日本には、さまざまな年中行事がありますね。
特定の地域に住んでいる人にとっては当たり前の風習も、それ以外の地域の人はまったく知らないことも珍しくありません。
おそらく、「亥の子」もその一つでしょう。
この記事では、亥の子の意味や行事食など、まったくご存じない方にもわかりやすくご紹介していきます!
亥の子とは?
そもそも、「亥の子」って読めませんよね……。
亥の子の読み方や意味、由来や歴史についても簡単にご説明しましょう。
亥 の子の読み方・意味
亥の子は「いのこ」と読みます。
亥の子とは“亥の月の最初の亥の日”に行われる、収穫祭のこと。
亥の子祭り、亥の子の祝い、お亥の子さん、玄猪の祝い、とも呼ばれています。
詳しくは【亥の子の由来・歴史 】にて触れますが、子孫繁栄や万病除去などを祈る意味があります。
亥の子は主に西日本で行われている行事なので、東日本ではあまり知られていません。
亥 の日はいつ?亥の子 2024年は?
では、亥の月の最初の亥の日とはいつなのでしょう。
ここで十二支のお話をしますね。
十二支というと、「ね・うし・とら・う・たつ・み……」と、12種類の動物を思い浮かべた方も多いはず。
ですが、十二支とは本来、古代中国の天文学から生まれた“順序”を表す記号なのです。
十二支と月・時刻の対応
十二支は、年・月・時刻などを表すのに使われていました。
動物の名前があてられたのは、あくまでも覚えやすくするためです。
亥も十二支の一つで、亥の月とは旧暦の10月を表します。
新暦を採用している現在では、“11月最初の亥の日”を亥の子としています。
それでは、具体的な日付を見ていきましょう。
亥の子 2024年は11月7日
亥の子は下記の通り、毎年日付が異なります。
【亥の子の日付】
● 令和 3年(2021年):11月11日(木)
● 令和 4年(2022年):11月 6日(日)
● 令和 5年(2023年):11月 1日(木)
● 令和 6年(2024年):11月 7日(日)
● 令和 7年(2025年):11月 2日(日)
● 令和 8年(2026年):11月 9日(月)
● 令和 9年(2027年):11月 4日(木)
● 令和10年(2028年):11月10日(金)
● 令和11年(2029年):11月 5日(月)
● 令和12年(2030年):11月12日(火)
亥 の子の由来・歴史
亥の子は古代中国の「亥子祝」という、無病息災を願う宮廷儀式に由来します。
亥の月亥の日亥の刻に、穀物の入った餅を食べると、病気にならないと信じられていたのです。
「亥子祝」が日本に伝わったのは平安時代のこと。
宮中行事として、貴族の間に広まります。
稲刈りの時期と重なるため、農村部へは収穫祭として浸透していきました。
「亥」は、動物のイノシシを表します。
そこで多産のイノシシにあやかり、子孫繁栄や子どもの成長を願う地域も出てきました。
亥の子餅
画像にあるような和菓子を見たことはありますか?
「亥の子餅」や「玄猪餅」と呼ばれるお餅です。
亥の子、すなわちイノシシの子ども・うり坊に見立てて作られています。
見比べてみると、そっくりですね!
亥 の子餅とは?
亥の子餅は、亥の子の行事食です。
先ほども少し触れましたが、起源は古代の中国にあります。
日本でも平安時代から食べられており、亥の子餅を贈り合う習慣もあったそうです。
農村では収穫祭と結びついたこともあって、亥の子餅を田の神様にお供えし、家族で食べる風習も生まれました。
亥の子の頃になると、和菓子店の店頭に並びます。
亥の子餅を亥の刻(21~23時)に食べて、無病息災・子孫繁栄を願ってみてはいかがでしょう。
実りの季節、秋。和菓子の素材となる小豆、栗、芋なども、秋が収穫期です。そのため、秋の和菓子には栗や芋を使ったものがたくさんあります。今回は、そんな秋の和菓子をご紹介します。
亥 の子餅と源氏物語
亥の子餅は、「源氏物語」の第9帖“葵”にも登場します。
光源氏と紫の上の新婚第二夜が書かれた場面では、ちょうど亥の子餅を食べる日だったのです。
平安の貴族社会での結婚は男性(婿)が女性の家に通う形で、結婚三日目の夜に餅を食べる“三日夜餅”という儀式がありました。
光源氏が家来の惟光に三日夜餅を用意するようにいうと、惟光は「明日の晩の子の子餅はどれくらい作ればよいのでしょうか?」と答えます。
もちろん、子の子餅などありません。
二日目の夜には亥の子餅が用意されたため、三日目の夜に食べる餅(=三日夜餅)を亥の次の干支である“子”の子餅と表現したのです。
惟光ったら、うまいことをいいますねぇ!
亥 の子餅の作り方
では、亥の子餅は、どのように作るのでしょう。
一般家庭で作る場合のレシピをご紹介します。
【準備するもの】
★もち粉(白玉粉)…50g
★グラニュー糖…70g
★水…90ml
粒餡…240g
白ごま…小さじ2
◎きなこ、コーンスターチ、シナモンなど…適量
その他、
・フライパン
・すり鉢
・すりこぎ棒
・ボウル
・ヘラ(ゴムベラ、木べらなど)
・キッチンラップ(サランラップ、クレラップなど)
・電子レンジ
・クッキングシート
・麺棒
・金串
平安時代の亥の子餅の材料は?
