こんにちは!

ワゴコロ編集部です♪

今回は、「江戸木版画」体験をレポートしたいと思います!

お邪魔したのは、東京メトロのCMでおなじみ、“Find my Tokyo”でも掲載されている「松崎大包堂まつざきたいほうどう」さん。

機械での印刷が当たり前になった現代で、昔と変わらぬ木版摺りの作業を続けているお店です。

松崎大包堂は、東京メトロ千代田線の町屋駅から徒歩9分、住宅街の細い路地を進むと、ノスタルジックでかわいらしい看板が目にとまりました♡

ご自宅と作業場を兼ねた、こちらの建物が松崎大包堂です。

アットホーム感漂う作業場で、体験が楽しみです!

江戸木版画って?

体験についてレポートする前に、そもそも江戸木版画とはどういうものなのかをご紹介します。

まず、江戸木版画の前に“木版画”とは何かご存知でしょうか?

木版画とは、木製の原版の表面に彫刻刀などを使用して凸部を作り出し、その上にインク(絵具)を乗せて、上から圧力をかけることでインクを紙に写すことを指し
ます。

小学校の授業で教わったことがある方も多いかもしれませんね。

木版画はもともと墨一色しかありませんでしたが、江戸時代になると使用する色が二、三色と増えていきます。

金や銀、中間色までも木版で刷り上げることができるようになり、江戸時代に確立したこの多色摺りの技法は「江戸木版画」と呼ばれるようになります。

その技術・技法は改良を重ねながら発展し、今日まで継承され、東京を中心に伝統的に製造されているのです。

また、江戸木版画は下絵を描く“絵師”、原版となる板木を彫り上げる“彫師”、和紙に絵柄を摺り作品を仕上げる“摺師”と、一つの版画が完成するまでにそれぞれの職人が分業で作業を行うのも特徴の一つです。

完全な分業制をとることで、世界に類を見ない江戸木版画という高度な技術が生まれました。

松崎大包堂さんについて

江戸木版画が分業制であることをご説明しましたが、そんな江戸木版画の摺師としてこの道60年以上活躍されているのが、荒川区指定無形文化財保持者でもある松崎啓三郎さん。

そして、松崎さんが店主をつとめるお店が、松崎大包堂なのです。

今では印刷は印刷機で行うことが当たり前になりました。

しかし、松崎大包堂は今でも機械が存在しなかった時代と同じ手法により、江戸木版画の技術を用いて和紙に絵柄を摺り、一枚の印刷物を仕上げています。

機械で良いのでは?と思う方もいるかもしれませんが、摺り上がったものを見ればその色の違いは一目瞭然!

機械では江戸木版画による重厚感のある色は再現できません。

その色に惚れ込み、依頼を続けてくださる会社も多いのだそう。

体験の前に

まずは、ご自宅も兼ねている2階の作業場へと案内していただき、体験の前に松崎さんご本人から江戸木版画について教えていただきました♪

作業場では職人さんたちが黙々と仕事をこなされています。

女性の職人さんもいらっしゃいました!

1日に何時間もこの態勢で摺り続けているとのことで、それだけでもはかり知れない忍耐力が必要な作業であることが伝わってきます…。

今回の体験で先生をしてくれたのは、松崎大包堂の店主である松崎さんご本人でした!

う、嬉しい!!!!!

指定無形文化財保持者の方に直接教えていただけると思っていなかったので、興奮してしまいました!

過去に松崎さんが手掛けた江戸木版画も、いくつか拝見させていただきました。

浮世絵師として有名な歌川広重氏の「舞坂まいさか 今切真景いまぎりしんけい」という浮世絵の作品や、

葛飾北斎氏の「富嶽三十六景ふがくさんじゅうろっけい」も!

どれも江戸木版画の特徴である多彩な色が重厚で、美しく再現されており、思わず見とれてしまいました♪

また、浮世絵だけでなく、江戸木版画で摺った現代風ポスターも拝見せていただきました。

黒一色だけに見えるかもしれませんが、淡い灰色も使われており、こちらも印刷機では再現できないような高級感のある仕上がりになっていました。

そして、今回お邪魔した際にちょうど松崎さんが摺っていたのは、私たちもよく目にする熨斗のし紙でした。

木製の原版はこのように凸部が彫られており、この凸部に赤いインクを付けて摺っていきます。

木の原版に染み込んだインクが、時代を感じさせますね…!

また、何よりも重要になってくるのが、摺るスピードです。

1枚あたりの単価はそこまで高くないため、数をこなさなければいけないのだとか。

松崎さんは撮影した写真がブレてしまうほどのスピードで摺り作業を進めていました。

少しでも柄がズレると売り物にならなくなってしまうので、いかに正確な位置に摺ることができるのかが、プロの職人としての腕の見せどころ!

