2013年に日本の「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから、日本の伝統的食文化である「和食」は、世界各地で注目されるようになりました。

同時に和食の「うま味」も注目され世界各地に広がり、今日では世界共通の公用語になりました。

しかしながら、世界共通の公用語になった「うま味」とは一体何なのでしょうか。

また、その「うま味」を世界の人々が楽しむためには、どうしたら良いのでしょうか。

1985年に世界共通の公式用語になった「うま味」-「UMAMI」

1908年に日本の科学者である日本帝国大学の池田菊苗いけだきくなえ博士によって、昆布からグルタミン酸が発見されました。

日本人は昔からお料理を作る際に昆布だしを使っていましたが、恐らく古くから昆布においしさの成分が含まれていると知っていたのではないでしょうか。

そのため池田博士は、この昆布だしに注目をして、おいしさの味の成分を解明する研究を始め、1908年に昆布からアミノ酸の一種であるグルタミン酸を発見し、論文の中でその発見したグルタミン酸を「うま味」と命名しました。

続いて1913年に池田博士の弟子であった小玉新太郎こだましんたろうが鰹節からイノシン酸、そして1957年にヤマサ研究所の国中明くになかあきらが干し椎茸からグアニル酸という2つのうま味成分が発見されました。

これらの発見は1985年に開催された「第1回うま味国際シンポジウム」で、日本語表記の「うま味」が英語表記の「UMAMI」として世界共通の公式用語となりました。

その後、この「うま味」は、国際的にも使用されることになりました。

世界共通の公用語になった「うま味」-「UMAMI」とは

日本で発見された5番目のおいしさの要素

世界共通の公用語になった「うま味」は、5番目のおいしさの要素である味覚です。

元来食事のおいしさを構成する味覚には4つの基本味である「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」があり、この「うま味」は5番目の基本味で、おいしさが舌や口の中で消えた後に長く余韻のように残っている、料理の美味しさを生み出す大事な要素です。

2002年に舌の味蕾みらい※1にこの「うま味」を感じる受容体があることがマイアミ大学のニルパ・チャウダリ教授らによって発見され科学的に立証されたことにより、元来の4つのおいしさの要素に池田博士が発見したおいしさの要素である日本初の「うま味」が5番目の味覚として認定されました。

※1 舌の味蕾: 舌や口の中にある食べ物の味を感じたりする小さな器官

「うま味」とは、一体なに?

「うま味」は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸と、核酸に分類されるイノシン酸やグアニル酸です。

グルタミン酸の成分が多く含まれている食材には、昆布、日本茶、アスパラガス、トマトなどがあります。

イノシン酸は鰹節、豚肉や牛肉、そしてグアニル酸は干し椎茸などに多く含まれています。

つまり、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸が多く含まれている食材には、料理をおいしくしてくれる「うま味」成分が多く含まれていると言うことです。

また、アミノ酸の一種であるグルタミン酸と核酸系のイノシン酸やグアニル酸は、それぞれを単独で使うより、双方を組み合わせて使うとうま味が一層増すことが知られています。

この組み合わせは、「うま味の相乗効果」と呼ばれています。

例えばだし汁を作る際、核酸系のカツオ節(イノシン酸)、あるいはアミノ酸系の昆布(グルタミン酸)だけを使ってだし汁を作るより、両方を合わせて作った方が味わいの深いだし汁になります。

また、豚や牛などの肉類(イノシン酸)とセロリやタマネギなどの野菜類(グルタミン酸)、そして鶏肉(イノシン酸)と白菜やネギなどの野菜類(グルタミン酸)の組み合わせも「うま味の相乗効果」があります。

素材のうま味を引き出すためには、うま味のある複数の素材を一緒に料理で使ったりすると、さらに美味しいうま味が出て来ることが期待出来ます。

混同して使われている「うま味」と「おいしい」

「うま味」の言葉を日本人が使う場合、「おいしい」と言う言葉と混同して使っていることが多いです。

「うま味」は、特定の味質を表す1つの「味」です。

和食の味には、基本的な5つの味である「甘み」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」があります。「うま味」は、基本味の1つで、料理を美味しくする役割があります。

