日本六古窯の一つである備前焼

備前焼は日本六古窯に数えられる炻器せっきです。

炻器は、叩くと金属的な音がすることは磁器に似ていますが、透光性がない点は陶器と同じです。

その点で、陶器と磁器の中間のような性質を持っています。

また、土の地肌の風合い、浮彫りやレリーフ等の装飾は、陶器や磁器にはない魅力を持っています。

今回はそんな炻器の中でも日本の伝統とも言える備前焼について、ご紹介したいと思います。

備前焼の特徴

備前焼に使われる土は、山土、ヒヨセ(田土)、黒土と主に3種類あります。

山土は山から取れ、ヒヨセは山土が堆積した田から取れ山土よりも粘度があります。

そのヒヨセよりさらに有機質を多く含んだものが黒土と呼ばれ、伊部地方周辺の水田下のわずか場所からしか採れません。 

作家は自分の好みや作品に応じて山土や黒土をヒヨセに混ぜ使い分けます。
 
ひよせは粘りがあって、耐火度が低く、焼成による収縮率が高いため、釉薬ゆうやくを用いなくても水が漏れないという特徴があり、この特徴を活かした技法は「無釉焼き締めむゆうやきしめ」と呼ばれています。

焼き上げ後は、燃料の灰・土に含まれる金属と火の科学変化や、窯詰めによって様々な変化が現れ、石のような質感や、赤く色づいた表情は非常に魅力的です。

窯変

窯変ようへんとは、字の如く窯の中で焼き物に起こる変化のことです。

変化の種類によって分類され、固有の名前で呼ばれることもあります。

また、その発生は偶発的に起きたものから人為的に行われたものまで多岐にわたります。

緋襷

元々は、作品を焼き上げる時に、表面が他のものに触れてくっつくのを防ぐためにワラを間に挟みサヤ(密閉された空間)に入れて焼いたものです。

直接炎や灰にあたらなかった表面は薄茶色になり、ワラが当たった場所は科学反応を起こして緋色に発色し、それが赤い襷をかけたようだったため緋襷と呼ばれるようになりました。

最近は、電気窯(サヤなし)で焼かれたりするようです。

胡麻

焼成中に薪の灰がくっついてできるゴマのような模様の事。

中には、多くかかった灰が熱で溶けて流れ落ちて固まったものがあり、「玉だれ」と呼ばれています。

また、胡麻の色は青・黄・黒・茶・白と多彩で、その要因としては、窯の形状、焼成方法・薪の種類などが考えられています。

本当に胡麻を振りかけたような微塵胡麻、飛び胡麻、糸胡麻など様々な形状模様がある一方、窯入れの前に予め人為的に松灰をかけてから窯詰めする人工胡麻なども存在するようです。

但し、専門家が見ると、自然か人為的かの判別は可能です。

自然の物は火の勢いで
吹きつけられ、力強い形状の胡麻ですが、人為的な物にはその力強さが無いそうです。

カセゴマ

別名「榎肌・メロン肌」炎の流れが早い場所で、薪の灰が完全に溶けきらずに付着した際に見られます。

その肌は本当にメロンのようです。

棧さん切り

窯の部屋同士をつなぐ穴周辺に置かれた作品に灰などに埋もれてできます。

白、青、黄色などの色変わりのコントラストがつきます。

青備前

通常、酸素量を十分にして酸化焔焼成さんかえんしょうせいによって焼き上げるため、色は赤くなりますが、中には酸素が不十分な状態で還元焼成されたものもあり、それらは青から黒色に焼けるため青備前と呼ばれています。

青備前にはきや灰に埋まったり、強い火によって器物の中で蒸し焼きになった時、青灰色になった自然青と、焚き上がる食前に食塩を焚き口から食塩を投げ込んで作られた食塩青があります。 

その他にも、白ゴマ、カセゴマ、コゲ、被せ焼き、ボタモチ、抜け、コロガシ、石ハゼ、黒備前、金・銀、などの窯変があり、そのバリエーションは作家たちによって淘汰され継承されていくことでしょう。

