甘味処の定番には、あんみつやかき氷などがありますが、それと同じくらい有名なのが「お汁粉」です。

お汁粉にはその店独自のこだわりが感じられ、お椀に入って登場するお汁粉は、ほっこりと気持ちを落ち着かせてくれますよね。

また、甘味処に行かなくても自宅などで簡単に食べられるように、乾燥小豆などが入っている最中にお湯をかけて食べる「懐中汁粉かいちゅうしるこ」などもあります。

それだけではなく、近年では、レトルトパックや缶、プラスチックのカップや袋入など、さまざまな形で手軽に楽しめるお汁粉がスーパーやコンビニで売られるようになっています。

今回はそんなお汁粉には、どのような歴史があるのか、「ぜんざい」との違いは何かなどをご紹介します。

「お汁粉」とは

汁粉しることは、小豆などを砂糖で甘く煮て、その中に餅などを入れた食べ物です。

お汁粉の起源は江戸時代に誕生した「すすり団子」という料理だと考えられています。

すすり団子は、江戸時代初期(17世紀前半)の料理書、『料理物語』に出てくる料理です。

『料理物語』によると、すすり団子とは、もち米とうるち米を混ぜて作った団子を、小豆の粉の汁で煮て塩味をつけ、さらにその上に高級な白砂糖を少量ふりかけた料理だったとされます。

今のお汁粉は甘いですが、それとは異なり、このすすり団子は塩味の効いた汁物でした。

砂糖をふりかけてあったとしても基本は塩味だったため、当時は酒と一緒に食べられることも多かったといいます。

これがだんだんと甘いお汁粉に変わっていったのですが、どうして甘くなっていったのかは定かではありません。

ですが、江戸時代前期には高級品であった砂糖が、時代を経るにつれて生産量が増え価格が下がっていったことから、江戸時代後期には、黒砂糖などを使った“甘い”お汁粉が登場しています。

江戸時代後期のお汁粉については、『守貞謾稿もりさだまんこう』という当時の文献から知ることができます。

そこには「汁粉売り」という商売が登場し、当時お汁粉は蕎麦やうどんなどと同じように屋台で売られ、さらにお汁粉を売っていた屋台は「正月屋」と呼ばれていたことがわかっています。

「正月屋」と呼ばれた理由は、元は雑煮を売っていたからという説や、正月に餅入りのお汁粉を食べる風習からという説など諸説あります。

「お汁粉」と「ぜんざい」の違いって何?

「ぜんざい」とは?

お汁粉と似たものに「ぜんざい」があります。

関西の文献には室町時代から「善哉ぜんざい」の記載があるようです。

「ぜんざい」という名前の由来も諸説あります。

一つは、相手を褒めるときに使う「善哉(素晴らしい)」という仏教用語から来ているという説です。

これは、室町時代の僧、一休宗純いっきゅうそうじゅんが大徳寺の住職から振舞われた餅入りの小豆汁を、「善哉此汁よきかなこのしる」と言いながら、喜んで食べたと伝わっています。

また、出雲地方でふるまわれていた「神在餅じんざいもち」が訛って「ぜんざい」となったという説もあります。

お汁粉とぜんざいは関東と関西で違う!

お汁粉と呼ばれるものにもさまざまあり、こし餡を使ったものや粒餡を使ったもの、汁気のあるものから汁気の少ないものまでバリエーション豊かです。

では、なぜ同じ名前なのに見た目が違うのかというと、関東と関西では同じ「お汁粉」という名前でも指すものが違うからなんです。

一般的に関東では、汁気のあるものを「お汁粉」、少ないものを「ぜんざい」と呼び分けています。

ですが、それだけではなく店によっては、こしあんのものを「御膳汁粉ごぜんじるこ」、粒あんのものを「田舎汁粉」または「小倉汁粉おぐらじるこ」とも呼ぶこともあります。

一方、関西では、関東とは異なりこしあんのものを「お汁粉」、粒あんのものを「ぜんざい」、そして特に汁気がないものを「亀山」と呼んでいます。

ちなみに、「亀山」と呼ぶ由来は定かではなく、上質な小豆の産地である丹波たんば地方の亀山にちなんでいるという説があります。

このように、「お汁粉」と「ぜんざい」は地域によって呼び方が変わるものなんです。

市販のゆで小豆を利用した簡単レシピ

ここでは、汁気のあるものは「お汁粉」、少ないものは「ぜんざい」として、お汁粉の材料や作り方に触れていきます。

「お汁粉」は、基本的には小豆と砂糖を煮たものをベースに、餅などを加えて作ります。

小豆はこしあんを使っても粒あんを使っても美味しくできます。

また、塩を少々使うと相乗効果で甘みが増してオススメです。

お汁粉の材料(2人前)

・ゆで小豆缶 1缶(200g)
・水 小豆と同量(200ml)
・砂糖 小さじ1~3くらい
・塩 ひとつまみ
・餅 お好みに合わせて


※砂糖や塩の量はお好みに合わせて変更しても美味しく作れます。

お汁粉を作ってみよう!

お汁粉は、ゆで小豆缶を使うととても簡単に作れるんです!

1)水を沸騰させたら、小豆缶・砂糖・塩を入れて溶かして混ぜる。
2)かき混ぜながら5〜10分煮込む。この時、同時にお餅を焼いておく。
3)鍋の中身がトロリとしてきたら、焼いた餅を入れて完成です!