一方、「おいしい」は、単に料理全体のおいしさを表すものです。

頂く料理の味、食感、匂い、盛り付け、その場の雰囲気など、料理とそれを頂く環境全体の要因から感じられるおいしさです。

世界各地域の人々に愛用される「UMAMI」

5番目のおいしさの要素として発見された「うま味」は、池田博士によって発見されてから約100年以上経ちました。

今日では世界共通の公用語 -「UMAMI」として広まっていますが、この「UMAMI」はどのように世界の人々に愛用されているのでしょうか。

「うま味」と密接な関係があるアジアの稲作地域一帯

アジア地域で人々に愛用されている「うま味」には、発酵調味料とサトウキビなどの農産物を原料として作られたうま味調味料があり、現地の様々な料理や食品などに使われています。

発酵調味料は、穀物類や豆類などが主な原料で、それらを塩漬けにして発酵させたものです。

この発酵調味料は発酵の過程で、原料となる穀類や豆類などに含まれているタンパク質がアミノ酸に分解されて、「うま味」であるアミノ酸に含まれているグルタミン酸を沢山含んだ調味料となります。

サトウキビなどの農産物を原料として作られたうま味調味料は、農産物から作られた糖蜜に発酵菌を加えて作られます。

特にアジアの稲作地域一帯で暮らしている人々は、この発酵調味料の「うま味」に塩味が加えられた調味料が毎日の食事で使われています。

例えば、ニョクマムやナンプラーのような東南アジアの魚醤などは、「うま味」成分が多く含まれている代表的な発酵調味料です。

ニョクマムはベトナム産の魚醤であり、ナンプラーはタイ産の魚醤です。

どちらもカタクチイワシの子魚を使って作ります。

これら2つの違いは熟成期間です。

ニョクマムは半年から1年位ですがナンプラーは、最低でも1年は寝かせて熟成させます。

イタリアで古くから愛用されていた「うま味」

イタリアで古くから愛用されていた「うま味」は、「ガルム」や「リクアメン」と呼ばれている魚醤で作られた発酵調味料でした。

この発酵調味料の作り方はアジア地域で作られている魚醤と同じ方法で、主にイワシやサバなどを塩漬けして発酵させて作られます。

発酵した調味料を最初に濾過したもの(一番搾り)が「ガルム」と呼ばれ、琥珀色をしています。

また、この発酵調味料の「ガルム」は、アジアのナンプラーなどと同じように「うま味」に「塩味」を加えた調味料として愛用されていました。

「リクアメン」も主にイワシ類の魚に塩を加えて素焼きの容器の中で醗酵させて作られた魚醤です。

この発酵調味料のガルムはローマ帝国滅亡と共に消えてしまいましたが、今日あるアンチョビーなどは、当時の「うま味」成分が沢山含まれた発酵調味料の名残ではないでしょうか。

世界各地で愛用されているトマトの「うま味」成分

トマトは、「うま味」成分が沢山含まれた食材です。

世界各地で栽培されており、イタリア料理には欠かすことができない食材ですが、意外にもその歴史は新しいです。

英国では、沢山の野菜と一緒に「うま味」成分が多く含まれているトマトを使って、ウスターソースが作られるようになりました。

また、トマトソース、トマトペーストなどに加工されて米国にも伝わりました。

そして、米国では、チリソースケチャップに加工されたりして、トマトの「うま味」成分を含んだ色々な加工食品が作られるようになりました。

「うま味調味料」でうま味を補う

海外では、食材に「うま味」が無くなってしまった場合、その食材に「うま味」を補うために「うま味調味料」を足して使います。

例えば、冷凍保存した肉を解凍して「うま味」が無くなってしまった場合、グルタミン酸が含まれている「うま味調味料」を足して、解凍した肉に「うま味」を補うことで、冷凍保存前と同じような味に戻ります。

おわりに

世界共通の公用語になった日本の「うま味」-「UMAMI」をこれからも世界の人々に親しんでもらうためには、それぞれの国々ならではの「うま味」に寄り添いながら日本の「うま味」の味覚に仕立てて楽しんでもらうことではないでしょうか。

また、世界各地にある「うま味」に寄り添うことは、日本の伝統的な和食文化の持つ「おもてなしの心」ではないでしょうか。