お経をただひたすら書き写す「写経」。

昨今は若い方の間でも、写経がブームになっていることをご存じでしょうか。

彼ら・彼女たちは何のために写経をしているのか、気になりませんか?

決して信仰心のみからやっているわけではないようです。

そこで今回は写経の魅力について、ご紹介していきます。

写経を行うメリットと魅力

仏教について詳しくないし、字にも自信がないから写経をする理由なんてないと思っている方も多いはず。

確かに、写経をやらない理由を挙げていったらキリがありません。

しかし写経には、それらを超えるメリットがいくつもあるのです。

般若心経はんにゃしんきょうの意味なんてわからなくても全く問題ありませんし、字がいくら下手であっても構いません。

集中力がアップする

まず写経を行うと、集中力が高まると言われています。

忙しい現代人にとって、「ただ1つのことに打ち込む」という機会はなかなか少ないものです。

いかに物事を効率的にこなせるかと、常に考えている方も多いのではないでしょうか。

そういった意味では、写経は非効率的作業に他なりません。

ただただお経を、1文字ずつ丁寧に書き写していくのですから。

傍から見ると、まったく意味のない作業にも思えますよね。

ですがこの作業は、単純であるがゆえに没頭しやすく、そのうち雑念がどこかへ飛んで行ってしまいます。

やがて時間が経つのも忘れるほど、集中力が高まるのです。

さらに集中して物事に取り組んだ後に味わえる清々しさは、何物にも代えられません。

忍耐力がつく

また写経を行うと、忍耐力もつくと言われています。

例えば般若心経は、全部で276文字※1

※1 写経の題目(経題)を含めるか否かなどによって、多少文字数は変化することがあります。

すべてを書き写すのに必要な時間は、およそ1~2時間となっています。

この間、姿勢を正して作業に集中し続けることは、はじめのうちは容易なことではありません。

ですが一旦写経を始めると、最後までやり遂げようとする気持ちが芽生えます。

さらに回数を重ねることにより、書き写すこと自体が楽しくなってきます。

すると気が付けば、最初は困難に思えた作業も、難なくこなせるようになっていきます。

字が上手くなる

さらに写経を続けるうちに、自然と字も上達していきます。

写経は※2筆で行うことが多いため、結婚式などで記帳を行う際にも、自信を持って対応できるようになります。

※2 ボールペンや鉛筆で行う場合もあります。

とはいえ、字が上手くなりたいから写経を始めよう!

という考えは、かえって上達を妨げるかもしれません。

字の巧拙はひとまず置いておき、無心になって純粋に写経を楽しむことが大切です。

欲望や競争心などとは距離を取って続けることが、字の上達への近道と言えます。

心にゆとりを持てる

そして写経最大の魅力は、心にゆとりを持てるようになることでしょう。

写経を行うと、βエンドルフィンという、脳内物質が分泌されるのだそうです。

βエンドルフィンは、鎮痛効果や幸福感を得られることで知られています。

心が安定すると、日常生活にも様々な変化がもたらされます。

ゆとりが出るため、他人への気遣いができるようになる人も多いのだとか。

人相にも影響を及ぼすそうなので、心から美人になりたいと願う方にはおすすめです。

今挙げたもの以外にも、写経のメリットはたくさんあります。

例えば指先を使うので脳の活性化を期待出来たり、姿勢が悪いと美しい字は書けませんから、おのずと姿勢も正しくなったりします。

いかがでしょうか?

写経を「やらない理由」を上回るほど、「やりたくなる理由」がたくさんあると思いませんか?

そもそも写経とは

少しは写経に興味をお持ちいただけたでしょうか。

それでは、そもそも写経とは何なのでしょう。

概要

冒頭でも触れた通り、写経とはお経を書き写すこと。

書き写されるお経は、般若心経が一般的です。

また、上記ではメリットばかりを強調してしまいましたが、もとは僧侶の修行として行われていたものです。

そもそも印刷技術などない時代には、自身でお経を書き写す必要がありました。

目的

そして現在、写経は何のために行われているかというと、

・信仰
・心の安定(上述)
・故人の冥福を祈る
・心願成就
・字の上達

など様々な目的が考えられます。

歴史

写経が始まったのは、後漢(西暦25~220年)時代の中国。

日本に入ってきたのは、奈良時代のことでした。

そして仏教文化が花開いたこの時代、国内では多くの経典が必要となりました。

そこで写経は、国家事業として盛んに行われるようになったのです。

ですが平安時代に入ると、写経は衰退し始めます。

さらに鎌倉時代には印刷技術の発達し、ますます写経は衰退することになりました。

このようにして写経は、国家のためというよりも、個人のため(修行や功徳など)のものに変わっていったのです。

実際に写経をやってみよう

それでは、実際に写経をやってみませんか?

その前に押さえておいたほうが良いと思われることを、いくつか紹介していきます。

心構え

写経を行うにあたって大切なことは、1字1字が仏さまであることを意識することです。

だからこそ、1文字ずつ丁寧に時間をかけて書き写していくのです。

さらさらと流れるように書かないのは、そのためです。

また繰り返しになりますが、字の上手い・下手には気を取られないようにします。

書道ではないのですから、心を込めて書くことのほうがよっぽど大切です。

お手本通りに書き写せなくても、気にする必要はありません。

心を空っぽにして、ひたすら書いてみてください。

必要な道具

写経を始めるなら、まずは必要最低限の道具を揃えましょう。

高価な道具を揃える必要はありません。

ネットなどで、写経初心者向けセットを購入するのが1番簡単です。

・筆:細字用を使います。
・墨
すずり:できれば小型がおすすめです。
・写経用紙:罫線が印刷されているものがおすすめです。
・下敷き
・文鎮
・お手本:ネットで無料ダウンロードできるものもあります。

作法など

本来写経には厳密な作法があるそうですが、自宅で趣味として写経を行う方が、それを守る必要はありません。

比叡山では写経を行う前の7日間、懺悔ざんげをするそうです。

真似なんてできませんよね。

もちろん自宅での作法にも、様々なやり方があります。

最も簡単なのは、写経の前後に合掌一礼する方法です。

また写経を行うには清浄で集中できる空間、できれば身を清めてからが良いでしょう。

できる範囲で構いませんので、写経としっかり向き合える状態を作ってみてくださいね。

なお、書き終えたものはゴミ箱に捨ててはいけないとされています。

何せ、1文字1文字が仏様なのですから。そこで自宅の仏壇にお供えしたり、菩提寺ぼだいじなどに納めたりすると良いでしょう。

また表装して作品にする、という方法もあります。

おわりに

さて、自宅でやるのは難しそう、お寺に納めるのが面倒くさいなどと思った方もいらっしゃると思います。

そんな方はまず、寺院で開催される写経会に参加してみてください。

写経会でしたら集中できる空間が用意されていますし、書き上げたものはそのままそのお寺に納めることができます。

今回はまったく写経をやったことのない方向けに、写経の魅力などについてご紹介しました。

少しでも写経に興味を持っていただけたなら幸いです。

とにかく1度、実際に筆を持って写経を体験してみてください。

きっとあなたも「ランナーズハイ」ならぬ、「写経ハイ」を体験できるはずです!