富士山や 八ヶ岳などの山々に囲まれている山梨県は、県土の約78%を森林が占めるほど自然豊かな場所です。
果物の生産も盛んで、ぶどう・もも・すももの収穫量は日本一を誇ります。
そんな山梨県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、10品目以上の伝統工芸品が存在します。
この記事では、その中でも経済産業大臣によって山梨県の「伝統的工芸品」として指定されている、甲州水晶貴石細工、甲州印伝、甲州手彫印章をご紹介します。
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること
本記事の内容は、令和4年(2022年)1月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。
甲州水晶貴石細工
甲州水晶貴石細工は、山梨県甲府市周辺で作られる、水晶や翡翠、瑪瑙などの天然石に細工を施した伝統的工芸品です。
甲州水晶貴石細工の歴史は今から1000年以上前、 御岳昇仙峡(御嶽昇仙峡)の奥地にある金峰山付近で水晶の原石が発見されたことにはじまります。
江戸時代後期、京都から迎えた職人が鉄板に硬い石の粉末である金剛砂をまいて水晶を磨く方法を発見し、水晶貴石細工がはじまりました。
原石を削り出し、鉄ゴマを回しながら彫刻をして磨くという繊細な手仕事で作られる細工は、天然石ならではの美しさをより輝かせています。
今では置物や帯留め、アクセサリーなどの装飾品が作られています。
甲州印伝
甲州印伝とは、鹿革に漆で模様づけを施した革製品のことを指します。
柔らかな鹿革と光沢を放つ漆の調和が生み出した伝統的工芸品です。
鹿革は軽くて強度があることから、戦国時代には甲冑などの武具にも使われていたそうです。
甲州印伝の産地は江戸時代末期、山梨県甲府市を中心に形成されました。
享和2年~文化11年(1802年~1814年)にかけて出版された、江戸町人の日常生活の滑稽さ描いた『東海道中膝栗毛』の文中には、“腰に下げたる、印伝の巾着を出だし、見せる” という記述があり、当時から粋な小物として親しまれていたことが分かります。
甲州印伝は、藁を焚いた煙で鹿革をいぶす“燻べ”、型紙の上から漆を塗り模様を浮かび上がらせる“漆付け”、1色ごとに色を重ねて模様付けをする“更紗 ”などの伝統技法で作られてきました。
その図柄は青海波や小桜など伝統的な 江戸小紋のほか、最近では新しいデザインも増えています。
甲州手彫印章
“印章”とは、判子のことを指します。
水晶の産地である甲州地方では江戸時代末期に水晶細工が発達し、その技術を応用した印章づくりもはじまりました。
明治時代に一般市民も印章を使うようになったことから、市場が拡大し発展していきます。
甲州手彫印章の印材には、水晶やツゲの木、水牛の骨などが使われます。
その名の通り、一つずつ職人の手彫りとなっており、文字を彫る面を磨いて平らにする“印面摺”、逆文字を彫る“字入れ”などの伝統技法で作られています。
手作業のため唯一無二の製品で、繊細な表現による陰影の美しさが魅力です。
伝統工芸品とは、その地域で長年受け継がれてきた技術や匠の技を使って作られた伝統の工芸品のことを指します。その中でも今回は、北陸や東海といった中部地方の新潟県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県の伝統的工芸品73品目を紹介します。
日本には何十年、何百年も前から受け継がれてきた技術を用いた、伝統工芸品が数多く存在します。技術の革新により機械化が進み、安価で使いやすい商品がどんどん市場に出回っている昨今、手作業で作られる伝統工芸品は需要が少なくなり、追い詰められているのが現状です。
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軽くて丈夫、なおかつ気品と優雅さを備えた印伝についてご紹介しましょう。
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