皆さんのお家では、お正月に自宅の神棚や玄関、床の間などに鏡餅を飾っていますか?

お餅といえば昔は高級品であり、特におめでたい「ハレの日」に食べられていました。

そんな、ハレの日の一つでもあるお正月に食べられるのが鏡餅。

なんとなくやっている方も多いかもしれませんが、鏡餅を食べるときに行う「鏡開き」には正式な作法があります。

今回は、鏡餅の飾りや鏡開きの意味、時期、由来を分かりやすくご紹介していきます!

鏡餅とは?

まずは鏡餅から説明していきましょう。

大小の丸くて平たいお餅を重ね、だいだいを乗せた姿でお馴染みですね。

上に乗っているのはみかんと勘違いしている人もいますが、あれは橙です。

お正月にお餅を食べる習慣は、平安時代に健康と長生きを祈って行われた宮中行事の歯固めの儀からできたといわれています。

餅の飾りの意味

丸いお餅

丸い形が満月に通じるため、円満の象徴です。
二つ重ねることで円満に年を重ねるという意味も込められています。

橙(だいだい)

実が熟しても4~5年は落下せず、1本の木に何代もの実がなることから、家が“代々”栄える縁起物です。

譲葉(ゆずりは)

新しい葉が出てから古い葉が落ちるため、家督が続くようにとの願いが込められています。

裏白(うらじろ)

葉が左右対称に生えることから、夫婦円満を表します。表は緑、裏が白であることから、清廉潔白や白髪になるまでの長寿を願う意味もあります。

四方紅(しほうべに)

鏡餅をのせる色紙のことです。赤い縁取りには災いをはらう意味が込められています。

※飾り方は地域や家庭によって異なります。伊勢海老・するめ・昆布などを飾ることもあります。

鏡開きとは?

では、なぜ神様にお供えした鏡餅を割り、鏡開きを行うのでしょうか。

鏡餅をおいしく食べるため?

もちろんそれもありますが、大切な意味が込められているのです。

開きをする理由

それは1年間の無病息災を祈るためです。

年神様のしろでもある鏡餅には、年神様の魂が宿るとされていました。

そこで鏡餅を食べることによって、年神様の力を得ることができると考えたのです。

さらに、鏡餅を食べると年神様とお別れすることにもなり、お正月に一区切りつけるという意味でも鏡開きは行われているのです。

開きの由来・語源

鏡餅、鏡開きといいますが、なぜ「鏡」なのでしょう。

そしてなぜ“開く”のでしょうか。

鏡餅はその丸い形から、昔の鏡(銅鏡などをイメージしてください)に似ていると「鏡餅」と呼ばれるようになったといわれています。

特に八咫鏡やたのかがみ(三種の神器の一つ)に由来するという説もあり、特別な力があると信じられていたことが分かります。

また、鏡開きは、もともと武家から始まった行事だともいわれています。

武士が刃物を使って鏡餅を切ることは、「切腹」を連想させてしまうため禁忌でした。

そこで硬い鏡餅を木槌きづちや手で割って食べるわけですが、「割る」という表現は縁起が悪いと考えられていました(後ほど詳しく)。

そこで末広がりを意味する「開く」を使うようになったとされています。

鏡開きはいつ行う?

神様へお供えしておいた鏡餅は、いつ鏡開きをすればいいのでしょうか。

域によって異なる鏡開きの時期

鏡開きを行う時期は、地域によって異なります。

一般的に、松の内(門松・松飾をしておく期間)を1月7日までとする地域では、鏡開きを1月11日に行います。

関西など、松の内を1月15日までとする地域では、鏡開きを1月15日もしくは1月2日に行うことが多いようです。

京都には、1月4日に鏡開きを行う地域もあります。

は1月20日に行っていた

鏡開きの発祥はよくわかっていませんが、室町時代にはその方式が定まったと考えられています。

江戸初期の武家では、男子は具足ぐそくに、女子は鏡台に鏡餅をお供えしていました。

そして、鏡開きは1月20日(二十日正月)と決まっていたのです。

二十日がZ刃柄はつかと通じるから、といわれています。

ところが、将軍・徳川家光の死によって、鏡開きの日にちが変更されます。

家光が亡くなったのは、慶安4年(1651年)4月20日。

そこで月命日である20日を避け、1月11日に行うようになったのです。

鏡開きのやり方

鏡開きはどのように行うのが正しいのでしょうか。

正しい鏡開きの方法(パック餅は除きます)とタブーについてご紹介します。

開きの方法

まずは神様への感謝をしつつ、鏡餅を下げます。

鏡餅の表面にはカビやホコリがついてしまうものですので、濡れ布巾などで取りましょう。

叩き割る場合

鏡開きの際、用意しておくものは、木槌や金槌です。

それらで鏡餅を叩き割っていきます(手で割れる場合は、手で大丈夫です)。

正式には「よいしょ~」など、掛け声をかけながら行います。

いきなり割るのは大変なので、始めのうちは少しずつ叩いていきましょう。

鏡餅が細かく砕けると思いますが、食べられるので捨てなくて大丈夫!