流石はこの道60年以上の松崎さん。

一寸の誤差もなく和紙を配置しており、全く無駄のない動きに感動しました。

江戸木版画は、以下のように何種類もの色を重ねて摺ることで、一枚の版画が出来上がります。

そのため、一度でもズレたり色のムラができてしまうと、全てが台無しになってしまいます。

江戸木版画の奥深さや難しさを実感したところで、いよいよ実際に体験スタートです!

江戸木版画体験スタート!

体験では、一から完成まで全ての色を摺るわけではなく、最後の一色を摺れば完成となる状態の版画が用意されており、そこに最後の一色を入れる作業になります。

全ての色を一から摺ろうとすると何時間もかかってしまうため、このような体験内容になっているとのことでした♪

そして、その完成一歩手前の版画は何種類も用意されており、自分の好きなものを選ぶことができます!

どれも綺麗なので迷ってしまいますね…。

私は、皆さんも一度は見たことがあるであろう、こちらにしました!

葛飾北斎氏の、「富嶽三十六景」です!

この時点で完成しているように見えるかもしれませんが、実は一色足りません。

ここに、以下の原版を使って、色を摺っていきます。

原版の凸部を見れば、だいたいどの部分に色を摺るのか、おわかりいただけるかもしれないですね。

写真の右下にある、“バレン”という道具を使います。

バレンは竹皮の繊維をヒモ状に編み、古紙を貼り付けて漆で塗り固めたものなのですが、このバレンで和紙を原版の凸部に押し当て圧力をかけることで色を摺っていきます。

では、実際に色を摺る前に下準備をしていきましょう!

綺麗に色を乗せるため、まずは原版の上にでんぷん糊とインクを混ぜながら塗っていきます♪

でんぷん糊とインクをまんべんなく原版の上に乗せたら、刷毛はけを使って塗っていきます。

刷毛は馬毛でできており、摺る面積に応じてそのサイズが変わってくるそうです。

インクが少ないと色が薄くなってしまいますし、多すぎてもムラができて滲んでしまう場合があるので、塗る際には注意が必要です!

インクと糊を塗った後は、完成一歩手前の版画を“見当けんとう”の上に乗せて摺るだけなのですが、ここが一番難しいところ。

見当とは、原版のどこに紙を置けば良いのかわかるようにつけられた目印のようなものです。

先程の画像で示すと、赤丸の部分になります。

まずは松崎さんにお手本を見せてもらいます。

迷うことなく正確に見当の位置に紙を置く松崎さん。

慣れた手付きで、バレンで均等に圧力を加えていきます。

今回はお手本ということで、練習用の紙に摺っていただいたので、こんな感じに仕上がりました。

色にムラがなく、綺麗に摺られているのがわかりますね!

お手本を見せていただいたので、ここからが私の体験の本番です。

お手本の通りに進めていきます。

糊が固まってしまうので、インクと糊を原版の上に塗ったら、素早く紙を見当の上に置かなくてはいけないのですが、少しでもズレないように置くのはとても難しかったです。

時間との勝負なので、途中経過の写真を撮影することができなかったのですが、完成したのがこちら!

松崎さんのサポートのお陰もあり、なかなか綺麗にできたのではないでしょうか!?

色を入れる前のものと比較してみました。

いかがでしょうか?

実際に木版画を摺る時間は約15分でしたが、事前の説明なども丁寧にしていただいたので、合計1時間くらいで体験は終了しました♪

体験を終えて

実際に江戸木版画に触れさせていただき、印刷機の大量生産では実現できない、伝統工芸品としての素晴らしさと、和の色味の美しさを感じることができました。

非常に手間のかかる作業なのですが、仕上がりの美しさを見ると、このまま後世へと残り続けてほしい技術だと思いました。

自分で摺った作品は持ち帰ることができるので、部屋に飾って体験したときのことを思い返せるのも良いですね♪

今回は摺師の仕事をされている松崎大包堂さんにお邪魔しましたが、絵のデザインを考える絵師さん、木の原版を作る彫師の職人さんのお仕事も拝見したくなりました。

体験費用は610円とかなりお手頃なので、また違う作品を摺りにお邪魔したいと思います!

※2020年2月時点

体験がしたくなったら

松崎大包堂

住所:〒116-0001 東京都荒川区町屋3-31-16
電話番号:03-3892-3280
営業時間:8:30~11:00、12:00~15:00
江戸木版画摺り体験:※要予約
体験費用:¥610
定休日:土・日曜、祝日
最寄駅からのアクセス:東京メトロ 千代田線「町屋駅」から徒歩9分