お正月の行事として知られる「書き初め(書初め)」。

学校や書道教室の課題で書いたことがあるという方も多いでしょう。

書き初めは、古くから日本で行われてきた伝統的な年中行事の1つです。

本来の意味や由来を改めて知ってみると、これまでとは違った楽しみ方ができるようになりますよ♪

今回は、書き初めの歴史や道具の知識に加え、世代別にオススメの縁起の良い言葉やご自宅でも上手に書けるポイントをご紹介します!


書き初め(書初め)とは?

書き初めとは、新年にはじめて筆で字や絵をかくこと、またはその書のことをいいます。

き初めの意味や由来

書き初めには1年の抱負や計画、おめでたい言葉をしたため、目標成就や新年をお祝いする意味が込められています。

書き初めは、平安時代に宮中で行われていた年始に文書(吉書)を奏聞そうもん※1する「吉書きっしょそう」が起源だと言われています。

江戸時代には庶民の間でも吉書の奏が知られるようになり、新年に若水※2で墨をすり、その年の恵方に向かって詩歌や文書を書く行事として広がっていきました。

明治時代に入ると、学校の書道教育にも取り入れられ、現在に知られる習慣として定着していきました。

※1 奏聞:天皇に申し上げること。
※2 若水:元旦の早朝に初めて汲んだ水

き初めはいつ書けば良いの? 書いた後はどうする?

一般的に、書き初めは1月2日に行います。

新年の1月2日は“事始め”とされ、書きものや習い事、商いなどの初仕事は「2日からはじめると上達が早く、長続きする」と伝えられているためです。

書き初めは15日前後の小正月まで飾っておき、その後「左義長さぎちょう」でほかのお正月飾りとともに炊き上げます。

左義長とは、15日前後の小正月に行われる火祭りのことで、地域によっては「どんど焼き」「さいと焼き」「おんべ焼き」とも呼ばれます。

燃やした際に、炎や燃えかすが高く舞い上がると、字が上達すると言われています。

書き初め(書初め)にぴったりな縁起のよい言葉・四字熟語【世代別オススメ】

昔の人々が親しんできた本来の書き初めにならい、純粋に好きな言葉やお気に入りの言葉でも書き初めを楽しむことができます。

以下、縁起の良いオススメの言葉や季語、四字熟語をいくつかご紹介します♪

らがな【小学生低学年向き】

ゆめ/きぼう/みらい/ねがい/のぞみ

おおぞら/あおぞら/うなばら/たいよう

はつひ/はつはる/はつゆめ/たから/だるま

ひかり/あさひ/あかり/あけぼの/あかつき

ともだち/ゆうじょう/きずな/よろこび

らがな+漢字【小学生中・高学年~中学生向き】

初日の出/希望の光/太陽の光/海の輝き

豊かな自然/美しい空/新たな出航/努力が実る

大志を抱く/自由な心/元気な声/青春の友/

御代の春/千代の春/花の春/雪月花/福寿草

初春/新春/迎春/初夢/彩雲/大福

字熟語【中学・高校生~大人向き】

雲中白鶴(うんちゅうのはっかく):俗世を超えた境地にいる高貴な人のたとえ

花鳥風月(かちょうふうげつ):美しい自然の風景や風情を楽しむこと

幕天席地(ばくてんせきち):志が大きく、小さなことにとらわれないこと

万里一空(ばんりいっくう):1つの目標に向かって精進すること

蛍雪之功(けいせつのこう):苦労して学問に打ち込むこと

一路順風(いちろじゅんぷう):物事が順調に進んでいくこと

勇往邁進(ゆうおうまいしん):目標に向かって突き進むこと

臥薪嘗胆(がしんしょうたん):目的を達成するために苦難に耐え抜くこと

謹厳実直(きんげんじっちょく):慎ましくまじめで正直なさま

書き初め(書初め)の道具の選び方

書き初めには、専用の半紙や筆といった道具が欠かせません。

ここでは、書き初め用の道具の特徴や選び方のポイントをご紹介します!

き初めに最適な半紙

書き初め用の半紙には、大きく分けて7つのサイズがあります。

学校や書道教室でサイズが指定されている場合は、あらかじめ確認して用意することが大切です。

また、半紙サイズは全地域で規格が統一されていないため、産地によって微量に寸法が異なる場合があります。

半切(条幅)書き初め用半紙として主流のサイズ
八ツ切判全紙の8分の1サイズ(半切の4分の1)
半紙三枚判通常の半紙を3枚繋げたサイズ
東京判地域名が入った特定サイズの半紙
千葉判同上
埼玉判同上
東京小判同上


き初め向けの筆

学校などでいつも使用する竹軸の筆とは別に、太めの木軸でできた書き初め用の筆というものがあるのをご存知ですか?

