整姿せいし」とは、盆栽を美しい樹形に仕立てたり、その美しい樹形を維持したりするための技法です。

この「整姿」法には「芽摘み」、「葉刈り」、「剪定」や「針金かけ」などがあります。

この記事では主に初心者向けに「整姿」についてわかりやすく説明していきます。

整姿作業が必要な理由と目的

まず、整姿が必要な理由と目的を事前に理解しましょう。

理由と目的を理解することにより、細かなところまで気を付けて作業ができるようになるでしょう。

要な理由

盆栽は、水やりや施肥だけをして数年そのままにしておくと、樹形が乱れて崩れてしまいます。

整姿は美しい樹形を維持するために非常に重要なのです。

特に頂部にある枝や、勢いのある強い枝は長く伸び、下枝、勢いが弱い枝、ふところ枝(内側に伸びる枝)や小枝などは、生育が衰えて枯れ樹形を乱してしまいます。

盆栽の美しい樹形は人工的に作られます。

樹がもっている自然の野趣の美しさを維持するために剪定や針金かけなどの「整姿」は必ず行わなければならないのです。

「整姿」作業をする目的は、樹形が完成している盆栽の樹高や幹の太さなどを考慮しながら、枝と枝、幹と枝とのバランスなど樹形全体を見ながら整えて美しい樹形を維持することです。

そのために幹や枝葉の徒長とちょうを防ぎ、不必要な枝は切り詰めて、必要な枝だけを残す「整姿」を行います。

また、「整姿」は美しい樹形の維持だけでなく、枝や葉に日光があたったり、風通しを良くしたりして生育の良い環境を作るためにも行われます。

初心者が覚えておきたい主な「整姿」法とポイント

初心者が覚えておきたい盆栽の主な「整姿」法には

1.「芽摘み」
2.「葉刈り」
3.「剪定」
4.「針金かけ」

の4つがあります。

摘み

「芽摘み」は別名「芽刈り」や「みどり摘み」とも呼ばれています。

この「芽摘み」は、「整姿」作業の中で最も基本的な作業です。

「芽摘み」作業の目的は、伸びた枝を短く切り詰めて枝先の伸び方を均等化させることにあります。

この作業によって小枝の分枝が増えるので、枝先に小さな葉が沢山茂った美しい盆栽を仕立てることができます。

「芽摘み」は、樹種によって作業を行う時期が異なりますが一般的には新芽が伸び出す春の4月から5月頃にかけて行います。

また、樹種によっては春のお彼岸頃から夏の終わり頃までの間、数回に分けて行う樹種もあります。

また、「芽摘み」をする1ヶ月以上前には、施肥をして樹勢をつけておくようにしましょう。

刈り

「葉刈り」の目的は、葉の形を小さくして枝先を細密にしたり、古葉を取り除いて新しい葉を増やしたりすることにあります。

この作業をすることによって、秋には美しい紅葉を楽しむことができます。

また、「葉刈り」は樹に負担がかかるので樹勢が旺盛な若木などの間にに行いましょう。

「葉刈り」を行う時期は、伸び出した新葉が固くなる6月中旬から7月上旬頃です。

しかし、雑木類盆栽のブナは芽が出てから1週間位の間にこの作業を行いますが、慣れていないと失敗してします難しい作業なので、無理せず慣れるまでは行わないようにするのが無難です。

「葉刈り」を行うためには、「芽摘み」と同じように樹勢をよくするために1ヶ月以上前から施肥をしておく必要があります。

また、「葉刈り」は葉が濡れている時は避けましょう。

「剪定」の目的は、樹の徒長をおさえて不必要な枝を切り詰めて、樹形を維持することにあります。

剪定は「整姿」作業の中ではほぼ毎年行う作業です。

剪定をすることにより樹全体に日光が当たり、風通しが良くなり生育も良くなります。

「剪定」をする時期は、一般的に7月上旬から土用前、10月から12月、2月から3月頃まで、一年の間に3期あります。

しかし、松柏類盆栽は、10月から12月頃、あるいは2月から3月頃までに剪定を行うようにしましょう。

また、雑木類盆栽は春に新芽が伸び出す前に行うのがよいとされています。

「剪定」作業は生育が旺盛な若木の盆栽には毎年行いますが、既に樹形が整っている古木や樹勢が弱っているものには状態を見ながら剪定をするか判断をしましょう。

金かけ

「針金かけ」の目的は、樹形を整えたり美しい樹形を作ったりするために行います。

樹全体を見て角度や方向が悪い枝は、針金をかけて矯正することから「針金かけ」といいます。

「針金かけ」をする際のポイントは、幹肌を痛めないようにすることです。

「針金かけ」を行う時期は樹種によって異なりますが、一般的には春と秋です。

これらの時期に針金かけを行うと幹に跡が残りにくくなります。

松柏類盆栽の「針金かけ」は9月下旬から翌年の3月下旬頃まで、雑木類盆栽は冬の終わり頃と梅雨時期に行うことができます。

「針金かけ」は、樹に負担がかかるので、樹勢が良い樹だけに行うようにしましょう。

また、寒さが厳しい時期に針金かけをした場合は後の管理がむずかしく、上手にできないと枝枯れを引き起こす場合があるので初心者は避けた方が安全です。

初心者が「整姿」に必要な道具3種

初心者が「整姿」作業に必要な道具は、「剪定ばさみ」、「また切りばさみ」そして「ピンセット」の3種です。

初心者が盆栽の「整姿」を始める場合、必要なものから揃えて構いません。

最初から全ての道具を揃えても使い方がわからなかったりして、かえって無駄になってしまうこともありますから、よく調べてから購入・使用するようにしましょう。

定ばさみ・また切りばさみ

「剪定ばさみ」と「また切りばさみ」は枝や幹を詰めたりする際に使います。

「剪定ばさみ」は盆栽だけでなく、一般のガーデニングでも使われているはさみです。

伸びた枝や樹形を乱している枝などを切り詰めたりするのに使います。

また、はさみの大きさは大小あるので、枝の太さにあったものを使うようにしましょう。

「また枝切ばさみ」は「剪定ばさみ」で切る枝よりも太い枝を切り詰める際に使います。

特に「三又枝」や「四又枝」の枝を剪定する場合にも使います。

ンセット

「ピンセット」は「整姿」をする際に枯れた葉や古葉を取り除いたり、株元の雑草を抜いたりするときに使います。

「ピンセット」を購入する場合はヘラ付きのタイプがおすすめです。

ヘラがあると、盆栽の鉢土の表面に張ってある苔や土を直したりする際にすぐに使えて便利ですよ。

おわりに

初めての「整姿」では、間違って枝を切ってしまったりして失敗することもあります。

しかし、樹の個性を生かしながら自分の「整姿」技術を少しずつ向上させばどんどん理想の樹形に近づきます。

少しずつでも挑戦してみて、盆栽の樹形づくりを楽しんでみませんか。