写真提供:(一社)長崎県観光連盟
971もの島を持ち、県の大半が離島や半島から成り立つ長崎県。
江戸時代の鎖国下において、長崎市の出島では日本で唯一、他国との貿易が行われていたことでも知られています。
そのような背景から、江戸時代初期から続く伝統的な秋季大祭“長崎くんち”では、異国風の奉納踊を見ることができます。
長崎くんちは長崎独特の文化的な歴史を伝えるものとして、昭和54年(1979年)に国指定の重要無形文化財として認定されました。
そんな長崎県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、10品目以上の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって長崎県の「伝統的工芸品」として指定されている、三川内焼、波佐見焼、長崎べっ甲をご紹介します。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和4年(2022年)3月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
三川内焼
「三川内焼」は、長崎県佐世保市で生産されている陶磁器で、平戸焼とも呼ばれています。
その起源は今から約400年前、平戸藩主の松浦鎮信が朝鮮から連れ帰った陶工に窯を開かせたことにはじまり、江戸時代には平戸藩の御用窯として将軍家の献上品などが作られました。
三川内焼は、熊本県で採れる天草陶石を使用しており、透き通るような白い磁器に繊細優美な藍色の染付が持ち味で、愛らしい中国の子供たちが描かれた、温かみのある“唐子絵”が代表的な図柄です。
そのほか、器の表面に細かい穴をあけて光を取り込む“透かし彫り”や、卵の生地のように薄い磁器を作る“エッグシェル”など緻密な技巧を施した細工物は、繊細な美しさが魅力です。
波佐見焼
「波佐見焼」とは長崎県波佐見町で作られている、白い磁器に藍色の繊細な染付が魅力的な陶磁器です。
安土桃山時代の末期、大村藩主・大村喜前の命で、慶長4年(1599年)から朝鮮人陶工によって作りはじめられました。
鉄道が発達した明治時代以降、有田にある出荷駅から日本全国に配送されていたことから、長らく“有田焼”と呼ばれていましたが、約20年前に生産地の表記が義務付けられるようになり、“波佐見焼”として流通するようになりました。
波佐見焼は、各工程の分業制により大量生産を可能にしたため、庶民の間で親しまれ、愛用されてきました。
とくに、江戸時代に盛んに生産されていた波佐見焼の“くらわんか椀”は、手頃な価格で手に入ることから、陶磁器を庶民の間でも使用できる食器として普及させました。
江戸時代~明治時代に作られた醤油・酒の輸出用瓶の“コンプラ瓶”は、ユニークなデザインで海外でも人気となり、今でもヨーロッパのアンティークショップ等で取り扱われているのだとか。
昭和62年(1986年)には割れにくい“ワレニッカ食器”が作られるなど、現在もライフスタイルに合わせた器を届けています。
長崎県の伝統的工芸品である波佐見焼は、約400年にわたり日用食器として親しまれてきました。近年では、その洗練されたデザインと使い勝手の良さで若い方にも人気を博しています。今回はそんな波佐見焼について、特徴や歴史、オススメの窯元などを徹底的に解説していきます!
長崎べっ甲
「長崎べっ甲」は、長崎県長崎市や諫早市で主に作られている、ウミガメの一種“タイマイ”の甲羅を細工した工芸品です。
長崎は江戸時代の鎖国下でも海外との貿易が許可されていたため、材料が手に入りやすく、べっ甲細工の生産や技術が発展していきました。
長崎べっ甲は接着剤を使わず、水と熱を用いて何枚ものタイマイの甲羅を接着して厚みを出し、熱湯でしならせてから丸みや曲線の形を整え削るという、丹念な手作業と緻密な技法で作られています。
かんざしや扇子、イヤリングなどのアクセサリーから、宝船などの置物までさまざまな製品が作られ、多くの人に愛用されてきました。
現在はワシントン条約により原材料のタイマイの輸入ができないため、長崎べっ甲の希少性が高まっています。
その他の伝統工芸品
工芸品名 | 概要 |
三川内焼 | 読み:みかわちやき カテゴリ:陶磁器 主要製造地域:佐世保市 指定:国 |
波佐見焼 | 読み:はさみやき カテゴリ:陶磁器 主要製造地域:波佐見町 指定:国 |
長崎べっ甲 | 読み:ながさきべっこう カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:長崎市他ほか 指定:国 |
五島さんご | 読み:ごとうさんご カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:五島市 指定:県 |
長崎手打刃物 | 読み:ながさきてうちはもの カテゴリ:金工品 主要製造地域:大村市、長崎市、島原市 指定:県 |
若田石硯 | 読み:わかたいしすずり カテゴリ:文具 主要製造地域:対馬市 指定:県 |
対馬満山釣針 | 読み:つしまみつやまつりばり カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:対馬市 指定:県 |
阿翁石 | 読み:あおういし カテゴリ:石工品 主要製造地域:松浦市 指定:県 |
古賀人形 | 読み:こがにんぎょう カテゴリ:人形 主要製造地域:長崎市 指定:県 |
佐世保独楽 | 読み:させぼこま カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:佐世保市 指定:県 |
長崎凧とビードロよま | 読み:ながさきはたとびーどろよま カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:長崎市 指定:県 |
五島ばらもん(凧) | 読み:ごとうばらもん カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:五島市 指定:県 |
壱岐鬼凧(壱州鬼凧) | 読み:いきおにだこ(いしゅうおんだこ) カテゴリ:その他の工芸品 主要製造地域:壱岐市 指定:県 |
日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。
伝統工芸士とは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事する技術者かつ高度な技術・技法を保持する職人のことであり、国家資格です。この記事では、なるにはどうしたらよいのか、伝統的工芸品の種類や伝統工芸士の資格・認定について、女性工芸士の活躍のほか、もっと伝統的工芸品に触れるために活用したい施設などをご紹介します。
粘土を成形し、高温の窯などで焼成し器や造形物を作ることを陶芸と言います。
火山の噴火によってできる岩石が長い年月をかけ砕かれ、有機物と混ざりあったものが粘土。
世界中に存在しています。
陶芸によって作られる陶磁器と呼ばれるものにはおおまかに2種類あり、土が主な原料で叩いた時ににぶい音がするのが「陶器」。
自分の手で作る、好みのものを収集する、日常の暮らしの中で使う…陶磁器には様々な楽しみ方があります。
なぜ日本の陶磁器は多くの人を引き付けるのか。
その魅力のワケを探っていきたいと思います。
日本は、およそ1万年以上もの「焼き物」の歴史を持つ国です。
現在も北海道から沖縄まで全国各地に陶磁器の産地が存在し、国内外から多くの焼き物ファンが訪れています。
この記事では、陶磁器の歴史や種類について解説していきます。
読むだけで陶磁器の知識が身につくので器選びが楽しくなるはずです。
器にこだわるようになると食卓が豊かになって食事が楽しくなります。
料理にもこだわるようになるでしょう。奥深い陶磁器の世界。入口までみなさまをご案内します。
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