松の盆栽は、真柏しんぱくの盆栽と並んで日本の盆栽界の主流の1つです。

盆栽に使われている松の主な樹種は、6種あります。

日本一の生産県は、「うどん県」として知られている香川県ですが、その生産地の中心は高松市です。

松の種類

松の盆栽に仕立てられている主な樹種には、赤松、エゾ松、カラ松、黒松、五葉松、錦松にしきまつの6種類があります。

樹に柔らかい趣があるので別名「女松おんなまつ(めまつ)」とも呼ばれ、松の盆栽の中でも珍重されている樹種です。

空気が綺麗な環境を好むので、公害のある都会では育ちにくいです。

日本全国に生育していたので、自然を愛する盆栽愛好家だけでなく詩人や絵描きなどにも題材として取り上げられた樹種です。

ゾ松

北海道から国後くなしり積丹しゃこたんなどの、千島列島一帯の湿地帯に自生している樹種で、別名「アカエゾマツ」とも呼ばれています。

松柏類まつかしわるい盆栽の中でも葉の大きさが短く密生しており、小枝が繊細に沢山分かれているので、樹が小さくても大樹の趣が感じられます。

また、老木の樹でなくても幹肌が荒れているので、樹齢が若くても古木感も感じられる樹種です。

ラ松

カラ松は日本に自生している針葉樹の中で、唯一落葉性がある樹種です。

別名は、「日光マツ」や「富士マツ」とも呼ばれ、日光、浅間山、八ヶ岳、上高地、富士山の北側などに自生し、淡緑色をした春に伸び出す新芽が美しい樹種です。

東北以南の海岸一帯に自生し、別名「男松おまつ(おとこまつ)」とも呼ばれています。

幹肌が荒々しくて樹勢が強く、樹齢を重ねると力強い豪壮な樹姿になる樹種です。

また、寒暑や病虫害にも強く色々な樹形に仕立てやすいので、盆栽の樹としてはオススメです。

葉松

葉が5本ずつ互生し、同じ松ボックリの種でも同じ性質をもった樹は、1本も生えてこないことが特徴です。別名「姫小松ひめこまつ」とも呼ばれています。

寒暑に強く育てやすいので、銘木めいぼくと呼ばれている盆栽にはこの樹種が多いです。

錦松は黒松の仲間であり、瀬戸内海の島々や海岸一帯に自生し、樹皮に分厚い亀裂があることが特徴です。

また、樹齢を重ねていくと盆栽の持つ古木感と豪快な趣が感じられる樹になってきます。

錦松発祥の地、高松

松の盆栽生産の中心地は国内外の盆栽愛好家の間では有名な高松市です。

高松市では、「ふるさと納税」の御礼品として錦松の盆栽が使われています。

錦松は、香川県内の瀬戸内海一帯や周辺にある島々に自生している黒松の中から見つかり、樹皮が亀甲に裂けているという特徴がある松でした。

明治27年に末澤喜市すえさわきいち氏が、その松の穂木ほぎ※1を黒松に接木して大量生産を可能にしました。

※1 穂木:挿し木・接ぎ木に使う枝のこと。

その後、高松市では錦松の新品種が多数開発され、市内にある国分町では今でも錦松の品種改良をしながら錦松の発祥地として、盆栽の生産農家が錦松の生産を引き継いでいます。

盆栽生産地となった高松


高松市が盆栽の生産地になった背景には2つの要因があり、現地では盆栽地ならではの楽しみ方があります。

松市が盆栽生産地になった2つの要因

高松市が盆栽生産地になった要因は、瀬戸内海の自然環境が盆栽生産に適していた事と、柑橘類の剪定技法が盆栽生産に生かされたころの2つです。

高松市が盆栽栽培に適している理由は、通年を通して日照時間が長く、寒暖の差や雨量が少ないことです。

特にこの豊かな自然環境は、松の盆栽の生育には適していました。

瀬戸内海の荒波の音や海風、そして海岸近くにある山などの豊な自然環境も盆栽作りに良い影響を与えました。

また、高松市は昔から柑橘類の生産が盛んに行われていたので、高度な樹の栽培や剪定技術が盆栽生産に生かされ、盆栽生産地としての地位を築きました。

栽生産地ならではの楽しみ方

高松市内にある国分寺町と鬼無きなし町地区一帯は、盆栽生産の中心地です。

これらの盆栽産地では、盆栽の生産地一帯の散策や盆栽教室への参加など、盆栽の生産地ならではの楽しみ方があります。

盆栽生産地一帯の散策

瀬戸内海の豊かな自然に恵まれた盆栽生産地一帯では、点在している盆栽園や販売所を散策したり、盆栽の樹や苗が植えられている“盆栽畑”を垣間見たりすることができます。

特にこれらの産地一帯に点在している盆栽園では、芸術性や技術的レベルの高い盆栽作品を観賞することができます。

また、盆栽の販売所では松の盆栽だけでなく、初心者でも育てやすい樹種の盆栽や苗木が豊富に揃っているので、“自分だけの盆栽”を見つけることも楽しみ方の1つです。

初心者や観光客でも楽しむことができる盆栽の生産地

高松市内にある盆栽生産地では、盆栽の知識や経験が全くない初心者や観光客でも盆栽に触れて楽しむことができる盆栽神社、盆栽カフェ、盆栽教室などがあります。

盆栽神社は、高松市市内を通っている国道33号線沿線にある鬼無町の「盆栽通り」と呼ばれる通りにあります。

樹木を司る男神の久久能智神くくのちのかみと草花を司る女神の草野姫神かやのひめのかみ合祀ごうしされている神社なので、草花や樹木を愛する人には、ご利益があると伝えられています。

盆栽教室は盆栽園でも開催されています。

多くの盆栽教室は1時間コースが多いので気軽に参加することができます。

また、盆栽園や盆栽生産農家が開いている盆栽カフェでは、コーヒーやケーキ、そして軽食などを楽しみながら、店内に展示してある盆栽を観賞することができます。

松の盆栽に興味を持ったら、錦松にしきまつの発祥地である高松市を訪れて、盆栽生産地ならではの楽しみ方に触れ、自分好みの松の盆栽を見つけて、育ててみませんか。