夏の風物詩、蚊取り線香。

香しい匂いと煙を漂わせながら虫を退治してくれる、日本が誇る発明品ですよね。

最近では、昔ながらの渦巻き型蚊取り線香の他に、電気で起動するタイプの蚊取り機や、芳香剤の香りが漂う蚊取り線香などが販売されており、より気軽に蚊取り線香の効果や香りを楽しめるようになりました。

今回は蚊取り線香の歴史から、気になるその効果、有名なメーカーやオススメの蚊取り線香入れを解説いたします。

蚊取り線香の歴史

蚊取り線香が発明される前の虫よけ方法

蚊取り線香がない時代、人々は苦労を強いられつつ蚊などの虫と付き合っていました。

具体的には以下の方法で虫よけを行っていました。

蚊帳

蚊帳かやは、寝室に吊り下げることで虫の侵入を防ぐ布状の網で、古墳時代に唐から日本に伝わった技術であるといわれています。

通気性があり涼しいため、高温多湿の日本では貴族を中心に重宝されました。

一方、虫の侵入を防げるのは蚊帳の内部だけであり、設置も面倒なため、持ち運んで使うような機動性はありませんでした。

蚊遣火かやりび
蚊遣火は、よもぎや松の葉を燻し、その煙を利用して虫を追い払う方法です。

大正時代初期まで、夏の風物詩として各家庭で行われていました。

家の隅々まで虫除けをすることができる一方、効果を発揮させるには煙を充満させる必要があったため、目の痛みといった副作用に当時の人々は苦しんだそうです。

このように、蚊取り線香がまだ発明されていなかった時代は、苦労しながら虫と戦っていました。

開発者と防虫菊が出会ったのは明治時代

明治18年(1885年)、和歌山県出身の実業家・上山英一郎は、アメリカの植物会社社長であるH.Eアモアと出会います。

アモアは上山の恩師でもある福沢諭吉の紹介のもと、日本特有の植物を求めて、実家がミカン農家である上山の元を訪れたのでした。

その際、上山が譲渡したミカン・竹・秋菊といった植物の苗の見返りとして、翌年アモアは殺虫効果を持つ“防虫菊”の種子を上山に渡します。

すぐにその有用性に気づいた上山は、さらにその翌年・昭和19年(1887年)から事業を立ち上げ、日本ではじめての殺虫剤事業に取り組むこととなったのでした。

蚊取り線香の発明

上山は事業を立ち上げた当初、ノミ取り粉として防虫菊を加工していました。

当時、日本は日露戦争のさなかで、チフスという軍隊特有の感染症の懸念がありました。

これはシラミを媒介して感染が広がるものだったため、シラミにも効果を発揮する上山のノミ取り粉の需要が上昇することとなったのです。

この事業の拡大に伴って、上山は新たな防虫菊の活用法を考えはじめます。

そこで考案されたのが『蚊取り線香』だったのです。

当時、ノミ取り粉を燃やすことで、地上だけでなく空中にいる虫に対しても殺虫効果を発揮する使い方が流行していました。

このアイデアをもとに、明治23年(1890年)、上山は仏壇線香の材料に防虫菊の粉を混ぜ込み、蚊取り線香を発明したのでした。

渦巻き型蚊取り線香の完成

開発当時の蚊取り線香は、仏壇線香の形を模して作られていたため棒状でした。

しかし、この形は長時間の利用には適しておらず、40分程度の使用で燃え尽きてしまうという欠点がありました。

睡眠時間中も継続的に利用したいと言う消費者の需要に応えるため、上山は新たな線香の形を模索することとなります。

この時、上山の妻が蛇のとぐろからアイデアを思いつき、線香を渦巻き状にしてはどうかと助言をしました。

上山はこの画期的な思いつきを採用し、丈夫で効果が長持ちする現在の渦巻き型の蚊取り線香が明治28年(1895年)に誕生したのでした。

蚊取り線香の効果

効能・効果

殺虫成分

蚊取り線香の殺虫成分は、ピレスロイドと呼ばれる化学物質の一種です。

ピレスロイドには、虫の神経を麻痺させて吸血を阻止する「ノックダウン効果」をもたらし、殺虫する効果があります。

この成分を熱で揮発きはつさせることによって、部屋の隅々までその効果をもたらします。

効果の範囲

煙が見える範囲が目安で、六畳間、距離に換算すると半径2mほどに効果がもたらされます。

線香が熱せられている少し手前からピレスロイドが揮発を始め、煙に運ばれて周囲を漂う設計になっています。

持続時間

一般的な大きさの蚊取り線香の持続時間は約7時間です。

屋外での使用はもちろん、睡眠時にも持続時間の長さを生かした利用が可能となっています。

効果の対象

殺虫成分であるピレスロイドは、蚊からカブトムシに至るまで虫全般に効果があります。

ただし、一般的な蚊取り線香の大きさから発せられる殺虫成分の量は、大型の昆虫を退治するには少量なため、蚊を初めとする小型の羽虫に対して特に効果を発揮します。

大型の昆虫に対しても、「害が全くない」というわけではないので、正しい使い方は各メーカーの説明を参考にしてください。

また、人や犬、猫、鳥、ハムスターをはじめとする哺乳類には毒性を持ちません。

しかし、ペットの個体差もありますし、特にパグやシーズー、ペルシャといった短頭種の犬猫は煙自体に弱いため、呼吸の様子が不自然でないか、小まめな換気をしているかなど、細心の注意が必要です!

