四国の南部、太平洋側に位置する高知県は、豊かな森林と四万十川の美しい清流に恵まれた地域で、室戸岬むろとざき足摺岬あしずりみさき桂浜かつらはまなど自然の雄大さを間近に味わうことのできる景勝地が多く存在します。

県庁所在地の高知市は土佐藩の城下町として栄え、幕末の志士・坂本龍馬を輩出しました。

また、高知市はよさこい発祥の地でもあり、毎年夏は“よさこい祭り”の参加者や観光客で市内がにぎわいます。

そんな高知県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、10品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている2品目をご紹介します


※よさこい:土佐弁で「夜においでなさい・来てください」という意味。
高知県の民謡“よさこい節”、“よさこい祭り”の略としても使用される。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和3年(2021年)12月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

土佐和紙

「土佐和紙」は、高知県の土佐市やいの町などで作られている和紙で、日本三大和紙の一つに数えられます。

土佐の地では、平安時代にはすでに和紙の生産が行われていたといわれており、江戸時代には草木染を用いた“土佐七色紙とさなないろがみ”が幕府への献上品となっていました。

やがて、いの町出身の吉井源太よしいげんたにより、紙をく大型道具の簀桁すげたの開発や新製品の発明がなされ、明治時代中期に土佐は製紙王国として発展します。

土佐和紙はコウゾ、ミツマタ、ガンピといった原料を使って仕上げますが、その特徴は薄くて強度があること。

とくに文化財の修復などに使われる“土佐典具帖紙とさてんぐじょうし”は0.03mmという薄さを誇ります。

そのほか、書道用の“土佐清帳紙とさせいちょうし”や手工芸用紙など、紙の種類の多さも土佐和紙の特徴の一つです。

品名土佐和紙
よみとさわし
工芸品の分類和紙
指定年月日昭和51年(1976年)12月15日


土佐和紙について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください♪

土佐打刃物

土佐打刃物とさうちはもの」は、高知県の東部から中部で製造されている伝統的な刃物です。

林業が盛んな土佐(高知県)では、古くから木を伐採するための鋭い刃物が作られていました。

江戸時代初期、土佐藩が新田開発や森林資源の確保を推進する元和げんな改革を行ったことで、高品質な農業・林業用打刃物が多く生産されるようになり、土佐打刃物が誕生しました。

丈夫で鋭い切れ味と手入れのしやすさが特徴の土佐打刃物は、鉄を熱して叩きながら自由に打ち延ばして形を作っていく“自由鍛造じゆうたんぞう”の技法を使い、原寸と形が書かれた注文書だけで製品を作ります。

自由な形に仕上げることができるため、農業・建築用から、家庭用包丁やアウトドアナイフまで、幅広い種類の刃物が製造されています。

なお、斧やナタといった木を伐採する道具には、鉄材にタガネを打ってヒツ穴(柄を差し込む穴)を抜く“抜きビツ”という特有の技法が使われています。

品名土佐打刃物
よみとさうちはもの
工芸品の分類金工品
指定年月日平成10年(1998年)5月6日