皆さんは、「琉球漆器」という沖縄の伝統工芸品をご存知ですか?

琉球漆器とは古くから沖縄に伝わる漆器で、多種多様な加飾技法が特徴です。

その芸術性の高さから、結婚祝いや生年祝いなどの贈答品として人気がありますが、実は日常生活で使いたくなる品々が豊富にあるんですよ!

しかし、他県の漆産地と比べて意外と知られていません。

そこでこの記事では、琉球漆器とはどのような物なのか、その特徴や魅力についてご紹介します。

琉球漆器とは?

琉球漆器は、14世紀頃の琉球王朝時代から沖縄で作られている漆器です。

中国から伝わってきた漆器技法を取り入れながら、沖縄独自の作風へと進化していきました。

芸術性が高く、高価な美術工芸品から日常生活の中でも使えるお手頃価格の食器や装飾品まで、その種類も豊富。

沖縄独特の絵柄をモチーフにした作品や、沖縄の歴史に影響を受けた作品も多くあります。

なお、昭和49年(1974年)に沖縄県指定の伝統工芸品に、昭和61年(1986年)に経済産業省指定の伝統的工芸品となり、お土産としての人気も高くなりました!

球漆器づくりが発展した理由

ではなぜ、沖縄で琉球漆器づくりが発展したのでしょうか。

その主な理由は、2つあります。

1)漆器づくりに適した気候

一番の理由は、沖縄の気候が漆器づくりに欠かすことができない高温多湿であったことです。

沖縄県は年間平均気温22.4℃、湿度77%の亜熱帯気候。

そのため、漆を乾燥させる作業部屋の温度や湿度を上げる必要がなかったことが、琉球漆器づくりを発展させる要因となったのです。

2)良質で種類豊富な素材の採取が可能

もう一つの理由は、沖縄の高温多湿な気候によって、沖縄県花であるデイゴやガジュマル、センダン、エゴノキ(シタマキ)などの、種類豊富で良質な木地素材の採取が可能だったことです。

このように、漆づくりに恵まれた沖縄の気候条件により、沖縄において漆器づくりが発展したんですね。

琉球漆器の特徴

では、そんな琉球漆器の特徴はどのようなものなのでしょうか?

色と黒色のコントラストの美しさ

琉球漆器の代表的な特徴といえば、漆の色鮮やかな朱色と、艶のある黒色のコントラストの美しさではないでしょうか。

沖縄の首里城をイメージさせる朱色は中国の建築文化からの影響を、艶のある黒色は他県の漆産地の影響を受けたとされています。

朱色の漆は「彩漆いろうるし」の一つで、透明な“透漆すきうるし”に顔料(主には硫化銀)を加えて作ります。

黒色の漆は、漆を精製する過程で鉄分を加えて作ります。

鉄分の酸化と漆成分のウルシオールの化学反応によって、漆独特の艶と深みのある黒色の漆になります。

国伝来の技法と多種多様な加飾技法

琉球漆器の技法は、琉球王朝時代に中国交易を通して伝来した中国の漆器技法に、沖縄独特の多種多様な加飾かしょく技法が加わり、職人たちの努力によって発展してきました。

主な加飾技法には、堆錦ついきん花塗はなぬり沈金ちんきん・箔絵・螺鈿・蜜陀絵みつだえなどがあります。

堆錦(ついきん)

堆錦は、“堆朱ついしゅ”と呼ばれる中国漆器の技法を参考にし、琉球王朝時代に完成された技法です。

漆に顔料を練り混ぜて作った「堆錦餅ついきんもち」を薄く伸ばして模様を切り取り、下地を塗った器の表面に貼り付けたりして、装飾を立体的に表現します。

この堆錦の技法は沖縄独自の加飾技法なので、沖縄ならではの味わいがあります。

花塗(はなぬり)

花塗は、油を加えて光沢をもたせた漆を使う技法で、別名「塗り立て技法」とも呼ばれており、沖縄独特の朱色と黒色の漆を木地に上塗りし乾燥させて仕上げる加飾技法です。

また、一般的に上塗りをした時は光沢を出すために研ぎだして仕上げますが、花塗の場合は磨かなくても光沢があるので漆を塗っただけで仕上がり、漆が本来持っている柔らかくてふっくらした感じに仕上がります。

沈金(ちんきん)

沈金は、最初に漆を上塗りした表面にいろいろな形の沈金刀を使って模様を彫り、彫りでできた模様に生漆を摺り込み、乾燥する前に金粉や金箔を押し込んで乾燥させ、最後に余分な金粉や金箔を拭き取ると絵柄が現れる、という加飾技法です。

模様の彫り方にもさまざまな種類があり、輪郭線を彫っていく“線彫り”、細かな点を彫っていく“点彫り”、柄の面を彫っていく“面彫り”の技法で模様を彫っていきます。

箔絵

箔絵は、最初に漆で紋様を描き、乾燥しないうちに金銀の箔を貼り付け、乾燥させた後に拭き取ると、描いた紋様だけに箔だけが残って絵柄が現れる、という加飾技法です。

螺鈿(らでん)

