こんにちは!

ワゴコロ編集部の西です。

今回は、東京都の伝統的工芸品に指定されている東京洋傘を製作している小宮商店さんに独占取材。

東京洋傘の魅力や、その製作工程を伺いました!

東京洋傘とは?

東京洋傘とうきょうようがさ」は、東京都の伝統的な洋傘です。

その名の通り、海外から伝わった技術をルーツとして作られています。

安政元年(1854年)、ペリーの来航に伴って洋傘が日本に持ち込まれると、これをきっかけに洋傘が注目されるようになり、日本での生産がはじまったと言われています。

東京洋傘は、製作の中で“関東縫い”と呼ばれる技法を用いることが特徴の一つ。

関東縫いとは、傘の生地(カバー)部分となる三角形の生地同士を縫い合わせる際に、三角形の頂点側、つまり傘の円の中心から縫う技法のことです。

使用する生地の特性などを考慮しながら縫い合わせていかなければならないため、高度な技術が必要ですが、傘のフォルムが綺麗に出る技法なのだそうです。

その美しい見た目はもちろん、使い勝手も抜群で、雨傘と日傘どちらの用途にも使えるなど、細部に至るまで使う人への気遣いが散りばめられた工芸品となっています。

平成30年(2018年)に、東京都の伝統工芸品に指定されました。

小宮商店とは?

小宮商店こみやしょうてん」は、職人の手仕事による傘を製作・販売している傘の専門メーカーです。

昭和5年(1930年)の創業以来、長く使える傘をお客様に届けようと、高品質で機能性にすぐれた傘を作り続けています。

1本1本職人の手作業で作られる傘は、ファッションの一部としても楽しむことができる優れたデザイン性が魅力的!

平成26年(2014年)には本社の1階を店舗に改装し、直接お客様が傘の魅力を感じられる場を設けました。

そして、平成30年(2018年)に東京洋傘が東京都の伝統工芸品に指定されたことで、小宮商店の一部の洋傘も伝統工芸品として認定を受けました。


東京洋傘の製作工程

では、東京洋傘はどのように作られるのでしょうか?

東京洋傘は、骨屋、手元屋、生地屋が必要なパーツを作り、洋傘職人がそれらを組み合わせるという分業制によって作られます。

今回は、実際に小宮商店さんで見学させていただいた、洋傘の製作工程をご紹介します!

角裁断

まずは、職人さん自身が作ったオリジナルの木型に合わせて、生地を裁断していきます。

小宮商店さんでは、山梨県で作られる、甲州織の生地を使うことが多いのだとか。

甲州織は、先染めならではの美しい艶と、たて糸に2本、よこ糸に1本の糸を使用するため、織の密度が高いことが特徴です。

独特の技法を使って作られた甲州織は、ほつれにくく、傘の縁をミシン掛けする必要がないので、水切れも良いほか、縁のカーブが美しく出て、洗練された傘に仕上がるのだそうです。

紙・ダボ布作製

次に、専用の型を布の上に置いてくり抜き、傘に取り付ける天紙てんがみとダボ布を作製します。

“天紙“とは、傘の上部に内側からあてられている布のことで、”ダボ布“は、骨の関節部分を包むための布です。

骨と生地が直接擦れて汚れたりしないようにする役目をもっています。

作成したダボ布は、骨の関節部分に固定します。

クロ巻き

傘を開閉する際にスライドさせる部分をロクロと呼びます。

このロクロがむき出しになっていると、スライドさせる際に手を怪我してしまう可能性があるため、とがった部分を生地で包んで縫います。

縫い

次に、骨に被せるカバーを作ります。

はじめに裁断しておいた布を三角形の頂点の方から “関東縫い”という、東京洋傘独特の技法で縫い合わせていきます。

り付け

ここからは、縫い合わせた数々のパーツを丁寧に取り付けていきます。

天紙、布、骨の先端に付けるカバーなどを丁寧に取り付けます。

最後に、全体を見て歪みなどがないか検品をしたら、完成です!

Q&A×小宮商店

ここまで、東京洋傘とはなにか、魅力や作り方をご紹介しました。

ここからは、小宮商店の代表・小宮宏之こみやひろゆきさんと、東京洋傘を作る職人・田中一行いっこうさんに、小宮商店への想いを伺った様子をお届けします!

宮さんが思う、東京洋傘の魅力とは?

小宮さん

なんといっても高品質である、という点ですね。

日常で皆様が使われる傘は、消耗品で、頻繁に買い替えるものである、というイメージをお持ちの方も多いと思います。

東京洋傘は、普通であれば見逃すような細かな部分にまで気を配って作られているので、頑丈で壊れにくく、長く使っていただけるのが特徴です。

また、東京洋傘は、一つひとつ職人が時間と手間をかけて作り上げています。

海外から来た傘とはいえ、一般的な海外の傘とは大きく異なっていて、細分化された分業によって作る海外の傘に比べて、東京洋傘は、職人が、全体を見ながらお客様の使いやすさを追求して最後まで傘を作り上げます。

