(写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟)
紀伊山脈を中心とした山岳地帯が県の大部分を占め、温暖な気候で樹木の多い和歌山。
その気候を生かし農業も盛んで、中でもみかんや梅、柿は収穫量全国1位を誇ります。
高野山真言宗の総本山である“金剛峯寺”や、世界遺産に認定された“熊野古道”および“熊野三山”など、自然と歴史を存分に楽しむことができる県です。
また、南紀白浜のアドベンチャーワールドは、7頭のパンダ家族に会えることから“パンダ好きの聖地”として有名です♪
そんな和歌山県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、10品目の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって和歌山の「伝統的工芸品」として指定されている、紀州漆器、紀州簞笥、紀州へら竿をご紹介します。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和4年(2022年)2月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
紀州漆器
「紀州漆器」は、和歌山県海南市の黒江地区を中心に作られる漆器です。
室町時代に近江(現在の滋賀県)の木地師※達が黒江地区に移住し、渋柿の汁を塗る渋地椀を作りはじめたことが起源とされています。
そんな紀州漆器の最大の特徴は、漆器表面の模様にあります。
現在の岩出市にある根来寺の僧侶たちが偶然生み出した、表面の朱漆をかすれさせ中の黒漆を見せる“根来塗”は、現在の紀州漆器の代表的な文様となっています。
また、シンプルで丈夫な作りも特徴で、江戸時代から『実用の器』として庶民の間で親しまれてきました。
現在では、盆や食器のみならず、写真立てや手鏡など時代に合わせた商品も多く製作されています。
※木地師:木材から、椀や盆などの木工品を作る職人のこと。
紀州簞笥
「紀州簞笥」は、和歌山県和歌山市周辺で生産されている木工品です。
起源は定かではありませんが、徳川家の歴史を記した『南紀徳川史』に紀州箪笥に関する記述が残されていることから、江戸時代末期にはすでに生産されていたと考えられています。
また、その頃にはすでに婚礼調度品※1として紀州箪笥が用いられていたとも伝えられています。
柔らかさが特徴の桐材から作られる紀州箪笥は、湿気の多い時には水分を吸い、乾燥時は水分を出してくれるため、衣類の収納に適しているのだとか。
美しい木目が活かされた模様や、熟練の職人による組手※2の正確さも魅力です。
※1 婚礼調度品:婚礼の際に揃えられる、化粧具・文具・飲食具などの道具一式のこと。
※2 組手:部材と部材を組み合わせる部分のこと。
紀州へら竿
「紀州へら竿」は、和歌山県橋本市周辺で作られる、ヘラブナ釣り専用の竹製釣り竿です。
ヘラブナ釣りは、その奥深さから江戸時代より日本各地で親しまれてきた娯楽です。
明治10年(1877年)代に大阪でへら竿の製造技法が確立した後、原材料の一つである頑丈な高野竹がよく取れる橋本市で、紀州へら竿の生産が盛んに行われるようになったといわれています。
高野竹に加え、真竹や矢竹という3種類の竹を組み合わせて製作される紀州へら竿は、その強度と装飾の美しさが特徴です。
厳選された天然竹と、職人の高い技術力によって作り上げられる風情のある作品の数々は、多くのヘラブナ釣り愛好家たちの憧れとなっています。
また、紀州製竿組合と橋本市が協力し、南海電気鉄道・紀伊清水駅に竿師の後継者育成や制作体験ができる施設『匠工房』が開設されました。
匠工房の近くにある“隠れ谷池”では貸し竿が用意されており、どなたでも気軽にヘラブナ釣りが楽しめるスポットとなっています。
日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。
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