人に害がない理由

蚊取り線香は人に害を与えません。

蚊取り線香の有効成分であるピレスロイドが、選択毒性という性質を持つからです。

選択毒性とは、特定の生物のみに毒性を与える性質のことです。

ピレスロイドは標的の体内に侵入し、神経を麻痺させることで効果を発揮します。

人の神経系は虫に比べてはるかに複雑かつ巨大なので、ピレスロイドを体内に取り込んでも害が発生する前に速やかに分解し、体外に排出することができるのです。

※ただし、過剰な吸い込みは避け、きちんと換気をし、子供の手の届かないところでお使いください。

蚊取り線香の製造工程

材料

・ピレスロイドを含んだ植物性粉末
・木粉
・タブ粉(線香の源材料)
・染料
・水

製造手順

調合
粉をふるいにかけて異物を除去した後、計量を行い、混ぜ合わせます。

捏和ねっか
ローラーで圧力をかけながら水と染料を加え、こね合わせていきます。

圧力をかけることで水分量が少なくても粘土のような柔らかさを実現します。

押し出し成形
粘土状の柔らかい生地を延ばし、薄い長方形の板の形に整形します。

打ち抜き
出来上がった板を渦巻き型の金属型で打ち抜き、乾燥させる網の上に落とします。

乾燥
風通しの良い場所に移動させた後、2日ほど乾燥を進めます。

抜き打ち直後の蚊取り線香は50%程度水分を保有しています。

これを徐々に乾燥させ、最終的に10%程度にまで落ち着かせます。

品質検査
完成した商品の一部は品質管理部門に送られ、燃焼時間や成分に問題がないかチェックがなされます。

梱包・出荷
完成した蚊取り線香一つひとつが人の手で梱包と箱詰めがされ、出荷されます。

代表的な蚊取り線香メーカー

大日本防虫菊株式会社(KINCHO・金鳥)

蚊取り線香発案者の上山英一郎が創業した老舗。

金鳥というブランド名は、誰もが聞いたことがあるでしょう。

「金鳥の渦巻き」という商品名で蚊取り線香を販売しています。

アース製薬株式会社

アース製薬は、主に電気を利用した蚊取器を販売しているメーカーです。

熱を発生させずにピレスロイドを揮発させる仕様のため、子供のいる家庭や煙が気になる方にオススメです。

ライオンケミカル株式会社

大日本防虫菊に並ぶ老舗です。

手作業でこなしていた渦巻き作りを、型抜きという手法によって、いち早く自動化に踏み切ったメーカーでもあります。

フマキラー株式会社

世界に先駆けて電気式の蚊取器を開発したメーカーです。

蚊取器の小型化にも取り組んでいます。

株式会社 児玉兄弟商会

大正9年(1920年)から続く、医薬部外品を製造するメーカーです。

蚊取り線香のほか、獣よけ線香なども開発しています。

蚊取り線香をインテリアに!おしゃれな蚊取り線香入れをご紹介

「蚊取り線香入れ」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?

地味で、できれば見えないように隠したい、そう思った方も多いでしょう。

しかし最近は、おしゃれでインテリアになるような「蚊取り線香入れ」がたくさんあるんです!

そこで、オススメ商品をいくつかご紹介します。

Amabro KAYARI(アマブロ カヤリ)

金魚の形が特徴的な蚊取り線香入れです。

涼しさと癒しを届けてくれます。

贈り物にもピッタリ!

ナフト ロンド

シンプルで洗練されたデザインが特徴の蚊取り線香入れです。

スタイリッシュなインテリアとしてお使いいただけます。

OIGEN(及源鋳造)

丸い形が特徴的な南部鉄器の蚊取り線香入れです。

重厚感があり、高級感漂うデザインとなっています。

YAMASAKI DESIGN WORKS(ヤマサキデザインワークス)

夏にちなんだ柄が美しい蚊取り線香入れです。

花・籠・朝顔・桔梗・花火・雲といった多くのデザインの中から模様を選ぶことができます!

おわりに

蚊取り線香は、人に無害な状態で虫よけ効果をもたらしてくれる、数少ない方法の一つです。

同時に、焚いた際の香りや、蚊取り線香入れを使ったインテリアとして楽しむこともできます。

先人たちが知恵を振り絞ることで生まれた蚊取り線香。

火事や喚起に留意しつつ、夏の風物詩をぜひとも楽しんでみてはいかがでしょうか?