さらに、こしあんのお汁粉の場合は耐熱容器を使うともっと簡単に作れます。

その場合は、こしあんと水を同量耐熱容器に入れた後、ラップなどで密閉して電子レンジで2分ほど加熱したらよくかき混ぜ、餅を入れて完成です。

また、汁の少ない「ぜんざい」にする場合は、あんに対して、水は2〜3割少なめにすると作れますよ。

いずれの場合も、水分の量は好みで加減し、甘さが足りないときは砂糖を足して調整しましょう。

東京と関西のお汁粉有名店

ここでは、美味しいお汁粉が食べられる有名店を紹介します。

お店によって異なる魅力をぜひ感じてみてください。

東京・浅草「梅園」

梅園は、安政元年(1854年)に浅草寺の別院・梅園院の一隅に茶屋を開いたのが始まりという老舗で、屋号もそのゆかりでつけられています。

創業からの名物は元祖「あわぜんざい」で、その名の通りの“あわ”ではなく、“餅きび”を使っています。

餅きびを半搗はんつきし煉りあげて蒸した餅と、じっくり炊いたこしあんを合わせた、シンブルな料理です。

餅の多少の渋みとあんの甘味や香りが調和した味わいで、黄色っぽい餅きびと深みのあるこしあんの色合いも上品です。

住所:東京都台東区浅草1-31-12
アクセス:東京メトロ銀座線・東武伊勢崎線「浅草駅」徒歩2分、JR山手線「日暮里駅」徒歩3分、都営地下鉄浅草線・つくばエクスプレス「浅草駅」徒歩5分

東京・神田「竹むら」

竹むらは、“神田にお汁粉専門の店を”との想いから、昭和5年(1930年)に「しるこ屋」として開業しました。

現在でも、「お汁粉」を中心としたラインナップの甘味処ですが、「揚げまんじゅう」でも有名です。

お汁粉類は種類が豊富で、こしあんの「あわぜんざい」「餅ぜんざい」、粒あんの「田舎しるこ」、黒糖あんの「黒あんしるこ」などがあり、夏場はこれらに代わり「冷やししるこ」が登場し、1年を通してさまざまな「しるこ」が楽しめるのが魅力です。

住所:東京都千代田区神田須田町1-19
アクセス:東京メトロ丸ノ内線「淡路町駅」徒歩3分、都営地下鉄新宿線「小川町駅」徒歩4分、東京メトロ銀座線「神田駅」徒歩4分

東京・神楽坂「紀の善」

紀の善は、昭和23年(1948年)創業の甘味処で、看板メニューの「抹茶ババロア」や「あんみつ」が有名ですが、「お汁粉」も人気です。

お汁粉は、こしあんの「御膳しるこ」、粒あんの「田舎しるこ」のほか、くり餡の「くりしるこ」、くるみ餡の「胡桃しるこ」など、他所にはないさまざまなバリエーションのお汁粉が楽しめます。

住所:東京都新宿神楽坂1-12 紀の善ビル
アクセス:東京メトロ有楽町線・南北線「飯田橋駅」徒歩2分、JR総武線「飯田橋駅」徒歩3分

京都・下鴨「茶寮 宝泉」

茶寮 宝泉は、昭和27年(1952年)創業の老舗和菓子店「宝泉堂」が京都・下鴨の住宅街で営む甘味処です。

日本庭園が目前に広がるお座敷で、風情を感じながらお茶と和菓子が味わえます。

夏場は、丹波大納言小豆を使った「冷やしぜんざい」のほか、希少な白小豆を使った「冷やし白ぜんざい」もいただけます。

「ぜんざい」のほか、極上の「わらび餅」が特に有名で、京都一ともいわれています。

住所:京都府京都市左京区下鴨西高木町25
アクセス:市バス・京都バス「下鴨東本町バス停」徒歩3分、京阪電車「出町柳駅」徒歩20分

京都・祇園「かさぎ屋」

かさぎ屋は、大正3年(1914年)創業の甘味処で、初期の頃には画家として有名な竹久夢二たけひさゆめじも通ったといいます。

風情が感じられる二寧坂の石段脇にある店は、店内に夢二の水墨画が飾られ、大正時代のレトロな雰囲気が漂っています。

希少な丹波大納言を昔ながらの“かまど”で丁寧に炊き上げた「東京御膳志る古」「小倉志る古」「京都ぜんざい」のほか、水分をしっかり飛ばした「亀山」もオススメです。

かさぎ屋の「亀山」は、大きめの椀の中に焼いたお餅、その上にたっぷりと大粒の小豆が乗っていて、食べ応えも充分。

柔らかく炊き上げられた小豆は、ほどよい甘さの素朴な味わいを楽しめます。

住所:京都府京都市東山区桝屋町349
アクセス:京阪電車「祇園四条駅」徒歩15分

おわりに

意外と知らないお汁粉のお話はいかがでしたか?

地域や作り方によって呼び名が変わることや、一口にお汁粉と言っても、小豆の状態でさまざまな種類があることがわかりましたね。

夏は冷やして、冬は温めて、1年を通して楽しめるお汁粉。

シンプルながら奥が深い、日本ならではの美味しい甘味を、ぜひ味わってみましょう。