南国である沖縄独特の模様と、多種多様な技法で作られる美しい琉球漆器。

琉球漆器は、昭和49年(1974年)には沖縄県指定の伝統工芸品に、昭和61年(1986年)には経済産業大臣指定の伝統的工芸品として認められました。

今回は、琉球漆器の歴史とその制作工程について紐解いていこうと思います。

多くの国から影響を受けて完成していった琉球漆器は、どのような歴史を歩んできたのでしょうか。

琉球漆器の歴史~中国貿易によって発展した漆器技法~

琉球漆器のはじまり(14世紀頃)

琉球漆器のはじまりは、琉球王国時代の14世紀(鎌倉時代後期)頃に遡ります。

中国との貿易の際に、中国から漆器技術が伝来した後、沖縄独自の漆器技術として発展したと伝えられています。

隣国の貢物として使われた琉球漆器(15世紀~16世紀)

15世紀(室町時代)~16世紀(安土桃山時代)になると琉球漆器は、隣国の日本本土、中国、朝鮮、マラッカ、シャム王国などとの交易や交流で琉球王朝の「朝貢ちょうこう」として使われました。

※朝貢:外国の使者などがその国の皇帝・朝廷に貢物を献上すること

貝摺奉行所を設置し、組織的に作られた琉球漆器(17世紀)

琉球王朝が統一された17世紀には、琉球王家直轄の「貝摺奉行所かいずりぶぎょうしょが設置され、芸術的にも技術的にレベルの高い漆器の工芸品が作られるようになりました。

そして琉球漆器は、王族や士族の暮らしの中で使われただけでなく、地方の儀式や祭祀の装飾品としても用いられるようになっていきました。

18世紀初頭になると、貝摺奉行所の監督下で堆朱ついしゅ堆錦ついきんなどの技法で作られた漆器は、琉球王府内外に流通するようになったのです。

※貝摺奉行所:漆器を組織的に生産して管理したり、王府への献上品や外交用の贈答品を制作する職人を監督したりする首里王府の役所

廃藩置県により民間でも琉球漆器が作れるようになる(明治時代)

明治12年(1879年)、明治政府によって行われた廃藩置県により、琉球藩が廃止されると沖縄県が設置されます。

これにともない琉球王家直轄の貝摺奉行所も廃止され、琉球漆器は民間人でも作ることができるようになったのです。

そうして、民間の工房や漆器会社によって、食器などの一般向けの琉球漆器が作られるようになりました。

戦後から琉球漆器の職人数が減少傾向に(昭和初期)

第二次世界大戦後の沖縄は、敗戦によって壊滅的な打撃を受けました。

そのような中で、琉球漆器は米軍基地の駐留軍向けのおみやげとして再度制作されるようになります。

昭和52年(1977年)には、琉球漆器事業協同組合が設立されるまでに漆器生産が再興されました。

しかし、平成(1990年代初頭)になると、次第に琉球漆器の一人当たりの生産額は減少の一途を辿るようになります。

生産の減少とともに琉球漆器職人の数も徐々に減り、今日に至っています。

琉球漆器の生産量減少と共に漆器職人の数も徐々に減少している背景には、人々の生活様式の変化と安価な工業製品が沖縄に大量に入ってきたことがあるかもしれません。

作品背景から学ぶ琉球漆器の歴史

琉球王朝とともに激動の歴史を歩んできた琉球漆器ですが、そのデザインもまた、歴史とともに独自の進化を遂げてきました。

初期の琉球漆器

中国から伝来した漆器技術習得のために、当初の琉球漆器は中国で使われていた絵柄を用いることが多かったようですが、そのうち中国へ送る貿易品の琉球漆器には和柄が用いられるようになります。

琉球王朝頃の琉球漆器

琉球王朝頃の琉球漆器は、王朝で使用されることが多かったため、安土桃山時代を模倣したように鳳凰、花鳥、中国の山水画や、お目出たい吉兆図案、子孫繁栄を願ったリスと葡萄の柄が頻繁に使われていました。

模様部分には螺鈿らでんや沈金、箔絵はくえの技法が用いられ、王朝に相応しい豪華絢爛ごうかけんらんなデザインでした。

民間で作られるようになった琉球漆器

廃藩置県により琉球藩が廃止され、琉球漆器が民間で作られるようになると、お椀やお盆、重箱など、一般人が行楽や宴会に使える琉球漆器が誕生します。

今までの中国的な模様に加え、沖縄風のパパイヤなどの模様、日本風の模様がつけられました。

アメリカ合衆国統治下の琉球漆器

米軍向けにデザインされた琉球漆器がおみやげとして人気が出ます。

螺鈿らでん堆錦ついきんの技術を使ってアルファベットが書かれたものや、沖縄らしいハイビスカスの模様がつけられた琉球漆器が盛んに作られていました。

日本復帰後~現在の琉球漆

今日では、沖縄のおみやげとしてバナナやパイナップルなど、沖縄らしい模様にモダンなデザインがプラスされたものが好まれているようです。

中でも、身近に使える箸やペンダントなどの小物が人気なのだとか!