その傘一つひとつの特性を見ながら、最終的にまとめあげていくようなイメージなので、やはり使いやすさの部分、そして見た目の美しさにおいても段違いだと思っていますね。

生地の美しさ、全体のフォルムなど、これまで傘をそこまで気にかけたことがなかった方でも、一度使っていただければ魅力が伝わる、そんな素晴らしい工芸品になっています。

西(ワゴコロ編集部)

今回の取材にあたり、店頭で素敵な傘をいくつかご紹介いただきました。

私のお気に入りは、外側が無地で、傘を開くと内側に柄が広がっている「Bouquet」でした♡

さらに小宮商店さんの傘は、高品質で見た目がオシャレなことはもちろん、手元(ハンドル)を取り外して好きなデザインのものに付け替えができたり、ネームタグが付けられたりと、自分だけの傘を作れる点にも、とても惹かれました♪

カスタマイズが可能なので、職場先の方やご家族など、プレゼントにもぴったり!

小宮さんは、10年以上同じ傘を使用しているとも仰っていて、その頑丈さにも大変驚きました。

宮さんのお気に入り商品はなんですか?

小宮さん

「Two-Ply」がお気に入りです。

普通の折りたたみ傘に見えますが、骨を伸ばして長傘としても使える2wayの傘になっているんです。

2色のコントラストもおしゃれですし、傘のケースも2wayに対応していて、普通の傘のようにも持ち歩けるところがとても便利だなと思います。

それに、甲州織を使っていることで生地がとてもしっかりしているので、折り目が崩れることなく、少し振るだけですぐに綺麗に折りたためるところも魅力の一つです。

中さんは、どうして職人になろうと思ったのですか?

田中さん

はじめは他の仕事をしていたのですが、当時30代の時に仕事を辞めるタイミングで、洋傘製造の求人を目にしたことがきっかけでした。

正直、「傘が大好き!」ということではありませんでした(笑)

良いタイミングで求人を見つけて、ものづくりが好きだったことがはじめた理由の一つです。

あとは、職人業界の世代が若くなかった、というのもあります。

30歳の時に未経験で新たな世界に飛び込むのってなかなか勇気がいることだと思うのですが、職人の世界では30歳はまだまだ卵の状態。

今からでも新しいことにチャレンジできるかもしれない!と思って、思い切って入ったような感じでしたね。

はじめてみたら、思ったよりもずっと奥が深い世界だな、とすごく興味が湧きはじめて、2年ほど見習いとして修業を行ったのち、正式に製品になる傘を作れるようになりました。

東京洋傘って、傘の生地によって表情が違って、同じ木型では裁断できなかったりするんです。

生地に合わせて木型を作り替えたり、全体のバランスを見て綺麗な傘ができたときはとってもやりがいを感じるので、今も毎日の研究がとても楽しいです。

人をやっていて忘れられない経験はありますか?

田中さん

自分が作った傘を喜んでもらえるのは、単純に嬉しいです。

あまり店頭に立つことがないんですけど、たまに立ってお客様とお話した時に自分の作った商品を褒めていただけると、本当にやってよかったなと思います。

もっと言うと、自分がこだわって作ったポイントをお客様から指摘していただけたりすると、「気づいてもらえた!」と、テンションが上がりますね(笑)

京洋傘業界の課題

小宮さん

やはり人手不足は深刻な問題ですね。

うちはまだ若い方が入ってきてくれている方ですが、年々、傘屋自体は減っている傾向にあります。

さらに、傘に使用する部材が揃わなくなるのではないか、という問題もあります。

生地がなければ、骨がなければ、傘を作り続けることはできませんからね。

そのために出来ることとして、職人の養成を行うとともに、やはり東京洋傘の魅力、職人の技のすごさを伝えていくことを意識しています。

ネット販売を開始してみたり、頻繁にイベントに出展するよう心掛けたり。

安定した高品質の傘を作りながらも、まずは皆様に知っていただくところから、その変わらない技術を私達なりに広めていけたらな、と思います。

宮商店がお客様に伝えたい想い

小宮さん

私達は、お客様の日常に寄り添った、高品質な傘にこだわり続けて今日まで傘屋を続けてきました。

素敵な傘があれば、暑い日も、雨の日でも、少し気持ちが晴れて外出が楽しみになる。

我々の作った傘を使うために、外に出たくなる。

こういう商品を皆様にお届けする、ということが私達の目標です。

ぜひ、傘がもたらしてくれる素敵な日常を、一度体感してみていただきたいと思います。

取材を終えて

小宮商店の方々は、とにかくお客様第一に、お客様に喜んでいただける商品を、ということにとても重きを置いて経営をされていることを強く感じました。

「良いものを作り続けていれば、買ってくださる方がいる」と言っていた小宮さん。

長く使える、人々の生活に寄り添った工芸品を作り続けることが、東京洋傘の技術を後世に残していくことにも直接つながっていくのではないか、と思いました。

小宮商店の略歴

昭和5年 東京都中央区浜町で創業
昭和22年 店舗が空襲で焼けるも、東日本橋に店舗を移転し、再建
昭和26年 有限会社小宮商店を設立
平成30年 東京洋傘が都の伝統工芸品に選出&小宮商店の職人が伝統工芸士に認定される