写真提供:石川県観光連盟

石川県は日本の中部に位置し、カニやノドグロなど日本海の美味しい海鮮が有名です。

県庁所在地である金沢市は観光スポットとしても人気で、日本三大庭園である「兼六園けんろくえん」や、プールの中にいるような写真が撮れることで有名な「金沢21世紀美術館」、さらには昔ながらの味わいある街並みやスイーツを楽しむことができる「ひがし茶屋街」など、見どころが満載!

そんな石川県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている10品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)1月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

加賀友禅

石川県金沢市周辺で作られている「加賀友禅かがゆうぜん」とは、友禅という布染めの技法を使って染色した着物のことで、気品と落ち着きのある趣が特徴です。

室町時代から加賀の御国染おくにぞめであった“梅染うめぞめ”と、江戸時代に宮崎友禅斉みやざきゆうぜんさいが京都で作り、金沢にも広めた“友禅染”が融合し、加賀友禅が確立されました。

加賀友禅は、加賀百万石の豊かな文化と武家風の文化の中ではぐくまれてきました。

公家文化で発展した華美で色鮮やかな“京友禅”に対し、加賀友禅は“加賀五彩(藍、黄土、草、古代紫、えんじ)”と呼ばれる落ち着いた色調と写実的な草花模様を基調としています。

また、技法には “手描き友禅”と型紙を使った“板場いたば友禅”があり、ぼかしや虫喰いなどの独特の技術も用いながら、丁寧に作られています。

品名加賀友禅
よみかがゆうぜん
工芸品の分類染色品
指定年月日昭和50年(1975年)5月10日


九谷焼

九谷焼くたにやき」とは、石川県南部で作られている色鮮やかな絵付けが特徴の陶磁器です。

九谷焼は江戸時代初期に九谷(加賀市)の地で生まれましたが、50年ほどで途絶え、その100年後に加賀藩の奨励があり再び復活したため、最初の九谷焼を“古九谷こくたに”、復活後を“再興九谷さいこうくたに”と呼んで区別しています。

重厚感のある彩り豊かな色彩は、“五彩(緑、黄、赤、紫、紺青)”と呼ばれる色を使い、釉薬うわぐすり(ゆうやく)の上にさらに絵付けをする“上絵付け”で表現されています。

再興九谷では赤以外の4色を使う“吉田屋風”、赤をベースに人物などを描いてその他を小紋や金彩で彩る“飯田屋風”など、さまざまな様式が生まれました。

明治以降、古九谷焼から再興九谷に至るまでの伝統技法をすべて取り入れ、金彩を多く使用した“庄三風しょうざふう”が誕生し、海外輸出の主流品となりました。

品名九谷焼
よみくたにやき
工芸品の分類陶磁器
指定年月日昭和50年(1975年)5月10日


九谷焼について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください♪

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輪島塗

写真提供:石川県観光連盟

石川県輪島市で生産される「輪島塗わじまぬり」は、江戸時代に発展した丈夫さと美しさを兼ね備えた漆器です。

丈夫な漆器作りのために、壊れやすい箇所には、布を貼って補強する“布着せ”を行い、頑丈に仕上げています。

さらに、輪島市周辺でとれる珪藻土けいそうどを粉にした“”を漆に混ぜて下地塗りを施します。

輪島塗は見た目の美しさにも定評があり、装飾面では蒔絵のほか、漆面を彫って金泊や金銀粉をはめ込む沈金ちんきんの耽美な美しさが魅力です。

こうして、塗り上げまで20工程以上、100手近い手仕事を重ねて、堅牢で美しい漆器を生み出しています。

品名輪島塗
よみわじまぬり
工芸品の分類漆器
指定年月日昭和50年(1975年)5月10日


「輪島塗みきほつる」のYoutubeでは、輪島塗の制作工程を詳しく紹介しています。

ぜひ、こちらもあわせてご覧ください♪

山中漆器

山中漆器やまなかしっき」は、安土桃山時代から石川県加賀市の山中温泉で作られ続けている漆器です。

山中温泉近くに定住した木地職人が、お椀など日用品を作ったのがはじまりとされ、江戸時代に塗りや蒔絵の技法が伝わりました。

石川県を代表する漆の産地は3つあり、それぞれ、“木地の山中”・“塗りの輪島”・“蒔絵の金沢”と呼ばれています。

この中でも、“木地の山中”といわれる山中漆器は、ロクロを使った挽物技術に優れています。

立ち木の時と同じ方向で切り出す“縦木取り”という技法により、歪みが少なく、薄い漆器が出来上がり、パターンが40以上にものぼるといわれている“加飾挽かしょくびき”で木地の表面に刃で細い筋を入れ、装飾をします。

余分な漆をふき取ることで木目そのものを模様にする“拭き漆”により、木目の美しさが際立ち、温かみを出すことで日用品として広く愛されてきました。

また、盛り上がった漆部分に平蒔絵を施す“高蒔絵”や、ロクロを回転させながら刃をあてて細かいしま模様を作る“千筋ちすじ”など、繊細な装飾が施された作品もあります。

なお、山中漆器ではプラスチック素地の近代漆器にも昭和30年代からいち早く取り組んでおり、今後の発展も期待したい漆器です。

品名山中漆器
よみやまなかしっき
工芸品の分類漆器
指定年月日昭和50年(1975年)5月10日


山中漆器について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください♪

金沢仏壇

現在の石川県金沢市周辺では、江戸時代に加賀藩が各地から呼び集めた一流の職人たちにより美術工芸が発展しました。

その流れをくむ細工職人たちによって「金沢仏壇かなざわぶつだん」の製造がはじまりました。

金沢仏壇の特徴は、地元で量産される金箔を使った緻密な加賀蒔絵かがまきえの技術を至る所に施していることです。

光沢のある“磨き蒔絵”、模様が盛り上がる“高蒔絵”を施した仏壇は、加賀百万石の華やかな文化を彷彿とさせる、上品できらびやかな美しさを生み出しています。

また、アオモリヒバやイチョウなどの耐久性の高い木材を用いて、釘を使わずに接合する“ほぞ組み”で仕上げることで、丈夫さと修理のしやすさを実現しているため、長く使うことができる実用性も備えています。

