令和4年(2022年)のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の舞台である神奈川県。

源頼朝が鎌倉幕府を開いた古都・鎌倉には、鶴岡八幡宮や建長寺など、歴史的な建造物が数多く残されています。

また、国民的バンドであるサザンオールスターズの桑田佳祐さんの故郷である茅ヶ崎や、バスケットボールを題材にした井上雄彦さんの漫画『SLAM DUNK』の舞台である湘南エリア、修学旅行の定番となっている箱根温泉など、観光名所がたくさんあります!

そんな神奈川県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって神奈川県の「伝統工芸品」として指定されている鎌倉彫、箱根寄木細工、小田原漆器、江戸押絵をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和3年(2021年)12月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

鎌倉彫

神奈川県鎌倉市の伝統的工芸品「鎌倉彫かまくらぼり」は、カツラやイチョウなどの木で形を作って彫刻を施し、その上に漆を塗って仕上げた高級漆器で、力強い彫刻が施された茶褐色のお盆や箱が有名です。

今ではバッグなどの洋物と組み合わせた作品や菓子皿、小箱などさまざまな物が作られており、色彩豊かな製品も登場しています。

鎌倉彫は鎌倉時代に中国から伝来した漆器をヒントに、仏師たちが器に彫刻を彫り、漆を塗り重ねたのがはじまりだといわれています。

仏具や茶道具を中心に発展し、明治時代には日用品にも用いられました。

立体感がある彫刻と深みのある色合いが見事ですか、これは刃で彫った後を残す“刀痕とうこん”や黒いマコモ粉をふりかける“乾口ひぐちとり”など独特の技法のなせる技です。

品名鎌倉彫
よみかまくらぼり
工芸品の分類漆器
指定年月日昭和54年(1979年)1月12日


鎌倉彫について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

箱根寄木細工

箱根寄木細工はこねよせぎざいく」は、さまざまな種類の木材を組み合わせて複雑な模様を作る、神奈川県小田原市や箱根町周辺で生産される木工品です。

50種以上もの木の木目や色の違いの組み合わせで、モザイクのような幾何学模様を作り出していると聞けば、驚くのではないでしょうか。

そんな箱根寄木細工は、仕掛けのある“秘密箱”で有名ですが、そのほか宝石箱やお盆、茶托ちゃたく、アクセサリーなどさまざまな製品に使われています。

江戸時代の末に、箱根の畑宿はたじゅくに住む職人の考案ではじまり、明治時代に静岡の寄木細工の技術を応用して、複雑な模様が作られるようになりました。

作り出した模様を薄くシート状に削ったもの(ヅク・ズク)を貼り付ける“ヅクばり(ズクばり)”という伝統技法がありますが、近年は種木から完成品を作る“無垢作り(ムクづくり)”という技法も考案されています。

品名箱根寄木細工
よみはこねよせぎざいく
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日昭和59年(1984年)5月31日


小田原漆器

神奈川県小田原市で作られている「小田原漆器おだわらしっき」は、木の器などに漆を塗って仕上げた製品です。

室町時代にロクロで木地を作る集団が、箱根の良質な木材で作った器に漆を塗ったのが発祥で、この地を治めた北条氏が漆塗職人を呼び集め、彩漆塗いろうるしぬりの技法を取り入れ発展しました。

江戸時代には汁椀やお盆、さらに武具など実用的な漆器として江戸へも送られたのだとか。

そんな小田原漆器は、堅牢で磨けば艶が出るケヤキの木が多く使われています。

何度も漆を塗り重ねる“摺漆塗すりうるしぬり”、透明な漆を塗る“木地呂塗きじろぬり”などの高度な技法を使っており、天然木の美しさと温かみを感じることができますよ。

品名小田原漆器
よみおだわらしっき
工芸品の分類漆器
指定年月日昭和59年(1984年) 5月31日


江戸押絵

押絵おしえとは、厚紙や布に綿をくるんでパーツを作り、それを板などに貼り付けた立体的なポップアートを指します。

なかでも「江戸押絵えどおしえ」は、浮世絵を立体的に表現した江戸発祥の伝統的工芸品です。

江戸時代、縁起物の羽子板と押絵の技術が合わさり、役者絵を表現する押絵羽子板という形で誕生しました。

歌舞伎役者の似顔絵がついた押絵羽子板は、華やかさと緻密さ、人物が飛び出してきそうな躍動感で飛ぶように売れ、この売れ行きが役者の人気のバロメーターになるプロマイドのような人気を呼び、広まっていきました。

江戸押絵は役者だけでなく、風景や動植物などさまざまなデザインがあり、現在では羽子板のほかに額装、屏風、団扇などにも取り入れられています。

品名江戸押絵
よみえどおしえ
工芸品の分類人形・こけし
指定年月日令和元年(2019年) 11月20日


こちらの記事では、江戸押絵羽子板の職人・野口豊生氏についてご紹介しています。