社会人にとって、それはそれはうれしいお盆休み。
海外旅行に行く方もいれば、実家でゆっくりするという方もいますよね。
いろいろな過ごし方がありますが、一ついえることは、日本人にとってお盆は特別な期間のようです。
ですが、そもそもお盆とは、どういった行事なのでしょうか。
もし海外の方に質問されたら、あなたは説明できますか?
すんなりと答えられない方のために、この記事ではお盆の意味や時期、過ごし方など基本的な知識についてまとめました。
お盆とは?
まずはお盆の意味や由来、歴史について簡単に触れ、お盆とはどういった行事なのかをご紹介していきます。
「お盆」という言葉には、実は怖い意味が隠されていました…!
お 盆の意味
お盆には、ご先祖様を供養する意味があります。
期間中は浄土※から地上に戻ってきたご先祖様の霊を迎え入れ、一緒に過ごすことが供養になるのです。
また、お盆は仏教の“盂蘭盆会”と、日本独自の祖先信仰が結びついてできた日本ならではの行事です。
意外かもしれませんが、他の仏教国にはないものなのです。
※浄土:仏や菩薩が住む清らかな国
お 盆の由来・歴史
ではなぜ、ご先祖様を供養する行事を「お盆」と呼ぶのでしょうか?
モノを乗せて運ぶ、あの“お盆”を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんが、一切関係ございません!
実はお盆の正式名称は、盂蘭盆会といいます。
これを略して「盆」や「お盆」というのですね。
サンスクリット語ではウランバーナといい、“逆さに吊るされた苦しみ(倒懸)”という意味があります。
なんとも、おどろおどろしい意味の言葉ですが、こんな説話に由来しています。
仏教の開祖・お釈迦様には、目連という弟子がいました。
目連は神通力に秀でた人物で、その能力を使い、亡くなった母親の様子を見てみたのです。
すると、なんと木蓮の母親は地獄で逆さ吊りの罰を受けているではないですか!
目連はお釈迦様に相談したところ、「7月15日にたくさんの僧たちにお供えをすれば、母は救われる」といわれます。
その通りに手厚く供養したところ、母親は極楽浄土へと行くことができたそうです。
ここから、苦しみを受けている死者を供養する、という風習(盂蘭盆会)が生まれたとされています。
盂蘭盆会は仏教とともに、飛鳥時代の日本へと伝わりました。
さらに、すでに日本に存在していた祖先信仰と融合して、私たちの知っている「お盆」に変化していったのです。
お盆はいつ?
先祖の霊を苦しみから救うとされるお盆。
では、お盆は一体いつ行うものなのでしょうか?
目連の説話に由来するのですから、お盆は旧暦の7月15日(現在の8月中旬)のはずですね。
しかし実際には、お盆の時期は地域によって異なるのです。
実 はバラバラ!?お盆の時期
もともとお盆という行事は、旧暦の7月に行われていました。
ところが明治時代に入って、暦が新暦に切り替わると、8月に行う地域が出てきます。
新暦の7月は、農作業の忙しい時期と重なってしまうためです。
現在、全国的には8月13日~16日の4日間が主流ですが、一部の地域(東京・横浜・金沢など)では7月に行われています。
南西諸島などでは、今も旧暦の7月に行うところもあるようです。
新 盆?初盆?新のお盆?区別しづらいお盆の種類
さて、7月のお盆を「新のお盆」、8月のお盆を「月遅れのお盆」と呼ぶことがあります。
さらに旧暦のお盆のことは、「旧盆」や「旧のお盆」なんていったりします。
お盆といっても、いろいろな種類・呼び方があるのですね。
例えば、「新盆」というのもあります。
ややこしいですが、先ほどご紹介した“新のお盆”とは違います。
新盆とは、家族などが亡くなって四十九日の法要の後はじめて迎えるお盆のこと。
初盆(はつぼん)とも呼ばれます。
新盆は普通のお盆よりも準備を早くはじめ、盛大に行われるのが一般的です。
お盆の過ごし方
それでは、お盆のためにどのような準備をし、どのように過ごすのでしょう。
もちろん地域差はありますが、下記のようなスケジュールで進めていくのが一般的です。
● 8月7日:お墓や仏壇の掃除
● 8月12日:必要なモノの準備
● 8月13日の朝まで:精霊棚を作る
● 8月13日夕方:ご先祖様を迎える(迎え火)
● 8月14・15日:供養
● 8月16日朝:ご先祖様を送り出す(送り火)
お 盆を迎える準備
まずはお墓や仏壇の掃除です。
盆行事の初日にあたる7日は、七日盆と呼ばれています。
12日にはお花・お供え物・ろうそくや線香といった、お盆に必要なモノを盆市などでそろえます。
新盆では白提灯を玄関※に飾るので、忘れずに用意しておきましょう。
8月13日の朝までには、精霊棚を作っておきます。
