「曲げわっぱ」とは「曲物まげもの」とも呼ばれる、薄く加工した木材を曲げて作られる伝統工芸品のことです。

なめらかな曲線を生かしたお弁当箱やおひつなど、蓋付きの入れ物が製品として多く見られます。

特に秋田県大館市の「大館曲げわっぱ」は有名で、1980年に日本の曲物の中で唯一、国の伝統的工芸品に指定されています。

大舘曲げわっぱの特徴

秋田県北部を流れる米代川よねしろがわ流域でじっくり育った天然秋田杉が使われている点が特徴です。

雪が多い秋田では寒さで木の成長が緩やになることから年輪の幅が詰まり、真っすぐに育つため強度や耐久性が増します。

樹齢は200~250年と言われており、悠久の時間をかけ均等に揃った木目は美しく、また天然の鮮やかな赤や淡い黄といった色あいも上品です。

そして優しい木の香りも大きな魅力です。

天然秋田杉は、木曽のヒノキ、青森のヒバと共に日本三大美林のひとつとされています。

しかし、2012年に自然保護の観点から天然秋田杉の伐採禁止が決定し、2013年から伐採が禁止になりました。

現在ではストックされた限られた材料しか使用できなくなり、希少価値が上がっています。

大館曲げわっぱの歴史

秋田県の「大館曲げわっぱ」製造のはじまりは約1300年前の奈良時代と言われています。

きこりたちが伐採した杉板を曲げて器を作ったのが始まりでした。

大館郷土博物館には平安時代中頃に作られたと言われている「大館曲げわっぱ」が展示されています。

その後「曲げわっぱ」が産業として定着したのは江戸時代。

当時の大館城主・佐竹義宣が、冷害や水害による領内の貧しさを打開するため秋田杉を使った製品を作ることができないかと考えました。

そして、当時農民たちが副業として作っていた「曲げわっぱ」に目を付け、下級武士にも副業として作るように命じます。

秋田杉の素材の魅力に加え、繊細な技術によって作られる製品はたちまち人気となりました。

その後、山形、新潟、関東地方などでも販売されるようになり「大館曲げわっぱ」ブランドが広く知られることになります。

明治初期の最盛期には30社400人あまりが製造に関わるまでに成長しました。

現在は8社63人にまで減少してしまいましたが、伝統的技法は優秀な職人たちの手で脈々と受け継がれています。

1998年には「大館曲げわっぱ」を製造している栗久(くりきゅう)による徳利(商品名は徳久利)グッドデザイン賞を受賞しました。


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最近では、温かみがありながら洗練されたデザインの「曲げわっぱ」のお弁当箱は、SNSの普及も手伝って再注目を浴びています。

大館曲げわっぱの作り方

「大館曲げわっぱ」製造には多数の工程があります。

木材を乾燥させる段階から含めると1年以上もの時間がかかります。

ここで、作り方について簡単にご紹介します。

1. 部材の切り出し
乾燥させた杉の丸太を木の年輪に対して直角に切り出す柾目(まさめ)の板材に切り出します。

2. はぎ取り
板を合わせた時に重なる部分が同じ厚さになるよう、端の部分を鉋(かんな)で薄く加工します。

3. 煮沸
80度のお湯で煮て板全体を柔らかくします。

4. 曲げ加工
お湯から引き出した板を型に巻き付けて、手作業で徐々に曲げていきます。

5. 乾燥
型から抜いて7~10日ほど乾燥させ、板の曲線を定着させます。

6. 接着
板の端を小刀で削る「つま取り」をした後、木工用の接着材を付けて約1日固定、乾燥させます。

7. 桜皮とじ
接着した部分に水を含ませた桜の木皮を「目通し錐(きり)」で入れ込み、縫い留めます。これを「樺縫い(かばぬい)」と言います。

8. 底入れ
「曲げ輪重ね」「鉢巻きかけ」「帯かけ」「重ね合せ」と呼ばれる技法で組み立て、「平底」「上げ底」「しゃくり底」と呼ばれる底板を入れます。

9. 仕上げ
ヤスリを使い全体を手作業で滑らかに仕上げます。

板を合わせた時に同じ厚さになるよう端を鉋で削る「はぎ取り」は、熟練した職人にしかできない一番難しい工程とされています。

「大館曲げわっぱ」に認定されるには、材料、技法など事細かに決まっており、もちろん基本的には全て手作業が条件です。

大館曲げわっぱのお弁当箱がSNSで大人気!

