海岸線を持たない内陸県であり、飛騨山脈や木曽三川(木曽川・揖斐川・長良川)などの大自然に囲まれている岐阜県。
ユネスコ世界文化遺産に制定されている“白川郷”や、フランス人画家であるクロード・モネの名作「睡蓮」にそっくりな“モネの池”など、数多くの人気スポットが点在していることから、近年観光地として注目を集めています。
そんな岐阜県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、40品目以上の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって岐阜県の「伝統的工芸品」として指定されている、飛騨春慶、一位一刀彫、美濃焼、美濃和紙をご紹介します。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和4年(2022年)1月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
飛騨春慶
「飛騨春慶」とは、岐阜県高山市周辺に伝わるべっこう色の漆器です。
江戸初期、ある大工が高山城主・金森可重(よししげ)にサワラの木で作った盆を献上し、これを気に入った可重の長男・重近が、漆職人に命じて透明度の高い透漆を施したのが始まりだと言われています。
当初作られていた漆器の色目が、茶器の名陶“飛春慶の茶入れ”に似ていたことから、この名が付けられました。
現在は重箱や茶道具、菓子器、盆が作られており、多くの人々に親しまれています。
飛騨春慶はヒノキ、サワラ、トチの木を使って、その木目の美しさを透明感のある透漆で生かすのが特徴です。
また、色漆や蒔絵などの装飾は使わず、年輪と年輪の間に刀を入れる“批目”、鉋で模様を入れる“鉋目”など、木に直接模様を施していきます。
飛騨春慶の器は、素朴でシンプルながらその木目の美しさで盛り付ける料理を引き立てくれます♪
一位一刀彫
岐阜県飛騨地方に伝わる「一位一刀彫」とは、イチイという木を原料にして作られた木工品で、木地の風合いを楽しむことのできる工芸品です。
江戸末期、彫刻師・松田亮長が、天然の木そのものの美しさを表現できる彫刻作りをしたのが始まりだと伝えられています。
一位一刀彫の特徴は、木目が美しいイチイの木を材料に、彩色も装飾もせず、彫刻刀のみでデザインしていくこと。
幹の赤い部分と白い部分のコントラストを巧みに生かした絶妙な色合いと、ノミの彫り跡で表現した木地には個性的な風情があります。
今では置物、茶道具、根付※などの雑貨に加え、時代に合わせたアクセサリーなどが制作されています。
年月が経つにつれ、木肌の色つやが深くなる経年変化を楽しむことができますよ。
※根付:巾着などを首から下げて持ち歩く際に使用する、帯に固定しておくための留め具のこと。
美濃焼
「美濃焼」は岐阜県の多治見市、土岐市がある東部地方で作られる伝統的な陶磁器です。
美濃焼の最大の特徴は、決まった型がないということ!
時代に合わせて釉薬※や新たな技法を開発し、さまざまな種類・デザインを生み出してきました。
また、美濃焼はかつての美濃国で製作された焼き物の総称で、代表的な黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部など、15種が伝統的工芸品として指定されています。
美濃焼の歴史は古く、平安時代にはすでに釉薬を使った焼き物が作られていたそうです。
安土桃山時代には茶の湯文化と共に美濃焼も発展し、この時期に織部が誕生しました。
その後もさまざまな種類の美濃焼が生み出され、現在のような多様な楽しみ方ができる陶磁器となっていきました。
土岐市では毎年5月のゴールデンウィーク頃に“土岐市美濃焼まつり”を、多治見市では毎年4月と9月の頭頃に“たじみ陶器まつり”が行われ、多くの観光客で市内が賑わいます。
※釉薬:陶磁器の表面を覆う、焼くとガラスに変化する物質。釉薬をかけることで、傷つきにくく水をはじくようになる。
美濃焼の魅力をもっと知りたい方は、こちらの記事もぜひチェックしてみてくださいね♪
美濃焼はあくまでも総称なので、九谷焼・有田焼・信楽焼・備前焼といった名前を聞くと焼き物に明るい方であればパッとイメージが思い浮かばれるかと思いますが、美濃焼はそういった「これ」といったブランドイメージが確立されている焼き物たちと少々ニュアンスが異なります。
美濃和紙
美濃市に伝わる「美濃和紙」は、日本三大和紙の一つに数えられる伝統工芸品です。