窯の種類

登り窯

段々と斜面に部屋が連なった形の窯、薪を使って1週間から2週間かけて焼き上げます。

緋襷や、ゴマ、棧切りなどの窯変がみられません。

穴窯

斜面に仕切りのない独立した筒状の形の窯です。

カセゴマや、緋色が出やすいです。

電気窯

部屋がひとつの窯です。

緋襷やカセゴマは取れますが、灰がないので、他の窯変は取れません。

備前焼はどこで入手できるの?

備前焼は岡山県備前市内に窯を構えている作家が多く、直接窯元を訪ねれば実際に手にとっていただけます。

インターネットを探せば通販で買えるところもありますが、作品は一つひとつ表情が違いますので、やはり現地で自分の目で確かめた方が良いでしょう。

オススメ窯巡りコース

備前市の中でも特に伊部地区というところに多数の窯元が在ります。

じっくり一つひとつみていると1日では時間が足りませんので、まずはJR伊部駅併設の備前焼伝統産業会館に行ってみてください。

この施設には備前焼の窯元さん、作家さんたちの作品が集められていて、ゆっくりと自分の好みのテイストや、作風、作家さんの個性を吟味できます。

こちらである程度目的の作家さんを絞ってから、1階のインフォメーションセンターで地図を入手して散策に出かけると効率よく周ることができると思います。

備前祭り

備前焼伝統産業会館では定期的にオークション市が開催されているようです。

作家さんの独特な性の強い作品や、1点ものなどを狙われる方は、あらかじめスケージュールを確認されると良いでしょう。

また、10月の第3土曜・日曜には伊部駅周辺で備前焼祭りが開催されています。

普段よりも安く手に入れることができたり、人間国宝に指定された名工の作品入りの福袋が発売されたりと見所は満載なのですが、この期間は多くの備前焼ファンが集まり混雑が避けられないので、こちらも十分余裕を持っていくことをオススメします。

備前焼の魅力

熱しにくく冷めにくい、香りも逃さない器とは?

備前焼は内部の緻密な構造のため比熱が大きいという特徴があります。

比熱とは、1kgの物質の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量のことで、比熱が大きいということは、温度上昇に必要な熱量が大きいということです。

ですのでコーヒーを入れても冷めにくく、さらには内部に空いた気孔に空気が詰まることによって香りを逃がしません。

また表面の凸凹はビールをゆっくり注ぐことによって高い発泡能力を発揮しきめ細かい泡が立ちおいしくいただけます。 

さらにこの凹凸は食べ物を入れた際にも、密着することがないため、お箸などで掴んだり取ったりしやすいといった効果もあります。

焼き締めされた器はたっぷりと水に浸してから使うことで鮮やかさが増しますが、釉薬のかかっていない表面に油物などを直接置いてしまうと、シミになることがあるので葉物を敷いたりすると良いそうです。

これは備前焼に限らず、炻器類には直接おくと変色することがあるようです。

使い込むことで変化する肌触り

先出の凹凸は、使い込むことで角が取れ使えば使うほど味わいが増していきます。

また、他の陶器と比べると釉薬もかけずに高度で焼きしめられるため頑丈に仕上がっているので、少々荒い扱いをしても割れることなく、長きにわたって変化を楽しむことができるのも魅力のひとつです。

おわりに

備前焼をご存知の方も、まだこれからという方も、ぜひ一度現地に赴いて間近で見てみるのをオススメします。

備前焼で作られた案内板や、赤い煙突が所々に立っている街並みは、多くの方々にとっての非日常であるとともに、作家たちの日々の試行錯誤の末に生み出される器たちとを結びつけてくれる貴重な機会になると思います。

作り手たちの吸っている空気を直に感じ、作家の思いに触れることで、生活に思いがけない嬉しい変化が起きるのではないでしょうか。