最近ではInstagramなどのSNSの影響もあり、普段使いのお弁当箱としての人気も高まっている曲げわっぱのお弁当箱。

実は、見た目の美しさだけでなく、実用性も兼ね備えているのです。

古くから味噌や醤油、酒などは杉で出来た樽を使って作られてきました。

木は呼吸し、湿度を一定に保つ性質があることから中の食品の美味しさを守ってくれるためです。

それは、お米を炊いたらおひつにご飯を移すのも同じ原理。

木がお米の余分な水分は吸い取り、また乾燥しすぎることを防ぎます。

このためご飯を長く美味しく保つ事ができるのです。

また、杉には殺菌効果があると言われています。

つまり「曲げわっぱ」のお弁当箱は、とても理にかなっているのです。

また、軽くて持ち運びしやすいところも便利な点でしょう。

さらに、手になじむ木の滑らかなカーブは美しく、自然のぬくもりを感じることができます。

「曲げわっぱ」は、このように実用性と工芸としての魅力を兼ね備えた日本を代表する工芸品なのです。

大舘曲げわっぱのお弁当箱~お手入れのポイント~

木製品は扱い方や手入れが難しそうなイメージではないでしょうか?

使用後できるだけ早くぬるま湯で洗い流すのがお手入れのポイント。

この時、洗剤は使いません。

そして洗った後はしっかり乾燥させます。

コツを掴んでしまえばそれほどお手入れは難しいものではありません。

有名な大舘曲げわっぱのお弁当箱をご紹介

栗久のレディース入子弁当箱

商品名:k-202 弁当箱 レディース入子
サイズ:高さ8㎝、横16.6㎝、幅9.7㎝

平成24年にグッドデザイン賞を受賞したお弁当箱です。

2段式のお弁当箱なのですが、注文の際にご飯の器が上と下どちらになるか選ぶことができます。

使用後は上段を下段に収納することができるので、持ち運びにも便利です。

工房るわっぱの隈切オードブルセット

商品名:隈切オードブルセット(二段)
サイズ:高さ5㎝、横30㎝、幅30㎝(一段のサイズ)

運動会やお花見などのイベントで使える、大容量のお弁当箱です。

また、工房るわっぱでは依頼するとお弁当箱にオリジナルのイラストを描いてくれます。

オーダーメイドイラストはイラストによりお値段が変わりますので、気になる方はぜひ店舗までお問い合わせください。

柴田慶信商店のつくし弁当箱

商品名:つくし弁当箱
サイズ:上 高さ3.5㎝、横13.5㎝、幅9㎝
    下 高さ4.5㎝、横14㎝、幅9.5㎝

もともと、柴田慶信商店二代目の柴田昌正さんが、愛娘つくしちゃんのために作ったお弁当箱なのだそうです。

子供の成長に合わせ、食べる量の変化に対応できるよう、上段と下段を別々に使うことができます。

さらに、上段を逆さまにすると下段に収納することができる仕組みになっているので、食べ終わった後の持ち運びにも便利です。

現代の職人たち

伝統産業全体が抱える高齢化、後継者不足問題は「大館曲げわっぱ」も同じです。

しかし最近では伝統的な工芸品の良さや、もの作りという職業に憧れた若い人材が職人の道に入るケースも少なからずあるようです。

そのような傾向を後押しするように、(財)伝統的工芸品産業振興協会では試験を実施し、合格者に「伝統工芸士」の称号を与えるなど、職人の地位向上と伝統工芸産業を守る活動をしています。

現在は17名が伝統工芸士に認定されています。

また大館市では1979年に「大館曲げわっぱ」協同組合を設立。

職人が在籍する製造企業8社が参加しており、工芸品製造、販売、イベント参加など普及活動に力を入れています。

「大館曲げわっぱ」協同組合参加企業

〒017-0012 大館市釈迦内字家後29-15
電話 0186-48-7700

〒017-0843 大館市中町38
電話 0186-42-0514

〒017-0044 大館市御成町二丁目15-28
電話 0186-42-6123

>> 佐々木曲物工芸
〒017-0045 大館市中道3丁目1-79
電話 0186-42-6875

〒017-0803 大館市東台655-1
電話 0186-42-5523

>> 九嶋曲物工芸
〒017-3501 大館市岩瀬字大柳88
電話 0186-54-2183

>> 高田漆器工芸
〒018-5601 大館市十二所町頭2-15
電話 0186-52-2564

〒017-0023 大館市東字岩ノ下8-1
電話 0186-59-7771

観光客に人気なのが「大館曲げわっぱ体験工房」です。
体験キットを選びパン皿や弁当箱作りを体験できます。

秋田県大館市大町70
午前9時~午後5時
電話 0186-42-7502

おわりに

自分で作ったお弁当箱で食べるお弁当の味はまた格別なものでしょう。

ぜひ、伝統が根付いた秋田県大館市で本物の「曲げわっぱ」を作ってみてはいかがでしょうか?

長くその土地に根付いた伝統工芸品は、その土地の風土や歴史を知った上で使うことでより魅力が増すのではないでしょうか。

この先100年、200年後の未来の職人たちのために秋田杉を計画的に栽培する動きも始まっています。

今後どのように伝統を守りながら進化していくのか「大館曲げわっぱ」に注目してみてください。