美濃の地は清流に恵まれていたことから、奈良時代にはすでに美濃和紙作りが始まっていたそうで、室町時代に一大産地へと発展しました。
美濃和紙には本美濃紙・美濃手すき和紙・美濃機械すき和紙の3種類があり、特に本美濃紙の手すき技術はユネスコ無形文化遺産に登録されています。
また、国の伝統的工芸品の認定要件の中には、「製造工程の主要な部分が手作業で行われていること」という決まりがあるため、伝統“的”工芸品としての美濃和紙を指す場合は本美濃紙と美濃手漉き和紙のことになります。
楮と呼ばれる木を原料に、1枚ずつ紙をすいて作る本美濃紙は、薄く丈夫でムラのない美しさで、柔らかな光を通すことが特徴です。
その品質の良さにより、障子紙のみならず、美術紙、文化財の修復などさまざまな場面で使われています。
これら美濃和紙が元となり、岐阜提灯、和傘などの工芸も生まれました。
美濃和紙の歴史や制作工程についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください♪
岐阜県美濃市で、1300年以上前から伝統の技法で漉かれ続けてきた美濃和紙。厳選した素材で手漉きされる「本美濃紙」の技術は、ユネスコ無形文化遺産に登録され、国宝級の古文書や絵画の修復にも使用されるほどです。この記事では、美濃和紙とはなにか、その歴史や魅力についてご紹介します。
「岐阜提灯」は300年以上の歴史がある岐阜市の工芸品で、主にお盆にご先祖様を迎えるために飾られる盆提灯です。
岐阜提灯は、手作業で卵型または丸型の骨に美濃和紙を貼って作ります。
しなやかな流線美で、秋の草花や風景の絵柄が何とも優しく、お盆に帰ってくるご先祖様を温かく迎え入れてくれます。
岐阜提灯の起源は定かではありませんが、江戸時代にはすでに存在していたといわれています。
江戸時代は幕府への献上品として作られており、庶民の間にも普及しはじめたのは明治時代になってからでした。
今では盆提灯のほか、和モダンな照明も制作されており、おしゃれなインテリアとしても人気があります。
下記の記事では、岐阜提灯の種類や魅力をさらに詳しくご紹介しています♪
岐阜県の特産品である美濃和紙や竹を使い、江戸時代から作り続けられてきた「岐阜提灯」。
お盆にご先祖様を迎えるために欠かせない道具の一つです。
繊細で上品な流線形の形や美しい絵付けが特徴で、平成7年(1995年)には国の伝統的工芸品に認定されました。
この記事では、その歴史や魅力、製造工程等をご紹介します。
日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。
伝統工芸士とは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事する技術者かつ高度な技術・技法を保持する職人のことであり、国家資格です。この記事では、なるにはどうしたらよいのか、伝統的工芸品の種類や伝統工芸士の資格・認定について、女性工芸士の活躍のほか、もっと伝統的工芸品に触れるために活用したい施設などをご紹介します。
粘土を成形し、高温の窯などで焼成し器や造形物を作ることを陶芸と言います。
火山の噴火によってできる岩石が長い年月をかけ砕かれ、有機物と混ざりあったものが粘土。
世界中に存在しています。
陶芸によって作られる陶磁器と呼ばれるものにはおおまかに2種類あり、土が主な原料で叩いた時ににぶい音がするのが「陶器」。
和紙は古来から日本で作られてきました。和紙の作成技術の起源には諸説ありますが、有力な説は、日本書紀に書かれている西暦610年に朝鮮から仏教の僧によってもたらされたというものです。当時は聖徳太子が活躍していた時代でした。
和傘とは、竹や木などの天然素材と和紙で作られた傘のことです。和傘には番傘・蛇の目傘・日傘・舞傘の4種類があります。本記事では、和傘の歴史や種類、特徴、使い方などをご紹介していきます!
日本三名泉の1つである、岐阜県の「下呂温泉」。
飛騨川の周辺に広がる下呂温泉街では、数ヶ所の個性豊かな足湯や日帰り温泉、飛騨牛をはじめとするおいしいグルメが楽しめます♪
この記事では、魅力たっぷりな下呂温泉のオススメ観光スポットやグルメスポットをご紹介します!
下呂温泉のオススメお土産15選と、これらが購入できるお土産店をご紹介します♪岐阜県の飛騨川沿いにある下呂温泉は、有馬、草津とともに日本三名泉の一つとも呼ばれている有名な観光スポットです。郷土色豊かな銘菓や料理、温泉水を使ったコスメ、雑貨などのお土産品が多彩にそろっています。ぜひ参考にしてみてくださいね!