本州中部の太平洋側に位置し、富士山をはじめとする山、海、湖などバラエティ豊かな自然を持つ静岡県。

四季がはっきりしていて、晴天の日も多く、穏やかな気候に恵まれた県です。

また、静岡県は国内の茶園面積の約4割を占めるともいわれており、日本一の茶産地でもあります。

そんな静岡県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、30品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている3品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)1月月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

駿河竹千筋細工


駿河竹千筋細工するがたけせんすじざいく」は、静岡市などに伝わる竹細工で、花かご、バッグ、行灯あんどんなど、さまざまな製品が作られています。

良質の竹が自生するこの地域では、古くから竹細工が盛んに作られており、江戸時代初期には参勤交代で駿河を通る大名達から籠枕かごまくらが大人気となりました。

江戸時代後期には、角を削った細い丸ひごを用いた技法が伝えられ、その後もさまざまな創意工夫を凝らし、現在の駿河竹千筋細工として確立していきました。

駿河竹千筋細工の特徴は、丸ひごを使い、一本ずつ組み上げていることです。

丸ひごの細さは「千筋」という名前の由来のように、約90cmの畳に1000本並べることができるほど極細です。

竹にあけた小さな穴に極細の丸ひごを一本一本差し入れ、編んで作られた駿河竹千筋細工は、細い丸ひごの筋が見せるしなやかな曲線の美しさと、繊細な造りに目を奪われますよ。

品名駿河竹千筋細工
よみするがたけせんすじざいく
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日昭和51年(1976年)12月15日


駿河雛具

雛具ひなぐ”とは、雛人形と一緒に飾る雛道具のことを指し、箪笥や鏡台など40種類近くあるといわれています。

駿河雛具するがひなぐ」は、江戸時代初期に 久能山東照宮くのうざんとうしょうぐうや浅間神社の造営のために、全国各地から駿河府中に集められた職人たちが、その後も駿府すんぷにとどまり、漆器や木工品を手掛けたことから始まりました。

室町時代からこの地に伝わる「ひいなはりこ」を贈る風習に合わせて雛遊びが定着し、その後、明治時代に雛具の生産が本格化します。

駿河雛具の最大の特徴は、本物の家具調度品のように精巧に造られていること。

駿河雛具は分業制で、木工・漆・蒔絵・金具などの工程を各専門の職人が腕を振るって製作しています。

細かい細工に、精緻な模様の蒔絵で彩られる雛具は、見事な芸術品です。

箪笥たんすや針箱などは小物入れとして使用できるほか、インテリアとしても好まれています。

品名駿河雛具
よみするがひなぐ
工芸品の分類人形・こけし
指定年月日平成6年(1994年)4月4日


駿河雛人形


駿河雛人形するがひなにんぎょう」は、静岡市や焼津市周辺で作られる雛人形です。

江戸時代末期に、この地域で作られていた学問の神様“天神さま”の土人形に衣装を着せたのが、駿河雛人形の始まりだといわれています。

駿河雛人形はふっくらとしたおおらかさが魅力で、これは人形の胴体に太く束ねた稲藁いねわら が使われているからです。

静岡県の中部地域では米の生産が盛んに行われていたため、稲藁が手に入りやすかったことが理由だと考えられています。

また、駿河雛人形の衣装は上下別々に製作されているためボリューム感が生まれ、きらびやかな仕上がりになっているところもみどころです。

さらに、上下で分かれていることから、雛人形の分業・量産化に成功しました。

もう一つ見逃せないのが、両手を曲げて人形の手の位置を決める“振りつけ”の作業。

この曲げの形は、衣装の色や柄とともに職人の個性が発揮されるので、ぜひ注目してみてください。

品名駿河雛人形
よみするがひなにんぎょう
工芸品の分類人形・こけし
指定年月日平成6年(1994年)4月4日