今回ご紹介する「慈宝」は、現代の名工である七宝工芸家・吉田武氏と、東京仏壇を制作している有限会社岩田仏壇制作所がコラボして制作した小型七宝飾りの仏壇です。

「慈宝」の魅力だけでなく、七宝焼きはどのような工程を経て出来上がるのか、東京仏壇とはどういった仏壇なのか、それぞれの魅力をご紹介いたします。

七宝焼きとは?

ガラス質の釉薬が溶け、光沢のある美しい表情を見せる七宝焼きは、以下のように非常に多くの工程を経て完成に至ります。

①図案(紋様)作成
②鋼板プレスや、へら絞り等での成形
③下引き釉薬加工
④銀箔加工
⑤ 焼成
⑥ 絵付け
⑦ 研磨
⑧ めっき等の工程 

まず、紋様のアイディアを下絵に起こすことからはじまり、それをもとに型を作っていくのですが、紋様によっては型作りだけで何日もかかることもあります。

完成した型をベースとなる鋼板に置き、ガラス質の粉状の釉薬を振りかけ、電気炉に入れ焼きつけて採色していきます。

この工程を、別の型を使って何度も繰り返していきます。

作品によっては10回にも及ぶことがありますが、どの工程を省いても七宝焼きは仕上がりません。

個人差はありますが、各工程一年程度の経験が必要となるそうです。

金属の素地にガラス質の釉薬を何層にも焼き付けていくため、光のあたる角度により色
が変化し、奥深い色彩を放ちます。

日本における七宝焼きの発祥は江戸時代後期からですが、立体的に表現された繊細な絵柄は、海外でもその美しさが高く評価されています。

七宝工芸家・吉田武氏について

七宝工芸家・吉田武氏は七宝焼きの第一人者であり、油絵にも精通していることから絵画的手法を七宝焼きに応用した作品を制作しています。

飾皿や花瓶、プロゴルフツアーや放送局主催の国際コンクール、国内イベントの表彰記念品など、色彩が際立つ優れた作品を多く世に送り出してきました。

平成元年(1989年)には外務省を通じて当時の内閣総理大臣よりローマ法王に吉田氏の作品が献上され、平成30年(2018年)には卓越した技能者制度に基づき、厚生労働省より「現代の名工」として表彰されました。

吉田氏は七宝焼きの意匠・図案の作成から研磨・仕上げなどすべての工程に長年従事し、特に紋様が崩れないように細部まで繊細に焼き付ける技能に卓越しています。

絶妙な加減で焼き付け方を均等に調整する、非常に優れた技能の持ち主です。

細部まで繊細に描かれる紋様を可能にしているのは、吉田氏の卓越した技能だけでなく、厚手のビニール性の型です。

この型は七宝焼きには欠かせない精密な図柄を、効果的かつスピ―ディーに行うために吉田氏が独自に開発したもので、良質な作品制作に大きく寄与しています。

七宝焼きは、一度焼いてしまうと修正ができません。

何回焼くか、どこで採色するかなど、作業に入る前の入念なチェックは欠かせないそうです。

手間がかかる地道な作業の連続で、手を抜ける工程は一つもありませんが、特に金箔や銀箔を使う工程では、箔が溶けないように焼く温度と時間を推し量ることも重要になり、さらに細心の注意が必要とのことです。

吉田氏は「時代がどのようなアイテムを求めているのか、七宝工芸には紋様を生み出すだけでなく、時代を読む目も必要だ」と語っています。

東京仏壇とは?

東京仏壇とは東京都指定の伝統工芸品で、いわば仏壇の高級ブランドです。

元禄の初期頃に江戸の指物師が桑や欅などの堅木材を使用し、独自の技術で飾りの少ない簡素なデザインの仏壇を作り出したのがはじまりといわれています。

東京仏壇は木地本来の持ち味を活かした木目の美しさと簡素で丈夫な作りが特徴で、主な産地は東京都の中でも台東区、荒川区、足立区です。

東京仏壇の制作工程は主に以下4つ。

①木地工程
②彫刻工程
③塗り工程
④組立工程

まず、木地の目合い、色合いの良い素材を選びます。

仏壇の素材には、黒壇や紫壇、桑、屋久杉などの銘木が使われます。

大まかな設計図となる「もりつけばん」という、部品の寸法が書いてある1枚の板を使い、この寸法に基づいて木材を削り、部品ごとに釘を使わない接着方法で組み立てます。

もりつけ板が読めて書けるようになったら、一人前として認められるそうです。

東京仏壇の特徴でもある面の丸みとやわらかさを現すために、ヤスリで一つひとつ磨いていくのですが、この時に角の丸みを変えるなど、職人ならではの味も出てきます。

鳳凰や唐草などの伝統的な意匠を施す彫刻や、繰り返し漆を塗って木目の美しさを際立たせる塗装、釘を使わずに木を寸法通りに組み立てる指物など、東京の伝統工芸品が誇るさまざまな技法が駆使されているため、東京の伝統工芸品の総合芸術ともいわれています。

