茶道と聞いて、なんとなく堅苦しいイメージを持っていらっしゃる方も多いと思います。
しかし、少しミスをしたからといって、咎められるようなことはありません。
とはいえ、何も知らずに茶事やお茶会などに出席するのはやっぱり怖いですよね…。
今回は、お茶会が初めてという方にも安心して出席できるように、お茶会の流れを通し、茶道の作法やマナー、ルールについて大切なポイントをわかりやすくご紹介します。
茶道とは、亭主が美味しいお抹茶を点て、客人に振る舞う日本の伝統的な芸道の一つです。日本の時代背景に強く影響を受けており、世代を超えて現在まで継承されています。人との交流を大切にしながら自分自身と向き合うことで、心を豊かにし、人間性を磨くことができる茶道。今回は、茶道とは何か、歴史や作法、流派、道具などをご紹介します。
茶道の作法~まずはこれだけおさえておこう!~
お茶会を開かれる亭主の方が、どの流派に属していらっしゃるかによって、お抹茶や茶菓子のいただき方も少しずつ異なります。
今回は、三千家のひとつである裏千家のお茶会に流れに沿って、ご説明しましょう。
千利休を始祖とする茶道の流派には「三千家」と呼ばれる表千家・裏千家・武者小路千家の代表的な流派の他にもいくつかの流派が存在します。この記事では、茶道のそれぞれの流派の違いや特徴について詳しく説明します。
お 抹茶のいただき方
茶道で点てられる「お抹茶」には、濃茶(お濃茶)と薄茶(お薄)の2種類があります。
一般的なお茶会で点てられるのは、薄茶の場合がほとんどですので、薄茶のいただき方について覚えておけば心配ありません。
まず薄茶が正客側から順に回ってきます。
自分の前に茶碗が置かれたら、お茶を運んでくださった方と同時にご挨拶をしましょう。
そしてお茶をいただく前に、下座の方に向かって「お先に失礼いたします」と会釈しましょう。
右手でお茶碗を取り上げ、揃えた左手の平の上に置きます。
そして右手で時計回りに2回ほどお茶碗を回します。
先ず一口飲み、その後はゆっくりと最後まで飲み干してください。
だいたい3口くらいで飲み干せば大丈夫です。
また、最後の一口は「ずっ」と音を立てることが、飲み終わりましたという合図になります。
飲み終わったら親指で飲み口を軽く拭きます。
そして、飲む前と逆の方向(反時計回り)に右手でお茶碗を回します。
最初に出されたお茶碗の正面にあたる絵柄が、自分とは反対に向くようにお茶碗を戻します。
飲み終わってしばらくすると、お茶碗を取りに来られて、次の方に順番が回っていきます。
この時、お茶碗を取りに来られるまでに余裕があれば、お茶碗をゆっくりと手に取り、絵柄などを見せていただきましょう。
あってはならないことなのですが、万が一お茶碗を落としてしまった時のことを考えて、少し低い姿勢をとることが大切です。
全ての方が飲み終わると、お点前終了となります。
茶 菓子のいただき方
亭主と正客とのお話が進むと、茶菓子(和菓子)がのせられた菓子器が正客から順に回されます。
自分の番が来たら、自分より下座に座られている方々に向けて「お先に失礼いたします」と言いましょう。
その後、菓子器に添えてある箸で懐紙に茶菓子をのせます。
茶菓子を取った箸を懐紙で拭いて綺麗にし、もとの位置に戻し、下座へ回します。
皆が茶菓子を取り終わったら、まず正客が茶菓子を口にします。
その後、楊枝で茶菓子を懐紙の上で切り分けましょう。
もし茶菓子を全部食べきれない場合は、懐紙に包み、持ち帰ります。
その場に残して帰るのはタブーとされています。
茶道(お茶会)の服装について
絶 対に着物じゃないといけないの?
茶道というと着物を着ているイメージが多いのではないでしょうか?
もちろんお茶会は和室で行われ、古くから親しまれている日本文化ですから、着物が1番好ましい格好です。
とは言っても、着物を日常的に着られている方はどんどん少なくなっています。
お茶会でも、必ず着物を着なくてはいけないというルールはありません。
もしお洋服で出席される場合は、ワンピース・スーツ・きちんとした格好を心がけるようにしましょう。
女性の場合は、ワンピースやブラウスと膝丈程度のスカートなどがオススメです。
男性の場合、スーツでお茶会に出席される方も多くいらっしゃいます。
無地のスーツにあまり派手過ぎないネクタイが1番好ましいですが、襟付きのワイシャツにブレザーなどでも大丈夫です。
基本的には、ミニスカートやジーンズ、露出度の高い格好などを避けることを意識するようにしましょう。
ただ、男性も女性も守らなくてはならないのは、白い靴下を着用するということです。
着物の場合に白足袋を履くのと同様、洋服の場合も白靴下を履かなくてはなりません。
これから着物を着たいと思っている人にとって1番の悩みは、洋服と違って「着物にはたくさんの種類があり、どの着物を着ればいいのか分からない。」といった事ではないでしょうか?
着 物を着る場合、どんなものを選べばいい?