品名金沢仏壇
よみかなざわぶつだん
工芸品の分類仏壇・仏具
指定年月日昭和51年(1976年)6月2日


七尾仏壇

石川県七尾市で製造される「七尾仏壇ななおぶつだん」は、彫刻や蒔絵といった豪華な装飾と堅牢けんろうさを特色とする仏壇です。

七尾仏壇の歴史は古く、室町時代にはその基礎が築かれ、安土桃山時代に七尾に集められた工芸職人たちが作りはじめたといわれており、少なくとも江戸時代初期には七尾仏壇が生産されていたと考えられています。

七尾には山間部が多かったことから、運搬時に仏壇が壊れないように細心の工夫が凝らされ、丈夫に作られています。

金沢仏壇と同じく、頑丈な“ほぞ組み”で組み立てるほか、本尊と脇仏の後ろの鏡板かがみいたを2重にする“二重鏡板”の技法を用いるなど、独自の工夫で強度を高めています。

見た目は風格のある二重破風はふや、金箔、青貝を使った蒔絵など、絢爛けんらんかつ荘厳な造りとなっています。


※破風:外側に出ている屋根の部分

品名七尾仏壇
よみななおぶつだん
工芸品の分類仏壇・仏具
指定年月日昭和53年(1978年)7月22日


金沢漆器

金沢漆器かなざわしっき」は石川県金沢市周辺で生産されている漆器で、主に茶道具や調度ちょうどなどが制作されています。

江戸時代初期、加賀藩3代目藩主・前田利常としつねが、京都や江戸から名工を招いたのが金沢漆器のはじまりで、貴族文化と武家文化の融合した力強くも雅で美しい漆工芸となりました。

金沢漆器の特徴は豪華な蒔絵の装飾にあり、伝統的な技法の“平蒔絵”に加え、“高蒔絵”や“肉合研出ししあいとぎだし蒔絵”などの高度な技法で華やかに彩られています。

また、塗りには精緻さと丈夫さが求められ、布着せや漆下地などを重ねて厚くした“本堅地ほんかたじ塗”が施されています。


※調度品:日常生活で使われる道具や家具

品名金沢漆器
よみかなざわしっき
工芸品の分類漆器
指定年月日昭和55年(1980年)3月3日


金沢漆器について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください♪

牛首紬

石川県白山はくさん市で作られている「牛首紬うしくびつむぎ」は、2頭のかいこによって作られた玉繭たままゆから直接引き出した糸を使用した織物です。

玉繭から引き出された糸は太く、弾力性と伸縮性に富んでいるため、牛首紬は釘に引っかかっても破れない“釘抜き紬”だといわれるほどの丈夫さと、しなやかな着心地があります。

牛首紬は平安時代末期、牛首村(白山市)に逃れてきた源氏の落人おちゅうど(おちうど)の妻が、機織りの技術を村人に教えたのが起源だといわれ、江戸時代には牛首紬として確立しました。

現在は、加賀友禅などと協力してフォーマルに着ることができる、後染めの牛首紬も作られています。


※後染め:先に1枚の生地を完成させた後に染色した織物

品名牛首紬
よみうしくびつむぎ
工芸品の分類織物
指定年月日昭和63年(1988年)6月9日


牛首紬について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください♪

加賀繍

石川県金沢市で作られている「加賀繍かがぬい」は、室町時代初期に加賀地方への仏教の布教とともに伝えられ発展した、高度な手刺繍の技法です。

当初は仏教関連の物への飾りに使われていましたが、江戸時代には将軍や藩主らの着物や持ち物にも加賀繍の刺繍が施されるようになりました。

加賀繍に使われる糸は金糸、銀糸、うるし糸など100種類以上もあり、多彩な糸を使った繊細な刺繍によって、立体的で華やかに仕上がります。

糸を何重にも重ねる“肉入れ繍”や、グラデーションをつける“ぼかし繍”など、高度な技法によって浮かび上がる模様は、繊細で奥ゆかしい美しさです。

とくに加賀繍は、無地の布地に刺繍をするため、刺繍の存在感が際立ちます。

品名加賀繍
よみかがぬい
工芸品の分類その他繊維製品
指定年月日平成3年(1991年)5月20日


金沢箔

金沢箔かなざわはく」とは、石川県金沢市を中心に製造されている金箔で、金を1万分の1~2mmほどの薄さに薄く打ち延ばしたものです。

約2g(10円硬貨の半分の重さ)の金を畳1枚分の大きさになるまで、極薄かつ均一に、輝きはそのままに打ち延ばします。

延ばし方には、手すき和紙に柿渋や泥を染み込ませて作った箔打はくうに金を挟み、1枚ずつ裁断して形を整える伝統的な“縁付えんつけ”技法があります。

令和2年(2020年)には、この技法により作られる“縁付金箔”がユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。

戦国時代末にはすでに存在していたという金沢箔は、江戸時代に幕府から箔打ちが禁じられてしまいますが、細工所などでひそかに続けられていました。

現在でも日本の金箔生産のほとんどを金沢箔が占め、日常品や伝統工芸品、ソフトクリームのトッピングにまで、幅広く使われています。

品名金沢箔
よみかなざわはく
工芸品の分類工芸材料・工芸用具
指定年月日昭和52年(1977年)6月8日


金沢箔について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください♪