炊き込みご飯は、季節の食材の風味や旨味の染み込んだご飯を楽しめる、おもてなしにも最適なごちそうです。

炊き込みご飯を炊いているときから良い香りが漂い、ふたを開けた瞬間、ご飯の上で艶やかに輝く具材を見れば、歓声が上がりますし、ほおばるとじんわり幸せな気持ちになりますよね♡

そんな炊き込みご飯には、実は長い歴史があります。

奈良時代にはかさを増やすためにあわを一緒に炊いた「粟ご飯」が誕生し、江戸時代には、カニやタケノコなどの季節の食材を炊き込み、現代のような季節や味を楽しむ料理としても広まりました。

この記事では、神保町で郷土料理屋を営む女将さんに監修いただき、基本の炊き込みご飯からアレンジしたものまで、気軽に炊飯器で炊ける炊き込みご飯のレシピをご紹介します!

女将さんが教える、炊き込みご飯を美味しく作る“コツ”

炊き込みご飯には、美味しく作る5つの“コツ”があります!

1)水(出汁)と調味料を合わせて計量する
水(出汁)と調味料を合わせてから、いつもの炊飯器の目盛に水分量を合わせてください。
お好みで米の1、2割増しの水分量にするのもオススメ♪

2)米に吸水させる
炊飯器はだいたい吸水時間も込みで炊き上がりますが、鍋で炊く場合は吸水が必須!
(できれば30分~1時間)

3)米の上に具材を乗せて炊き、炊き上がるまでかき混ぜない
こうすることで、炊きムラが出来るのを防ぐことができます。

4)素材に合わせた下処理をしてから炊く
肉に下味をつけておく、魚を焼いたり湯通ししておくなど、素材に合わせて下処理を行うことで、旨味を閉じ込めたり、臭みを抑えたり、より美味しくご飯を炊き上げることができます!

5)炊き込みご飯の味付けの目安は、薄めの汁物(お吸い物)くらいの味にする
炊き上がりは予想以上に濃くなります!
炊き上がりに塩や醤油を少し混ぜて調整ができるので、炊く前は薄いかな?くらいで様子をみましょう♪

この5つのコツを踏まえて、さっそく炊き込みご飯に挑戦してみましょう!

基本の五目炊き込みご飯 

それでは、まずは基本の“五目炊き込みご飯”からご紹介します♪

目炊き込みご飯の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2鶏肉100g
※ムネでもモモでも可
3ごぼう1/4本
4人参1/3本
5干し椎茸(スライス)10g
6油揚げ1枚
7かつお出汁320cc(常温でも暖かくてもOK)
※水に顆粒だしを入れたものでも可
8三つ葉1/4束
☆調味料【A】(鶏肉の下味用)
1濃口醤油小さじ1
2小さじ1
★調味料【B】(炊き込み用)
130cc
2醤油大さじ1と1/2
3小さじ1/2
4みりん大さじ1
5おろししょうが小さじ2
※チューブタイプのものでも可

女将さんからのメッセージ
お料理のレシピに良く出てくる、“濃口醤油”や“薄口醤油”という表記。
実は、いわゆる普通の醤油はだいたいが濃口醤油なんです。
ちなみに、色の薄い薄口醤油ですが、塩分濃度は18〜19%と高いため、濃口醤油(塩分濃度16〜17%)を使った時よりもしょっぱくなります!

目炊き込みご飯のレシピ

1米をといで、ザルにあげておく。(10分くらい)
干し椎茸をかつお出汁 に浸けておく。
2鶏は小さくぶつ切りにして、☆調味料【A】をもみこむ。
3ごぼうは“ささがき”にして水にさらす。
人参と油揚げは千切りにしておく。
4【1】の出汁から干し椎茸を引き上げる。
★調味料【B】とかつお出汁を合わせる。
5【1】の米を炊飯器に入れ、【4】の出汁を390cc(お米の1割増し)計って入れる。
米の上に【2】、【3】の具、【4】の干し椎茸を散らして、ふたを閉める。
6炊飯器に従って、普通の炊飯モードで炊く。
炊き上がったら軽く混ぜ、彩りに三つ葉を刻んで乗せる。


真鯛の炊き込みご飯(鯛めし)