精霊棚とは、お盆の間にご先祖様を迎えるための祭壇のことで、盆棚とも呼ばれます。
普通は仏壇の前に小机を置き、次のモノを飾ります。
地域・宗派によっても違いがありますので、ご注意くださいね。
※玄関のほか、軒先や仏壇の前などに飾ることもある。
精霊棚に飾るモノの例
①位牌
普段収めている仏壇から取り出して、精霊棚の一番上の段※に飾ります。
※精霊棚が平らな場合、最奥に飾る。
②真菰のござ
精霊棚の上に敷き、この上にお供え物を飾ります。
敷く際は、手前に垂らすようにします。
③盆提灯
精霊棚の左右に飾ります。
地域ごとに使わなかったり、上から吊るしたりもします。
近頃では、場所の都合上どちらか片方だけを飾ることも増えてきています。
④季節の野菜・果物
故人の好物を添えても問題ありません。
⑤ミソハギの花
ミソハギは、漢字だと“禊萩”と書きます。
“禊”は、悪霊を払い浄める意味があり、精霊棚に飾る“水の子”に水をつけたミソハギでお清めをするのにも使います。
⑥浄水・あかみず
穢れを払うための、器に入れたきれいな水のことをいいます。
⑦水の子
きゅうりとナスをさいの目状に切り、洗米と混ぜて水を張った器※に盛ります。
※ハスの葉に盛る地域もある。
⑧精霊馬
精霊馬とは、ご先祖様があの世とこの世を行き来するための乗り物です
きゅうりとナスに、短く切った割りばしを4本ずつ刺して作ります。
きゅうりのほうは馬、ナスのほうは牛に見立てられます。
これには、この世に帰ってくる時は足の速い馬に、あの世へ戻る時は足の遅い牛に乗ってほしい、という願いが込められているのです。
位牌の前に備えます。
⑨そうめん・昆布 など
そうめんは、原材料である麦の収穫がお盆時期と近いという理由や、古くから七夕のお供えに使われていたこと、またその形状から「細く長く」良いことが続いたり長寿を祝う縁起物として選ばれます。
昆布は“子生婦”と当て字がされており、一家繁栄の意味があります。
お 盆中にすること
迎え火
8月13日の夕方になったら、ご先祖様をお迎えするため、お墓参りに行くのが一般的※1です。
家の門や玄関の前などでは、素焼きの皿や耐熱性の皿の上で“おがら※2”を燃やします。
これを「迎え火」といい、ご先祖様が迷わないようにするための道しるべです。
同じく目印として、玄関先に盆提灯を吊るすこともあります。
マンションなど火の扱いに制限される場所では、ベランダで行ったり盆提灯を活用すると良いでしょう。
※1 関東地方には「留守参り」といって、8月14・15日にお墓参りをする風習もある。
※2 おがら(麻幹・苧殻):麻の茎を乾燥させたもの。箸木ともいう。
京都では毎年、お盆の少し前に「六道まいり」と呼ばれる、ご先祖様の霊を迎えるためにお寺へ参詣する行事が行われます。京都の人々は親しみを込めて、ご先祖様の霊のことを“お精霊さん”や“おしょらいさん”と呼び、この行事を大切にしてきました。
ご先祖様をお迎えしたら
ご先祖様をお迎えしてからは、朝昼晩3回、精霊棚にご飯と水をお供えします。
さらに僧侶を自宅に招き、読経をしてもらってご先祖様を供養します。
お盆の時期になると、各地では盆踊り大会などが行われますね。
盆踊りは、ご先祖様たちの霊に気持ちよく、あの世へ帰ってもらうための手段とされています。
みなさんは盆踊りと聞いてどのような情景が思い浮かびますか。都会でも地方でもいまだ日本人の夏に結びつく盆踊りですが、どのような歴史があり、全国にはどのような特色をもつ盆踊りがあるのか紹介していきます。
送り火
お盆最終日である8月16日の夕方、ご先祖様を再びあの世へと送り出します。
迎え火をしたのと同じ場所で「送り火」を焚いて、ご先祖様の帰り道を明るく照らします。
送り火は、“盆送り”や“送り盆”とも呼ばれます。
京都の夏の風物詩である“五山送り火”も、ご先祖様が迷わないようにとはじめられた風習で、海や川で行われる“灯篭流し”や“精霊流し”も、お盆の風習の一つです。
送り火をした後、ご先祖様をお墓までお見送りする地域もあります。
送り火をする時間がない場合は、別の日時に行っても問題ありません。
ご先祖様への供養ですから、その心を大切にお盆の時期を過ごしましょう。
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おわりに
かなり駆け足になりましたが、お盆に関する基礎知識をご紹介しました。
お盆はご先祖様、そして普段は会えない家族と過ごせる貴重な時間。
お盆休みにどこかへ出かけるのも素敵ですが、ご先祖様の供養をして、自分のルーツと向き合ってみるのもいいかもしれません。
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