漫画・アニメ・劇場版で一世を風靡した「鬼滅の刃」。

そんな鬼滅の刃が、何と能狂言の世界に進出し、令和4年(2022年)に東京・大阪で上演されました。

大盛況だった本公演ですが、この度、令和5年(2023年)5月より京都・福岡・名古屋・横浜にて再上演が決定しました。

今回は、そんな能狂言「鬼滅の刃」の見どころやキャストなど、公演情報を徹底的にご紹介します!

公演を観に行きたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね♪

能狂言「鬼滅の刃」とは?

鬼滅の刃」とは?

「鬼滅の刃」は、平成28年(2016年)から令和2年(2020年)に「週刊少年ジャンプ」で連載された、いわずと知れた超人気漫画です!

大正時代の日本が舞台となっており、主人公の少年・竈門炭治郎かまどたんじろうが鬼になってしまった妹・禰豆子ねずこを救う方法を探すため、人喰い鬼達と戦う、というストーリー。

あまりの人気ぶりに、一時期は街中が「鬼滅の刃」柄のグッズで溢れかえっていましたね。

そのストーリーのおもしろさと読者層の広さで、単行本の売上は1億5000万部以上、劇場版アニメ「無限列車編」の国内興行収入は404億円を超え、アニメ映画の歴代最高額を記録しました。

狂言とは?

能狂言とは、室町期に大成された日本の伝統芸能で、”能”と”狂言”を合わせて“能楽のうらく”と呼びます。

どちらも能舞台で上演される舞台芸能で、ユネスコ世界無形文化遺産にも登録されています。

歴史上の偉人の実話を題材にした悲劇的な“能”と、庶民の日々の生活の出来事を題材にした喜劇的な“狂言”にわかれます。

同じ催しの中で、能と狂言が交互に演じられる上演形態が一般的で、現代でも多くの公演はその形態を維持して執り行われています。

能狂言「鬼滅の刃」のみどころ

さて「鬼滅の刃」と「能楽」について、ざっくりとおさらいしたところで、ここからは「能狂言 鬼滅の刃」の見どころを見ていきましょう!

出は野村萬斎さん

本作品の監修は、観世流かんぜりゅうシテ方で人間国宝のレジェンド・大槻文藏おおつきぶんぞうさん!

演出はNHK「にほんごであそぼ」などで抜群の知名度を誇る、和泉流狂言方の野村萬斎さんと、とても豪華なメンバーが作品の製作を手掛けています。


※観世流シテ方:観世流は能の流派の一つ。シテ方とは、能の主役を務める人のこと。シテ方には観世・宝生・喜多・金春・金剛、ワキ方(脇役)には宝生・高安・福王、狂言を演じる狂言方には大蔵・和泉流が現存する。

楽と「鬼滅の刃」の親和性

「鬼滅の刃」は、主人公・竈門炭治郎かまどたんじろうが仲間たちと共に鬼と闘うお話ですが、作中では鬼を鎮める過程で、なぜ鬼になったのか、どんな背景があったのかなど、鬼側の内面にも焦点を当てています。

能狂言でも、鬼や幽霊、精霊がよく登場し、その由来が語られます。

人間世界とそういった人間ではないものの世界を、能楽師は何世紀にも渡って演じ続けてきました。

また、炭治郎が父・炭十郎たんじゅうろうから「ヒノカミ神楽」を引き継いで戦うさまは、代々父から子へ、師から弟子へと芸を継いできた能楽師とも重なる要素でもあります。

一見突拍子無く思える「能楽」と「鬼滅の刃」のコラボレーションですが、実はこのようにさまざまな点で親和性が高いといえるのです。

台のみどころ

漫画作品を能舞台上で再現するため、あらゆる工夫が凝らされた本作品ですが、そのみどころとはいったいどこなのでしょうか?

さまざまな魅力がありますが、例えば、炭治郎と鬼殺隊同期の嘴平伊之助はしびらいのすけが着けている面の美しい造形、同じ役者が何役も演じ分ける様などがその一例です。

最大の敵である鬼舞辻無惨きぶつじむざんが洋装で見所けんしょ※1から登場し、通常の能楽では使用しない階※2から舞台へ上がる場面など、まさに本舞台でしか見ることのできないコラボ作品ならではの世界観を楽しむことができます。

古典と新作の一期一会。

能楽と「鬼滅の刃」の融合は、何としてもこの目で見届けたいものですね!