“鯛めし”は、真鯛を炊き込んだ上品な炊き込みご飯で、愛媛県松山市の郷土料理でもあります。

炊き込む前に、鯛を焼く手間はありますが、このひと手間が炊き込みご飯をグッと美味しくさせるんですよ♪

鯛の炊き込みご飯(鯛めし)の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2真鯛切り身2切れ
※1切れ120~150gのものを使用
※ご飯と混ぜる時に骨を除く手間が省けるので、骨があまり付いてないもの推奨
3小さじ1/2
※真鯛の切り身に振る用
4340cc
5昆布5cm×10cmくらい
6生姜1かけ
7三つ葉少々
★調味料(炊き込み用)
150cc
2小さじ1/3
3薄口醤油大さじ1


女将さんからのメッセージ
このレシピでは、真鯛の白さを綺麗に活かすために薄口醤油を使っていますが、塩分濃度的に薄口を濃口に置き換えてもしょっぱくなるわけではありませんので、炊き上がりの色は濃くなりますが普通の醤油でも問題ありませんよ♪

鯛の炊き込みご飯(鯛めし)のレシピ

1米は洗って、ザルにあげておく。
2真鯛の切り身に塩を振り、魚焼きグリルかフライパンで皮目からこんがり焼く。
皮目を焼いて香ばしさを出し、旨味を閉じ込め、臭みを抑えることが目的のため、火の通り方は半生で良い。
3昆布は15分ほど水に浸けておき、昆布出汁を作る。
※昆布が柔らかくなり、水に色が少し付くくらい
生姜は細い千切りにする。
4炊飯器に米を入れ、★調味料、【3】の昆布出汁を昆布ごと入れる。
【2】の焼きあがった真鯛を米の上に乗せ、【3】の生姜を散らす。
5ふたをして、普通の炊飯モードで炊飯する。
炊き上がったら、真鯛をほぐしながらさっくり混ぜ、刻んだ三つ葉を乗せる。


鯛の炊き込みご飯(鯛めし)のアレンジレシピ

真鯛の炊き込みご飯は、水の代わりに真鯛のアラ(骨や頭)で取った出汁を加えると、さらに味わいが深くなりますよ。

真鯛のアラ出汁の取り方

1真鯛の中骨、頭はエラや血合いなどを洗い、塩を振って5分くらいおく。
2沸騰したお湯に【1】の真鯛のアラをさっとくぐらせ、ザルにあげる。
流水でウロコなどを洗い流す。
3小鍋に【2】のアラ、酒50cc、生姜スライス1/2かけ分、ネギの青いところ1本分を入れ、かぶるくらいの多めの水を入れて火にかける。
4沸騰したら、アクを引き、弱火にして、20分くらいコトコトと旨味を煮出す。
5ザルとキッチンペーパーで濾して完成。

女将さんからのメッセージ
【5】で濾した出汁を塩と醤油少々で味付けし、残った鯛めしにかけて、鯛だし茶漬けとして食べるとまた違った楽しみ方ができますよ♪

きのこの炊き込みご飯

ここでは、簡単に作ることができる“きのこの炊き込みご飯”のレシピの他、松茸ご飯やアレンジレシピをご紹介します!

のこの炊き込みご飯の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2しめじ1/2パック(50g)
3椎茸4本
4舞茸1/2パック(50g)
5出汁350cc
※水に顆粒だしを入れたものでも可
★調味料(炊き込み用)
1濃口醤油大さじ2
2みりん大さじ1
3小さじ1/3


のこの炊き込みご飯のレシピ

1米を洗ってザルにあげておく。
2しめじと椎茸は石づきをとる。
椎茸は扇形に4つに切る。
しめじと舞茸をほぐす。
3米を炊飯器に入れ、出汁と★調味料を合わせて入れる。
【2】のきのこを乗せて、ふたをして炊飯する。
4炊き上がったら、さっくり混ぜる。


女将さんからのメッセージ
皆さん、きのこを調理する際に水洗いをしますか?
実は、一般的な市販のきのこ類は菌床栽培で清潔な環境で育つため、基本的に洗わなくて大丈夫なんです。
気になる汚れはペーパータオルや布巾などで拭き取ればOK。
きのこ類は洗うと旨味や栄養素が流れてしまう上、水分で傷みやすくなるのであまり洗わない方が良いのです。
ただし、山から取ってきたような天然きのこは泥や葉っぱがついているのでさっと流水で洗ってください。
また、虫がついているので、塩水につけて虫出ししたり、塩水を入れ替えながら洗い、洗った後は拭いて乾かします。
そのまま放置・保存していると傷みが早いので注意が必要です!

