「事始め」という言葉を聞いたことがありますか?

事始めは12月にある行事の一つです。

ただ、事始めと一言でいっても多くの意味を含んでいるので、誰の事始めなのかによっても日付が違います。

それでは、事始めについて細かく見ていきましょう。

”正月事始め”と”事始め”が存在する

正月事始め”と”事始め”の日付は?

まず、事始めには正月事始めと事始めの2つがあります。

正月事始めは12月13日、事始めは12月8日です。

ただし事始めには2月のものあるため、それについては後半でお話をしていきます。

始めの「事」の意味


ところで、事始めの「事」って何だと思いますか?

「事」は「物事」のことで、「事始め」は「物事を始める」という意味があります。

似ている言葉で「手始め」というものがありますが、「手始め」の場合は「物事を始めるための一手」という意味なので、「事始め」よりも範囲は小さいものです。

もう少し分かりやすく例えをあげてみます。

「物事」を「部屋の掃除」としてみてみましょう。

「手始め」の場合であれば、部屋の掃除をするために掃除機を購入したり、いらないものを捨てたり、部屋の窓を開けただけでも、手始めに含まれます。

ですが「事始め」の場合は、部屋の掃除を始めることという意味になるので、もっと大枠のことを伝えています。

そのため、「正月事始め」というと「正月の準備を始める日」の意味になるということです。

ちなみに、正月事始めの日付は旧暦の12月13日でしたが、現在は新暦の12月13日に変わりました。

また、「事始め」の「事」には「物事」という意味だけではなく「神様」という意味もあります。

これは「正月事始め」ではなく「事始め」の方の「事」が後者の意味です。

月事始めの由来と意味

正月事始めについて、もう少しだけ詳しく説明すると、12月13日は「鬼宿日きしゅくにち」といって、結婚式をおこなう以外であれば、吉とされる日でもあります。

そのため、この日から物事を始めるのがよいとされていたので、正月事始めの12月13日は、1月1日の元旦を迎えるために準備を始める日とされていました。

ただし、地域によっては、12月13日の正月事始めの日から正月の準備を始めるのではなく、12月の事始めの日(12月8日)から正月の準備を始める地域もあります。

正月事始めのいろいろ

では、正月事始めでは、実際にどんなことをするのでしょうか?

お正月の準備を始めるというだけでは、おおざっぱすぎますよね。

細かく見ていきましょう。

払い

一つ目は「煤払すすはらい」です。

お寺で煤払すすはらいが行われるのも、正月事始めの日。

毎年ニュースで放送されているので、見たことがある人もいるかもしれませんね。

ただ、煤払すすはらいと事始めという言葉が一致していないのではないでしょうか?

煤払すすはらいでは本当にすすを払うだけではなく、1年の汚れを落として、歳神様としがみさまを迎えるための儀式としても成り立っています。

昔は商店でも、正月事始めの日に煤払すすはらいをし、綺麗にし終えたら商店の店主を胴上げして、祝宴しゅくえんを開いたという話もあります。

1年の汚れを落とせば落とすほど、お正月に歳神様としがみさまがいらっしゃったとき、多くの福を与えてくれると信じていたからでしょう。

迎え

2つ目は「松迎え」です。

この言葉も、今ではあまり使われなくなっています。

「松迎え」は、歳神様としがみさまを迎えるための門松かどまつやおせち料理を作るときに使うまきを取りに行く日のことです。

現在も、門松かどまつを飾ったり、おせちを作ったりしますが、門松かどまつの松を採取しに行ったり、かまどを使っておせち料理を作ったり、かまど用のまきを集めるなどは、ほとんどなくなってきていています。

門松かどまつはスーパーで売られていますし、おせち料理はガスや電気で作った火で作るため、松迎という言葉が消えていったのかもしれません。

3つ目は「年男」です。

年男と聞くと、生まれた年と同じ十二支の年を迎えた男性を連想するのではないでしょうか。

ですが、正月事始めの「年男」は生まれた年と同じ十二支の年を迎えた男性ではなく、先頭を切って正月準備を行い、みんなを仕切る家長かちょうのことでした。

つまり、各家庭の家長かちょうが「年男」だったわけです。

ただ、時代が進むにつれて、正月事始めでの「年男」は大変な役割のため、家長ではなく長男だったり、奉公人だったりと、若い男性が「年男」の役割を担い、正月の準備をするようになりました。

現在では、各家庭の「お母さん」が、この「年男」に当たります。

まだまだある「正月事始め」にまつわること

「正月事始め」には他にも行うことがあります。それは「お歳暮せいぼ」です。

歳暮せいぼは、正月のお供え物という役割でもあったため、正月の準備を始める「正月事始め」の日から送るようになったと考えられています。

では、「正月」のつかない事始めと事納めについても、少し説明をします。

月がつかない「事始め」と「事納め」

正月がつかない「事始め」は12月8日です。

「正月事始め」よりも少し早い日が設定されています。

そして、「事始め」とセットになっているのが「事納め」です。

「事納め」は「事始め」で始めたことの最終日という意味で、翌年の2月8日になります。

ただし、事始めが12月の場合は、神様の事始めのことを指しています。

突然「神様の」という言葉が出てきて「?」と思われる方もいますが、実は「事始め」には、「神様の事始め」と「人の事始め」の2種類があります。

今回の記事でも、はじめに2月にも「事始め」があると書きました。2月にある「事始め」が「人の事始め」です。

「人の事始め」は2月8日、「人の事納め」は同じ年の12月8日。

つまり、「神様の事始め」と「神様の事納め」ではない時期が、「人」の期間になっています。

この「神様」の事始めというのは、神様が行う事始めという意味ではなく、「神事」としての事始めという意味です。

そして「人」の事始めというのは、人が田植えや畑仕事を始める日という意味があります。

まとめると、「神様の事始め」から「神様の事納め」は人が神様をお迎えするための神事の期間であり、「人の事始め」から「人の事納め」は人が自分たちの食料を作って蓄えるための期間ということです。

おわりに

今回は「正月事始め」と「事始め」について、お話しましたが、どちらもお正月に歳神様としがみさまを迎えるための準備を始める日という意味があります。

また、京都には正月事始めの12月13日に、芸妓さんや舞妓さんが一重ねの鏡餅を持って、京舞の師匠の元へ、挨拶に行くという風習を今でも続けています。

もしかしたら、地域によっては昔からの事始めが、色々な形で残っているのかもしれませんね。