琉球漆器の作り方

次は、琉球漆器の作り方をご紹介します。

琉球漆器は、主に下記の6つの工程で作られます。

1.木地づくり

琉球漆器を作る木材には、デイゴやガジュマル、センダン、エゴノキ(シタマキ)が多く使われます。

伐採した木材は、1~5年ほどかけてじっくりと乾燥させていきます。

デイゴやエゴノキは乾燥に強く、長期間使用しても変形やヒビが入りにくいのが特徴です。

乾燥作業が終わったら、作る漆器に合わせて木材を切っていきます。

2.下地づけ

次は乾燥させた木地に、生漆きうるしに沖縄の小禄おろく砂岩を混ぜて作った“ニービ下地”をつけて、木地の表面にある亀裂や傷、小さな穴などを丁寧に埋めていきます。

デイゴの木地は目が粗いので、ニービ下地を丁寧に塗った後、生漆に島尻しまじり岩粉を混ぜて作った“クチャ下地”を塗ってから乾燥させます。

3.研磨

下地に水をかけながら、砥石や紙やすりを使って表面を砥ぐ作業を数回繰り返えします。

最初は粗いやすりから砥ぎはじめ、次第に目の細かいやすりに変えながら砥いでいきます。

4.中塗り

次の工程「上塗り」をする前に、研磨でできた細かな傷や穴を埋めるために中塗りという作業を行います。

中塗りでは、作品に応じて上塗りに使う顔料と同じものを漆に混ぜて塗ります。

5.上塗り

上塗りは、熟練した職人さんの技が際立つ作業工程で、気温や湿度が漆器の出来栄えに影響を与えます。

上塗りをするためにはまず、生漆に紫外線や赤外線を加え、水分を蒸発させて作った「くろめ」と呼ばれる透明な漆を作ります。

そして、この「くろめ」に朱色の顔料を混ぜ、とろみのある液状になったら和紙でろ過したものを、上塗りで用います。

上塗りには、腰が強くしっかりした刷毛を使い、丁寧に塗っていきます。

上塗りの後に小さな気泡や埃を見つけたら、細い針などを使って丁寧に取り除いて漆風呂に作品を入れて、乾燥させます。

漆は湿度によって漆が縮んだり、黒ずみが出てしまうことがあるので、漆を乾燥させる際は湿度管理が重要となってきます。

※漆風呂:漆を塗った後に入れる、湿度が高い「風呂」と呼ばれる木の室(箱など)のこと

6.加飾

最後に加飾をして、琉球漆器の完成です。

堆錦ついきん螺鈿らでん、沈金など、さまざまな加飾技法を用い、上塗りをした作品に絵や模様をつけていきます。

琉球漆器のお手入れ方法

琉球漆器の手入れの仕方は他の漆器類と同じなので、そう構える必要はありません。

手入れ時の注意点や正しい手入れの仕方について、簡単に触れましょう。

手入れをする際の注意点

1.直射日光に当てない
漆は紫外線に弱く、直射日光に当たると表面を劣化させる原因となります。
できるだけ日の当たらない場所で保管してください。

2.食器洗い機や乾燥機、電子レンジを使わない
電子レンジや食器乾燥器など高温になる機器を使うと、木地内の水分が温められて膨張し、漆器が割れてしまう恐れがあります。

琉球漆器の美しさを保ち、長く使うためにも、注意点は気にかけておきましょう。

では次に、琉球漆器の正しい手入れの仕方をお教えします!

正しい手入れの仕方

1.琉球漆器は、柔らかい布やふきん、傷がつかないスポンジを使うって洗う
漆の塗膜に傷をつける恐れがあるため、琉球漆器を洗う時は柔らかい布やふきんを使いましょう。

2.洗った後は柔らかいふきんで拭いて、完全に乾燥させてからしまう
琉球漆器を完全に乾燥させずにしまってしまうと、漆器に傷などがあった場合、そこから水分が入って塗膜が剥がれる原因となります。
しまう際は、しっかり乾いたことを確認してからしまってくださいね。

正しいお手入れの仕方をマスターして、琉球漆器を一生物として長く使っていっちゃいましょう!

おわりに

約300年の歴史に翻弄されながら現代でも技術継承されている琉球漆器には、日常品でも使える琉球漆器がたくさんあります。

あなたも琉球漆器を使いながら、琉球漆器が辿ってきた歴史を感じてみませんか?