平安時代の亥の子餅は、新米にその年に収穫した下記の七種の作物の粉を混ぜて作っていたそうです。
1.大豆
2.小豆
3.大角豆
4.ごま
5.栗
6.柿
7.糖
なお、大角豆とはサヤインゲンに似たマメ科の一種です。
亥 の子餅の有名店
現在、亥の子餅の作り方は、地域や和菓子店によってさまざまです。
見た目は異なるものの、すべてうり坊に見えてくるのが不思議ですね。
【仙太郎】の亥の子餅(京都府)
仙太郎の亥の子餅は、茹でた小豆をつき混ぜた餅でこし餡を包んだもの。
イノシシを表現するために焼印が施されています。
【京菓匠 甘春堂】の亥の子餅(京都府)
甘春堂の亥の子餅には、うり坊の背中にあるような3本の筋が入っています。
中は粒餡・白餡の二重になっています。
【とらや】の亥の子餅(京都府)
とらやの亥の子餅は、表面にきな粉がまぶしてあるのが特徴です。
鎌倉時代の製法を参考に作られています。
【京菓匠 鶴屋吉信(つるやよしのぶ)】の亥の子餅(京都府)
鶴屋吉信の亥の子餅は、生地に練り込まれた黒ごまが透けて見えますね。
ごまの香ばしさ、こし餡のなめらかさが楽しめます。
【銘菓創庵 むか新】の亥の子餅(大阪府)
銘菓創庵 むか新の亥の子餅は、生地に練り込まれた栗が目を引きます。
中は十勝小豆の粒餡です。
亥の子唄
亥の子の日の夕方から翌朝にかけて、子どもたちが亥の子突きをする地域もあります。
亥の子突きとは、縄をくくりつけた丸石(亥の子石)を持って近所を回り、亥の子餅やお小遣いをもらう行事です。
日本版ハロウィンといったところです。
石ではなく藁を固くしばった藁鉄砲だったり、お菓子などはもらわなかったりする地域もあります。
子どもたちは各家の玄関先で亥の子唄を歌いながら、石を地面に叩きつけます。
これには土地の除霊をし、精霊に力を与えて豊作を祈る意味があるそうです。
亥 の子唄の歌詞
亥の子唄やその歌詞は、地域によってさまざま。
近くの地区なのに、かなり違うことも珍しくないようです。
亥の子唄の歌詞の例
十 日夜との関係
西日本の亥の子に対し、東日本には十日夜(とおかや)があります。
十日夜とは、旧暦10月10日に行われる収穫祭です。
十日夜は田の神様の化身とされる案山子をお祀りするので、“案山子上げ”とも呼ばれます。
十日夜になると、子どもたちは藁鉄砲を持ち、歌いながら地面を叩いて回ります。
地面を叩く理由はモグラを追い払ったり、土地の神様に生気を与えたりするためです。
亥の子突きと似ていますね。
お礼に餅やお菓子をもらえるところも、かなり似ています。
炉開き・こたつ開き
お茶の世界では、亥の子の日に炉開きが行われます。
炉とは、畳の下に備え付ける小さな囲炉裏のこと。
夏や秋は卓上式の風炉を使うので、炉は使いません。
11月ともなると、肌寒くなります。
そこで、亥の子の日に風炉から炉へと切り替えるのです。
さらに新茶の入った壺の封紙を切り、茶を点てます。
これを、“口切の茶事”といいます。
これらはとても重要な茶事のため、亥の子の日は「茶の湯の正月」や「茶人の正月」とも呼ばれます。
一般家庭でも、亥の子の日には囲炉裏や掘り炬燵を開く習わしがありました。
古代中国の考え方の一つである五行思想によると、イノシシは水を表します。
そこでイノシシは火を防ぐと考えられ、亥の子の日に火を入れると火事にならないとされていたのです。
日本の暖房器具として、古くから親しまれている「こたつ(炬燵)」。童謡・ゆきでは、“猫はこたつで丸くなる”といった表現もされるほど、日本の冬とは切っても切り離せない存在です。そんなこたつの起源は、なんと室町時代。こたつの変遷や由来、オススメのこたつなど、詳しくご紹介していきます!
おわりに
かなり駆け足になりましたが、亥の子の基礎知識をご紹介しました。
亥の子は日本国民なら全員が知っている、というメジャーな行事ではありません。
出身地の違う人と、地元にはどんな風習があったのか、お互いに話してみると新たな発見があるかもしれませんね!
日本では、一年を通して全国的に親しまれているものから、地域性の高いものまで、さまざまな意味をもった年中行事が行われています。この記事では、今日行われている年中行事の中から、比較的広い地域に広まっているものをご紹介します。
実りの季節、秋。和菓子の素材となる小豆、栗、芋なども、秋が収穫期です。そのため、秋の和菓子には栗や芋を使ったものがたくさんあります。今回は、そんな秋の和菓子をご紹介します。
俳句とは、季語を伴う5・7・5の17音で構成される日本固有の定型詩です。春の季語なら朧月・梅・流氷、夏の季語なら浴衣・梅雨・プール、秋の季語なら枝豆・七夕・紅葉、冬の季語なら蜜柑・クリスマス・冬至などが挙げられます。今回は、俳句に必ず組み込まれる季語について、種類や使用できる季節、具体的な季語を一覧表でご紹介します♪