のこの炊き込みご飯のアレンジレシピ

きのこの炊き込みご飯には、鶏肉や鮭、ツナを一緒に炊き込むのもオススメです!

また、松茸ご飯も同じ要領で炊くことができます。

松茸は、石づきの部分を鉛筆を削るように表面の固いところだけ削ります。

表面の汚れを軽く拭き、切らずに手で裂くと食感が良くなりますよ♪

あとは、きのこの炊き込みご飯と同様に炊いてください。

女将さんからのメッセージ
松茸を調理する際は、固く絞った布巾で表面を拭く程度にします。
焼き松茸を作る時は、風味づけに酒塩(酒に塩を入れた物)でさっと洗います。
松茸の香りや風味を逃さず、引き出すための手法なのですが、表面の汚れが気になる方は、酒塩で洗うのも良いかもしれませんね♪

沖縄風豚肉の炊き込みご飯(ジューシー)

沖縄の郷土料理には、“ジューシー”と呼ばれる豚肉と野菜、昆布などを入れた炊き込みご飯があります。

お祝い事や法事、お弁当や食堂のメニューなどでよく食べられる定番料理で、かつお出汁と豚肉の味わい深い炊き込みご飯です♪

縄風豚肉の炊き込みご飯(ジューシー)の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2豚バラ肉100g
3かつお出汁2カップ(400cc)
※200ccカップ使用
※水に顆粒だしを入れたものでも可
4人参1/6本
5乾燥ひじき5g
6乾燥刻み昆布(細切り)3g
7紅しょうが少々
8カット小ネギ少々
☆調味料【A】(味付け用)
1醤油大さじ2
2みりん大さじ2
3大さじ2


縄風豚肉の炊き込みご飯(ジューシー)のレシピ

1米を洗ってザルにあげておく。
2豚バラ肉は1cm×1cm×3cmくらいの細切りにする。
かつお出汁に☆調味料【A】、切った豚肉を入れ、アクを取りながら10分くらい煮る。
3人参を千切りにする。
ひじきは水に浸けて戻す。
4【1】の米を炊飯器に入れて、【2】の豚肉の煮汁(2カップ)を加える。
昆布、ひじき、人参、茹でた豚肉を上から乗せ、ふたをして普通に炊飯する。
5炊き上がったらさっくりまぜる。
好みでカット小ネギ、紅しょうがをトッピングする。


パエリア風あさりの炊き込みご飯

外国にもピラフやパエリア、ビリヤニなど、炊き込みご飯のような料理は多く存在します。

ここでは、あさりを使った炊飯器で炊けるパエリア風の炊き込みご飯や洋風炊き込みご飯のアレンジ例をご紹介します。

鍋やフライパンで炊くのは火加減がちょっと難しいと思いますが、炊飯器で炊けば簡単ですよ!

エリア風あさり炊き込みご飯の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2あさり(殻付き)400g
3玉ねぎ1/2個
4にんにく2粒
5トマト1/2個
6オリーブオイル大さじ3
7白ワイン100cc
8サフランほんのひとつまみ
※あればでOK
9360cc
10ブイヨンの素1個
※コンソメ・鶏ガラスープの素でも可
11小さじ2/3
12胡椒少々
13パセリ少々


エリア風あさり炊き込みご飯のレシピ

1米は洗ってザルにあげておく。
2あさりは砂抜きをして、殻をこすり合わせて洗っておく。
玉ねぎ、にんにく、トマトはそれぞれみじん切りにする。
3フライパンにオリーブオイルを入れ、【2】の玉ねぎ、にんにくを炒める。
【2】のあさりを入れ、白ワインを振って強火にし、沸騰したらふたをする。
4あさりの口が開いたら、あさりを取り出し、米、サフランを入れて中火で炒める。
5米が透き通ったら、汁ごと炊飯器に移す。
水、ブイヨン、トマト、塩、胡椒を入れ、軽くかき混ぜて普通に炊飯する。
6炊き上がりにあさりを戻し入れ(むき身にしても良い)10分くらい蒸らす。
ざっくりまぜて盛り付け、パセリを散らす。


女将さんからのメッセージ
海老やイカ、牡蠣なども入れるとさらに旨味アップ!
あさりを白ワインで煮るときに一緒に煮ておき、あさりと共に後乗せすると具が縮みません。

風炊き込みご飯も炊飯器で簡単に!