サイズ

学校の授業などで使用する竹軸の筆は、1号を最大に、…9号10号と徐々に小さくなるのに対し、書き初め用の木軸で作られた筆は、4号を最小に5号6号7号…と大きくなります。

半切に書く場合、書き初め用の木軸で、幼児や低学年は「8号」、小学3~5年は「7号」、高学年~中高校生や成人の方には「6号」が目安とされます。

一回り小さな半紙(八ツ切判など)であれば、お子様でも「6号」「5号」で良いでしょうし、成人の方でも大きな文字を書く場合には「8号」「7号」を使用しても構わないでしょう。

号数軸の外径特徴・対象(用途)
8号約24.0mm幼児、小学校低学年向け(半切にひらがな2~4文字など)
7号約21.0mm小学校中高学年向け(半切にひらがな+漢字4~6文字など)
6号約18.5mm小学校高学年~成人向け(半切に漢字のみまたは2行など)
5号約16.5mm半切に2行、八ツ切判などにおすすめのサイズ

※メーカーによって竹軸・木軸といった素材の違いや、号数(サイズ)の規格は異なるため、書く半紙や文字の大きさに合わせて、直接見て選ぶことをオススメします。

毛質

“剛毛筆”や剛毛と柔毛を合わせて作られた“兼毛筆”は、やや固めで腰の強い毛を使用しているので、堂々とダイナミックな字を書く書き初めに向いています。

書いた時に筆先が安定しているため、手の小さな幼児や低学年、初心者の方にオススメです!

柔毛筆のような柔らかいタイプは、筆の運びが柔軟なため、線に強弱を付けて細やかなニュアンスを表現できます。

筆の扱いに慣れている中級、上級者の方にオススメです!

っかくなら硯で墨をすってみよう!

現代では、墨汁を使うのが一般的になってきていますが、おめでたい新年をお祝いする気持ちを込めて、すずりに墨をするところから書き初めに挑戦してみてはいかがでしょうか?

江戸時代の習慣にならい、若水で墨をすり、恵方に向かって書くのも縁起があり風情な方法です。

若水としての湧き水や井戸水、ご神水を手に入れることは難しいですが、たとえ水道水でも、元日の朝一番に汲んだお水を「若水」として、清らかな気持ちで迎えると良いかもしれませんね♪

書き初め(書初め)を上手に書くポイント3つ

ここからは、書道を習っていなくても、ご自宅で上手に書き初めを書くポイントを簡単にまとめました。

ぜひ参考にしてみてくださいね!

書く時の姿勢

書き初めは大きな半紙に書く場合が多いので、机の上で書くより、半紙全体を見渡せる床の上で正座または四つん這いの姿勢で書くのがオススメです。

肩の力を抜いて脇を軽く広げ、前傾姿勢をとります。

筆を持つ反対の手は半紙の上を軽く押さえ、体の軸を保ち、手首ではなく腕から字を書くように心がけましょう。

筆の持ち方・墨の付け方

筆の軸の中心より少し下を、親指と人差し指でつまむようにして持ちます。

残りの指3本は軽く添える程度です。

硯の溝(海)で筆の腹にたっぷりと墨を含ませた後、平面(陸)や縁で筆先の墨を軽く落とし整えます。

書いていくうちに、墨は筆先に向かって徐々に下りていくため、付け方を工夫して適量を含ませるのがポイントです!

字がにじんでしまう場合は付ける墨の量を少なめに、かすれ過ぎてしまう場合は書くスピードを遅くしたり、墨の量を多くしたりして調整しながら書いてみましょう。

筆の運び方

書き始める前に、筆順どおりに筆を運ぶ全体の流れをイメージしましょう。

起筆(筆を打ち込む)の時は角度は斜め45度にし、送筆(書き進める)の間も常に45度を維持します。

「とめ・はね・はらい・折れ」を書く時は、筆を半紙から離さず改めて打ち込み直し、方向と勢いに気をつけて筆を運びます。

書き上げるリズムやテンポが良いと、満足できる字を書き上げられるものです。

字を大きく、太く書くことや、ひらがなと漢字の大きさのバランスも大事です。

おわりに

手書きで文章を書く機会が減った現代、筆で字を書くことは、稀な経験ではないでしょうか。

昔ならではの書き初めにならい、硯の上でゆっくりと墨をすり、半紙の上をゆく静かな筆の音に耳を澄ませてみてください。

伝統の年中行事の風情を感じられる、粋なお正月を過ごすことができるでしょう。

新年の厳かな空気の中で、心を落ち着かせて自分自身の将来や理想と向き合ってみたり、気のままにお好きな言葉や絵を認めてみたりするのも良いですね!

身近な「お正月習慣」として書き初めを存分に楽しみ、幸先のよい明るい1年をスタートさせましょう♪