※1見所:能楽堂の客席のこと。

※2階:能舞台の正先に付いている階段。

能狂言「鬼滅の刃」キャストは誰?キャラクターと役者

門炭治郎・竈門禰豆子

竈門炭治郎かまどたんじろうは本作の主人公、竈門禰豆子かまどねずこはその妹です。

炭を売って生計を立てていた一家でしたが、ある日炭治郎が町へ炭を売りに出掛けている間に、鬼によって家族を皆殺しにされてしまいます。

奇跡的に生き残った妹の禰豆子も、鬼の血を浴びてしまったことで鬼になってしまいました。

炭治郎は禰豆子を何とかして人間に戻す方法を見つける為、鬼を狩る組織「鬼殺隊」に入ります。

そんな炭治郎と禰豆子を演じるのは、シテ方観世流能楽師の大槻裕一おおつきゆういちさん。

平成25年(2013年)に大槻文藏の芸養子となり、大槻裕一を襲名しました。

平成27年(2015年)には自主企画公演「大槻文蔵裕一の会」を主催したり、ラジオやテレビに出演するなど、さまざまな場面で活躍されている能楽師です。

舞辻無惨・竈門炭十郎・天王寺松右衛門


鬼舞辻無惨きぶつじむざんは、本作に登場する鬼の総大将であり、全ての鬼の始祖です。

病弱だった幼少期に医師が処方した薬の影響で、不老不死の鬼となり、平安時代から千年以上も生き続けています。

竈門炭十郎かまどたんじゅうろうは、炭治郎の父です。

病で早々に亡くなりましたが、「ヒノカミ神楽」を炭治郎へ伝承しました。

天王寺松右衛門てんのうじまつえもんは、炭治郎お付きの鬼殺隊の伝令係を果たすカラスです。

そんな三役を演じ分けるのは、本作品の演出も手掛ける野村萬斎さん。

昭和45年(1970年)に演目「靭猿うつぼざる」の子猿役で初舞台を果たしてから、狂言界の第一線で活躍し続ける日本で一番有名な人気狂言方です。

現代劇や映画、テレビドラマ等各分野で活躍し、狂言の認知度の向上に非常に貢献しています。

妻善逸・錆兎

炭治郎と鬼殺隊の同期で、黄色い髪の毛が特徴の我妻善逸あがつまぜんいつは、女好きで怖がりというキャラクターですが、気絶すると覚醒して能力を発揮します。

錆兎さびとは、炭治郎の師匠・鱗滝左近次うろこだきさこんじの弟子で、大岩を切る修行で行き詰まっていた炭治郎を指導してくれた人物です。

以上の二役を演じるのは、狂言方和泉流能楽師の野村裕基のむらゆうきさん。

祖父は人間国宝の野村万作、父は野村萬斎の狂言一家に生まれ、最近ではドラマ出演や声優の仕事も果たすなどの活躍を見せる若手狂言師です。

平伊之助・鋼鐵塚蛍

嘴平伊之助はしびらいのすけは、善逸と同じく鬼殺隊の同期です。

山に捨てられた捨て子で、猪に育てられたことから、猪の被り物を被っています。

「猪突猛進」が口癖で、猪の被り物を取ると、実は美男子という設定です。

鋼鐵塚蛍はがねづかほたるは、炭治郎の使っている日輪刀を打った刀鍛冶です。

癇癪かんしゃく持ちで、ひょっとこの面をしています。

そんな二人を演じるのは、狂言方和泉流能楽師の野村太一郎のむらたいちろうさん。

五世・野村万之丞のむらまんのじょうの長男ですが、現在は野村萬斎に師事しています。

狂言教室や講演を行ったり、大学の講師を勤めるなど、狂言を広めることに尽力し貢献している狂言師です。

弦の伍・累


るいは、十二鬼月じゅうにきづきと呼ばれる強い鬼の中の一人で、本作品におけるラスボスです。

鬼達を集めて恐怖で支配し家族ごっこをするなど、作中でも強烈な存在感を放ちます。

累を演じるのは、監修も務める人間国宝・大槻文藏さん。

紫綬褒章しじゅほうしょう旭日小綬章きょくじつしょうじゅしょう日本学賞にほんがくしょうなども受賞している、まさに狂言界のレジェンド的存在です。

岡義勇

冨岡義勇とみおかぎゆうは、炭治郎が最初に出会った鬼殺隊のはしらで、炭治郎を入隊へ導いた恩人です。

口数の少ない一匹狼ですが、判断力に優れた優秀な剣士です。

そんな義勇を演じるのは、ワキ方福王流能楽師の福王和幸ふくおうかずゆきさんと福王知登ふくおうともたかさん。

和幸さんが兄、和登さんが弟の兄弟で、ワキ方としての在り方を常に研究し突き詰める狂言師です。


※柱:鬼殺隊の幹部に当たる9名の剣士。

おわりに

漫画・アニメ・劇場版で一世を風靡した「鬼滅の刃」。

「能・狂言 鬼滅の刃」は他の媒体と異なり、一度きりの生の物です。

こだわり抜かれた演出で、鬼滅ファンの方はもちろん、能楽ファンの方も存分に楽しめるはず。

ぜひ能楽堂で、能楽と「鬼滅の刃」が織りなす幽玄の世界観を体感してみてはいかがでしょうか。

能 狂言『鬼滅の刃』 公演スケジュール
【京都】金剛能楽堂 5月24日(水)~5月27(土)<公演終了>
【福岡】大濠公園能楽堂 9月13日(水)~9月17日(日)
【愛知】名古屋能楽堂 9月27日(水)~9月28日(木)
【神奈川】横浜能楽堂 9月30日(土)~10月1日(日)
出典: 能 狂言『鬼滅の刃』