修学旅行の行き先としても有名な奈良県は、さまざまな神社仏閣が立ち並ぶ昔懐かしい街並みが特徴で、周りを山に囲まれた海のない内陸県となっています。

歴史的建造物が多く、特に有名なのはなんといっても東大寺の大仏ですね。

また、奈良の街中では、古くは神の使者として、現代では国の天然記念物として大切に保護されてきた、数多くの鹿を間近で見ることができます。

実は、この鹿たちは誰かが飼育しているわけではなく、すべて野生の鹿なんですよ。

そんな奈良県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。

この記事では、その中でも経済産業大臣によって「伝統工芸品」として指定されている3品目をご紹介します。

伝統的工芸品とは?
経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて認められた伝統工芸品のことを指す。
要件は、
・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること
・日常生活で使用されていること
・主要部分が手作業で作られていること
・一定の地域で産業が成り立っていること

本記事の内容は、令和4年(2022年)2月時点のものです。
掲載内容は変更していることもありますので、ご留意ください。

高山茶筌

高山茶筌たかやまちゃせん」は、奈良県生駒市高山町いこましたかやまちょうで生産される竹製の茶道具で、抹茶をてるために使われるものです。

良質な竹が採れること、茶道具の大消費地である京都や大阪に近いことなどの理由から、高山町で生産される茶筅は、なんと国内生産量のうち9割のシェアを誇っているのだとか。

高山茶筌は、室町時代中期に佗茶わびちゃ※1の創始者と言われる村田珠光むらたじゅこうの依頼により、鷹山領主の子息が作ったものが起源だと伝えられています。


いまだに機械化ができない繊細を極めた製作技術は、「一子相伝いっしそうでん※2で脈々と受け継がれています。


※1 侘茶:茶道の形式の一つ。「びの精神」を大切にし、精神を育てることを目的としたもの。
※2 一子相伝:職人技術や学問の本質などを自分の子供1人にのみ伝授し、他のものには秘密にしておくこと。

品名高山茶筌
よみたかやまちゃせん
工芸品の分類木工品・竹工品
指定年月日昭和50年(1975年)5月10日


奈良筆

奈良筆ならふで」は、奈良県奈良市や大和郡山市やまとこおりやまし周辺で作られる筆です。

奈良は日本の筆作りの発祥の地であり、平安時代の大同元年(806年)に空海が遣唐使として唐から筆の製作技術を持ち帰り、大和国やまとのくに(現在の奈良県)に伝えたことが起源とされています。

奈良筆の製作は全て手作業で行われ、用途に応じて十数種類の獣毛を混ぜ合わせる“練り混ぜ法”と呼ばれる技法を用いて作ることが最大の特徴です。

また、練り混ぜの前工程として良い毛先を選ぶ“毛組”の工程を習得するには、10年かかるといわれています。


品名奈良筆
よみならふで
工芸品の分類文具
指定年月日昭和52年(1977年)10月14日


奈良墨

奈良墨ならすみ」は、奈良県奈良市で生産されている墨です。

奈良墨の発祥は『奈良筆』と同じく、大同元年(806年)に空海が唐から製法を持ち帰ったこととされており、興福寺二諦坊こうふくじにたいぼうという寺院で作られるようになりました。

奈良墨の製作工程は機械化ができないほど繊細なため、現代でも墨職人が一つひとつ手作業で作っています。

丁寧な職人技で作られる奈良墨は不純物がほとんど含まれず、粒子が細かく均一であることから、すずりる際のあたりがとても滑らかなのだとか。

そして磨られた墨は艶と深み、光沢がある力強い墨色がでます。

現在、日本国内における固形墨のほとんどが奈良墨とされており、その全国シェアは9割にものぼります。


品名奈良墨
よみならすみ
工芸品の分類文具
指定年月日平成30年(2018年)11月7日