お餅にヒビが入ってきたら、勢いよく叩き割ります。

難しい場合は、ストーブの前に置いたり、天日に干したりするとうまくいきますよ。

手でちぎる場合

叩くのはちょっと…という方は、鏡餅自体をやわらかくして手でちぎるのがオススメです。

お餅を半日程度水に浸けておき、ラップをかけて電子レンジで温めます。

くれぐれも手でお餅をちぎる際は、やけどに気を付けてくださいね。

開きのタブー

鏡開きで最もやってはいけないのが、包丁などの刃物を使うことです。

刃物を使って鏡餅を切ると、神様とのご縁までを切ってしまうといわれています。

先ほどもお話しましたが、鏡開きはそもそも武家から始まった風習。

刃物を使うことは切腹を連想してしまうので、み事とされたのです。

刃物を使えば作業が楽に終わりそうですが、絶対に使わないようにしましょう!

鏡餅の食べ方

苦労して開いた鏡餅は、どのようにして食べるのがよいのでしょうか。

定番はお雑煮、おしるこ、かき餅です。

雑煮・おしるこ

縁起がいい食べ方とされるのは、お雑煮とおしるこです。

お正月には食べ飽きてしまう方も多いお雑煮ですが、そもそも年神様にお供えしたお餅・野菜・若水(1年で最初にくんだ水)などを煮込んで食べたのが始まりとされています。

ですので、鏡餅はお雑煮にして食べるのがピッタリ!

小豆の入っている、おしるこ(汁粉)もオススメです。

古くから、小豆には魔除けの力があると信じられてきました。

鏡餅をおしるこにすれば、より年神様のパワーをいただける気がしますよね。

き餅

また、かき餅にして食べる方も多くいます。

揚げて塩や醤油をまぶすだけで簡単に作れる(そしておいしい!)ので、普段は料理をしないという方にもオススメです。

餅は焼いてはいけない?

「鏡餅は焼いてはいけない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。

どこから出たうわさなのかは分かっていませんが、一つだけ確実に言えることは、一般的にはまったく問題のない行為ということです。

焼いて食べたいという方は、ぜひ焼きましょう!

鏡餅は、おいしく食べるのが一番です。

なお、「主婦」のためのお役立ちサイト『シュフーズ』では、お餅を電子レンジを使って爆発させずに柔らかくする方法や便利アイテムをご紹介しています。

鏡餅を調理する際は参考にしてみてください♡

▶シュフーズ「餅を電子レンジで爆発させずに柔らかくする方法!便利アイテムもご紹介

鏡割りとは?

鏡開きといえば、もう一つの“鏡開き”を思い浮かべた方もいるかもしれません。

酒の鏡開き=鏡割り

結婚式やパーティーなど、お祝い事があったときに用意される樽酒。

木槌を使って樽のふたを割る「鏡割り」という風習がありますが、これを「鏡開き」と呼ぶ場合があるのです。

鏡餅を開くのとはまったく違う行為ですが、同じ呼び方をするので混同してしまう方もいるようです。

鏡開き」と呼ぶ理由

では、なぜ樽酒のふたを割ることまで「鏡開き」と呼ばれるのでしょう。

これは丸い蓋が鏡と呼ばれていたことに由来します。

さらに、祝いの場に「割る」という表現は相応しくないことから、縁起の良い「開く」が使われるといいます。

鏡餅の鏡開きと同様、縁起を担いだネーミングだったのですね。

おわりに

鏡開きは、年神様の依り代となる鏡餅を下げていただく、武家から始まった正月行事です。

1年の無病息災を祈るために行われます。

まさに、供えて、開いて、食べるまでが鏡餅といえます! 

なんとなく鏡開きをするのではなく、「いつやるのか」、「正しいやり方」、「タブー」についてしっかり押さえ、年神様のパワーを最大限にチャージしたいものですね。