まず茶道のルールとして、外の汚れを茶席に持ち込まないという考えから、足袋は白足袋を履くことが決められています。
また、半襟も基本的には白いものを選んでおいた方が良いでしょう。
次に着物の選び方をご紹介します。
着物といっても、付下げ・訪問着・色無地・小紋等など多くの種類があります。
お茶会に着物を着られていく場合、お茶会の種類や格式に応じて、ふさわしい着物を選ぶことが必要になります。
しかし、着物必須なお茶会というのは特にはありません。
最も華やかな場である初釜であっても、お洋服の方もいらっしゃいます。
今回は、着物を着付ける際によく耳にする各部分の名称、着付けの際に必要な小物や着物のサイズの選び方などについて詳しく紹介していきます。
茶 道の初釜に着ていく着物
初釜とは、新年に初めて釜を開き、最初に行われるお茶会のことです。
大変華やかなお茶会ですので、訪問着や付下げなど、華やかな色柄の着物を選ぶのがベターです。
帯は、格調高い柄の袋帯を合わせるのがオススメです。
また、若い方は成人式の時の振袖などを着ていかれると、場が華やかになり喜ばれます。
茶 道の月釜や親しい間柄同士の茶会に着ていく着物
月釜とは、毎月決まった日にちに行われるお茶会のことです。
訪問着、付下げを選んでも良いですが、色無地や江戸小紋の着物でも大丈夫です。
帯は、古典柄などの袋帯を選びましょう。
茶 道のお稽古や野点などに着ていく着物
初釜とは違い、あまり格式高い訪問着などを着てしまうと、浮いてしまうこともあります。
小紋や紬などの普段着とされる着物で十分です。
帯も洒落袋帯や名古屋帯などの、あまり仰々しくない帯を選ぶことを心がけます。
出席されるお茶会がどのようなものかわからない場合は、ご招待くださった方や慣れている方に、事前にアドバイスをいただくことも大切です。
どんな雰囲気のお茶会なのか伺ったうえで、着物や帯を選ぶようにしてみてください。
また季節によっても着物の選び方は変わってきます。
・肌寒くなった9月の後半〜5月半ば頃まで…袷裏地のついている着物
・初夏にあたる5月後半〜6月と晩夏にあたる9月は…単裏地がついていない、透けない1枚仕立ての着物
・真夏の7・8月…絽や紗透け感のある夏物の着物
季節による着物の記事の選び方はだいたいで構いませんが、ぜひ参考にしてみてください。
男性の場合はスーツの方も多く見られます。
着物を着ていく場合は、紋付の着物に袴を合わせるという正装が好まれます。
茶道のお茶会に呼ばれたら、せっかくの機会なので着物で参加したいですよね。
しかし、「着物っていろいろあって難しそう」、「どんな着物を選べばいいか分からない」と思いませんか?
たしかに、お茶会にふさわしい着物、NGな着物がありますが、ポイントさえ押さえれば難しいことはありません。
お茶会の持ち物について
まずはお茶会に出席する時に必ず持っていなくてはならない、5点セットをご紹介します。
少しずつ他のお道具を集めていくのも楽しいですが、まずはこの5点だけ持っていれば心配ありません!
「懐紙」は、茶会や茶道の稽古でお菓子をいただく際の受け皿やナプキンとして必ず使う道具です。そのため、茶道を習い始めた方が初めて購入する道具の一つでもあります。また、懐紙には男性用と女性用があるのをご存知でしょうか?この記事では、茶道で必須となる懐紙のさまざまな種類や、意外な使い方についてご紹介します。
お茶会当日の流れについて
席 入りの時間より少し早めに到着
お茶会の場に遅刻していくのは厳禁です。
身支度などの準備もあるので、早めに到着するよう心がけましょう。
席入りの時間が決まっている場合は、遅くとも30分前には受付を済ますようにしましょう。
茶 券を渡す、芳名録に記帳
受付で茶券を係の方に渡し、芳名帳に記帳します。
茶券とは、お茶会に出席するために必要なチケットのことです。
お茶会の開催が決まり次第、お茶会の主催者や茶道具屋さんなどから販売されます。
控 えの部屋で身支度を済ませる(靴下を履き替えるなど)
受付を済ませると、寄付という控えの部屋に通されます。
時計やアクセサリーなどを身につけている場合は、この控え部屋で外し、風呂敷に入れて預けておきましょう。
また、洋装の場合はストッキングの上から白い靴下を履きます。
茶室で足の指が見えてしまうのは失礼とされているためです。
着物の方は、白い足袋に履き替えましょう。
とはいえ、いちいち足袋を履き替えるのも大変です。
そのため、白足袋の上から足袋カバーを履いてきて、この控え部屋で足袋カバーを脱ぐ…という方法もオススメです!
身支度が終わったら、席入りの時間まで控え部屋で待機していましょう。
座 る位置はどこが正解?
茶会に慣れないうちは、どこに座るのが正解なのでしょうか?
とても不安に感じるところだと思いますが、基本的には「正客※1」と「末客※2」の位置に座らなければ大丈夫です。
※1 正客:お茶会に招かれた人達の代表の立ち位置のことを指します。亭主との話など、正客を中心にお茶会が進むので、茶道の経験と知識が豊富な方でないと務まりません。座る位置は1番上座になります。
※2 末客:お詰めとも呼ばれる末客もまた、茶道の技量がある方でないと務まりません。菓子器を亭主に戻すなど様々な仕事があるためです。座る位置は1番下座になります。
おわりに
いかがでしたか?
「はじめは、どんな格好で行けばいいの…?」
「何を持って行けばいいの…?お菓子の食べ方は…?」
など、さまざまな不安があり、お茶会に出席するのはハードルが高いと思われるかもしれません。
でも基本さえ初めにおさえておけば、お茶会はもっと気を楽にして楽しめる場所です。
そして少し慣れてきたら、季節に合わせたお懐紙を揃えてみたり、いろいろな色のお袱紗を集めてみたり…と楽しみ方はたくさんあります。
美味しい和菓子をたくさん食べたい!という気持ちで茶道をはじめられるのも良いと思います。
もっと多くの方に茶道を楽しんでもらえますように…!
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