あさりのパエリアと同様に、ピラフも炊飯器で簡単に炊くことができます。

ピラフは米を炒めてから、スープを入れてフライパンや鍋で炊く料理ですが、炊く行程は炊飯器に任せてしまいましょう♪

1 海老や玉ねぎ、きのこなどの具をバターやオリーブオイルで炒めて一旦取り出し、米を入れて炒めます。
2【1】で炒めた米を炊飯器に入れ、米の分量に合わせた水、ブイヨンかコンソメスープ、塩コショウなどの調味料を入れ、上に【1】の具を乗せて普通に炊飯します。


鯖缶炊き込みご飯

おかずが少ない時やお弁当やおにぎりに、缶詰を使った簡単炊き込みご飯は重宝しますよ!

ここでは、鯖缶を使った炊き込みご飯をご紹介します♪

缶炊き込みご飯の材料……2人分

12カップ(2合)
※180ccカップ使用
2生姜1/2かけ
3大葉10枚
4鯖缶(水煮)1缶
5360cc
6カット小ネギ少々
☆調味料(炊き込み用)
大さじ2
2みりん大さじ1
3醤油大さじ2


缶炊き込みご飯のレシピ

1米をといでザルにあげる。(10分くらい)
2生姜、大葉は細い千切りにする。
3☆調味料、鯖缶の汁、水を合わせて、炊飯器の目盛り2合分まで入れる。
4【1】の米を炊飯器に入れ、【3】、鯖、を入れる。
【2】の生姜を散らす。
ふたをして、普通に炊飯する。
5炊き上がったら、さっくりと混ぜ、大葉を混ぜ込む。
盛り付けて、小ネギをトッピングする。


詰を使った簡単炊き込みご飯のご紹介!

鯖缶の炊き込みご飯と同様に、蟹缶、ホタテ缶、ツナ缶、おつまみ用の牡蠣の佃煮缶などを使っても美味しい炊き込みご飯が出来ますよ!

【豆知識】炊き込みご飯と混ぜご飯との違い

具材がたくさん入っていて、味がついているご飯として似ていますが、炊き込みご飯と混ぜご飯の違いとは何でしょうか?

炊き込みご飯

具材と調味料を米と一緒に炊いたご飯。

食材の旨味や風味、出汁を含んだお米そのものにも味わいのあるご飯です。

また、おこわはもち米を使い、具材と調味料と一緒に蒸して作ります。

混ぜご飯

炊いた白飯に、味付けをした具材や調味料を混ぜ込んで仕上げるご飯。

ひつまぶしのように焼き魚を混ぜたり、手ごね寿司のようにお刺身を混ぜたり、ゆかりやひじきを混ぜ込んだりとバラエティーに富んでいます。

おわりに

基本からアレンジまで、手軽に作ることのできる炊き込みご飯のレシピをいくつかご紹介しました。

炊き込みご飯は、基本の作り方をマスターすれば、炊飯器でも失敗しないで簡単に美味しく炊くことができます。

基本の五目炊き込みご飯などに慣れたら、洋風炊き込みご飯や缶詰を使った炊き込みご飯、アレンジレシピにもどんどん挑戦してみてください!

季節の食材を楽しめるので、おもてなしやお弁当にも喜ばれますし、その楽しみ方は自由自在ですよ♪

保町の女将さん

今回、炊き込みご飯のレシピの監修をしてくださったのは、神保町で和食店「郷酒ごうしゅ」を営む女将さんです!

東北を中心とした日本各地の郷土料理や季節食材を活かした素朴な和食とともに、こだわって集めた全国の地酒や焼酎などを味わえるお店です。

神保町の近くに来た際は、ぜひ足を運んでみてください♪

店名郷土料理と日本酒のお店 郷酒
住所〒101-0051
東京都千代田区神田神保町3丁目5
ニュー徳栄ビル B1F
電話番号03-6272-9867


保町の女将さん監修の料理レシピ記事

神保町の女将さん監修のお料理レシピを紹介した記事はこちらからご覧いただけます。

ワゴコロ編集部でも女将さん直伝レシピで作ってみましたが、とても美味しくできましたよ♪

ぜひ、トライしてみてください!