日常生活から、古き良き和文化が消え去りつつある現代社会。

中でも特に舞台芸能は、子供たちにとってなかなか触れる機会がありません。

歌舞伎、日本舞踊、落語など、伝統芸能にはさまざまなものがありますが、きっと一番触れる機会が少ないのが、能楽のうがく(能・狂言)。

そんな子供達の為に、近年では学校で狂言の公演を行う「学校狂言」がよく行われています。

小学校の体育館が、能楽堂に早変わり!

今回は気になる「学校狂言」について、詳しく解説します。

学校狂言とは?

明治期より、狂言師の家・茂山千五郎しげやませんごろう家では、狂言の普及の為に全国の学校を回り、学生に狂言を鑑賞してもらう取り組みをしていました。

現在では他の家でも、各地の学校や劇場で学校狂言を行うことが一般的となりました。

では、そんな学校狂言では、どんなことを体験できるのでしょうか?

ークショップ

ワークショップでは、狂言の決まり事の解説のみならず、実際に狂言の舞台で使われるセリフや所作を体験できます。

家や役者によって解説の内容には変化があり、それぞれ独自の項目で楽しく狂言を学ぶことができます。

狂言は、室町期に大成した現存する世界最古のコメディです。

おうぎ鬘桶かづらをけ、棒や太刀程度の最低限の道具と2、3名の役者のみで演じられます。

これが、学校で演じる上での狂言の最大の強み。

つまり最悪の場合は、体育館のステージ上に何も用意せずとも、役者さえ居ればできてしまうのです。

また、狂言では、登場人物は室町期の言葉で会話しますが、日本語の文法がある程度固まったのもこの時期。

聴き慣れないながらも、何故かギリギリ理解できる、という絶妙なラインなのです。

大人は「子供達にいきなり古典を見せても退屈だろう」と考えてしまいますが、これは大間違い!

狂言をみて、笑い転げる小学生にきっと驚かされるはずですよ♪


※鬘桶:能楽で使用する円柱状の漆塗りの桶で、主に腰掛けとして使用する。演目によっては柿の木に見立てて登ったり、荷物として背負ったりすることもある。蓋を盃に見立てて使用することも多い。

体育館が大変身!能舞台はどんなもの?

物の能楽堂

能舞台には、約5m四方の正方形の舞台と、下手側に長く伸びた橋掛はしがかりが存在します。

現代では、能舞台の多くは能楽堂の中に存在しますが、もともとは神社境内等の屋外にありました。

そのため、舞台には屋根が付いていました。

育館の能舞台

先ほど、「何もなくても狂言はできてしまう」と記述しましたが、学校狂言の舞台には主に4通りの種類があります。

① 何もない体育館のステージで演じる
② 舞台の形が分かるよう、4本の柱だけを置く
③ 大規模なセットを持ち込んで、仮設能舞台を作る
④ 学校の近所の能楽堂か劇場で演じる

大抵は、①か②か④で行われます。

予算次第で舞台の豪華さは変化するものの、舞台の質で面白さは変わらないのが狂言の良いところです。

小中学生に大人気の演目3選

ここからは、学校狂言で子供たちから人気のある演目をご紹介します♪

山伏(かきやまぶし)

修行を終えて故郷に戻る山伏やまぶしが、途中で空腹に耐えかねて柿畑で盗み喰いをはじめるところからはじまるお話です。

見回りに来た畑主から隠れるために、柿の木の陰に隠れた山伏。

それを見た畑主は、愚かな山伏をからかうことにします。

「あれは烏じゃ」「あれは猿じゃ」「あれはとびじゃ」と言われて、次々に鳴き真似をする山伏ですが、「鳶は鳴いた後は飛ぶものじゃ」と言われ、追い込まれてします。

おけを柿の木に、扇を木に見立てるなど、狂言のテクニックが詰まった演目です。

山(ぼんさん)

話の展開は、柿山伏に似ています。

知り合いの家に、盆栽に似た盆山という人口の山を盗みに入った主人公が、家の主人に脅されて、犬、猿の物真似をします。

しかし、最後に「鯛の鳴き真似」を求められて追い詰められます。

聴いたこともない、鯛の鳴き真似を頑張る姿が会場の笑いを誘います♪

師(ぶっし)

田舎者が、家に建てたお堂に置く仏像を作ってもらおうと、都を訪れます。

しかし、仏師ではない詐欺師に騙されて、仏像を作ってもらう約束をしてしまいます。

楊枝一本削ったこともない詐欺師は、自分が仏像に化けて騙そうとしますが、だんだんとボロが出てきて遂にばれてしまいます。

詐欺師が仏像に化ける時の変なポーズの連発に、生徒も先生も笑いが止まりません!

学校狂言の申込方法

さて、ここからは実際に学校狂言を自校で開催するための方法をいくつかご紹介します。

ちの学校にも来てくれる!?

学校に狂言を呼ぶ方法はいくつかあります!

① 文化庁の学校巡回公演事業に応募する
② 学校狂言を仲介する業者にお願いする
③ 狂言方に直接依頼する。

小規模な学校の場合、複数校合同での学校狂言も行われています。

まずは、一度連絡してみましょう!

学校狂言に関する連絡先

おわりに

伝統芸能と言うと身構えてしまいがちですが、実はそこまで難しいものではありません。

子供の頃の素直な気持ちで狂言を観ると、案外純粋に楽しめてしまうものなのです。

これが古文に興味を持ったり、歴史に興味を持ったり、他の伝統文化や伝統芸能へ関心を持つきっかけになったりするかもしれません。

他文化理解が叫ばれる近年、まずは自国の文化への理解を深めることがとても重要なのです。

日本について学ぶ入口としても、学校狂言はきっと子供たちに良い影響を与えられるはずですよ!