提供:三重フォトギャラリー

「一生に一度はお伊勢さん」と言われるほど、昔から庶民の憧れであった伊勢神宮が鎮座する三重県。

その他にも、世界遺産・熊野古道や伊勢志摩国立公園など、自然豊かな観光資源も点在し、多くの観光客が訪れます。

また、三重県は伊勢海老いせえびの産地としても有名で、千葉県と共に漁獲量全国1位を競っています。

そんな三重県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、33品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている5品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)2月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

伊賀くみひも

伊賀いがくみひも」は、三重県の伊賀市や名張市を主な産地とする組紐くみひもです。

組紐とは、細い絹糸や綿糸などを組み上げて作った1本の紐のことです。

伊賀くみひもでは特に、手で組み上げる“手組紐”が有名で、絹糸や金銀糸の鮮やかな色合いが魅力です。

伊賀くみひもの起源は奈良時代以前にまでさかのぼり、大陸から仏教とともに組紐の技術が伝えられたとされています。

鎌倉時代には武士の武具、室町時代は茶道具の飾り紐、戦国時代には鎧といったように、各時代のニーズを反映した製品作りで発展を遂げてきました。

頑丈で扱いやすいため、現在は和装の帯締おびじめやネクタイなどによく利用されています。

品名伊賀くみひも
よみいがくみひも
工芸品の分類その他繊維製品
指定年月日昭和51年(1976年)12月15日


四日市萬古焼

四日市萬古焼よっかいちばんこやき」は、主に三重県の四日市市で作られる陶磁器です。

江戸時代中期、豪商である沼波弄山ぬなみろうざんが、現在の三重県三重郡朝日町小向おぶけに窯を開いたことが萬古焼のはじまりだと言われています。

弄山がいつまでも残る焼き物であるように願いを込めて、自身の作品に“萬古不易ばんこふえき”の印を押したことから「萬古焼」と呼ばれるようになったそうです。

四日市萬古焼は“半磁器”という陶器と磁器の中間的な性質を持ち、耐熱性や耐久性に優れている点が特徴です。

萬古焼には多種多様な陶磁器がありますが、現在の代表的な製品は土鍋で、土鍋の全国シェアの80%を占めていると言われます。

品名四日市萬古焼
よみよっかいちばんこやき
工芸品の分類陶磁器
指定年月日昭和54年(1979年)1月12日


鈴鹿墨

鈴鹿墨すずかずみ」とは、三重県鈴鹿市で作られている墨です。

その歴史は古く、延暦年間(782年~805年)にまで遡るとも言われています。

気候風土が墨作りに適した鈴鹿の山で採れる松材が使用されているため、発色の良さが特長で、多くの書道家に愛用されている逸品です。

品質が高いことから、書道だけでなく、墨染すみぞめの染料や塗料、彫刻を施した美術工芸品などとしても使われています。

品名鈴鹿墨
よみすずかずみ
工芸品の分類文具
指定年月日昭和55年(1980年)10月16日


伊賀焼

伊賀焼いがやき」は、三重県伊賀市周辺で生産される陶器です。

起源は奈良時代の天平年間(729年~749年)と言われており、長い歴史の中で、生活雑器や茶道具など、時代のニーズに即した形で製品が生み出されてきました。

伊賀市はかつて琵琶湖の底にあったと言われており、そこで採れる伊賀焼の原料となる“伊賀陶土いがとうど”は、優れた耐熱性と蓄熱性を持ちます。

この特性を活かし、現代では土鍋が主力製品として有名です。

“伊賀の七度焼き”と言われる、焼成しょうせいを繰り返す技法によって生まれる独特の自然美も、古くから多くの人々に愛されています。


※焼成:成形した粘土を窯で高温加熱し、強度を増す工程のこと。

品名伊賀焼
よみいがやき
工芸品の分類陶磁器
指定年月日昭和57年(1982年)11月1日


伊勢形紙

伊勢形紙いせかたがみ」は三重県鈴鹿市に伝わる伝統的工芸用具で、主に江戸小紋・京友禅・浴衣などの柄や文様を生地に染めるために使われる型紙です。

諸説ありますが、その歴史は古く、1000年以上前にさかのぼるとも言われています。

柿渋かきしぶ※1を用いて和紙を貼り合わせた渋紙に、職人がいくつかの技法と彫刻刀を使い分けながら文様を彫りぬいて作ります。

その精緻な文様には、独特の風合い※2があります。


※1 柿渋:熟す前の柿を潰して絞った汁を発酵・熟成させて作る液体のこと。

※2 風合い:人が織物や紙などに触れた時に感じる質感のこと。

伝統的な着物の染色を支えてきた工芸用具ですが、着物の需要が減った近年では技術の保存のため、照明器具や建築建具としての活用などの取り組みが行われています。

品名伊勢形紙
よみいせかたがみ
工芸品の分類工芸材料・工芸用具
指定年月日昭和58年(1983年)4月27日