日本の中部地方に位置し、日本海に面する富山県は、美しい山々から流れる綺麗な水に恵まれた自然豊かな県です。
多種多様な動植物が生息し、県の植生自然度※は本州一を誇ります。
また、富山藩は江戸時代から売薬を藩財政の要としていたことから、現在でも大手企業の医薬品製造工場が立ち並びます。
そんな富山県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって富山県の「伝統的工芸品」として指定されている、高岡銅器、井波彫刻、高岡漆器、越中和紙、越中福岡の菅笠、庄川挽物木地をご紹介します。
※植生自然度:土地の自然がどの程度残されているのかを表す指標のこと。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和4年(2022年)1月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
高岡銅器
「高岡銅器」とは、江戸時代初めから高岡市で生産されている銅器で、金属をとかし、型に流し込んで固める鋳物になります。
原料となる金属は銅のほかに、アルミや錫を使用します。
鋳物に彫金※を施す“唐金鋳物”や、別の金属を組み合わせる“象嵌”など、その豊かな表現や装飾が魅力です。
高岡銅器は鋳造、着色、彫金が完全分業制となっており、各工程における専門の職人の技術が結集して生み出されています。
※彫金:金属や岩石を加工する工具の鏨を用いて、金属に彫刻すること。
各専門の職人たちが腕を磨いてきたことから、鋳造や加工における数多くの工法が生まれました。
それらを駆使して卓上置物や花器など小型の物から、ブロンズ像、お寺の鐘、大仏といった大型の物まで、幅広い作品が作られています。
井波彫刻
「井波彫刻」は、南砺市井波地区に伝わる、高度な技術を用いて立体的に彫り上げる木彫刻です。
江戸時代に瑞泉寺を再建する際、京都・本願寺から派遣された彫刻師によって、その技法が伝えられたといわれています。
最初は寺院仏閣の彫刻が中心でしたが、明治時代に一般住宅向けの豪華な欄間※が作られるようになり、主力製品となりました。
今では住宅欄間やついたてはもちろん、シャンデリアやギター、だんじり(山車)の彫刻など、さまざまな作品が誕生しています。
そんな井波彫刻の特徴は、躍動感のある立体的な彫刻です。
※欄間:天井とふすまや障子の間に入れる木の枠
200本以上のノミや彫刻刀を用いて、板の表と裏から模様を彫っていく“透かし彫り”は、奥行きが出て今にも飛び出しそうな迫力があります。
井波彫刻ついてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください♪
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高岡漆器
「高岡漆器」は、江戸時代初期に加賀藩主が高岡城を築いた際、武具や日用品の木地に装飾を施した漆器を作らせたのが始まりだといわれています。
その後、中国の技法も取り入れて、高岡漆器独自の技法を生み出していきました。
高岡漆器の特徴である装飾の繊細さと美しさは、漆器ファンを虜にします。
代表的な塗りの技法には、模様を彫刻した木地に色漆を塗り立体感を出す“彫刻塗”、光沢のある貝殻を薄く削ったものを使って花鳥や山水を表現する“青貝塗”、石井勇助が考案した錆漆で描き、青貝や玉石などを施す“勇助塗”があり、多様な作風を楽しめるのも魅力の一つです。
今では、ガラスやプラスチックに塗りを施した“変り塗”も評判となっています。
富山県高岡市の伝統的工芸品である「高岡漆器」は、多彩な作風を楽しむことができる漆器です。漆に浮かび上がる文様や貝の輝きなど、さまざまな技法を用いた美しさが特徴で、古くから多くの人々を魅了してきました。今回は、そんな高岡漆器の歴史や特徴、作り方や主な工房などをご紹介します。
越中和紙
「越中和紙」とは、南砺市の“五箇山和紙”・富山市の“八尾和紙”・下新川郡朝日町の“蛭谷和紙”の3種類の和紙の総称です。
五箇山和紙は加賀藩で使われた高級和紙で、文化財修復にも使われています。
八尾和紙は薬の包み紙など、加工用の紙として発展し、現在は型染めを行うことで、カラフルな民芸調の和紙として人気を集めています。
蛭谷和紙はトロロアオイから作る強く繊細な紙で、現在は1軒のみが技法を受け継ぎ、原料から作っています。
いずれの越中和紙も丈夫で長持ちし、手すき和紙ならではの温かさをもつ伝統的工芸品です。
越中福岡の菅笠
「越中福岡の菅笠」は、菅の葉を縫い上げて作った、雨除け、日よけのためにかぶる帽子(笠)です。
湿地帯に良質な菅が自生した高岡市福岡地区では、400年ほど前に菅笠造りが始まりました。
江戸時代中期、加賀藩の奨励で本格生産が始まり、現在も菅笠の全国シェア9割を誇る一大産地です。
菅笠は、竹を円錐状に編み込んで組み立てた笠骨に、菅の葉を縫い付けて作ります。
越中福岡の菅笠は軽くて通気性がよく、防水にも優れているため、農作業や伝統行事において使われてきました。
農作業用の角笠、祭り用の花笠や旅用の三度笠など、用途に合わせた笠の種類があり、今では六角形の笠やカラフルなマカロン笠といった斬新なスタイルや、染めて色付けした菅笠も誕生しています。
庄川挽物木地
挽物とは、木材をロクロで削り出し、お椀や皿などに成型、加工した工芸品のことです。
高岡市や砺波市、南砺市などで作られているのが「庄川挽物木地」です。
江戸時代末期、材木運搬の事業で材木が集まった庄川町で挽物作りが始まり、明治時代に発展したといわれています。
庄川挽物木地の特徴は、何といってもその木目の美しさ。
丸太をタテに切った木材を使う“横挽”のため、同じ木から切り出した木地でも木目が異なり、表情の違う製品に仕上がります。
仕上げには漆を施す“拭き漆”と、漆を施さず磨きをかける“白木地”があり、どちらも使っていくうちに木の美しさや艶を引き出します。
特に、白木地は空気に触れることで色や艶が変化し、5年ほど使用すると、まるで漆を施したかのような上品なこげ茶へと変わっていきます。
伝統工芸品とは、その地域で長年受け継がれてきた技術や匠の技を使って作られた伝統の工芸品のことを指します。その中でも今回は、北陸や東海といった中部地方の新潟県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県の伝統的工芸品73品目を紹介します。
日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。
伝統工芸士とは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事する技術者かつ高度な技術・技法を保持する職人のことであり、国家資格です。この記事では、なるにはどうしたらよいのか、伝統的工芸品の種類や伝統工芸士の資格・認定について、女性工芸士の活躍のほか、もっと伝統的工芸品に触れるために活用したい施設などをご紹介します。
金工とは金属に細工をする工芸、あるいはその職人のことを指し、金属を加工して作られる工芸品のことを金工品と言います。日本に金属とその加工技術がもたらされたのは、弥生時代初期、紀元前200年頃のこと。中国大陸・朝鮮半島から伝わった金工技術によって剣や銅鐸、装身具などが作られ、材料として青銅や鉄が使われていました。
「漆器(しっき)」とは、木や紙の表面に漆を塗り重ねて仕上げる工芸品です。丈夫で耐久性があり、加飾技法も多種多様で、日常の漆器から代表的な建築、仏像、芸術品までさまざまな用途に用いられてきました。この記事では、漆器の歴史や特徴、全国の有名な漆器の種類や技法などをご紹介します。
和紙は古来から日本で作られてきました。和紙の作成技術の起源には諸説ありますが、有力な説は、日本書紀に書かれている西暦610年に朝鮮から仏教の僧によってもたらされたというものです。当時は聖徳太子が活躍していた時代でした。
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