をご利用の場合
・JR奈良線 「稲荷駅」下車 徒歩すぐ
(JR「京都駅」から「稲荷駅」までの所要時間は5分)
・京阪本線 「伏見稲荷駅」下車 徒歩5分
【市バス】をご利用の場合
・南5系統 「稲荷大社前」下車 徒歩7分
【自動車】をご利用の場合
・名神高速道路 京都南インターから 約20分
・阪神高速道路 上鳥羽出口から 約10分
※無料の駐車場はありますが、土日や大型連休、紅葉シーズン等は混雑する可能性がございます。

参拝時間や料金は変更となる場合がございます。
詳細は、公式サイトをご確認ください。

伏見稲荷大社周辺のオススメ観光地をご紹介

観光目的で伏見稲荷大社に訪れるのであれば、周辺の観光地へもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

ここでは、伏見稲荷大社周辺にあるオススメの観光地を4つご紹介します♪

折上稲荷神社

稲荷信仰を目的とした観光なら、折上稲荷神社もぜひ立ち寄っておきたいところ。

折上稲荷神社は伏見稲荷大社と非常に関係の深いお参りスポットで、それぞれが一直線上でつながっていることから、伏見稲荷大社の「奥の宮」とも呼ばれています。

見どころは、稲荷大神が最初に舞い降りたとされる稲荷塚。

1500年ほど前から同じ姿をとどめており、今日まで多くの参拝者が訪れています。

また、境内には人間関係・健康・金銭といった人が生きていく上での三大苦労を取り除いてくれる神様や、宝くじや株にご利益のある神様を祀っている摂社もあります。

白色じゃないきつねのお守り「おきつねさん」

折上稲荷神社には、きつねをモチーフにした「おきつねさん」と呼ばれるお守りがあります。

こちらは神職が手作りしている折り紙のお守りで、金・銀・緑・赤と4種類あります。

ただし、普段から購入できるおきつねさんは金と銀の2色のみ。

緑は節分、赤は毎年6月に開かれる折上稲荷祭のみで授与されます。

色によってご利益が異なるので、伏見稲荷大社に訪れた際はぜひチェックしてみてくださいね!

東寺

真言宗の総本山である東寺は、京都を代表する世界遺産です。

真言密教を広めた弘法大師(空海)が、東寺の守護神として伏見稲荷の分霊を招き入れたことから、伏見稲荷大社と大変縁が深い寺院とされています。

最大の見どころは京都のランドマークタワーとも称される“五重塔”。

高さ54.8m、木造建築物としては最大級の高さを誇ります。

伏見稲荷大社から東寺までの距離は約4kmですが、どちらも駅やバス停が近いため、さまざまな手段でアクセス可能です。

清水寺

伏見稲荷大社と同じく観光客に大人気の清水寺。

京都観光に訪れた際は、ぜひ立ち寄っていただきたいスポットの1つです!

清水寺の見どころはたくさんありますが、絶景が見渡せる「清水の舞台」はまず外せません。

また本堂の北側にある地主神社の境内には、伏見稲荷大社のおもかる石のように占いができる石(恋占いの石)がありますよ♪

伏見稲荷大社から清水寺までの距離も約4kmほどですが、清水寺は最寄り駅から少し距離があるため、車以外で訪れる際は市バスを利用するのがオススメです。

伏見桃山城(旧・キャッスルランド)

神社や寺院以外のスポットにも行きたいと考えている方には、伏見稲荷大社から南へ向かった先にある、伏見桃山城に足を運んでみてはいかがでしょうか?

こちらはもともと、伏見桃山城キャッスルランドという遊園地のシンボルとして建てられた模擬天守です。

豊臣秀吉が築いた伏見城とは全くの別物ですが、遊園地が閉園された今も伏見のシンボルとして親しまれており、花見のシーズンになるとお城と桜の美しい光景が堪能できます。

ウズラやスズメの丸焼き!?食事処『稲福』

稲荷駅から伏見稲荷大社までの参道には、ウズラやスズメの丸焼きが食べられる食事処「稲福」があります。

五穀豊穣の神様を祀っている伏見稲荷大社だけあって、穀物を食べてしまうウズラやスズメは邪魔な存在。

そのため、この地域では見せしめとして、ウズラやスズメの丸焼きを食べるようになったとされています。

現在は店内食のみで丸焼きが提供されておりますので、電車や市バスで伏見稲荷大社へ訪れる際は、ぜひこういったスポットにも立ち寄ってみてはいかがでしょう。

おわりに

全国各地にある稲荷神社の総本宮である、京都の伏見稲荷大社。

驚くような伝説や、興味深い見どころがたくさんあります。

ただ、伏見稲荷大社は山全体が神域なので、今回ご紹介した内容以上に、実はもっとたくさんの見どころがあります。

この記事で紹介した見どころスポットは、あくまでも初級者向け。

行けば行くほど魅力を感じるところですので、京都を訪れた際はぜひ伏見稲荷大社へ足を運んでみてください!