有限会社岩田仏壇制作所について

自宅の中にある小さなお寺であり、仏像や先祖の位牌を安置する仏壇は、昔から日本人の心のよりどころであり、日常的に手を合わせてその日の安全を願うものです。

近年は生活スタイルの変化に伴い、仏壇を置く家庭が少なくなりました。

しかし、この灯を絶やしてはならないと奮起する職人・岩田芳樹氏と晴芳氏の双子の兄弟が構えている工房が「有限会社岩田仏壇制作所」です。

昭和2年(1927年)の創業以来、江戸伝統の技法を受け継ぐ東京仏壇をつくり続けてきました。

東京仏壇は数多くの部品から成り、職人の手から生み出されたものであれば、分解・再生が可能であるといいます。

つまり、破損しても修復作業ができるため、子々孫々長く使い続けることができるということです。

兄の岩田芳樹氏、弟の晴芳氏の両氏は、口を揃えて「仏壇は家具ではなく、人々が心を寄せる、手を合わせるもの」だといいます。

小型七宝飾り仏壇「慈宝」の魅力

厚生労働省から「現代の名工」として表彰を受けている七宝工・吉田武氏と、老舗仏壇工房である有限会社岩田仏壇制作所がコラボした新商品が「慈宝じほう」です。

「慈宝」は、東京都の指定伝統工芸士に認定された有限会社岩田仏壇制作所の職人である岩田芳樹氏と晴芳氏が制作する「東京仏壇」が基になっています。

江戸時代から続く伝統工芸であり、高級木材の唐木本来のシンプルな美しさが特徴の東京仏壇に現代の名工が七宝焼きの技術で制作する飾り板が取り付けられている新しい意匠の仏壇が「慈宝」なのです。

「七宝」の名前の語源は、仏教の経典にある七種の宝であるといわれており、飾り板には何羽もの舞鶴と青海波せいがいはの紋様が焼き付けられています。

この絵柄には、先祖や故人の魂が安らかであるようにという願いが込められています。

核家族化や居住空間の様式化により、小型化された仏壇の需要は年々高まっており、「慈宝」も置き場所に困らない小型サイズ。

そして、現代の居住空間にも違和感なく溶け込む現代的なデザインとなっています。

受け継がれてきた技術を活かして、先祖や故人を慈しむ心を感じてほしいとの想いから開発されました。

おわりに

ここ数年、パワースポットがブームとなっており、神社仏閣巡りが盛り上がりを見せています。

しかし、わざわざ遠方に足を伸ばさなくてもご先祖さまと心で繋がることができるパワースポットが「仏壇」なのだと思います。

「慈宝」は七宝焼きと東京仏壇という、何十年もの修行をしてきた職人さん達の細かなこだわりが詰まった奇跡ともいえる仏壇です。

細かな部品の一つひとつが丁寧につくられているため、何十年も使い続けることができます。

孫の代まで残したい!と考えている方に、ぜひオススメしたい「慈宝」。

仏壇に手を合わせる習慣が薄れつつある現代において、この「慈宝」によって先祖や故人との繋がりを少しでも感じていただけたらと思います。

昭和56年創業 有限会社 創作七宝「逸- itsu-」吉田武氏の略歴

1943年
新潟県生まれ。画家を志し独学で油絵を学ぶ中、新潟県長岡市で小学校の教員を勤める。

1955年
上京 七宝焼工房で修行

1981年
独立 創作七宝「逸」工房を設立

1989年
ローマ法王聖ヨハネ・パウロ二世に吉田氏の作品「八号玉花瓶」が贈呈される

1996年
伊勢神宮遷宮に際し、親話絵の飾り皿制作の委託を受ける

2018年
「現代の名工」に選定

岩田仏壇製作所

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