螺鈿は、光沢あるアワビ・夜光貝・蝶貝などの貝殻の内側をやすりで薄く削って絵柄の模様に合わせて切り抜き、漆で貼り付けたり、埋め込んだりする加飾技法です。

琉球漆器では、沖縄独特のハイビスカスなどの絵柄を描くために用いられます。

蜜陀絵(みつだえ)

密陀絵みつだえは、桐油きりゆゴマ油で顔料を溶いて、模様を描いていく油絵の技法の一種です。

蜜陀僧みつだそうと呼ばれる一酸化鉛を桐油やゴマ油に加えて煮沸することで、速乾性のある絵具が生まれます。

顔料を混ぜることで、漆絵では表すことができない白や中間色などの描彩をするために考案されたと伝えられています。

縄独特の絵柄

琉球漆器の絵柄には、中国の影響を受けた龍、沖縄独特のハイビスカスやユウナなどの南国の草花、ゴーヤなどの果実をモチーフにしたものが多くみられます。

これらの絵柄は、貝殻を使った螺鈿や金泊を使った箔絵などの加飾技法によって描かれます。

また、子だくさんである「リス」と、大きな実を実らせる「葡萄」の模様は、幸せの象徴として昔から使われてきました。

このリスと葡萄の絵柄などは、中央アジアからシルクロードを経由して中国から琉球王朝に伝来したといわれています。

琉球漆器の魅力

中国や日本のさまざまな漆器技法を取り入れてきた琉球漆器。

その魅力とは、なんなのでしょうか?

球漆器は日常生活で使える!

一般的に漆器は、お正月や慶事などの特別な日に使うイメージがありますよね。

そのため、漆器を日常生活の中で使うことに抵抗感があるという人もいるのではないでしょうか?

しかし、琉球漆器は気軽に使えるアイテムがたーくさん!!!

定番である重箱・飾り皿・汁椀や飯碗だけでなく、日常生活で気軽に使えるカレー皿・スプーン・マグカップ・お椀・コースター・ぐい呑み、そして男女問わない装飾品など、種類が豊富です。

また、琉球漆器に限らず漆器類はプラスチックや陶器とは異なるメリットがあるんですよ!

ここでは、琉球漆器を日常生活で使うメリットと賢い使い方をご紹介しましょう♪

日常生活で使うメリット

【外側が濡れない】
木はプラスチックやガラスよりも断熱性があり、冷たいものを入れても外側が濡れないのでテーブルはもちろん、持ち手部分も濡れたりしません。

【持ち手や飲み口が熱くならない】
上記でもお話しましたが、木には断熱性があるため熱いものを注いでも漆器部分に熱が伝わらないので、手や口元を火傷する心配もありません。
特に、猫舌の人には漆器がオススメです。

【丈夫】
漆は下地となる木地にしっかりと吸い付くため、はがれにくく劣化しにくい素材です。
熱湯や油にも強い上に丈夫で軽く、落としても割れにくいため子供から年配の方まで使えます。
また、高い所から落ちて頭に当たっても怪我をしにくいですよ♪

【衛生的】
漆には抗菌作用があります。
抗菌性を持ち安全性の高い漆器は、食器に最適ですね♪

賢い使い方

琉球漆器の賢い使い方は、“最初から使う目的を決めない”ことです。

例えば、漆器は和食用と決めたりしないで、洋食用としても使ってみてはいかがでしょうか?

また、小さな小皿やぐい呑みなどは、傷防止用に布や綿をしいて小物のアクセサリー入れとしても使えますよ♪

ぜひ、自分のお気に入りの品を見つけて、日常生活の中で使ってみましょう!

琉球漆器を作ってみたくなったら

沖縄では、琉球漆器づくりの体験ができるお店があります。

体験を行っているお店に足を運べば、自分だけの琉球漆器を作ることができますよ♪。

初心者には「琉球漆器の堆錦餅ついきんもち」の体験コースが、オススメです。

このコースでは、漆と顔料を混ぜて練り合わせた堆錦餅と呼ばれる餅状になった材料を薄く伸ばして自分好みの模様(絵柄)に切り取り、すでにできている漆器の土台に貼り付けるだけの加飾技法で作品が作れます。

初心者には、コースターなどの土台が平らなものが作りやすくてオススメですよ♡

営業時間:9:00~17:30
住所:沖縄県糸満市伊原155-2
   ひめゆりの塔より300m

おわりに

琉球漆器は沖縄独特のデザインや技法で作られている漆器ですが、意外と世間に知られていません。

琉球漆器には、日常生活の中で使えるアイテムが沢山あります。

「漆だから高価だろうし、壊したら大変…」といった既成概念にとらわれないで、気軽に使ってみてください!

あなたもぜひ、自分に合った使い方をみつけて琉球漆器を楽しみませんか。